小さな勇気

脚本:山崎亮 演出:志水淳児
作画監督:何燁/沈陶裔/陳亮/周楽謠/洪範錫/迫由里香/トメイゼイ
総作画監督:浅沼昭弘

★あらすじ

グローイングドーンに痛い目に遭わされて以来、災難続きなキノコ団。
彼らは縄張りの湾岸エリアにいられなくなり、山で生活せざるを得なくなっていました。
ところが何の偶然か、そこはあの「ニリンソウ」がある山だったのです。

さらにリーダーの恨みの念を受け、凶悪なレッドベジーモンが誕生。
ニリンソウを見つけたキノコ団はこのレッドベジーモンに引っ張られる、というか
脅迫のような形でグローイングドーン壊滅に動き出すことになります。

ニリンソウにはトモロウ達が来ていましたが、レーナとマコトは折悪しく買い出し中。
トモロウは幼年期たちにe-パルスをあげた影響で深い眠りについており、
シェルターを守っているのはゲッコーモンたちだけでした。
そのゲッコーモンたちも、罠に引っかかってあえなく無力化されてしまいます。

眠ったトモロウを引き摺り出させ、コールドハートへ追いやろうとするレッドベジーモン。
しかも、ゲッコーモン達の目の前でという悪辣ぶりです。
復讐の権化と化したこのデジモンは、もはやキノコ団の手に負えない存在でした。

さらなる暴挙が行われようとしたとき、立ち上がったのは幼年期たちの中でも
特に臆病と思われていたポヨモンでした。やられてもやられても果敢に向かってゆきます。
この行動に勇気を得た他の幼年期たちも一斉にレッドベジーモンへ襲いかかり、
おかげで解毒キノコを得たゲッコーモンが大復活。あっという間に決着がつきました。

トモロウが起きてみれば、キノコ団はキョウにキノコ料理をご馳走になっていました。
改心した彼らは、なかば勝手に「ニリンソウ防衛隊」を名乗ります。
キョウが睨みをきかせるとはいえ、ちょっぴり不安が残る幕切れとなりました。
 
 
 
★全体印象
 
15話です。
13、14話とたいへん情報量の多い回でしたが、今回はその反動みたいにかなりライトなお話。
メインキャラの出番も少なく、良くも悪くもそんなに書くことがなかったりします。
タクティクスの方々に至っては影も形もありません。

今回事実上の主役を張っていたひとりは、7話から印象を刻んでいるポヨモンでしょう。
なんだかんだ丸く収まったのは、彼?が勇気を奮い起こしたおかげです。
そうじゃなかったら、キノコ団も含めて遥かに酷いことになっていたでしょうね。

ここまでやったからには、ポヨモンにも今後もっと見せ場があるのかもしれません。
それがどういう形になるのかまでは分かりませんけど。
そもそも元がどういうデジモンで、サポ主が誰だったのかも分かってませんし。

また、キノコ団も方々も思ったよりは常識的というか、悪人というほどじゃないというか
レッドベジーモンが暴走したおかげで逆恨みの悪印象が中和されていました。
逆恨みは逆恨みだし、レッドベジーモンが出てきたのはそのせいなんですけど
時としてサポ主の思いもよらぬことをするデジモンもいることは8話で証明済ですね。

脚本は山崎亮さん。まさにその8話の人です。
演出の志水淳児さんはサラッと名を連ねてますが、80年代から活躍しているベテラン。
しかも初期の「One Piece」劇場版や、「プリキュア」シリーズの劇場版の監督も
かなりの数を歴任しているなど、相当の人です。シリーズにはなんと無印以来の参加。

やはり本作、かなりスタッフを確保してきてますね。
たまたまうまいこと良い人にヒットした可能性もあるけど。

 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・トモロウ

 ラスト手前までずっと寝てた人。
 思った通り、キョウの代わりに幼年期たちへe-パルスをやる役目もやってるみたいです。
 こう言っちゃあなんですが、彼にはこれ以上ないほどの適任でしょう。
 元ハイエモンピアスにはもうだいぶ懐かれてそうです。

 8話の件があるので、今回レッドベジーモンにそこそこe-パルスを吸われていた際も
 むしろ相手の方を心配してしまったぐらいのものでした。
 どのみち真正面からなら彼が起きるまでもない相手だったっぽいですが。
 
 
 
・ゲッコーモン

 成熟期までなら相手しだいで進化するまでもなく勝っちゃえるお方。
 無警戒でフツーに玄関に出てあっさり毒にやられるあたりはだいぶマヌケですけど、
 まあゲッコーモンだしな……とはなりました。うっかり捕まったのは他も同じだし。

 解毒キノコで復活した後は、あっという間にレッドベジーモンを下しています。
 もちろん相手が毒デバフを喰らっていた点は差っ引かないといけませんけど、
 特に状態異常を喰らってないファングモンやマッハモンなども倒したことがあるし
 おそらく相手が万全な状態でも大差はなかった気がしますね。
 
 
 
・レーナ&マコト

 二人して買い出しに行っていたので事件には関わっていません。
 でも、レーナについては回想で駆け出し時代の場面がちょろっと出てきます。
 すいませんその話もうちょっと詳しく。
 
 
 
・プリスティモン

 珍しくずっと成長期のままでした。成熟期の姿は階層にしか出てきません。
 ニリンソウでは、いつにも増してお姉さんらしい振る舞いをしていました。
 彼女の言葉がポヨモンに勇気を与え、事態の好転につながっていますので
 間接的に立役者の任を背負ったと言えるかもしれません。
 
 
 
・キロプモン

 油断していたとはいえ、あろうことか真っ先に捕まってしまいました。
 彼が捕まってしまったことでストレートに事態の悪化へ繋がってしまったので、
 今回いちばん良いところ無しだったのは彼かもしれません。
 
 
 
・キョウ

 ラストシーン周りでキノコ団に料理を振る舞っていました。
 その後、彼らがニリンソウの警備を申し出た際も寛大に受け入れています。
 誰にでもやり直す権利はある、は彼の持論ですからね。

 ただしこの寛大は口止め料代わり。
 変な気を起こしたら分かってるよね??? な笑顔でキノコ団を恐怖させています。
 かつて五行星として冷酷非情の鬼と呼ばれていた(そこまでは言われてない)頃の顔が
 ちょくちょく出るのはもはや味になってますね。
 
 
 
・ポヨモン&幼年期ズ

 前半ではさかんに戦闘訓練を行っていました。
 まだまだ微笑ましい光景ですし、有事のために備えるというよりかはもっと純粋に
 「ゲッコーモンみたいに強くなりたい」というのが動機。
 その中でも力がなく、性格も臆病で訓練も苦手だったのがポヨモンです。

 でもニリンソウとトモロウ達の危機を前に勇気を奮い起こし、思いもよらぬ果敢さで
 ほかの幼年期たちに立ち向かう気迫を湧きあがらせたのもこのポヨモンです。
 タイトル通り「小さな勇気」でしたが、成し遂げられたことは大きかったわけですね。

 ポヨモンは今後進化するなりして、誰かをパートナーにしたりするんでしょうか。
 そういう予想もしてしまいますが、その結果どんなデジモンになって誰が相方になるのか
 良い意味でまったく読めません。もちろん特に何もない可能性だってあります。
 まあ過剰な期待はせずに待つとしましょう。
 
 
 
・キノコ団の皆さん

 元正義のクリーナー集団。今後はニリンソウ警備隊を自称するみたいです。
 実力の割には妙に堂々としてますが、悪人というほどではありません。
 ただ根性が少し悪いだけみたいです。今回でそれはよく確認できました。

 逆恨みからレッドベジーモンが現れ、その怒りに乗って暴挙に及んでしまうものの
 リーダーは仲間の説得を受けてもう手を引くように説得を試みていますし、
 人として最低限の常識はちゃんと持っていますね。
 いかんせん、逆らいきるほどの根性はなかったわけですけど……

 ニリンソウの存在を知ったことで、キャラとしての重要度はグンと上がりました。
 これでトモロウ達がいない間は彼らが様子を見てくれることになったわけですが、
 逆に心配事が増えたかもしれません。

 彼らがドジ踏んで、遥かにヤバい連中にニリンソウが露見したりしないといいんですが……
 
 
 
・マッシュモン

 キノコ団のデジモンたち。エースたるシャンブルモンがいなくなったのでサポート役ですが、
 ゲッコーモンを不意打ちで無力化するなどツボにハマった際の危険度は健在です。
 その解毒キノコは勝利の鍵にもなりました。サポ主をうっかり巻き込む場面は布石ですね。
 
  
  
・レッドベジーモン

 今回のメインエネミー。初登場は確か「無印」47話のモブ敵ですから古株の一種。
 メインを張るのはこれが初めてじゃないですが、凶悪度は過去イチです。

 キノコ団リーダーの恨みから生まれたためか、恨みを晴らすことしか頭になく
 その行動原理はほぼ怒りに根ざしているように見えます。
 いわゆるグローイングドーン壊滅計画も、彼が主導したものでした。

 サポ主との立場が完全に逆転しています。
 リーダーが説得を試みても暴挙を収める気配すらなく、逆に彼らを脅して
 ゲッコーモンたちを滅多打ちさせようとするなど、凶悪さだけなら本作屈指。

 そのハザードブレスの威力は健在で、一発でキロプモンとプリスティモンを昏倒させ
 反撃に出たゲッコーモンも回避を選ぶなど危険度の高さが顕著です。
 こと不意打ちにかけては極めて厄介な相手でしょう。

 苛立つとすぐに触腕がブチッと千切れるという本作独自の設定があり、
 これをリーダーに持たせてゲッコーモン達への叩き棒として使わせています。
 ポヨモンが特攻したので実際に使われることはありませんでしたが、
 あんなので何度も叩かれたらいくらゲッコーモン達でもたまらんでしょう。
 02の百叩きを思い出します。

 ただ技の危険度こそ高いものの絶対的な戦闘力はそれほど高いわけではなく、
 ゲッコーモンが復活したと思ったらあっという間に倒されてしまいました。
 ブレイクスローであっさりニョキモンに退化しちゃうレベルでは、たとえ毒がなくても
 大した健闘はできなかったでしょう。
 そもそもベジーモン自体が成熟期としては強い方じゃないし……(言ってやるな)

 中の人は竹本英史さん。シリーズではバンチョーレオモン役で知られる人です。
 そのバンチョーレオモンにはブン殴られそうなチンピラですが。
 
 
 
・アカトリモン

 プリスティモンの回想に登場。上空でうるさく鳴きながら飛び回ってました。
 飛べないはずでは? との指摘も見かけますが現実に飛び回っています。
 e-パルスかなんかで普通以上の能力を手に入れたりしたのでしょうか。

 いずれにせよ当時のふたりにとってかなりの強敵だったのは事実らしく、
 プリスティモンはレーナに撤退を進言しています。
 でもレーナにその気は全くなく、逆に成長のチャンスだと意気込んでました。
 案外、このときに進化を獲得したのかもしれません。定かではないですが。
 
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「もう飽きたよ! 俺が狩りたいのは、雑魚デジモンなんだよ!」(シイタケ)

 きのこ狩りします? と仲間に提案されて。堂々と志の低いことを言っています。
 シャンブルモンを失った代償はやはり大きく、山の中で暮らす羽目になってしまったのは
 ホームの家賃を滞納するかなんかで大家に叩き出されたりとか経緯があるのかもしれません。

 この後、偶然見つけたグローイングドーンの車が岩を落とし、これに当たりかけたことで
 彼らへの恨みを募らせ、レッドベジーモンが爆誕することになります。
 完全な逆恨みだし、シャンブルモンの件はグローイングドーンに関係ないんですけどね……
 
 
「ビビって逃げたくなった時こそ、前に進め……!
 強くなるチャンスだ! プリスティモン! ……さあ、気張るわよ!」(過去のレーナ)

 
 戦いが苦手で訓練中も逃げ回ってばかりのポヨモンに、プリスティモンが紹介した言葉。
 12、3歳ごろでしょうか? 黒沢さんの演技も今よりちょっと高めになってます。
 これは、あらゆる事例に当てはめられそうな言葉ですね。

 この言葉を引き合いに、プリスティモンはポヨモンに困難へ立ち向かう秘訣を教えました。
 ポヨモンも土壇場でこれを思い出し、キノコ団とレッドベジーモンに一矢を報いてます。
 今回のキーワードと定めても過言ではないでしょう。

 プリスティモンはこの時のレーナの言葉と行動を「本当に頼もしかった」と絶賛していました。
 本人がいないところだからこそ出たセリフかもしれませんし、実際レーナが来たら
 「ちょーっと昔話をね」と誤魔化していますが。
 
 
「なんだって構わねぇよ……
 復讐だ! あの幼年期どもを捕まえて、売っぱらってやる!」(シイタケ)

 
 ニリンソウの存在と、そこに匿われている幼年期らの存在を知って。
 レッドベジーモンは「小せぇこと言ってんじゃねぇ」と怒鳴り飛ばしてましたけど、
 こっちの嫌がらせ度も非常に高い気がしてなりません。しかも成功率も低くなさそうという。

 というか、むしろこっちの方が後が怖かったのでは……
 レッドベジーモンの暴走とポヨモンの奮起は、彼らキノコ団にとって幸運だったのかも。
 
 
「復讐ってのは、相手が絶望するほど気分がいい! ……だろ?」(レッドベジーモン)
 
 捕まえたキロプモン達の目の前でトモロウをコールドハートにするという悪辣な提案をして。
 リーダーはまだ調子を合わせてますが、すでに内心で葛藤しまくっているのは見ればわかります。
 
 
「ちゃんと仕留めてた、って…… できてなかったら、どうする気だったんだよ!」(シイタケ)
 
 一度解毒キノコを奪ってから、ゲッコーモンが倒れているのを確認、それからシメジに渡した
 レッドベジーモンの行動を見とがめて。その後黙らされますが。
 仕留められていなかった場合、シメジは毒を食らったまま放置されていたことになります。
 リーダーの中で「こいつやべえ」感がどんどん増しているのを肌で感じられるセリフ。
 
 
「俺さまよぉ、なんでかなぁ? 気に食わないことがあると……ブチッってなっちゃうんだよ」(レッドベジーモン)
 
 自分で触腕をブン回したあげくに千切って。キノコ団のみなさんは完全にドン引きです。
 彼が怒りと恨みの化身であることが、象徴的にわかる場面のひとつでもあります。
 こういったサポ主からの影響は、退化とともに消えるのかもしれません。定かではないけど。
 
 
「レッドベジーモン! オレも結構スッキリしたし、復讐はここまでってことで……なっ!」(シイタケ)
 
 レッドベジーモンへの説得。エリンギやシメジに促されたとはいえ、彼もすでに限界でした。
 しかし彼の一時の強い恨みから生まれた怪物は、もはや止まりません。
 
 
「わかった! わかったから、こいつらだけはやめてくれ!」(シイタケ)
 
 切り離した触腕でゲッコーモンたちを打つようレッドベジーモンに脅迫されて。
 逆らえばその牙が仲間に向くとあって、やむを得ず応じています。
 彼がなんだかんだメンバーを大事にしていることがよくわかるセリフ。
 さすがに良心が咎め、ゲッコーモン達にも詫びを入れています。
 
 
「おわーっ! 滑ってる! 滑ってる、危ない! 危なーい!」(レッドベジーモン)
 
 ユキミボタモンの氷で滑り、待ち構えるサクモンたちという状況に。
 アドリブ色が強いです。
 
 
「ブレイクスロー! ってナァ!」(ゲッコーモン)
 
 溜まりに溜まった報復の一撃。
 苛烈な復讐に臨んだ者は、その行為ゆえに報復を免れ得ないという良い教訓です。
 
 
「決めた! キノコ団は解散! 今日からオレたちは、ニリンソウ防衛隊だ!」(シイタケ)
 
 キョウにご馳走になって。事情を聞いたことはニリンソウの名を出してるところから明白です。
 それにつけても神経が太いというか、調子がいいというか。
 この前向きさが憎めなさの柱なんだろうな、とも思いますが。
 
 
「ニリンソウを知られた以上、彼らを放っておくわけにもいかないしな。
 それに……もし変な気を起こしたら……」(キョウ)

 
 シイタケたちの決断を受け入れて。
 もし裏切ったらわかってるよね? と言わんばかりの笑顔は、キノコ団改め防衛隊をビビらせています。
 下手すっとレッドベジーモンよりビビってる。かつての沢城キョウの雷名、よほどのものですね。
 
 
「いいじゃないか。誰にだって、やり直すチャンスはある」(キョウ)
 
 本当に大丈夫か、と懸念するトモロウに。そういうもんさ、と強調しています。
 殺し文句ですね。これを出されたらトモロウも強くは出られません。
 まあ元キノコ団の場合、ドジを踏みそうだからそっちが心配なんですけどね……
 
 
 
★次回予告

 ムースモン登場。メインを張るのは初めてですね。
 内容としてはレーナとグラニットがメインになりそうです。
 タクティクス側はまずグラニットに掘り下げが来る流れなのか、それとも……