起動 メタルガルルモン

脚本:十川誠志 絵コンテ・演出:セトウケンジ

作画監督:Noh Gil-bo / 原憲一 総作画監督:仲條久美

★あらすじ

古いサーキット場にやってきた太一たち。
そこではマッハモンというデジモンが、たったひとりで走り続けていました。
走りを愛するガブモンはマッハモンの走りに魂の叫びを感じ、ヤマトとともに
マッハモンへレースを挑みます。

ところが、レース中に突如豹変したマッハモンは攻撃を仕掛けてきました。
実はこのサーキット場でかつて繰り広げられていたのはルール無用のデスレースであり、
マッハモンはそこでチャンピオンとして君臨し続けていたのでした。

が、それだけがあの豹変の理由とは思えないヤマト組は再レースに臨みます。
果たして光子郎の調査により、マッハモンの中にもうひとつのデジモン反応が……
デジモンに寄生するデジモン、パラサイモンです。寄生対象の能力を極限まで高める代わり、
意識を次第に浸食して乗っ取ってしまうのです。

マッハモンはこいつを受け入れることでチャンピオンの座を守ってきましたが、
そのために仲間を残らず失い、虚しさのあまりパラサイモンごとの爆死を考えていました。
これを必死で止めようと体を張るワーガルルモン、そしてヤマト。

二人の友情とマッハモンを救おうという願いが、ついに究極進化を導きだします。
その名はメタルガルルモン! 圧倒的パワーがパラサイモンを打ち砕き、
さらに崖から落ちそうになったマッハモンをも救い出すのでした。

二人の友情にうたれたマッハモンは、死を思いとどまります。
夕日の中、一人と二体が揃ってゴールを果たすのでした。
 
 
 
 
★全体印象
 
45話です。
前回のエントモンに続き、ペンデュラムZからマッハモンが初登場。
しかもいきなりなかなか良い役を貰っています。他のペンZ勢に分けてあげたいぐらい。

そのマッハモンに加え、パラサイモンも登場。
なぜかスピード系のデジモンにばかり取り憑いてるのですが、今回もその例にもれません。
寄生元から引き剥がされるとヨワヨワなのもそのまま。

そしてついに、やっと、ようやくメタルガルルモンが登場しました。
正直なところ究極体とはいえ、相手がパラサイモンというのは役者不足感が否めないのですが
今回はあくまで「マッハモンを救う」ために進化を会得したところはあるので
敵の強さはそこまで問題ではないのかな、とは思います。

ただ惜しいのは、ヤマトもいろいろと事情を抱えている人物だし、そこらへんと絡めて
「過去を乗り越える」ことに厚みをつけられたかもしれないことです。
まあ、やたらに(オレと同じだ……)みたいなことされてもアレではあるのですけど。

脚本は十川さん。なんか最近登板が多いです。
メインスタッフには特に新顔はいないようですね。
 
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・ヤマト

 突如として強烈な飛び蹴りを放ち、度肝を抜かしてくれた男。
 直後にぐるぐる巻きにされますけど。なにかと長いものに巻かれる方です。

 ガブモンとの信頼度はすでにマックスに達しており、安定性の高いタッグを発揮。
 しかしそれだけではなくプラスα、自分たち以外に目を向け、そこに育んだ友情を守ろうとしたとき
 最後の枷が外れるような流れになっているのかもしれません。少なくともそう見えました。
 無印での進化が少々強引だったぶん、ウォーグレ共々一話かけてやれたのは良かったと思います。

 ただ上にも書きましたが「過去を乗り越え、未来に目を向けろ」というマッハモンへのメッセージがこう、
 言いたいことはスゲーよくわかるんだけどだいぶ唐突というか、繋がってないというか
 そこはヤマト自身のドラマにも絡められたんじゃないのかなと思うと非常に惜しい気持ちです。
 まあ「ひょっとしたら自分自身への言葉でもあるのでは」と推測することはできますけどもね。

 どうでもいいけど、メタルガルルモンの時の騎乗体勢にだいぶ無理がある気がしてなりません。
 足元もめっさツルツルになってそうだし。
 
 
 
・ガブモン → ガルルモン → ワーガルルモン

 走りを愛するという設定が突然生えてきた男。ほぼこの回のための設定にすら見えます。
 他の子がそうだというよりは説得力があるし、マッハモンへの友情のキッカケにはなってるんですが。

 実際マッハモンにはかなり肩入れしており、ダメージを承知でその体ごとを受け止めて失神したり、
 危険を承知で再レースを申し込んだり、死を望むマッハモンを懸命に説得したりなど
 その入れ込みっぷりは随所で著しいものがあります。
 何も言わずに付き合うヤマトもヤマトですが、38話での体の張りっぷりを見ちゃうと……ですね。
 ようやく過去回が効いてくるようにはなってきてる。

 ちなみにガルルモンの走りっぷりは、地味に完全体であるマッハモンと比肩するほどです。
 暴走などによって有耶無耶になりましたが、まともに競っていても良い勝負はできた感じ。
 なんだかんだでマッハモンが意地を見せて勝ちそうな気はしますけど。
 
 
 
・メタルガルルモン

 ついに登場したガブモンの最終形態(光子郎談)。
 全身がメタル化し青銀の装甲で覆われ背中には翼、足元にはバーニアが付き、体躯はこれまでより
 だいぶ巨大になりました。ヤマトは背中の上に立ってますが、落ちそうでめっさ心配。

 何よりも特筆すべきは巨体を得ていながら、スピードが全く落ちていないこと。
 一歩のリーチが伸びたぶんだけ、むしろ速くなってさえいます。

 その速さはパラサイモン退治の際にいかんなく発揮され、複数本の腕を簡単に切断してのけ
 マッハモンからいとも容易く引き離し、コキュートスブレスで瞬殺してみせています。
 パラサイモンは究極体としては弱いデジモンですが、メタルガルルモンへ進化したからこそ
 これら一連を造作なくこなすことができたとは言えるかもしれません。

 どれだけ巨大になったかは、崖から落ちかけたマッハモンを顎でキャッチして
 そのまま岩肌を下って着地した場面でも明らかでしょう。
 無印ではガルルモンと大差ない大きさだったので、なおさらサイズの違いが際立ちます。

 そのあとゴールまではガブモンのままでしたが、ヤマトに歩調を合わせるためというよりは
 やはり消耗が激しかったとみるのが妥当かもしれません。
 もっとも、本作のパートナーズは割にホイホイ最進化しちゃうんですが。

 ところでブリッツグレイモンが出たってことは、クーレスガルルモンも出ますよね……
 出なかったら「結局36話のアレは何だったんだ」ってなりますぞ。
 
 
 
・他メンバー

 ヤマト組が全面主体だったので、おおむね脇に回ってます。
 でもなぜかタケルまでレースクイーンをやらされたり、丈組が実況でボケ倒したり
 いろいろと見所はありました。

 そんな中、光子郎組が参謀らしいことをして地味に一番目立ってました。
 彼らのような役どころはどんな局面でも出番に恵まれやすいですからね。
 
 
 
・マッハモン

 今回のゲストデジモン。
 「デジタルワールドグランプリサーキット」で孤独な走りを続けていました。

 本来は純粋にスピードに賭けるデジモンなのですが、パラサイモンを受け入れてしまい
 能力を極限までアップさせた代償として、レース中に抜かされそうになると
 相手を容赦なく攻撃するようになってしまいました。
 もちろん、この行為は彼の望むものではありません。

 彼がパラサイモンを受け入れたのは、チャンピオンの座を守るためだそうです。
 強力なライバルの出現で防衛が危うくなったのか、それとも卑劣な妨害を受けて
 これに対抗するために受け入れたのか、詳しいことはわかりません。

 確かなのは、パラサイモンの受け入れを激しく後悔していたことです。
 彼が力を得ようとしたのはレースに勝つためであり、対戦相手を殺すことではなかったはず。
 たとえルール上それが許されていたとしても、スピードで勝つことに誇りを持っているであろう
 彼にとっては虚しい勝利にしかならなかったのだと思います。

 しかも彼が優勝するたびに仲間は──死んだにせよ逃げたにせよ──減ってゆき、
 ついには誰もレース相手がいなくなってしまったわけです。
 それでも走り続けていたのは、走ることそのものを愛していたからに他なりません。
 サーキットから動かなかったのは、独りなら誰かを巻き込む心配がなかったからなのでしょう。

 その本来の情深い性格でヤマトとガブモンを巻き込むまいとし、パラサイモンを道連れに
 爆死まで考えていましたが、幸いなことにメタルガルルモンの奮闘でそれは免れました。
 彼への友情が究極進化を呼び起こしたことを思うと、ゲストながら重要人物といえるでしょう。

 中の人は檜山修之さん。ブラックウォーグレイモン、セラフィモン、スラッシュエンジェモンと
 その強烈な個性からもっぱら究極体役をつとめていた方であり、完全体成熟期としての役は今回が初。
 このデジモンの設定と顔つきから「トミカ絆合体アースグランナー」のガオグランナーレオのような
 イケイケでバリバリな人物を想像してたんですが、実際にはクール系のキャラでした。
 本人的にはクール系で出てきたようなもんだし、そっちもお手の物だったわけですけどね。

 ラストシーンの後は新たなレースを求め、サーキットを離れる決意をしたものと推測されます。
 なかなかいい役どころだったので、ガーベモンら共々に再登場が期待されますね。
 
 
 <追記>
 このデジモン、完全体じゃなくて成熟期だそうです。
 完全体だと思い込んでました……
 
 
 
・パラサイモン

 マッハモンに寄生していた存在。種別も「寄生型」と徹底してます。
 過去にも「デジモンテイマーズ 暴走デジモン特急」などに出演していました。
 これでも究極体なんですが単体としては弱く、ほぼ一撃で斃されるケースが目立ちます。

 しかしながらたかが寄生型、されど寄生型。
 こと寄生にかけては究極体の肩書きは伊達じゃなく、マッハモンのような完全体強者でも
 その浸食に耐えることはできません。しまいには対象を完全に乗っ取ってしまい、
 宿主が力尽きれば新たな宿主を求めて別のデジモンに寄生するというわけです。

 こいつに寄生されると、そのデジモンは力を極限まで引き出されるということです。
 もしかしたら、それを餌にマッハモンへ近づいて自分を寄生させたのかもしれません。
 しかし、体を乗っ取られかねないというのは代償としては重すぎます。
 マッハモンがそのことを知っていて受け入れたのか、後から知ったのかで違ってきそうですが。

 究極体としての威厳は他にも示しており、カウスラッガーを凌ぐ程度のことはやってのけてます。
 考えてみればこいつを斃したデジモンは多くが究極体なんで、本当の力は判然としませんね。
 本当は、完全体レベルだと退治に骨が折れるのかもしれませぬ。寄生される危険もあるし。

 とはいえメタルガルルモンには全く歯が立たず、あっさり斃されてしまいました。
 まあこの場合は「相手が悪かった」と言えなくもないですが。
 
 
 
・モブの方々

 テイルモンの解説に何体か登場しています。
 内訳は左からブルモン、タンクモン、ファングモン、ドーベルモン、キウイモン、
 シマユニモン、ライノモン。

 走りが得意そうなデジモンが揃っていますが、タンクモンはスピードを出せそうにないし
 ライノモンは重すぎるのとごく短距離にしか向いてなさそうなのとで不利な気がします。
 あとキウイモンもあんまり速いイメージはないですね……
 
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
「ヤマト…… オレ、走りたい!」(ガブモン)
 
 突然の走り好きアピール。本当にいきなり生えてきた設定です。
 まあ実際、彼が走り好きであっても別に違和感はないのですけど。
 
 
「やめておけ……
 オレにそう言って後悔しなかったヤツはいない」(マッハモン)

 
 一緒に走ろう、というガルルモンの申し出を聞いて。やけに決まってるセリフです。
 もちろん、ここにはある種の自嘲がこめられてることになるんですが……
 
 
「コース外側から内側に向かって、傾斜がついているコースのことだよ。
 これだと遠心力を使って曲がれるから、スピードを落とさなくていいんだ」(光子郎)

 
 「バンク」についての説明です。
 なんでそんなこと知ってんのと思いますが光子郎じゃ仕方ない、という典型的なセリフ。
 
 
「やっぱりここは、デジタルワールドグランプリサーキット!」(テイルモン)
「知ってるの?」(ヒカリ)

 
 知っているのかテイルモン。パラサイモンにも詳しかったし、あんたは三面拳・雷電か。
 男塾好きとしては、反応せずにいられないやり取りです。
 直後に「デジタルワールドグランプリサーキット…!」と解説が入るのもそれっぽい。
 
 
「おれは、あんたの走りに魂の叫びを感じたんだ……
 もう一度、おれとレースしよう! スピード勝負に徹した、最高のあんたと走りたい!
 おれはあんたを信じる…! あんなふうに走れるんだから!」(ガブモン)

 
 やり取りなど一部略。
 このときすでに、ガブモンはマッハモンが本当は純粋にスピードに賭ける本物のレーサーだと
 その本質をつかんでいたのかもしれません。だからそのレーサー魂を確かめたくなったのですね。
 この時点では意外そうな声を上げながらも、作戦まで立ててきっちり付き合うヤマトがポイント。
 
 
「ボクもこれ、やらないとダメ…?」(タケル)
 
 応援席でなぜかミミや空たちとおんなじ衣装を着せられての一言。さすがに恥ずかしそうです。
 こういうところは男の子って感じですが、なぜこんなことになったのでしょう。
 ミミあたりにノリで着せられちゃったのでしょうか。
 
 
「チャンピオンの座を失わないため… 極限の速さを得るため…オレはヤツを受け入れてしまった…!
 お前たちとは真逆の最悪の一体感… とんだ偽りのチャンピオンさ!」(マッハモン)

 
 パラサイモンの浸食と攻撃行動を止められぬ中、どうにか意識を保ちながらの一言。
 このセリフだけでも、彼がどれだけ己の行動を悔いているかわかろうというものです。
 実際問題、この二者の関係性はヤマトとガブモンの真逆と言わざるを得ません。
 一方的に利用されてはいますが、マッハモンもパラサイモンを利用しようとして受け入れたのは同じなのです。
 
 
「偽りのチャンピオンを演じ…仲間を失い…オレに残ったのは耐えがたい孤独だけだった…! もう、たくさんだ!」
(マッハモン)

 
 上の少し後。檜山さんの熱演がセリフに力を与えています。
 デジモンに出るときはなんかこーゆー感じの役が多い気がするのは黒ウォの印象が強いせいかな。
 
 
「ことわる! 俺の相棒が言ったはずだ。俺たちは一緒に走った…仲間だ!」
「マッハモン! あんたを絶対に死なせはしない! おれと…ヤマトで、あんたの苦しみを、止めてみせる!」
「…ああ、そうだ…! 過ちに、孤独に苛まれても…あきらめるな! 過去も、今も、乗り越えて! 前に進むんだ!」
「「生きろ! マッハモン!」」(ヤマトとワーガルルモン)

 
 マッハモンへの友情のエール。罪の意識で自暴自棄になりかけた賢に、大輔が投げたセリフを思い出します。
 いいセリフなんですが、ヤマト自身のドラマに絡められた余地があると感じるのはホント惜しい。
 とはいえ、明確に「友情」が進化のトリガーになってるのは良いポイントです。
 ワーガルルモン回のアレさを思えば、少なくともだいぶプラスの印象を貰えましたよ。
 
 
「走ろう。ゴールはまだ先だぞ」(ヤマト)
 
 ガブモン共々の殺し文句。直後、マッハモンが見せた瞳の表情がとても良いです。
 この後三人同時にゴールしますが、今回については勝敗など関係ないってことでしょう。
 それは、呪いにも似た勝利へのこだわりからマッハモンが解放された瞬間だったのかもしれません。
 
 
 
 
★次回予告

 これまたデジモン図鑑とタイトルでバレバレな感じの回。
 デビモンが再登場しますが、これはもしかすると幻影の類かもしれませんね。
 チラッとだけ出てきたのはセフィロトモンかな? さてはこいつが黒幕でしょうか。