電光ヘラクルカブテリモン

脚本:森地夏美 絵コンテ:鈴木正男 演出:山本隆太

作画監督:直井正博 / 松本勝次 / 向山祐治 /

Wang Min / Zhou JianLiu Dong Dong / Jiang Zhi Hui /

Huang Yong Pin / Li Wei Feng / Xia Li Ping / Lu Feng /

Zhao qing yun / Zhou Zhi Jie / Zhu Ya Shi

総作画監督:仲條久美 / 二階堂渥志

★あらすじ

情報の大樹を離れ、デジヴァイスの導きで険しい渓谷にやってきた光子郎とテントモン。
それはかつて、二人がクワガーモン達との戦いで完全体進化を会得した場所でした。

太一とアグモンも合流して本格的な調査が始まろうというところで突然、謎の通信が入ります。
通信の主はナノモン。知識において何者にも勝ると自負するこのデジモンは、
ホエーモンを人質にして光子郎へ挑戦してきました。勝利条件はナノモンを捕まえてタッチすること。

受けて立つ光子郎でしたが、ナノモンの仕掛けた問題は間違えると一人ずつ仲間を囚われる仕掛け。
しかも捕まった者は、同じナノモンへと改造されるというのです。
太一とアグモンを相次いで囚われ、焦燥にかられる光子郎。
が、そんな彼を信じ続けるテントモンのおかげで冷静さを取り戻し、最後の問題へ挑みます。

待ち構えていたグランクワガーモンとの戦いの中、光子郎はナノモンの居場所を看破。
決して負けられない勝負を前に、二人の揺るぎなき信頼が究極進化を導き出してゆきます。
その名もヘラクルカブテリモン!

見事グランクワガーモンを倒し、ナノモンを捕まえる光子郎たちでしたが、
ナノモンは操られていただけでした。またしてもサウンドバードモン達の仕業です。
不穏が立ちこめる中、光子郎とテントモンもまた紋章の謎に近づくのでした。
 
 
 
 
★全体印象
 
59話です。光子郎回としては42話のガーベモン回以来。
ゲストが敵役としてしか絡まない、光子郎組自身を主体としたお話としての認識では
36話の衛星狙撃作戦以来になるでしょうか。奇しくも究極進化の兆しが出た回です。

つまりメンバーの中ではかなり早めに究極進化の兆しを出していながら、実際には
2 クール近く経ってからようやく進化を遂げたわけです。
アレが出たら進化はそれほど先じゃない、と思っていた頃が私にもありました。
というか兆しの出し方も進化までの期間も、あまりにバラバラなんですよね……

それはともかく、今回はナノモンとの知識…というか知恵比べがメイン。
それぞれの謎は意図してのものでしょう、かなりゲーム然としたものです。
中には初見殺しする気まんまんなものもありましたが、悪役のやることですし…
いや本当は悪役やらされてただけだったんですけど。

ただ離散展開が多いためか、本作での光子郎って単独でのエピソードが増えた一方
「皆の参謀役」としてはかなり印象が分散してしまってるんですね。
彼の本分である知識分野に切り込むという意味では確かに順当な流れだとは思うし、
光子郎とテントモンの描写に大きな不足はないだけにそこのところが惜しい。
全体的にキャラの掘りが甘いせいで起こってしまうことなのですけど。

脚本担当は森地夏実さん。氏の担当回ではかなりマシな部類です。
作監人数がまたまた増えてましたが、こんなに船頭が多くて混乱しないんでしょうか。
まあ人数にかかわらず作画は割にずっと安定してるんですが……
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・光子郎

 自分の紋章に最もわかりやすいアプローチをしてもらった人。
 まあ相変わらず本編中では「これは知識の紋章だよ」なんて説明はないのですけど。

 難問にぶつかり焦燥するも、パートナーのおかげで立ち直り窮地の中で冷静に勝ち筋を見つける。
 このように書くと、欠けているものをに認識したのが完全体進化の際のエピソードであるなら
 今回はそれを受けてさらに難易度の高い命題に挑むお話と言えます。
 こういうお話でなければ、彼らの紋章は本領を発揮しないのかもしれません。

 人物としてはこの2クールでも大して掘り下げられず「一人でいるのが好きだった」という以外
 家庭事情さえほぼわからないままですが、本作ではそういう方針だったということなのでしょう。
 ヤマトとタケルの事情でさえ、38話と41話でちょっと描いてそれっきりでしたし。
 これに関しては今さらどうこう言ってもしょうがないでしょう。しょうがなくはないけど。

 それでも、進化回としては比較的マシなのを貰えてる方です。
 やはり役割がハッキリしてるぶん、メインの中ではお話が作りやすい方ではあるのだろうし。
 ミレニアモン戦など肝心なところで目立てないので「皆の参謀役」としては印象が薄めなのですが……
 そこが薄いのは割に致命的な気もしますけどひとまず置いときます。 
 
 
 
・テントモン

 光子郎をひたすら献身的に支えました。
 そこは一貫してるので良いんですけど「お、お前ってやつは〜っ!」ってなるほどではなく。
 話としてはまあともかく情緒を揺さぶってくるには今一歩足りない、といったところでしょうか。
 そこは同じ東映でも途切れ途切れではなく、長年続いてるシリーズの方が上手いです。
 
 
 
・ヘラクルカブテリモン

 強敵グランクワガーモンを前に一歩も退かないアトラーカブテリモンの力と、
 冷静さを取り戻した光子郎。知と力の2000万パワーズがたどり着いた究極の境地です。
 黄金に輝く外骨格は、カブテリモン系頂点の一角を占める証。

 パワーも体格も格段に増えており、単なる体当たりだけでホーンバスター並に見えます。
 グランクワガーモンを全く寄せ付けず、一方的に勝利を収めていました。
 格上を追い抜かして強さを見せつけるという意味でも、ここ数回では最も妥当な流れです。

 ただ相手が操られていただけという都合上、普通にぶっ倒したのに気絶させただけという
 やや半端な顛末になってしまったのは惜しいところです。
 ナノモンを拾っていたし、あれでも手加減した可能性は高いのですが。

 人気デジモンでありながら長らく映像作品での出番に恵まれませんでしたが、
 triを皮切りにして本作においても出演の機会を獲得したことになります。
 レギュラーとしてTVシリーズに出演するのは初めてですね。

 いかんせん、完全体までと比べて活躍期間は短くなってしまいそうですが……
 究極体だし、そこはある程度仕方ないんですけど。
 
 
 
・太一組

 今回はだいたい捕まってた方々。
 光子郎にとって太一は、彼の得意分野を衒いなく賞賛してくれた人物です。
 その光子郎組のモチベーションを高める意味で今回はいる意味があったと思いますから、
 紋章編では太一組主体のエピソード以外で一番存在意義があったかもしれません。

 ただそれは視聴者目線の印象で、光子郎の方から太一への情緒がどうこうという流れは無し。
 53話ではニセ温泉を沸かす役、56話ではヤマト不在の間にザンバモンを相手取る役どころですが
 今回を含めいずれもお話からすればサブ要素、無くても何とかなる箇所でしかありません。
 スパロボで例えれば任意出撃のステージも含めて毎回出てるような、そんな感じです。

 つまるところ、舞台装置以外の扱いを貰えていないんですよね……
 似たようなことがタケル組にも言えるけど、太一はある意味それ以上かも。
 なんせ話数かけてる割に、妹であるヒカリとさえろくにエピソードが無いのですから。
 
 
 
・ナノモン

 小型のマシーン型デジモン。完全体ですが昔から戦闘力に優れる描写は少なく、
 データを解析するなどして何かしら企てたり、何かを作ったりする描写がほとんどです。
 本作でも自分は捕らえたホエーモンの中に隠れ、グランクワガーモンを嗾けていました。
 強大な究極体をどうやって手なづけたのかは不明です。

 本来は純粋な知的好奇心に溢れるデジモンで、ガーベモンとは研究仲間。
 光子郎についての話を聞き、一度会ってみたいと憧れの気持ちを抱いていたようです。
 知恵比べを挑むような暴挙に至ったのは、その気持ちをサウンドバードモンに利用されて
 歪められた結果なのでしょう。思えば便利に使われすぎな連中です。

 いずれにせよ、敵に回すと厄介なタイプであることは確か。一度は光子郎を追い込んでます。
 が、偽の動画情報に騙されて出てきたところをグランクワガーモン共々ボコられる憂き目に遭いました。
 計算づくで動くキャラのお約束通り、予想外の事態には非常に弱いようです。

 とはいえヘラクルカブテリモンが手加減をしたのかフツーに生き残り、空中でキャッチされました。
 次に気づいたときにはすっかり元に戻っていて、やたら人懐っこく光子郎に接しています。
 このキャラ付けはなかなか意外性があって良かったかも。

 中の人は金元寿子さん。同じ東映のプリキュアシリーズでは黄瀬やよいことキュアピースで知られます。
 また「セーラームーンCristal」及び「Eternal」では水野亜美=セーラーマーキュリーを演じており
 「ミュークルドリーミー」では頭脳派であることこ先輩のパートナー・すぅを演じているなど
 知性派キャラをよく演じていたりもしますが、別にそれがナノモンとしての抜擢理由ではないのでしょう。
 知らんけど。
 
 
 
・グランクワガーモン

 今回のメインエネミー。ホエーモンが捕まっている地点で待ち構えており、光子郎組に立ちはだかりました。
 クワガーモン系の頂点に位置する昆虫型でも指折りの強者ですが、上記の通りこれほどのデジモンがなぜ
 格下であるナノモンの命令で動いていたのかは不明です。
 サウンドバードモンに操られてたのかもしれないけど、アイツらさらに格下だしなぁ……

 戦闘においてはさすがに強大さを見せつけ、オオクワモンをも圧倒したホーンバスターが全く通じません。
 体格でも遥かに優っているため、腕一本だけでアトラーカブテリモンを吊り上げぶん投げてしまいます。
 孤立無援状態の光子郎組を追い詰める強さを発揮しましたが、二人の奮起を招いて究極進化が発動。
 ヘラクルカブテリモンの前に逆に圧倒され、ギガブラスターであえなく倒されました。

 この際には完全体であるナノモンが生還しており、彼が起きた後ろで倒れてるカットがありました。
 ナノモンが気絶しただけで済んでるなら、こっちも生きている可能性が高そうですね。

 でもこいつ、結局どこから来たんでしょう。
 こんなのが14話の時点で出てきたら詰んでたと思うんですが、あの段階でもどこかにいたんですかね?
 ラスボス周りはなんとも得体が知れないし、何らかの手段で連れてこられたのかもしれませんが。
 
 
 
・ホエーモン

 5話以来ひっさびさの登場。
 ナノモンにとっ捕まり、光子郎を嫌でも知恵比べの場に引っ張り出すために使われました。
 まあ、捕獲自体はグランクワガーモンがやったんでしょうけど。

 しかしたいへん申し訳ないんですが、動機付けとして使うにはかなり弱かったと思います。
 てっきり太一が最初に捕まって、それを助けるために受ける…って話かと思ってたんですが。
 
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
「本当に、どうしてなんでしょうね」(光子郎)
 
 デジヴァイスの矢印方向がさっぱり定まらないとぼやく太一に。
 聞きたいのはこっちですよ。
 
 
「泉光子郎ノコトハナンダッテ知ッテイマス。ナンダッテ……!」(ナノモン)
 
 ホエーモンが捕まっていると判明した直後のセリフ。こわっ。
 テントモンも思わずドン引きしていました。

 光子郎がホエーモンと会ったことはごく限られた者しか知らない事実なのですが、
 よく考えてみたらあの回、サウンドバードモンが絡んでるんでしたね。
 ナノモンはこいつらを経由し、より多くの情報を手に入れたのかも。
 
 
 
「ごっつぅ悪そうなヤツ…!」(テントモン)
 
 モニタ越しにグランクワガーモンを見たときのセリフ。
 気持ちはわかるけど一応ソイツ、02の主役系究極体の片方を張っていたことがありまして……
 って君がそれを言うのか。
 
 
 
「負けてへん! 簡単にあきらめたらあきまへんで!
 太一はんもアグモンもホエーモンも、みんなが待っとる! 光子郎はんを信じて!」(テントモン)

 
 自分を見失いかけた光子郎に冷静さを取り戻させた激励の一言。
 いい場面なんですが、正気に戻った光子郎の目からハイライトが消える演出にちょっと笑いました。
 フツーは逆。珍しいもんを見させてもらった気がしますぞ。
 
 
 
「アトラーカブテリモン……
 君がいてくれたから、僕は自分を信じられた…… 仲間がいて初めて、知識は輝くものになるんだ!」(光子郎)
「せや! 光子郎はんの知識と、ワテのパワーがあれば! 最強やでっ!」(アトラーカブテリモン)

 
 究極進化直前のやり取り。力と知恵の風車が最高回転を迎えました。
 ヘラクルカブテリモンのパワー! 光子郎の頭脳! あわせて……2000万パワーズだーっ!
 
 
 
「アッ! 泉光子郎クンダ!
 ハジメマシテ! 私ハナノモン!」(ナノモン)

 
 正気に戻っての一言。記憶を完全に失っていたようで、なぜここにいるのかもわかっていませんでした。
 このキャラ付けは意外でしたが、ひと目見ただけで光子郎と気づいてハグしてくるとは
 やはり元から光子郎について相当調べをつけていた気がしますねえ。
 
 
 
 
★次回予告

 ヴァイクモン登場。
 新作「ゴーストゲーム」の存在が明らかになった以上、今の展開は最後の個人回群ってことになります。
 どんな展開になるかはわかりませんが、最後ぐらい先輩にはビシッと決めて欲しいですね。
 個人的にはオレーグモンの登場も気になるところ。