完全体・襲来
脚本:十川誠志 絵コンテ:- 演出:セトウケンジ
作画監督:原憲一/井口忠一 総作画監督:仲條久美
★あらすじ
城塞の碑文を解読した結果、聖なるデジモンが「闇の勢力」に囚われていることがわかりました。
しかし次にどこを目指せばいいのかわからず、子供たちは思案にくれます。
そんなとき、折られた角の復讐に燃えるオーガモンが現れました。
さらに複数のコアドラモンが現れ、光子郎とカブテリモンが援護に駆けつけたものの危機が訪れます。
が、プライドを賭けて戦うオーガモンは仲間に攻撃を仕掛けて退がらせ、グレイモンと一騎打ちへ。
激しい格闘戦と必殺技の応酬の末、勝負はグレイモンが制したかと思われたそのとき。
突如ミサイルの雨が降り注ぎ、城塞を瓦礫の山へと変えます。
地響きとともに現れたのは、メタルティラノモンでした。成熟期がさらに進化を遂げ、より完全となった
完全体デジモンです。その巨体は用済みとばかりにオーガモンを踏み潰し、グレイモンへ迫ってきました。
果敢に立ち向かってゆくグレイモンですが、まるで相手になりません。
そのとき斃れたオーガモンが立ち上がり、必殺技で道を示しました。
切り開いた方角の先に、聖なるデジモンが囚われているというのです。
意外なその行動に太一たちが驚く間もなく、オーガモンはメタルティラノモンへ特攻を仕掛け……
★全体印象
9話です。
タイトル通りに完全体であるメタルティラノモンが現れ、圧倒的強さを見せつけるお話です。
太一とヤマト、光子郎はそのヤバさを認識してるはずなんですが、完全体という概念を頭に入れた上で
肌で感じるのは初めてになるでしょうか。他のメンバーに関しては言うまでもありません。
ただし内容的にはむしろオーガモンが主体であり、悪役なりのプライドの高さを示しています。
子供達側は太一以外の印象が薄めで、場面も動いてないので語り要素はそれほど多岐じゃありません。
当面のボスと思われるデビモンのセリフがあるなど、そのあたりの動きはあります。
今回も戦闘は力を入れて描かれており、グレイモン対オーガモンでは激しい格闘戦を楽しめます。
激しすぎてたまにドラゴンボールみたいになってましたが、それもご愛嬌でしょう。
この場面が激しいほど、続くメタルティラノモンの恐ろしさが際立つというものです。
脚本は十川誠志さん。90年代から活躍しているベテラン脚本家のひとりです。
個人的には「東京ミュウミュウ」シリーズ構成としての印象が強いですね。
ところでこの人の名前、「とがわ せいじ」じゃなく「そご まさし」って読むんですね。
演出は5話絵コンテのセトウケンジさんが再登板。作監は連名です。
原憲一さんは長らく「遊戯王」に参加しており「ARC-V」では事実上の総作監だったのだとか。
井口忠一さんは1970年から活動してる超ベテランで、携わった作品は数知れず。
「宇宙魔神ダイケンゴー」のキャラ設定にも関わってたみたいですね。
最近はぎゃろっぷでの仕事が多かったそうなので、そういうことなんでしょう。
で、総作監には浅沼さんの代わりに仲條久美さんが就いています。
理由は不明ですが、たまにはこういうこともあるということでしょう。
★キャラなど個別印象
・太一
タイマンを望むオーガモンの心意気を明確に感じ取っていました。
オーガモンの「誇り」発言にも反応しており、これまでの敵とは違う印象を抱くに至っています。
このため、ヤマト達には助太刀を要求せずグレイモンに託していました。
オーガモンが踏み潰された時の反応は、表現が難しいですけど一種の義憤でしょうか。
敵とはいえ堂々と戦ったのに、仮にも味方なのに、その扱いはなんだ! という。
あそこまで激しくはないけど、Vテイマーの「ネオー! きさまーッ!」を思い出しました。
あのとき始末されてたのは、よりによってメタルグレイモンでしたが……
メタルティラノモンの脅威に立ち向かうため、次回には早くも完全体進化を成し遂げるようですね。
今回は全員が究極進化するっぽいし、迷ったり暗黒進化したりする暇はなさそうですな。
・アグモン→グレイモン
太一とだいたい同じ感覚で戦ってたと思われますが、リアクションは譲っていました。
またメタルティラノモンとの戦いで一瞬目が青くなり、完全体進化への布石が打たれてます。
オーガモンとの戦いにおいては、獣ではあり得ない心得のある格闘と獣っぽさがミックスされた
絶妙な動きを見せてくれてます。特に、尻尾と噛みつきを多用してくれているのがいいですね。
取り回し悪げなトライデントアームの完全体や、獣っぽさから離れてる究極体ではできない動きです。
動きすぎてもはや違和感すらあるレベルですが、本作では最初っからこうですね。
オーガモンとは終始やや優勢に戦ってましたが、メタルティラノモンには秒殺されています。
同じ成熟期なら圧倒できる彼でも手が出ないのが完全体。その恐ろしさが改めて浮き彫られました。
・ヤマト組
コアドラモン相手に進化はしましたが、ちょっと戦ったのみで見守りに徹していました。
ヤマトは子供たちの中で、ただひとり具体的な行動指針を打ち出してます。場慣れと言うべきなのかな。
あとガブモンが妙にデジモンの名前に詳しい扱いなのはなんでなんでしょう。
・光子郎組
やっとのことで合流しましたが、長旅でテントモンが疲れすぎていて開幕メガブラスターが限度でした。
フラグ丸出しな光子郎のセリフ通り、後半途中から大変な事態になります。
・空組、ミミ組、丈組
今回は特筆すべきほどのことはあまりしていません。
オーガモンがグレイモンとの一騎打ちにこだわったのもあって、基本的に見てるだけでした。
そんな中、オーガモンが楽しんでいることに言及したのがミミなのはポイントかもです。
・タケル/ヒカリ
今回も二人揃って出番なし。
・オーガモン
今までで一番しゃべってました。
無印のレオモンみたいに、操られてたせいで片言になってたのかと思ったらあれが素っぽいです。
明確に自分の意思で、闇の勢力に与していたのですね。まあ無印でもそうだったから今さらですが。
口数が少ないぶんだけ小物っぽさは減り、代わりに戦士としてのプライドが前に出てました。
もともとオーガモンというデジモンは、自分より強い相手にも敢えて挑むほどに好戦的です。
愛用の骨棍棒は完全体であるスカルグレイモンを狩った時の戦利品とも言われていますから、
レオモンが未登場な以上グレイモンと因縁を結ぶのは必然だったのかもしれません。
闇の勢力についていたのはまあ、どう考えても光の側につくのは柄じゃないというのもあるし
より多くの戦いを求めて、といったところでしょう。
だから闇の勢力への忠誠より自分のプライドが上にくるし、コアドラモンの加勢も
スイッチが入った状態の本人からすればノイズにすぎないのだと思います。
必要とあれば6話みたいな二面作戦も使うというだけの話で。
最後に子供たちへ道を示すようなことをしたのはアレも誇りというか「敬意」なのでしょうね。
気づいていたはずです。途中で横槍は入ったが、あのままなら自分は負けていたと。
自分を破るほど強く、また誇りをかけた戦いに応じる度量を持った相手への敬意として。
事実ミミの指摘通り、ただ純粋にグレイモンとの勝負を楽しんでいたようにも見えました。
あのまま敗れていても、負けを認めてやはり道を示していたのではないかと思います。
あるいは最初からそうするつもりだったのかもしれません。負ける気などはないにしても。
今回でいったん退場っぽいのですが、あの描写だけだと生死不明にも見えます。
シリーズ後半でタイタモンとして復帰してくるのではないか、と期待する声も見かけますね。
・コアドラモン(緑)
オーガモンとグレイモンの戦いへ割り込んでくるように多数が現れ、攻撃してきました。
その数と口からの速射レーザーのようなブレスで子供たちの虚を衝き、窮地へ追いやっています。
カブテリモンが乱入したことで一瞬押し込まれましたが、すぐに態勢を立て直してきました。
三体が連携して、かなり強力なレーザーを撃ち出すこともできるようです。
しかし、オーガモンが「勝負の邪魔をするな」とばかりに放った覇王拳を受けて退いています。
このとき光子郎は妙にあっさり退がったことを訝しがってましたが、その予感は的中しました。
彼らはきっと知っていたのです。自分たちはただの先鋒であり、本命は後からやってくることを。
・メタルティラノモン
グレイモン対オーガモンの決着がつこうとした瞬間、多数のミサイルとともに現れた完全体。
たったそれだけで城塞を瓦礫の山と化し、両者の戦いを強制中断させる破壊力を見せつけました。
前回のダークティラノモンとは結局とくに関係ないみたいです。
体躯はグレイモンをも遥かに上回り、パワーや防御力もこれに見合ったもの。
歩みはゆっくりとしたものですが、メガフレイムでも前進を食い止めることさえできません。
完全体と成熟期との差をありありと理解させられる場面でしょう。
アルゴモン究極体とオメガモンを見たあとなんで「これが完全体…」って言われても困る面は
確かにあるんですけど、それでもその脅威は充分に演出されていました。
オメガモンにしたって自在に出せるというわけじゃないのだし。
メタルティラノモンは無印にも02にも登場しておらず、確かテイマーズ映画が映像デビューです。
しかも、オメガモンに通行ついでとばかりにぶった斬られて退場という不遇すぎる役回りで。
メインの敵役は「クロスウォーズ」の55話まで待たないといけませんでした。
仲間になったのはいいとして、なぜかクロスアップはしてもらえなかったのですが……
今回の中ボスとしての扱いは、今までの経緯からすると破格に近いものでしょう。
しかも次回でメタルグレイモンとのカードが実現しています。
というか、これをやりたいがためにメタルティラノモンが選出されたようなものかも。
ちなみに完全体の登場自体は無印も早く、5話のアンドロモンが最初です。
まともに戦っても敵わない相手ということで、黒い歯車を狙って正気に戻す形を取っており
完全体の格をうまく保っていた記憶があります。
6話でサボテンと殴り合ってたクマ? アレは… アレは、ええっと……
・デビモン
前半でオーガモンに最後通告を出していました。
姿はハッキリ描写されてませんが、まず間違いないでしょう。
成熟期ですけど、格上であるメタルティラノモンとの関係性はよくわかりません。
まあ、デビモンとしての姿が全てではないと捉えればまだ上があるのかもしれませんね。
一応ネオデビモンという上位形態もあるし、無印でも巨大化という手段を使ったら
エンジェモン以外は手が出せないほど強くなりましたから。
声はPSP版と同じく置鮎龍太郎さんです。今はまだ「謎の声」扱い。
ゆったりと語りかけるような節回しは多分に塩沢版を意識したもので、大物感に一役買ってました。
サウンドバードモンたちは、彼の使い魔のような存在なのでしょう。
何体か集まることで、遠くからでも声や映像を伝えられるようですね。
・聖なるデジモン
闇の勢力に囚われている、とのこと。
問題はどういう状態で囚われているのか、ですが……
無印のテイルモンはその素性を知られぬままヴァンデモンの部下にされてましたが、果たして。
★名(迷)セリフ
「この要塞はヤツらにとって、大陸への侵入者を排除するための拠点にすぎないだろう。
どこかに本拠地があるはず… 聖なるデジモンが捕まっているとすれば、おそらくそこに…
そして連中はオレたちを狙って、必ずまた現れる。
なら、そいつから聞き出すまでだ」(ヤマト)
この場で出た中ではもっとも場慣れというか、現実的な意見です。
彼、どれぐらい前からデジタルワールドで活動してたんでしょうね?
「オレの、角… おまえたち、折った… ツノは、誇り…!」(オーガモン)
「誇り…」(太一)
「勝負しろ! 勝って、誇り… 取り戻す!」(オーガモン)
一部略。闇の勢力からの命令ではなく、己のプライドを賭けた再挑戦というわけです。
そのことは、太一もアグモンもどこか感じ取っていたようでした。
「あ、ま〜た〜せ〜た〜な〜!」(カブテリモン)
光子郎を連れて合流してきた際に。なぜ歌舞伎調?
「オレは… 捨てられた、のだな…」(オーガモン)
メタルティラノモンの巨体に踏みつけられ、満身創痍で。
角どころか全身の突起がバキバキに折れ、左腕も右目もきかないありさまです。
それでも闘志は衰えず、かつ自身の運命をどこか受け入れているような口ぶりでした。
「…行け。
聖なるデジモンは、あの先だ… まっすぐ行け… まっすぐに、な……」(オーガモン)
覇王拳で瓦礫を吹き飛ばし、道とその方向を子供たちに示して。
太一へ語りかける言葉は道のみならず「その生き方を曲げるなよ」と言っているかのようでした。
直後、自らの誇りをかけて彼は己が認めた相手を逃がすため、その命を懸けることになります。
★次回予告
なおも追いすがるメタルティラノモンに対し、殿を買って出る太一とアグモン。
激闘の中、早くもあの完全体が登場するようです。無印より10話も早いとは。
やはり暗黒進化するヒマはなさそうですね……
無印と違うことをするというのなら、別の誰かが暴走したりするのかもしれませんが。