勇気の紋章

脚本:冨岡淳広 絵コンテ:鈴木正男 演出:鈴木真彦

作画監督:Wang Min / Zhou Jian / Liu Dong Dong /

Jiang Zhi Hui / Huang Yong Pin / Li Wei Feng /

Zhu Ya Shi / Xia Li Ping / Lu Feng / 小澤和則

総作画監督:二階堂渥志

★あらすじ

 紋章の導きに従い、太一と空がたどり着いた古城。
 足を踏み入れた途端に異常が発生し、太一はただひとり謎の光と向き合っていました。
 黄金の鳥を従えたその輝くものもまた、かつての大戦に身を投じて滅びたもののひとり。
 最後の見極めのため、太一は謎の世界へと送り込まれます。

 不気味なその場所で一匹のボタモンを助けた太一は、これを守って奮闘を続けました。
 たとえどんなに危険な状況であろうと、たとえアグモンがいなくても
 彼はボタモンを守るため、身体を張って立ち向かい続けたのです。

 迫り来るアロモン達を前に、太一がいよいよ腹を括ったとき。
 ボタモンから突如紋章の光が溢れ、巨大なグレイモンの姿を成してゆきます。
 放たれた強烈な炎は、アロモン達をまたたく間に蹴散らしてみせました。
 ボタモンは、太一の勇気そのものだったのかもしれません。

 輝けるものは破滅を止めるため「大いなる力」が必要だと語ります。
 世界の危機に際し、それはすでに二度現れたことも。
 その力の顕現のためには、人とデジモンの心の一致が大切だというのです。

 気づいたとき太一はもとの城に戻り、矢印はついに結城の紋章となりました。
 紋章の謎を追う旅は、勇気の紋章の輝きを持って終わりを告げたのです。
 果たして次に彼らを待ち受けているものは……?
 
 
 
 
★全体印象
 
63話です。最終展開を控えての太一篇。
今回にて、オメガモンの出現が二度ともラスボス絡み案件だった理由が語られました。
じゃあミレニアモンの時に出なかったのはなんでなのって事になっちゃうんですけど。

さて終盤で「パートナーに頼らない試練」を課されるというのはある意味王道ではあるし、
残り数話で成長度マックスになっている主人公がこれを的確にクリアしてゆくというのも
妥当な流れではあるんですが、大きな問題がひとつ。
肝心の太一が最初っからああいうヤツなんで、全然面白くないのです。

彼がここまで悩んだり苦しんだり、道を誤ったり悔しがったり、何もかも放り出そうとしたり
動揺したり突っ走りすぎて周りが見えなくなったり、そういう過程を経てきた上であれば
「もともと強い子だったのがさらに成長した」と見ることができると思うんですが
本作の太一はなんとどれもやってません。 完成してしまっているのです。
そのうえ完成型なりの描かれ方もされず、ただひたすら大らかで行動力があるだけ。

だから、見ず知らず(と本人は思ってるけど)のボタモンを守るため身ひとつで体を張る姿に
頼もしさではなく空虚さを感じてしまうのでしょう。人間味がなさすぎるのですから。
まさか、これほどまでに語りがいのない主人公にされてしまうとは……
思わずアグモンを呼んでしまう場面はあれど、弱音のひとつも吐かなかったし。

だいたい、こーゆーことしたいんなら太一だけにやらせちゃダメでしょう。
せめて全員に同じようなことをやらせて、全員に乗り越えさせないと。
ただでさえ、他のメンバーの見せ場に太一が割り込みまくっているというのに。

こんなことだから「太一偏重」「ゴリ押し」なんて言われるのです。
本作ではそーゆー方針だからいいんです、って言われてしまったらもう
「あっ、そうですね」と言うしかないんですけれど……ああもう。

作画スタッフはまたしてもの大所帯。
そんな中、二階堂渥志さんが総作監をやっているのは気になるポイントです。
今まではほとんど浅沼昭弘さんと仲條久美さんの持ち回りだったんですが……
「次回作」のための入れ替え時期ってやつですかね。

その他、演出に鈴木真彦さんという新顔がみられるのですがこの方については
情報が無さすぎて定かではありません。本作は割にそういうパターンが多いけど。
 
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・太一

 古城に来たと思ったら「ちょっと確かめさせてもらうわ」とばかりに異空間に飛ばされて
 パートナー無し、武器なし、おまけに守護対象ありとエクストラハードな試練を課されるも
 これを次々とクリアしていった最強メンタルの持ち主。

 いや別に「なんも苦労をせず乗り越えた」とは言いません。
 人間であるなら怖いのは当然だし、もうダメかと何度も思ったりしたでしょう。
 無事にシードラモンから逃げおおせた際には眠っていたし、緊張の糸が切れたのでしょう。
 何体ものアロモンに囲まれた際は、本当に肝が冷えたことでしょう。

 ただこれらの要素は想像こそできるものの、伝わってきたものではありません。
 伝わってこないのです。彼がどれぐらい必死に足掻いているのかが。
 これは今まで、彼のマイナス面と不足面やその克服を一切描かなかたツケのようなものでしょう。
 強すぎるってのは虚しいもんだ、って誰かが言ってましたっけ。それでも描けるものはあるけど。

 ただ本作の彼はこんな感じで序盤からほとんどブレてないし、:ではこんなヤツですと言われれば
 「まあそれはそう」って答えるしかなかったりします。好みではないけど。
 でも無印と切り離して考えれば、人物としては一貫しているのかもしれません。

 一貫しているからどうした、っていうのが個人的な見解ですが。
 
 
 
・ボタモン

 ゴブリモンに襲われていた幼年期Iのデジモン。
 間一髪で太一に助けられ、その後しばらく行動を共にしました。
 太一曰く「パートナーに初めて出会った時のことを思い出した」そうです。

 危険が迫る前に彼を起こしたり、その泡で炎を抜ける補助をしたりもしているほか
 眼前に迫ったアロモンの目を狙って泡を放ち、逃げるチャンスを作るなど
 勇敢な行動も見せており、ただ守られるだけではありません。

 それもそのはずで、このデジモンそのものが太一の勇気の象徴だった感じなんですね。
 孤軍奮闘する太一を見て最初に放ったものが紋章の輝きであることと、
 その光がコロモンからアグモン、そしてグレイモンに変化したところからも明らか。
 メガフレイムを放つ場面と、一瞬太一の顔に張り付くあたりは明らかに旧作映画のオマージュ。

 アロモンたちを一掃したあとは、太一の眼前で消滅するのですがこれは消えたというより、
 太一の中に戻ったという方が正しいのかもしれません。
 ただそれは、アグモンがいてくれたからこそのものでもあって。
 「ありがとう」というセリフには、そういう意味が込められているのかもしれません。

 こんな筋立てなんで、アグモンの方の出番は知れたものです。
 太一の中でずっと繋がっていた、ってことなんでしょうけど。
 
 
 
・空組

 太一組といっしょに古城を訪れましたが、すでに紋章を輝かせている彼女たちにとっては
 本当にただの廃墟でしかないようでした。急に太一とアグモンの姿が見えなくなったので
 探していたってところでしょうが、太一の主観ほど時間は経ってないようですね。

 というわけで、わざわざ同行している意味はあまり無い扱いでした。
 前回の太一組と立場的には逆転していますね。
 
 
 
・ゴブリモン / シードラモン / アロモン×3

 ボタモンと太一を執拗に襲ってきた連中。
 ゴブリモンは幾度も、シードラモンは4話、アロモンは29話と30話で戦った相手ですね。

 これまでからすれば手強い相手とはいえませんが、それはアグモンがそばにいたらの話。
 パートナーのいない太一にとっては、成長期のゴブリモンですら手に余るようです。
 アロモン3体に至っては、気合と知恵だけじゃどうにもならない相手。

 それでも怯まずに立ち向かったとき、ボタモンをトリガーに勇気の紋章が輝きました。
 かなりハードルの高い試練でしたが、黄金の鳥がずっと見ていたことを考え合わせると
 これぐらいは突破できるはず、と見込んでのことではあるようです。

 力押しなぶん意地悪な引っかけなどはありませんでしたが、そういうのは光子郎向けかな。
 光子郎だったらもうちょっと気の利いた解説をしてくれたんでしょうか……
 
 
 
・輝けるもの

 古城の主だったと思われるデジモン、の残留思念的存在です。
 無理に解釈すれば根幹のプログラムだけが残り、命令を実行し続けていたような感じでしょうか。
 その行動と意図については上にあげた通り。

 巨大な破滅を防ぐためには「大いなる力」が必要だと教えてくれる存在でもあるんですが、
 なぜそこまで把握できているのかについては一切の説明がありません。
 残留思念としてずっとデジタルワールドを見守り続けてきたゆえでしょうか。

 その正体については一言も語られず、姿も詳細には彫像としてしか出てきません。
 でも、わかる人にはすぐヴァルキリモンだとわかるでしょう。なんとアニメ初登場です。
 シルフィーモンの上としてはわかりやすいし鳥要素と天使要素がうまい具合に折衷された
 良いデザインだと思うんですが、なぜか出番に恵まれませんでした。

 今回も「出た! 死んでた!」扱いで姿もむっちゃ光ってて全然確認できないなど、
 いろいろ残念ではあります。まともに活躍できる日は来るのでしょうか……

 中の人は夏樹リオさん。
 言わずと知れたホークモンのパートナー、井ノ上京の中の人でもあった方です。
 やや意外なようですが、ヴァルキリーのイメージを優先したのもあるでしょう。
 遠近さんの方はよりによってではありますが、カブキモンで使っちゃいましたしね。

 夏樹さんが最後に京を演じたのは「ディアボロモンの逆襲」と20年前になるでしょうか……
 「スーパーロボット大戦OG」のリオ・メイロンや「ファイナルファンタジーX」のルールーが
 キャラクターとしては息が長いので、そちらで記憶している方も多いかもしれません。
 
 
 
・ナイトモン

 古城の門番をつとめていたデジモン。
 門を塞ぐようにして立っていましたが、太一たちが尋ねると無言で道を開けました。
 ヴァルキリモンの使いである黄金の鳥「フレイア」に関しては礼をもって迎え入れたので、
 かつて忠臣として仕えていたのは間違いないでしょう。最後の一人かもしれない。

 使命を果たす日を待ち続ける主人に倣い、ずっとこの城で待ち続けていたのでしょうか。
 ミレニアモンが世界を揺るがせていた間もずっと。
 
 
 
・モブの皆さん

 かつての大戦イメージの中、メインどころに混じってチラホラ出てた方々。
 ナイトモンやイビルモンらのほか複数のガルフモン、ギガスモン、ガイオウモンの姿が見えます。
 どいつがどの陣営に属していたかは不明。また、中には種族の判別が難しいものもいました。

 いずれにせよ、現在より大規模で熾烈な戦いだったことは間違いないようです。
 そんな中から現れたのが「時空を超えた存在」とされる大いなる力であり、
 その象徴がオメガモンだったということみたいですね。
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「我々は知らねばならない。
 示せ、そなたが何者かを。そこに答えはある」(輝けるもの)

 
 太一を試練に引っ張り込む際のセリフ。
 思わせぶりな言い回しですが、現実世界の幻を見せたりするような類ではありませんでした。
 ある意味原点回帰をさせたかった感じではあるのですけど。

 旧作的に言えば「お前の魂の良いところを示せ」ってところでしょうか。
 
 
「さっきの泡…オレに撃ってくれ!」(太一)
 
 背後の炎をくぐり抜けるため、咄嗟の判断でボタモンに。
 泡をプロテクターのようにまとって、火からみを守ろうというわけですね。

 なるほど泡状ならば! 溶岩と体の間に空気の層ができ、熱はシャットアウト!
 しかも表面が燃えても、次から次へと泡を補充してゆけば炎をくぐるぐらいはできる!
 のでしょう! 知らんけど!
 
 
「来い! オレは絶対負けない!
 ここで終わって…たまるかぁっ!」(太一)

 
 パートナー無しの状態で、それでもアロモン3体へ叩きつけた啖呵。
 その瞬間に他メンバーの姿が映る演出はこれまでの戦いや仲間たちの奮闘、
 その多くを見届けてきた彼の来歴というものが結実した瞬間……なのかもしれません。

 それはそれとして、なんで彼にばっかりこーゆーことをさせるんでしょう。
 OPで彼とアグモンが完全なメインだったのは、そういう意図だったんですかね。
 あの時点で気づくべきだった、ってことなのか……?

 だったらED1をヤマトメインにしないでほしかったですよ。紛らわしい。
 
 
「大いなる力を起動させるカギは、心……
 人、デジモン…多くの心が願いを持てばきっと、
 迫る破滅を乗り越える…可能性に……」(輝けるもの)

 
 太一の意識を解放する間際に。
 考えてたんですが、ミレニアモンのときにオメガモンが現れなかったのって
 それが現実世界に深く関わる危機ではなかったからなのかもしれません。
 少なくともアルゴモンとニーズヘッグモンの時はそうでした。
 衛星狙撃作戦の件はそもそもヤマトがいませんし。

 とにかく、その代わりがあの元気玉ガイアフォースだったってことなのかも。
 逆に言えば、こっからは現実世界がかなり絡んでくる可能性がありますね。
 家族の皆さん方も出てない分含めていきなりガーンと登場したりするのかも……

 終盤でそんなことするとも思えませんが、一応デザインの原型はあるわけだし。
 さてどうなりますやら。
 
 
 
★次回予告

 どうやらセラフィモンが本格参戦するみたいですね。図鑑でバレバレです。
 また、PVの時点でも出ていたデスモンがついに登場するようです。
 体色は白なんで、本気モードとして黒に変化したりするのかも……
 アルゴモン(メッセンジャー)も登場する模様で、俄に決戦ムードが出てきました。

 全66話だと1週余るんですが、どっかで休止したり特別番組が入ったりするのかな?