破滅からの接触

脚本:冨岡淳広 絵コンテ:佐藤道拓 演出:武藤公春

作画監督:荏原裕子 総作画監督:仲條久美

★あらすじ

紋章の謎への答えを求めて旅を続ける太一とアグモンは、謎の空間に吸い込まれます。
そこにいたのはなんと、彼らが最初に戦ったあのアルゴモン達。
しかも、その中の一体は他よりも人間に近い姿と言葉を得ていたのです。

アルゴモン達の「実験」に巻き込まれたアグモンは太一と分断され、
戻ってきたときには無数の「太一」が締め上げられていました。
放っておけばパートナーの命が危ないのですが、偽物の拘束を絶ってしまうと
爆発する仕掛けになっていました。果たしてどの太一が本物なのか──

途方に暮れるアグモンでしたが、太一ならどんな時でも諦めたりしないと考え直して奮起。
パートナーへの想いが不思議な光を呼び起こし、偽物を残らず排除しました。
本物の太一を救助したアグモンは、パートナーと再び手を取り合います。

そして、群がる敵に地獄の反撃が始まりました。飛ばせビーム! 受けろミサイル!
空間ごと、またたく間にアルゴモンたちを殲滅する太一とウォーグレイモン。
人型アルゴモンは「自分たちを創ったモノはいずれ動き出す」と予告、姿を消しました。

アルゴモン達を創ったという存在。すべての元凶は、最初から危機に関わっていたのです。
警戒と決意を新たに、選ばれし子供達は旅を続けるのでした。
 
 
 
 
★全体印象
 
57話です。「接触」は「コンタクト」と読みます。今回はあらすじ通りの太一組回。
太一とアグモン自身にスポットを当てたお話としては、実はかなり久しぶりになります。
彼らがメインで関わってるお話であっても、主役が実質ゲストキャラなケースもあったし。

また、太一ではなくアグモン視点であることもポイントです。
彼の視点を通し、ずっと共に戦ってきた八神太一という人物を際立たせることによって
二人の関係性描写に新たな角度を与えようという狙いがあったのでしょう。
そこにあたって敵役に選ばれたのがアルゴモン達なのも、ポジションとしては妥当です。

ただ狙いがわかったとしても、それがちゃんと機能したり面白さに繋がるかは別問題。
むしろ、この二人の間柄が今までいかに薄い描かれ方しかされてなかったか
そちらの方が強調されちゃってるのはもはや皮肉すぎて乾いた笑いがこぼれてしまいます。
本当に愕然とさせられますよ。4クール以上もかけといてコレなのか、と。

そもそもアルゴモン達自体、敵役としては全然面白くない連中です。
今回で彼らがラスボスのいわば直属部隊みたいなものだということが判明したわけですが
当初から仕込みされてたという割に開示された際の驚きやワクワクが少なすぎます。
それは結局、彼らが強いだけでちっとも面白くないという根本的事象に起因するのでしょう。

ともあれ、やっとラスボスらしきものの存在が示唆されました。
どうやら、9月までに終わるというのはほぼ確定ということで良さそうです。
ファーガ周りみたいに急に展開して急に終わりそうな流れになってきましたけど。
問題は、後番組が何になるかですが……

脚本はシリーズ構成の富岡さん。根幹に関わってくるお話だからでしょうか。
さほどバトル重視な回ではないですが、グレイモン無双が見れます。
それが見てて面白いかどうかはまた別の話ですけれど。
 
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・太一

 アグモン主体なんで担当回なのにあんまし特筆箇所がない人。
 とっ捕まったうえ、引き離されてる間にコピーが大量生成されてアグモンを惑わし
 本人はその間ずっと締め上げられっぱなしという災難に遭っています。

 この際、偽物たちは弱気だったり無駄にポジティブだったりやたら態度が悪かったり
 まあこれは違うだろうなっていうムーブを取りまくってるんですが、
 じゃあ本物の本物たるところって何か、ってものをいざ思い浮かべようとすると
 本作の場合、うまい言葉が出てこないんですよね。

 八神太一という少年は男の子そのものというか、良いところをたくさん持っている代わり
 欠点も数多く持っている人物でした。勇気と行動力は時として強引さに繋がり、
 細かいことを気にしないおおらかさは時として単なる大雑把さに繋がる。
 冷静な判断力を備えている一方で、他人の感情の機微には鈍感なところもある。
 でもそれを自覚し、自省して前を向いてゆく強さを根本に秘めた少年でした。

 しかし本作ではその「欠点」がことごとく取り去られてしまっているため、
 行動力と判断力が恐ろしく高いという、本当にただそれだけの人物になってしまっています。
 冒険から離れた彼が普段どんな様子なのか、ぜんぜん想像することができない。
 どんな人間なのか、実は大して描いていないのと同じなのです。

 なのに「本物を探せ」というのは、もはや皮肉か自虐にしか見えない展開ではないかと。
 そもそもちゃんと描けていないものを、納得のいく形で見分けるなどできるはずもない。

 幸い?なのは、アグモンの方から「なんだかわからないけど見分けられた」展開にせず
 謎パワーで偽物だけ排除する形に持ってったことですが。
 これはこれで解としては力技すぎてアレなんですが「見分けられました」よりは良いです。
 皮肉の上にも皮肉が重ねられているなあ……
 
 
 
・アグモン → グレイモン → メタルグレイモン → ウォーグレイモン

 大量の太一の中から本物を見つけ出せ、という無茶振りをやらされる破目になりました。
 偽物たちがあれこれ喋るのですっかり混乱してしまい、一時は途方に暮れています。
 失礼ながらあんまり頭脳派タイプじゃないし、ここは仕方ないところでしょう。

 結局は上記の通り、紋章由来と思われる謎パワーを放射して偽物を残らず排除。
 あまりに力技で見分けるもへったくれもあったもんじゃなく、もはやこの形を採用した
 意味さえ怪しくなってくるほどですが、なんせ太一自身のキャラがスカスカなので
 にも関わらず見分けられました、って流れにしても納得はできなかったと思われます。

 以後はフツーにアルゴモン達が襲ってきたので、これを遠慮なく撃破。
 ガイアフォースの際、太一も一緒にコールする演出になっていました。
 是非とかその効果のほどは置いといて、二人の一体感を高めるためでしょう。
 
 
 
・その他の皆さん

 太一組主体ですが他の顔ぶれも割と出てます。
 ヤマトはまだストラビモン達のところにいる模様。何か背後が忙しそうなので、
 本格的に居着くための作業を手伝ってるのかもしれません。

 光子郎はようやくデータ整理を終え、自分の目的地へと向かった模様。
 パタモンとテイルモンも回復しパートナーと共に行動を再開する模様ですし、
 空組は空組でどこかを移動中、ミミ組はまだデジモン学校にいる感じでしょうか。

 そんな中、まだ温泉に浸かってる丈組が良くも悪くもマイペースすぎます。
 いつの間にか城戸温泉なんて名前になってるし。
 いったいいつまで温泉ネタを引っ張るつもりなのやら……
 
 
 
・アルゴモン

 初期3話や偽東京以後の離散中など、何度かネットワーク上に現れた連中。
 デジタルワールドに現れたのは今回が最初です。
 加えて、ラスボスに創られた存在であることも明らかになりました。

 また今回はいわば顔役として「セイバーズ」版と同じ姿の個体が登場。
 言語による意志伝達を獲得し、ラスボスのいわば尖兵であることを明かしました。
 上でも書きましたが、要はラスボスの直属だったというわけです。
 そう考えれば、時として発揮するあの異常な強さにもある程度納得はいきますね。

 ただ相変わらず、敵役としてはぜんぜん面白くない連中です。
 言っていることも機械的でキャラクター性が薄く、ラスボス絡みのボス候補としては
 魅力不足と言わざるを得ません。これは本作がずっと抱えてきた問題です。
 魅力的な悪役がいてこそ主役だって輝くというのに、その悪役が欠けているのですから。

 中の人は松山鷹志さんですが、これも氏の数ある兼役のひとつでしかありません。
 専属声優というわけじゃないので、やはり特別感には欠けます。
 
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
「あと20数えたら出るから〜…」(テイルモン)
 
 湯治をしているうちにすっかり温泉にハマってしまったようです。
 その様子はヒカリをして困惑させるほど。どんだけ入り浸ってるんでしょう。
 
 
「コンニチワ」(アルゴモン)
 
 アルゴモン達が放った突然の挨拶。
 ぎこちなさと場違い感がなんとも怪物的で、ここらへんは描写として面白い箇所です。
 まあすぐ後に割とペラペラ喋る個体が出てくるんですけど。
 
 
「私は、アルゴモン。私たちは、アルゴモン」(アルゴモン)
 
 改まっての名乗り。一にして全、全にして一であることを強調するかのようです。
 「我が名はレギオン。我々は大勢であるがゆえに」というマルコの福音書の言葉を思い出しますね。
 「ガメラ2」にも引用されたこの一節のみが一人歩きしてる気もしますが。
 
 
「そうだ…!
 太一はどんなピンチのときだって、前を向いてた。勇気でいっぱいだった…!
 太一は、もうダメだなんて…絶対に言わないっ!」(アグモン)

 
 紋章由来と思われるオーラを出した際のセリフ。

 星矢……オレはなぜか以前、老師に見せていただいた映画のことを思い出した。
 その映画では八神太一という主人公が「もうダメかも」とか「ダメだぁ完全に!」
 などと言いまくっていた気がするのだが……この紫龍の思い過ごしだったのだろうか……

 閑話休題。
 冗談はさておき、:の太一は確かにそんなこと言いそうにはないですね。
 それが良いことかどうかは別の問題。
 
 
「私を生み出したもの…それは間もなく動き出す。
 すべてが無となり消え去る、終わりの時……」(アルゴモン)

 
 撤退間際のセリフ。どうやら決戦の時は近いようです。
 かなり早い段階から存在は示唆されてた「元凶」が、やっと表舞台に出てくるようですね。
 ずいぶん長い仕込みだった割には「いよいよか…」って印象が薄いのはアレですが。
 
 
 
 
★次回予告

 ヒカリ組回のようです。今度はオファニモンに進化するのかどうなのか……
 結局ヒカリも割にフワッとした描写のままなんですが、タケル組よりはマシなんですよね。
 主にテイルモンのおかげで。

 しかし既に方々で言われてることですけど、サブタイはもうちょっとこう、そのう、
 どうにかならなかったんでしょうか??