三日月の金狼
脚本:古怒田健志 絵コンテ:八島善孝 演出:内山まな
作画監督:八島善孝 総作画監督:浅沼昭弘
★あらすじ
デジヴァイスの示す方角へ向けて旅を続けていたヤマトとガブモン。
ある夜、彼らは巨大な刀を振るう幽鬼のような鎧武者デジモン・ザンバモンと、
これと必死に戦うデジモンたちの姿を目の当たりとします。
最後の生き残り・ストラビモンを間一髪で救い出したヤマトとガルルモン。
ザンバモンが追いすがってきますが、夜明けとともにその姿は消えてしまいました。
夜ごと現れて暴れ回る、まさに亡霊のような存在なのです。
実体が無いため、どんな攻撃を仕掛けてもまるで手応えが無いのでした。
遅れて到着した太一やアグモンとともに、ストラビモン達を守って戦うヤマト達。
その夜はなんとか凌ぎ切ったものの、ザンバモンに引導を渡す方法は見えないまま。
そんな中光子郎からの情報で、かつて斃されてなお怨念となったザンバモンを封じたのは
これを破った相手でもある「黄金の剣士」だということがわかりました。
その封印の地こそストラビモンの故郷だったのですが、ザンバモンの復活とともに潰滅。
現地には朽ち果てた剣が残されているばかりでした。しかし、ガブモンは悟ります。
ここに至るまでの間、幾度となく夢や幻として訴えかけてきたビジョン。
それは、かの黄金の剣士の霊がガブモンを呼んでいたからだったのだと。
剣を携え、再び戦いの地に舞い戻るヤマトとガブモン。
二人が力を合わせてこの死せる戦鬼に挑んだ時、朽ちたはずの剣が黄金の光を放ちます。
その輝きはワーガルルモンを究極体、クーレスガルルモンへと導きました。
まさしく太古の戦いにおける黄金の剣士のように。
クーレスガルルモンの剣は、亡霊であるはずのザンバモンでさえも切り裂くものでした。
かくて彷徨える鬼武者の魂は、今度こそ永遠の眠りについたのです。
ヤマトとガブモンも、紋章の謎へと一歩近づきました。
これを見て、決意を新たとする太一でしたが……?
★全体印象
56話です。今回の主役はヤマト組。
そして、第二の究極進化であるクーレスガルルモンのお披露目回でもあります。
太一組の同ポジションであるブリッツグレイモンからは遅れること20話での登場ですが、
扱いとしてはあちらと比較できないぐらいにマシなものだったと思います。
いちエピソードとしての穴も少ない方ですが、ヤマトとガブモン自身というよりかは
ゲストである「黄金の剣士」に依った形での進化であるということと、
すでに一度究極体に到達しているため二人の間柄が安定し切っていることから
彼ら自身について書くことはそんなに無かったりします。
あと相変わらず太一関連のノルマ感がキツいですね。
別行動する意味がもう無いはずのミミ組がなぜ一緒に来ていないのかも不明なままです。
ただ、ヤマト組とストラビモンがいない間は彼らがザンバモンを相手をつとめていたので
そういう意味では前回より出てきた意味はあったんじゃないかと。
脚本は古怒田さん。「キング・オブ・デジモン」回など、単発回の打率は高めな方です。
原画は二人ですが、バンク以外はほぼ八島パートと言っていいでしょう。
志田パートはほぼクーレスガルルモンのバンクに集中していたと思います。
ブリッツグレイモンにも分けてあげてほしかった……
★キャラなど個別印象
・ヤマト組
上で書いた通り、すでに絆レベルはMAX扱いということになってるっぽいので
彼ら自身について書くことはあんまり無かったりします。いやこれが本当に無いんですわ。
まあ、そんな彼ら(厳密にはガブモン)だからこそ黄金の剣士の眼鏡にかなったのでしょうけど。
ただ無理矢理でも二人で力を合わせて立ち向かう形に持ってゆき、それが紋章を呼び起こし?て
クーレスガルルモンの進化へ繋げる形になっていたのは悪くない流れでした。
もっとも劇中ではこれが「友情」の紋章だなんて一言も解説されていないのですけど……
・クーレスガルルモン
黄金の剣士の剣を媒介とするような形で現れた、第二の究極進化。
剣を携えた狼面の剣士ということで「牙狼」の黄金騎士・牙狼を思い出させるのですが
上記以外の共通点に乏しいため、特に意識したモチーフではないのだろうと推測します。
元々は太古の昔、おそらくガブモンの前世とは全く別のガルルモンが進化を遂げた姿。
それが詳細は不明ですがザンバモンとの一騎打ちの果てにこれを打ち倒し、
なおも亡霊となって暴れるのを見かねて剣ごと封印したという言い伝えが残っています。
これもテイルモンの言う、光と闇の戦いとはまた別のファクターだったのでしょう。
封印に使われた「黄獣偃月刀」はしかしザンバモンの怨念をついに抑えきれず、
無敵の亡霊として再び世に解き放ってしまいました。通じる武器は「黄獣偃月刀」のみ。
この刀を復活させ、使いこなすことのできる者を待っていたわけです。
クーレスガルルモンの残留思念もまた、この剣に残っていたのでしょう。
劇中後半ではヤマトとワーガルルモンが戦いの中で割れた「黄獣偃月刀」をそれぞれ持ち、
互いに力を合わせてザンバモンに向かっていった中で進化を遂げ現れました。
この際「黄獣偃月刀」も真新しい外観に変わっています。
以後の出番はごく短いですが、ザンバモンを一切寄せ付けずに引導を渡してのけました。
ガブモン本来のそれに加え、太古の戦いの記憶が上乗せされたのかもしれません。
まさしく完勝の勢いで、この難敵を成仏させしめています。
戦いのあとは剣だけが残り、ストラビモンに返却されています。
なので、この剣を媒介にしないと進化できないスポット扱いである疑いが強まりました。
オメガモンAlterSに繋がるかというと、かなり微妙と言わざるを得ません。
まあ出すことだけなら無理矢理にでもやれるでしょうが……
そもそも素のオメガモンでさえふわっとした扱いなんだよなぁ。
なお進化バンクは志田さん担当らしくヌルッヌルに動いてました。
ブリッツグレイモンにもリソースを分けてほしかったですよ、いやホント。
・太一組
中盤から登場。ヤマト達と二組がかりでザンバモンの猛攻を凌いでいます。
その際ウォーグレイモンに進化しているあたり、かなりの苦闘であったことは明白。
ただし究極体を披露したのはこのワンショットだけで、後半は完全体止まりです。
光子郎から連絡を受けて馳せ参じた、という以外の経緯は全く語られていません。
ミミ組がなんで一緒じゃないのか、今どこにいるのかも不明。
ストラビモンからのリアクションも全くなく、全般に扱いが雑です。
…なんか優遇されてんだかされてないんだか全然わかんないな、この二人。
・光子郎
ザンバモンのことを調べ、ヤマトに過去の経緯を伝えました。
まだ「情報の大樹」からは動いていないようですね。
ちなみにテントモンは画面に映るカットこそありますが、セリフは一切ありません。
・ストラビモン
ヤマト組が助けた獣人型デジモン。
グリズモン、ハヌモンらとスリーマンセルで行動していましたが、彼だけが残されました。
成長期ということで、三体の中では彼が一番若輩だったと思われます。
ザンバモンが封印された地が故郷ですが、これが復活した際真っ先に標的とされ里は壊滅、
彼が唯一の生き残りと思われます。なにかと「生き残ってしまった」経緯が窺える。
このためザンバモンへの敵愾心は強く、ヤマト達を「黄獣偃月刀」のもとに案内しています。
さすがに、故郷の残骸でもあるこの地を訪れるのには躊躇っていましたが。
ヤマト達の戦いには関与せず、ザンバモンとの戦いの見届け役となります。
以後はヤマト達に返却された「黄獣偃月刀」を手に、より強くなることを誓っていました。
その出自から太古のクーレスガルルモンとの関係が憶測できますが、定かではありません。
中の人は神谷浩史さん。言わずと知れた「デジモンフロンティア」の源輝二役だった方です。
ストラビモンはヴォルフモンのいわば進化前ですから、無論そこからのオファーでしょう。
あの当時はまだそこまでメジャーではなく、私も名前を知ったのは「フロンティア」から。
今や押しも押されぬ人気声優ですので、デジモン声優としては出世頭の一人かもですね。
声質もあり「一見クールだけど根は情熱的」な役柄をやらせたら絶品の味があります。
直近だと「SSSS.DYNAZENON」のジュウガがまさにそのタイプでした。
・グリズモン / ハヌモン
ストラビモンと共に行動していた成熟期デジモンたち。
成熟期張りに戦えるというストラビモンと並び、一団の中では戦闘力に優れていたと思われます。
比肩しうるのは、同じく成熟期であるモジャモンぐらいだったでしょう。
ストラビモンのことは庇うように振舞っていましたが、実力不足を鑑みてのことではなく
後を託すための行動だったと容易に見て取ることができます。むしろ期待していたわけです。
それは、グリズモンの末期のセリフからも明らか。
あるいは、潜在能力ならストラビモンが一番だと見込んでいたのかもしれません。
そのストラビモンも危うくザンバモンに斃されてしまうところだったのですから、
ヤマトとガルルモンが救ったものは彼らが思う以上に大きかったのかもしれません。
グリズモンの中の人は「古代デジモン復活」だとデュナスモンも演ってた三宅健太さんですが、
今回は本作お馴染みのボルケーノ太田さんが演じてます。こちらも結構ハマってる。
ハヌモンを演じてる田邊幸輔さんはまだ声優デビューしてからそれほど経ってないようですけど、
「シンカリオンZ」では主役格である碓氷アブトの父・トコナミを演じておられるようなので
今後に注目していきたいと思います。
・モジャモン
ザンバモンに滅ぼされた里の生き残りを取りまとめる長老役。
自らザンバモンを引きつける役を申し出るなど、戦闘力にも多少の自信があるようです。
しかしストラビモンからは力以上にリーダー力を高く評価されており、強く止められていました。
幸いなことにヤマト組が肩代わりしたので、仲間ともども以後の危険は回避しています。
中の人は田中亮一さん。
かつては「デビルマン」の不動明や「聖闘士星矢」で蟹座のデスマスクを演じた大御所です。
上記の通り、悪役やクセのある人物を演じることが少なくなかった印象なのですが
最近は好々爺な役柄が多いですね。とはいえ、一筋縄でいかないイメージも維持されてる印象。
・モブの皆さん
ザンバモンに滅ぼされた里の生き残りたち。
成長期ではコエモン、コテモン、ガジモン、ギザモン、クネモンの姿を確認できます。
幼年期はピックモン(白、赤)にバドモン、モニモン、それにサクモンと思しきが見て取れますね。
上記のグリズモンもそうですが、コテモンがいるあたりからもこのメンバー構成が
「古代デジモン復活」を意識したものである可能性は高そうです。
あの映画で輝二が厄介になっていたビースト族陣営第一の戦士もグリズモンでしたし。
コエモンはもしかしてアニメ初登場でしょうか?
少なくとも、モブとはいえこれだけ長いこと画面に写ってるのを見たのは初めてかも。
・ザンバモン
今回のメインエネミー。
アニメ初登場というわけではないですが、敵役としてちゃんと出たのはこれが初めてです。
映像作品以外では「デジモンネクスト」に登場する個体が印象的でした。
詳細は不明ですが太古の昔、ムシャモンらを率いてクーレスガルルモンの軍と戦っていました。
最終的に敗れたものの、携える刀は滅びることなく怨念の化身として存在し続けたそうです。
つまり刀が本体で、それを操る体はすでに滅びている状態ということ。
通常の攻撃では全くダメージを受けないどころか、攻撃そのものが通り抜けてしまいます。
よほどの無念を残して死んだのか、それとも戦いへの渇望だけで動き続けているのか……
いずれにせよ、極めて厄介な手合いとみて間違いはありません。
霊体ゆえ夜の間しか活動できないのですが、その間は誰にも止めようがなく
ただ引き付けておくだけで精一杯という状態でした。
この存在を滅ぼすことができるのは、太古のクーレスガルルモンがその魂を込めた
封印の鍵でもある「黄獣偃月刀」のみ。
それ以外では、たとえ同じ究極体の攻撃でも受け付けません。
ウォーグレイモンとメタルガルルモンでも、防戦に徹するしかありませんでした。
後半のバトルではヤマト組とストラビモンが不在の間、メタルグレイモンと対決。
相変わらずの不死身ぶりでこれを苦しめていましたが、遅れて到着したヤマト組が
力を合わせて紋章を輝かせ、クーレスガルルモンを出現させてからは形勢が逆転。
必殺の斬撃をことごとく弾かれ、霊体ごと両断されて消滅しました。
揮った猛威の割には、拍子抜けするほどあっさりカタがついています。
死んだという言い方が正しくないなら、成仏したというべきかもしれません。
「フロンティア」45話に登場した際の中の人は、おそらく中田譲治さん。
中田さんは当該作において「ワーガルルモン黒」として登板しているため、
ザンバモン役はあくまでも兼役にすぎません。
「ザンバモン 中田譲治」としてクレジットされたことはないのです。
が、今回に至っては上記の事情とは関係なく、そもそも喋りません。
「亡霊なので喋らせる必要がない」ためです。
唸り声のようなものは発していたので誰かが兼役してた可能性もありますが。
…やっぱりボルケーノ太田さんかな、これも。
とはいえ、中田さんが結構なハマり役な印象を受けたのも事実です。
いつか正式に中田譲治版ザンバモンを見てみたいところではありますね。
・エンディング
サビの使い回しパートが消え、新規映像に変わりました。
8組が手前に走ってくるカットがそれです。むしろ地味になったような……
★名(迷)セリフ
「皆を…頼むぞ…!」(グリズモン)
端役ゲストから一献。
ハヌモンと二人して「生き残らせるならストラビモン」と決めていたように見えます。
ストラビモンはモジャモンからも後事を託されかけており、高く評価されていた模様。
あるいはストラビモン本人が思う以上に、その資質は高く見込まれていたのかもしれません。
コテモンやコエモンからも慕われている節が、さりげないカットから見て取れます。
「あんたにもしものことがあったら…!」(ストラビモン)
ザンバモンを引きつける役を申し出たモジャモンに。
モジャモンが長老、またはリーダーとして欠くべからざる人物であることがわかるセリフです。
上記の通り、ヤマトが肩代わりすることでこのリスクは回避されました。
「おれはやる…!」
「あの夢の意味、わかってきた!」(ガルルモン)
朽ち果てた封印の剣「黄獣偃月刀」を見て。
やるぜ♪ オレは♪ お前とやるーぜー♪(突然の激走ルーベンカイザー)
「やると決めたらやる。それが俺たちさ」(ヤマト)
上のちょっと後、ストラビモンに「怖くないのか」と聞かれて。
なかなか言いますね。
「…わかったよ。
信じ合う力、恐れない強さ。剣士の魂は、だから応えてくれたんだ」
「オレも…オレたちも強くなる。あんたたちのように、黄金の剣士の技……
今度はオレたちの手で!」(ストラビモン)
見事剣士の魂を顕現させ、ザンバモンの亡霊を討ち祓ったヤマトとガブモンに。
二人が見せたものは、今度は彼に受け継がれたのかもしれません。
奇跡は起こせるのだという、紛れもなき確信とともに。
★次回予告
アルゴモン系が超久々に登場。太一組にとっても視聴者にとっても最初の敵役です。
太一ではなく、アグモンの方の試練なのはひとつのポイントかもしれません。
これで出てくるのがブリッツグレイモンだったら面白いのですけど、さて……