天舞 ホウオウモン
脚本:森地夏美 演出:佐々木憲世
作画監督:Noel Añonuevo / Eugene Ayson / Joey Calangiani
総作画監督:浅沼昭弘
★あらすじ
火山島にやってきた太一組と空組。
そこでは現地のデジモンたちが火山の噴火に備え、日夜工事に励んでいました。
空の提案で、二組は工事の手伝いをすることになります。
ところが噴火の影響で崩れてきた資材から空を庇い、ピヨモンが怪我してしまいます。
空はピヨモンの分までと張り切って作業をするのですが、パートナーの身を案じるあまり
つい強く当たってしまい、大喧嘩に発展してしまいました。
そんな中、最大規模の噴火が迫ります。
逃げ遅れた者を助けようと奮闘する太一組。空も負傷したジャンクモン親方を連れ、
必死に退避を試みます。そこへ、ピヨモンが駆けつけました。
互いの信頼を取り戻した空とピヨモンは、噴火を止めようと火山の猛威に挑みます。
無謀に思われたこの挑戦でしたが、迫る溶岩を前にガルダモンが究極進化を遂げました。
その名もホウオウモン!
ホウオウモンの活躍で溶岩は食い止められ、島は平穏を取り戻しました。
しかし、紋章の手がかりらしきものは掴めないまま。
太一とアグモンはさらなる手がかりを求めて空たちと別れ、ジャンクモンとともに
温泉地へと向かうことになりました。もしや、その温泉地とは……
★全体印象
52話です。
ついにというべきか、空とピヨモンが究極進化を獲得するお話。
が、「火山の煙にまかれて墜落」という強引すぎる導入でいきなり不安にさせられます。
これ「何か分かるかもしれない、行ってみよう」じゃダメだったんでしょうか……
向かってみた方向に島があったら、自然にそうなりそうなものなんですけれど。
その後噴火対策の工事を手伝うことになるんですが、導入がアレなんで
そうしなきゃいけないという動機付けが弱いと言わざるを得ない流れ。
せっかく「調査」って柱たる名目があるのに、それが全然活かせてないという……
せめて「助けてもらったお礼もしたいし」という一言があれば違ったのでしょうけど。
あと「ご安全に」が狂ったように連発されていて頭を抱えたくなります。
ピヨモンが怪我をする流れは別におかしくはないですし、空の頑張りが
ピヨモンの分まで、と張り切りすぎているというのもわかりはするんですが、
ここへ来て突然沸点が低くなっていてこれまた頭を抱える破目になります。
なんでそこだけ突然キレやすくなってるんですか空さん。
いや、セリフ回しから無印のバードラモン回やガルダモン回を意識しているのは
すごく良くわかるんですけど、そればかりが先に立ってしまってるんですね。
例えば上記のバードラモン回はまず空とピヨモンが出会って間もない頃で、
空もまだ「こんな甘えん坊とうまくやっていけるのかしら」と不安を隠せない時期。
そこへ疲労も重なり、無邪気にじゃれつくピヨモンをつい邪険に扱ってしまうなど、
原因と結果がハッキリ示されていました。
またガルダモン回の場合は柱として「母との確執という過去」が提示されており、
それに絡んで「自分には愛情がない」と悩み、仲間と距離を取っていた頃の話。
しかし負傷したピヨモンを案じて止めようとする自分の行動が母と同じだと気づき、
愛されていたのだと悟って愛情の紋章を輝かせるという流れでした。
しかもこの話をやるために4話も前から仕込みをしており、ガルダモン自体も
皆を守って危機を乗り切るという破格の待遇をもらっています。
当面のボスであるヴァンデモンとの緒戦もあり、完全体ラッシュ第一期の
トリを飾るに相応しい回だったと言えるでしょう。鳥だけに。
しかしこの回ではこれらの流れを無視したような雑なオマージュをしており、
空が突然キレやすくなったように見えてしまっているのはそのせいです。
無印と同じことをしろだなんて言いませんし、違ってても面白いといえるのなら
「別物だけどこれはこれでいいじゃん」って言いますよ。言いたいですよ。
こんな中途半端なことをするぐらいなら、最初からやらないほうがマシってものです。
44話とまるっきり同じ構図なんですね。やりたいことだけを先走らせてしまって、
そこに至るまでを地均ししてない。これで「ニヤリとする」のは無理ってものですぞ。
これで空の進化回は個人的に全部ハズレ、ってことになってしまいました。
無印の方ではどっちの進化回も大好きだっただけに、涙なくしては語れぬ惨状です。
あげくの果てにホウオウモンの初陣相手がデジモンですらないって、何の嫌がらせでしょう。
脚本は44話を書いてた森地夏美さんです。ヘンに納得しちゃいました。
作画・演出も特筆するほどのものはなく、再見性は低いエピソードと言わざるを得ません。
★キャラなど個別印象
・空
という感じで脚本の都合に振り回され、人格が歪められたようにさえ見えてしまってます。
迷うことなく飛び降りたり、自らの身を顧みずスナイモンに飛びついたりしていた
無駄にメンタルの強い戦闘民族なキャラ付けにされてた本作の彼女と同一とは思えません。
そりゃそうですよ。無印要素が実は全然ないのにここだけ無印要素ねじ込んだのだから。
しかもメンタルの揺らぎが小さく、でもその強さをことさらにアピールする程でもなく
すぐに陰が薄くなってしまうところへ持ってきての突然のコレですからなおのことでしょう。
もともと空は誰かのサポートに回りがちで、発言も慎重なものが多い人物でした。
:ではそこをなんとかして「太一やヤマトと肩を並べて前に出る強い女の子」というか
「姐御肌」にしようとしたのでしょうが、残念ながらこれは失敗だったと結論づけるしかなさそうです。
そもそも空のいいところってむしろ「皆をサポートすることで存在感を出すところ」だったはず。
その要素をほうり捨てるのなら、代わりになる何かを用意しなければならなかったと思うんですが
そこで太一やヤマトと張り合わせようというのはあまりに無謀だったと言うしかありません。
強化系なのに具現化系と操作系の能力で勝負するようなものです(もっとわかりやすい説明をしろ)。
たぶん、:で造形的に一番ワリを食った人物でしょう。
最後の進化回がこの有様に終わった以上、もはや望みは絶たれたと言わざるを得ないかもしれません。
望みなどだいぶ前からとうに消えていた気もしますが。
・ピヨモン
半ギレに対して全ギレで返し、でもすぐに思い直してました。
突然始めて突然元に戻すもんだから、見てる方としては全くついていけません。
何の仕込みもなしにこういうことをすると本当に薄っぺらに見えてしまうものですね。
そもそもの話、このレベルの軋轢ならば無印じゃ成熟期と完全体の時点で通っています。
それを究極体進化くんだりに至ってやり始めるというのは厳しい表現を使うのなら
今ごろそんなことしてんの? というやつです。
無論、本作の空とピヨモンがこんなふうに喧嘩をするのは初めてだったのだから
それは別にいいではないか、という考え方もあるでしょう。
でもそれって、単に今までパートナー同士の関係性でドラマを作ってこなかったってことで
単にそのツケが回ってきただけってことになるんじゃないでしょうか?
本来ならパートナー同士の間柄はほぼ完成しており、最後の仕上げにかかる段階のはずです。
この期に及んでこんなことをさせるぐらいなら、せめてガルダモン回でやっとくべきでしたよ。
もはや何もかも手遅れと言うしかないですが。
・ホウオウモン
ガルダモンがさらに進化を遂げた究極体。空のパートナーとしてはTV初登場。
様々な鳥系デジモンの登場にもかかわらず、存在感を維持し続けている古株です。
が、相手はまさかのデジモンですらない自然現象。
ガルダモンではどうしようもなかったあの噴火を鎮めたのは確かにすごい、のですが
戦ってナンボのデジモン界隈で初陣がコレってのは本当にどうかと思いますよ。
進化回でさえなければまあ、そういうのもあっていいかなって言えるんですけどね……
あと噴火の鎮め方が斜め上、いや斜め下で、何が起きてるのかさっぱりわかりませんでした。
もう二度と噴火は起きないのか、一時的に鎮めた形なのかさえわからない状態ですし。
ちょっと投げっぱなしすぎるのでは…?
・太一組
空組メインとはいえ、彼女らの文脈的サポートを全然してくれなかった方々。
張り切りすぎの空を「何を焦っているんだ」と横から補強するというわけでもないし、
空の提案にも二つ返事で乗るだけだし、あげくの果てには空組が噴火を止めようというのに
それ以上特になんもせず見てるだけでした。お前らもなんかやれよ。
ぶっちゃけこの回については君らいる意味あんの??レベルでした。
何のためにあっちこっち行き来させるお膳立てをしたのやら……
・光子郎組
ちょっとだけ登場。まだデータ復旧に手間取ってるようです。
復旧した際に何かが起こる、という布石ですね。敵の襲撃もあるでしょうし、
究極進化も関わってくるのかも……
・ジャンクモン
火山島で暮らすデジモンたちのリーダーというか「親方」です。こう見えて成長期。
自慢の葉で資材を切り分け、背中の大砲を使って高いところへ効率よく渡してゆくなど
高い建築スキルを持っているほか、長年の勘で大噴火の予兆を素早く察知できます。
現地住民たちがある程度安心して暮らせるのは、彼の能力によるところが大きいでしょう。
性格的にはざっくばらんで歯に絹を着せぬ物言いをしますが、もちろん悪意があるわけではなく
標語の連発はまあ置いといて、今回については彼の言動が一番マトモです。
この回ゲストの印象がそこまで悪いわけじゃないけど、それ以前に柱がガタガタなんだよな……
後半に火山弾を受けて負傷しますが、ホウオウモンのおかげでそれは快癒した模様。
ただ日頃の疲れまでは解消できてないらしく、太一を温泉に誘って同行する運びとなりました。
予告からすると次回も出番がありそうですね。
中の人は山口勝平さん。人外から探偵、怪盗までこなす言わずと知れた個性派ベテラン声優です。
この声だけで存在感を得ているのはさすがと言うべきでしょう。
デジモンシリーズにはエカキモン以来の出演ですね。
・メカノリモン
太一組と空組を乗せて火山島に差し掛かりましたが、煙にまかれて二機とも不時着、
危ういところを、乗員ともどもジャンクモンたちに助けられるという経緯を辿ってます。
その後回収はされたようですが、忘れ去られたかのように登場しなくなりました。
そのあげく、ラストカットでは空が乗っていません。今回だけ見ると完全な乗り捨て。
…いや、次回できっと温泉への移動の足として使用されるはずです。
そうでなければちょっと不憫すぎる扱いですぞ。彼らが何をしたっていうのですか。
・モブの皆さん
ジャンクモンを親方と仰いで働いてる方々。
カメモン、マッシュモン、フローラモン、バコモンで構成されています。
幼年期のカプリモンとカッチンモンの姿もありました。
ちなみに、太一たちのものと同じヘルメットは誰も被ってなかったりします。
じゃあ、そのヘルメットは誰のためのものだったんだ……??
形は同じだし、ジャンクモン用の予備…?
★名(迷)セリフ
「ご安全に〜!」(モブの皆さんほか)
ジャンクモンたちの間で使われている挨拶というか標語というか、そういうものです。
現場は常に安全確保が第一、というジャンクモン業界の理念が顕れているのですが、
あまりにも連発されすぎてしまいにはイラッとしてきちゃいます。
これ以外の言動は割にマトモなんで、まだマシではあるんですけど。
「ピヨモンのためだって言ってるじゃない!」(空)
一緒に仕事をしようと、執拗なまでに食い下がるピヨモンに。
うまく言えないけど「あちゃー」となった一言です。それは地雷ワードですぞ……
「どうして、あたしのこと信じてくれないの……?
空なんて大っ嫌い!」(ピヨモン)
空に突き放すようなことを言われ、ついに感情が爆発した瞬間。
もちろん本気じゃないけど落ち着いて聞いてほしい、もう52話です。
「くだらねえことで喧嘩しやがって……」(ジャンクモン)
親方のミもフタもない一言。
私だってまさかアレであんな喧嘩になるなんて思いませんでしたよ。
「そりゃあ違うな。
俺っちがあいつらに守られてんだ。
チビたちと俺っち、どっちもお互いの仕事をきっちりやらなきゃ、
この現場はうまく回らねえ。
つまり、この壁は俺っちとチビたちの信頼で出来上がってんだ」(ジャンクモン)
上のセリフへ自己弁護のような反論をしてきた空に。
こういった考えがあるからこそ、ピヨモンと「二人で」やるように指示したわけですね。
その計らいを汲めなかったのは空で、それだけ余裕がなかったってことではあります。
「空! 大嫌いなんて言ってごめんね!
寂しかったの…… 置いてかれるみたいで……」
「私こそごめんね…ひとりで大丈夫なんて言って……」(空とピヨモン)
負傷したジャンクモンを連れ、溶岩から避難中に合流した空組のやり取りです。
互いに本意ではなかったのはハッキリしていたし、あっさりと仲直りするのは
まあそれ自体はまだ良いんですが、経緯のぶっ込み方の雑さと半端さはとうてい見逃せません。
それ抜きにしても実に周回遅れなやり取りですが。
「私たち二人一緒なら、どんなピンチも乗り越えられる…!」
「私は、ガルダモンを」
「大好きな空を」
「「信じる!」」(空とガルダモン)
究極体進化直前のやり取り。
構図的には一応「なんか本気出したらできた」なこれまでと違い、二人の進化という構図です。
相手がただの噴火というのは実に食い足りない話ですが……
ちなみにこれ、溶岩の中で話してます。
パートナーのそばにいると一種のバリアシステムが働くというのは言及されていないだけで
ほぼ明白な事実なのですが、それにしてもすごい防御力ですね。B’TXも真っ青だ。
「太一……」
「ああ…… 綺麗だな……」(太一とメタルグレイモン)
火山島の上を優雅に舞うホウオウモンを見つめながら。急にどうした君ら。
★次回予告
丈回っぽいと見せかけてゴマモンが捕まってたり、予想しづらいお話です。
てっきりヴァイクモンが出るのかと思ったら違うようですね。
あのカブキモンはゲストなのか、それとも誰かが進化するイレギュラーなのか……