シャッコウモンの涙

脚本:十川誠志 絵コンテ / 演出:佐々木憲世

作画監督:Noel Añonuevo / Joey Calangian / Eugene Ayson

総作画監督:浅沼昭弘

★あらすじ

紋章の導きに従ってとある土地を訪れた太一は、農業をやっているネーモン達に出逢います。
そこには空とピヨモンの姿もありました。集まっていたのは皆、彼女と関わりのある者たち。
戦うだけが選ばれし子供の使命ではない、と空は語ります。

太一とグレイモンが加わり、大きな古木を撤去する大作業が行われます。
すると、その下から突如巨大なデジモンが現れます。
そのデジモンこそ守り神と言われる伝説の存在、シャッコウモンでした。
ところがシャッコウモンは目から光を放ち、一帯に大きな被害をもたらしてしまいます。

荒ぶる守護神は日没とともに動きを止目ましたが、暴走の理由は何なのか。
シャッコウモンを封印していた遺跡で、空とピヨモンは残留思念とでも呼ぶべき
過去の記憶に触れます。かつての戦いで、シャッコウモンは確かにこの地の守護者でした。

しかし守るべき対象であるキュピモン達は、もはやこれまでと判断。
シャッコウモンを封印し、目覚めた時には平和な未来が訪れていることを願って
自分たちは滅びることを選んだのでした。
けれどシャッコウモンは、まだ戦いが続いていると思い込んでいたのです。

空はシャッコウモンを止めるべく、太一とウォーグレイモンを制して究極進化。
スターライトエクスプロージョンによって、シャッコウモンを鎮めてのけるのでした。
その行動は同時に、彼女達がついに紋章の謎へと至った証でもあったのです。

かくして、太一とともに再び旅立つ空。決戦の日は近い──
 
 
 
★全体印象
 
62話です。52話以来となる空組回。

メインキャラが多いわけだし、担当回の間が空くのはある程度当然ではあります。
しかし空組の場合、なんと登場自体が10話ぶりなんですね。なんじゃこりゃ。

長期連載の少年漫画やそもそもの放映スパンが長いタイプの作品(ポケモンやら
3年単位が基本と思われる遊戯王など)ならばまだわかるんですが、
5クールとはいえ決して話数に余裕があるわけじゃない作品でこれはどうなんでしょう。

アフレコ事情など色々あるのかなぁと考えたことはあるんですが、その方向だと
他の東映作品で大人数アフレコ(いわゆる感染対策に則ったものでしょうけど)を
やっていることへの説明がつかないので、それはあんまり関係がないのでしょうか……
知らんけど。

閑話休題。
あらすじの通り、恐ろしい存在と思われたシャッコウモンの真実を知り、これを鎮めて
「戦う以外にもできることがある」と示し、やっと愛情の紋章が顕れたわけですが、
経緯だけ見るとこれ、困ったことに彼女たちでなくても成立しそうな流れなんですよね。
ちょっと工夫すれば、状況的には58話のヒカリ組と取っ替えた方がまだ自然ですらある。
詳しくは後述。

いずれにしても、相変わらずラストまであと4話という段階でやるお話とは思えません。
なんだかRPGのクリア後展開みたい。ボスもある意味裏ボスっぽい設定だし。

最後で一気に話を動かすという形式は前番組である鬼太郎もそうだったんですが、
アレは最初からそういう形だし定期的に山場は持ってきており、2年目の大詰めにしても
そこへ至るまでの仕込みはある程度ちゃんとやっていました。
何より原作の時点で1話完結色が強い作風なんで、あまり比較対象にはならないかもしれません。
あっちはあっちで露悪的すぎたりベアードがアレだったり別の問題はあるんですが話を戻します。

とにかく本作はいったい何があったんだってぐらい構成が行き当たりばったりで、
平和の中にもじわじわ脅威が迫ってくるような縦軸の盛り上げがまるでできていないのです。
無印のラスボスも登場そのものは唐突でしたが、その分ダークマスターズが盛り上げていたし
時折ユルさを交えつつも過酷な状況を描いていたではないですか。

やはり、シリーズを通しての悪役が不在というのはでかいんだよなぁ……
悪役というのはただ強かったりデカかったりするだけじゃ大して意味がないんですよ。
もっとこう、主役達に「絶対に勝てよ!頼むぜ!」と思わせてくれる「悪さ」がないと……
いやまあ作風にもよるし、:ではそういう形を取らなかっただけのこと、とも言えるのですが
その割にはバトル偏重で人物の掘り下げが浅いという……

脚本は十川さん。5クール目はリベリモン回以外こりゃ不完全燃焼かな。
作画についてもこれはというほどの見どころはありません。
いわゆる空回としての総決算にあたるわけなんですが、どうにもピンとこない仕上がりでした。

そもそも空回自体が大半ハズ(後略
 
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・空組

 遺跡からの残留思念にフィードバックを受け、もろともにぶっ倒れるという芸当をかました方々。
 媒介物があるとはいえ、そーゆーのはむしろヒカリの仕事なような。

 空はキュピモンたちが託した想いを受け取り、無意識のうちに涙を流していました。
 たとえ「どうしてわかってくれないの」と言われようとも「我が子」が未来を生きることを望み、
 その身を捧げるようにして消えたキュピモンたちのあり方に彼女が感じたものは
 少なくとも「哀しさ」だけではなかったということなのでしょう。
 まあ、そこいらはキュピモンたちの項目に譲ります。

 ただキュピモンとシャッコウモンのそーゆー疑似親子っぽい関係は一見してわかりづらく、
 安直と言われようが「デジタマを守る」という直接的な行動を取らせた方が
 わかりやすさは出たように思われます。知らんけど。
 ペタルドラモン案件と切り離せないなら、ヒカリと一緒にやらせたって良かったわけだし。

 「愛情の紋章」の境地に辿り着くという意味では、それでも52話より頭に入ってきた方です。
 52話は本当にアレでしたから、アレより下が来なくて良かったというところ。
 でもどうせなら溶岩なぞより、シャッコウモンを止めるためここで初の究極進化! って方が
 かなりマシな流れになったと思うんですが、いかがなものでしょう。
  
 
 
・太一組

 前回とほぼ同じく導入役として登場。以後はほぼ戦闘要員です。
 一応、空組がぶっ倒れたりしてる間にシャッコウモンの相手をしていたりするわけですが
 これも別に彼らじゃなきゃできないことってわけじゃ全然ないんですよね。
 相変わらず空組のドラマ?にはなんの寄与もしてないし。

 ただシャッコウモンは「02」でブラックウォーグレイモンと戦った経緯があるので
 そういう意味での絵面的なアレってものは一応あったのかもしれません。
 ニギミタマが一発ブレイブシールドに当たるカットは、たぶんそういうことです。

 これについても「だからどうした」ってレベルの要素なんですけどね。
 
 
 
・開拓村の皆さん

 11話に出てきたネーモン、ラブラモン、ベアモン、キャロモン達。
 13話に出てきたファンビーモン達。40話のポームモン達。それに52話のジャンクモン。
 全員が空と関わり、助けられたデジモン達ばかりです。
 中の人たちも変わってないので、今回は名のある声優さんがたが多いです。

 このうち、ネーモン達とファンビーモン達はクラウド大陸からの移住者です。
 ポームモン達と合流して空のことで意気投合したのか、小さなコミュニティを結成して
 村を築き、野菜を育てて食料確保に勤しんでいました。(ジャンクモンは出向ですが)
 ネーモン曰く、平和が戻ったからこそできることだそうです。前よりはマシになったわけか。

 彼らを放っておけず手を差し伸べたことで、小さくても懸命な育みが生まれた。
 自分で言っていたように、そのことを確かめ彼らの健やかさを護りたいと感じ、
 シャッコウモンをあるいは我が子のように愛しんだキュピモン達の想いを受けたことで
 空はようやく愛情の紋章の示すものにたどり着いた…のかもしれません。

 まあ本編中で紋章の意味なんてまだ全然語られてないんですけど。
 次回でようやく語りそうに見えなくもないですが、あまりにも遅すぎる。
 
 
 
・シャッコウモン

 巨大な突然変異型の完全体デジモン。
 完全体の範疇を遥かに超えるレベルにあり、メタルグレイモンとガルダモン二体がかりでも
 抑えることは不可能、攻撃を逸らすだけで精一杯でした。
 ウォーグレイモンですら迂闊に踏み込めないところをみると、その強さは相当のものです。
 夜になると活動停止するという、半ばマシーン型のような描写もありました。

「02」ファンにはお馴染み、ジョグレス完全体の一体にして最後に登場した存在でもあります。
 その頃から破格の能力を備えており、ブラックウォーグレイモンの技を無効化したばかりか
 攻撃力でもその装甲を傷つけるほどのものを発揮しています。
 ですので、今回のこの強さも一応ある程度納得はいくんですよね。
 02を見てないとわからないことではあるんですけど。

 本作の設定では一帯の守り神として戦っていたのですが、その顛末は書いた通り。
 予告の印象ではなんらかの理由で制御を失い、それを元に戻すお話かと思ったのですが
 本人はいたって正気であり、ただ戦いが続いていると思い込んでいるという形でした。

 いや、本当は気づいていたのかもしれません。
 けれどもそれを認められずに、封印される直前の行動を繰り返していた可能性もあります。
 キュピモン達はどこかに逃げただけで、自分が健在だとわかれば戻ってくるのではないかと。
 知能は高いけど、ある意味純粋で子供っぽい性格をしていると捉えられそうです。
 幼年期でありながら真逆の雰囲気を漂わせていたキュピモン達とは対照的に。

 その様子が、空にはあるいは意地を張る幼い子供に見えたのかもしれません。
 そしてシャッコウモンからは、ホウオウモンの聖なる力がキュピモンたちを思い起こさせ
 鎮静するとともに、キュピモン達はやっぱりもういないのだと心で悟ったのでしょう。
 あの涙はそういうことなんだと思います。

 暴れるのをやめた後は村に残り、旅立つ空たちを見送っています。
 今度はネーモン達の村を守る役につき、守り手としての使命を全うするのでしょうか。
 ハッキリ語られていませんし、本人次第ではあるのですけど。
 
 
 
・キュピモン / プットモン

 太古の昔、ネーモン村の場所で暮らしていた幼年期デジモンたち。
 かつての戦いで闇の勢力の執拗な攻撃に遭い、守護者であるシャッコウモンを封印して
 滅びの道を選んだ悲劇の経緯が遺跡に記されていました。
 あるいは遺跡自体が一種の装置であり、碑文は後から追加したのかもしれませんが。

 代表と思しきキュピモンは、幼年期でありながら成熟した雰囲気を漂わせていました。
 彼ら?自身もまた、聖なるデジモンとなるべく現れた者たちなのかもしれません。
 闇の勢力がしつこく攻撃してきたのは「芽を摘む」ためだったと考えられそうです。

 それにしても、守ってくれているものを自分たちで封印するというのは自殺行為です。
 実際、最後までシャッコウモンと共に戦う道も無くはなかったことでしょう。

 そうしなかったのは「どのみち滅びてしまうのなら、せめてこの子だけでも」
 という親心にも似た何かが働いたからなのかもしれません。
 「天からの授かりもの」という意味深なセリフは、一種の暗喩でしょうか。
 キュピモン達はシャッコウモンと出逢い、巨体に似合わず純粋で頑是のないそのあり方を
 好ましく思い、皆で可愛がっていたのでしょう。我が子を愛しむ親のように。

 そんな「新しい世界で生きてくれ」という願いが空に伝わり、そして空達を通して
 キュピモン達の想いがシャッコウモンに届いた、ということなのでしょう。
 それでたとえ辛い思いを味わわせるとしても「我が子」を生かそうとするのが親です。

 可愛がってもらい、命をかけても守ろうとした対象はもういない。
 けれど、それでも生きてほしい。そして願わくば、平和な世の中に。
 シャッコウモンがその願いを胸にふたたび力を振るう日は、そう遠くないのかもしれません。

 キュピモンの中の人は菊池こころさんでした。大門知香とスパロウモン、ガッチモンの人ですね。
 この中では知香に近い演技でしょうか。
 
 
 
・デビドラモン / イビルモン

 かつてキュピモンたちを襲った闇の勢力の尖兵。
 一体一体はとうていシャッコウモンの相手ではないのでしょうが、数の暴力で押していました。
 あれではシャッコウモン自身はともかく、キュピモンたちは時間の問題だったでしょう。
 
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「やってるな〜、空!」(太一)
 
 ネーモン村で野良仕事に精を出す空とピヨモンに。やってるな〜、じゃねえんですよ。
 とうてい今回を入れてあと5話でクライマックスとは思えない、ノンビリしたセリフです。
 ある意味通常運転ともいえますが。
 
 
「私たち選ばれし子供達の役目も、戦うだけとは限らないじゃない?」(空)
 
 デジヴァイスの導きでねーモン村にたどり着いたことを語りながら。
 実際、究極進化を遂げたのは敵と戦うためではないのでその意味では布石が置かれてます。
 仮にも究極進化がそれでいいのかという問題は置いといて。
 
 
「なにかと… 戦ってるのか…?」(太一)
 
 シャッコウモンが四方八方に「アラミタマ」を放つのを見て。
 そしてこの無駄に高い洞察力である。
 
 
「冗談じゃない! あんなもの、ありがた〜くもなんともないわ!」(ネーモン)
 
 遺跡で、シャッコウモンこそがこの地に伝わるありがたーいデジモンと確認しての一言です。
 セリフ回しと表情がツボだったんで、ゲストキャラから一献。
 
 
「シャッコウモン……
 あなたは一生懸命、私たちを…この土地を守ってくれた…
 でも、これ以上は守りきれない……
 私たちはこのまま滅ぶでしょう……これ以上、あなたが傷つくことはありません。
 私たちはあなたをこの地に封印します…!
 ふたたびあなたが目覚めるときに、どうか世の中が平和でありますように……
 今まで…ありがとう……さようなら……」(キュピモン)

 
 空とピヨモンに夢として訪れた過去の記憶より。やろうと思えば意思ひとつで封印可能なのですね。

 たとえ結果として悲しませることになっても、せめてこの子だけは生かしたい。
 我が身を犠牲にしてでも誰かを守り、未来へと送り出してゆく……
 それはきっと、人が「愛」と呼ぶものだったのです。

 言い聞かせるような口調も割とわかりやすい。やはり可愛がられていたのでしょう。
 守られるばかりではなく、癒しと慈しみを与えていたのでしょう。
 
 
「私たちが今度こそ、あなたを本当の守り神にしてみせる!」(空)
 
 そんな思いに気づかず、あるいは認められずに暴れ続けるシャッコウモン。
 このままではネーモンが言っていた通り、逆に禍をもたらすモノになってしまいます。
 キュピモンたちの想いを受け止めた自分たちにしか、それを止めることはできない。
 そんな確信に満ちたセリフです。

 この後スターライトエクスプロージョンがまるで魂を天へ還すようにして
 キュピモンたちの姿と想いをシャッコウモンの前に著し(成仏?)、すべてを悟らせます。
 彼は涙とともに、両膝を落とすようにして止まりました。

 聖なる存在でもあるシャッコウモンには害をもたらさなかった、ってことでしょうか。
 つらい気持ちを自覚はさせたようですけれど。
 
 
「戦うだけが、選ばれし子供の役目じゃない、か……」(太一)
 
 シャッコウモンを止めてみせた空とホウオウモンを見上げながら。
 幼馴染ポジションならそこは「空らしいな……」って付けてほしいっす。
 
 
「私たち、これに導かれて来たけれど……
 あなたたちと再会することが、本当の目的だったのかもしれない。今は、そう思うの。
 みんなのことが大好きだから、守りたいの。巨大な破滅を止めて」(空)

 
 引き止めようとするポームモンたちに。やり取りなど一部略。
 やっぱり本作の空の紋章って「博愛」の方が近いような気がします。
 今回はちょっと違っていたけど。
 
 
 
 
★次回予告

 太一回、それもアグモン無しという状況ですがあんまり緊迫感ないのは本作らしいところ。
 気になるのはあの黄金の鳥らしき後ろ姿です。もしかしてあれ、フレイア?
 ヴァルキリモンの映像作初登場、期待してもいいってことっすか???