狙われた王国

脚本:山口宏 絵コンテ:貝澤幸男 演出:なかの★陽

作画監督:清山滋崇/二階堂渥志 総作画監督:浅沼明弘

★あらすじ

海を目指すものの、道に迷ってしまっていた太一たち。
そのさなかに果物を見つけるのですが、獲ろうと試みたところいきなり捕まってしまいます。
そこに現れたのは無数のタネモンたちとパルモン、そして人間の少女・太刀川ミミでした。
ミミはパルモンやタネモンたちと「王国」を作り、その女王に収まっていたのです。
そのうえ、彼女はデジヴァイスまで持っていました。

光子郎の連絡から現実とデジタルワールドの時間の流れの差を知り、思考を落ち着ける太一たち。
まずは王国を頻繁に襲い果物を奪っていたタスクモンを何とかすべく迎え撃つのですが、
現れたタスクモンたちはサウンドバードモンによってさらに凶暴化していました。
しかも太一たちが戦っている間に、オーガモンがドリモゲモンに乗ってミミを襲ってきます。

必死にミミを守ろうとするも、力の差は如何ともしがたく瀕死へ陥ってしまうパルモン。
ですが、ミミはパルモンを見捨てて逃げることを断固として拒みました。
互いの強い絆を確かめあった瞬間、デジヴァイスが輝きパルモンはトゲモンへと進化。
トゲモンの奮闘によりドリモゲモンはKOされ、オーガモンもグレイモンに片角を折られ退却します。

かくして王国の後事をタネモンたちに任せ、ミミもまた太一たちとともに旅へ出ました。
東京で起きている現実を知った今、自分にできることを精一杯やるために。
 
 
 
 
★全体印象
 
6話です。
こんなタイトルですが、眉村卓先生のジュブナイルSF小説は関係ありません。

ようやくミミが本格登場し、パルモンともども喋ってくれました。
1話にワンカット出て以来、その後いろいろあってオンエアが延び延びになってたので
5話の時点で本当にようやくという感じでしたよ。ずいぶん待たされたなあ……

彼女についての詳細は後に譲るとして、進化までの過程は最も充実していたといえます。
パルモンとの出会いこそ一枚絵ダイジェストだったものの、アレのおかげで厚みも確保されました。
太一たちの見せ場もきっちりあったし、内容としてはバランスが取れていたと思いますね。
戦闘作画についてはこれまでで最高レベルかもしれません。
ツッコミどころが少ないので、書くこともそんなには多くないですね。

脚本は山口宏さん。80年代から活躍しているベテラン中のベテランですが、デジモンには初参加です。
「新世紀エヴァンゲリオン」「勇者王ガオガイガー」といった作品の一方「To Heart2」や
「ジュエルペットサンシャイン」「アイカツスターズ!」なども手がけており、活躍の場を選びません。
この方が参加するというのはかなり心強いことじゃないでしょうか?

絵コンテの貝澤幸男さんは「テイマーズ」以来の常連スタッフ。
「クロスウォーズ」でも独自の切り口で盛り上げてくれたのをよく憶えています。
プリキュアでは「キラキラ☆プリキュアアラモード」の4話が印象的。
ただ今回は絵コンテでの参加なので、ご本人のテイストは抑えめだったかもしれません。

演出担当はなかの★陽さん。こちらはシリーズ初参加です。
どちらかというと特撮での活躍が目立つ方ですが、アニメやゲームにも幅広く参加されていますね。
時にはデザインにも参加するなど、マルチな才能をお持ちのようです。

作監のうち清山滋崇さんはお馴染みですが、二階堂渥志さんは見慣れないお名前。
「ドラゴンボール超」や「墓場鬼太郎」に参加してたっぽいのがわかる程度です。
アクションシーンを見る限り、腕利きなのは間違いなさそうですけど。
  
  
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・太一

 前回に続き、描写的にはミミへ譲ってます。
 ミミにタスクモンたちの排除を申し出たり、状況へ合わせて臨機応変に動くなど勇敢さの一方
 グレイモンの背中越しに迫るタスクモンを前に僅かにたじろぐ描写があったりなど、
 怖いのを押さえ込んでその場に立っていることがうまく表現されていました。

 まあ怖いのは当たり前ですよね。
 でもパートナーが側にいることでデジモンたちが強くなるなら、逃げるわけにはいかないのです。
 デジヴァイスによるブーストが明確な本作では尚更でしょう。
 
 
 
・アグモン→グレイモン

 中盤ではタスクモン相手に奮闘していました。
 二体をまとめて抑え込めるところからみて、そのパワーは並の成熟期をはるかに超えていますね。
 これが例えばトリケラモンとかだとそうはいかないでしょうけど。

 クライマックスの戦闘ではオーガモンと激突。タイマンで直接ぶつかるのは無印含めて初めてです。
 結果的には競り勝ってその角を片方へし折ったので、ここでもそのパワーをありありと見せつけました。
 オーガモンとの競り合いは作画的にもかなり力が入っており、本話のハイライトと言える場面。
 でも、おかげでオーガモンの恨みを買うことになりそう。

 派手にお腹を鳴らして空腹をアピールするなど、ギャグもこなしています。
 食い物の問題は結局うやむやになったんですが、タスクモンを迎撃するにあたって果物を振舞われ
 体力を回復させた可能性はありますね。描写ないけど。
 
 
 
・空

 バードラモンに乗ってコアドラモンと格闘戦をこなすなど、相変わらずの豪胆ぶりを発揮してました。
 しかもタスクモンめがけてコアドラモンを叩き落とし、まとめて始末するというスパルタンさも完備。
 ホント逞しすぎますね今回。
 …まあ、二体をまとめて始末できたのは偶然かもしれないけど。
 
 
 
・ピヨモン→バードラモン

 対コアドラモン担当。
 ただし描写的には太一組に次ぐ扱いなので、打ち勝つまでの過程は概ねカットされています。
 クライマックスでも開幕メテオウィングのみで、あとは太一組に譲る流れ。
 でも上述の通りコアドラモンとタスクモン一体を沈めてるんで、戦果はきっちり稼いでますね。
 
 
 
・光子郎

 ネットワークを彷徨う中、現実世界との時間の流れの差を発見しました。
 具体的にはネットワークの奥に進むほど現実より時間が遅く流れ、危機へのタイムリミットが
 長くなってゆくということです。この設定は無印21話ではじめて開示されたものですが、
 今回はかなり早くカードを切ってきた形ですね。

 わざわざ動画をエンコードし直して太一たちに見せるあたりは、さすが2020年という感じの描写。
 この報告が思いがけずミミに現実を知らしめ、旅に出る決意を促しています。
 そういう意味では彼もまた立役者のひとりですね。
 
 
 
・カブテリモン

 進化したまま光子郎を乗せて移動していました。セリフは無し。
 
 
 
・ミミ

 やっとのことで本格登場。
 無印同様に喜怒哀楽のハッキリした子で、よく笑いよく泣きます。さすがリアクション女王。
 彼女たちが加わると、キャラクター的情動が一気に豊かになる気がしますね。

 デジタルワールドに来てからはそれなりに経ってるようで、パルモンとは付き合いが長めな設定。
 また、途方に暮れていた彼女に声をかけたのはパルモンであることも明示されています。
 それから小さな王国を築いて女王に祭り上げられた過程はよくわからんのですが、何はともあれ
 確かな絆が芽生えつつあったことだけは飲み込める流れになっていました。

 その絆が強く花開いたとき、初めての進化が促されました。
 その時点ですでに、彼女は旅立つことを心に決めていたのでしょう。

 中の人は高野麻里佳(こうの まりか)さん。
 デビューが2014年という比較的若手ですが、じわじわと活躍の場を広げつつあります。
 個人的守備範囲では「Re:ゼロから始める異世界生活」のペトラ・レイテと、
 「マギアレコード」の伊吹れいらあたりが馴染み深いでしょうか。
 声質的には無印当時の前田さんに近く、かつ更に丸っこい可愛らしい感じで好印象です。
 
 
 
・パルモン

 ミミと同時に本格登場。ミミとともにタネモンたちと王国を築き、執事に収まっていました。
 タネモンたちとの関係は不明ですが、一群のリーダーだった可能性はあります。
 ミミを女王にしたのは単純に、彼女が皆から慕われるようになったからかもしれませんね。

 無印ではヌメモンたちの奮戦を見て一念発起したことがキッカケでしたが、
 今回ではハッキリとミミを守るために体を張り、その果てに進化をものにしています。
 そういう意味では光子郎組同様、無印より王道路線へ寄せた仕上がりといえるでしょう。
 というか無印の6話自体がいささか特異なのですが。

 中の人はパートナーの例に漏れず山田きのこさんの続投。以前は溝脇しほみと名乗っていました。
 声的には確かに山田きのこの方が「それっぽい」ですな。
 
 
 
・トゲモン

 パルモンが進化を遂げた姿。
 その近接攻撃力はさらにパワーアップした感があり、正面からドリモゲモンのドリルを受け止めてます。
 またフットワークの点でもかなり強調されていて、スピードで完全に相手を翻弄していた印象。

 無印で多用していた「チクチクバンバン」は本作でも健在です。
 さらに決め手として「ココナッツアッパー」も披露しており、ドリモゲモンのドリルをへし折りました。
 あまりのクリーンヒットに太一が「決まったーっ!」と実況してしまったほどです。
 ゴングでも鳴ってたらもっと面白かったかも。

 進化明けのエフェクトを散らしながら敢然と現れる姿は、珍妙さを兼ね備える勇姿でした。
 この進化を得たことで、パルモンのダメージもすっかり回復したみたいですね。
 
 
 
・ヤマト/丈/タケル/ヒカリ
 
 今回は出番なし。丈については次回待ちですね。
 
 
 
・ミミのおじいちゃん
 
 項目名はキャスト表示に準拠。
 太刀川重工の会長さんだそうです。東京の電力危機をなんとかしようと奮闘していました。
 マスクをしていたのは別に、世相を反映したわけじゃないんでしょうけど。

 ミミはこの祖父を目撃して、少なからずショックを受けていました。
 もしかしたら本作はおじいちゃんっ子なのかもしれませんね。

 中の人は池水通洋(いけみず みちひろ)さん。
 鬼太郎6期で久しぶりに地上波アニメでの活動を再開し、引き続いての登板となりました。
 60年代から活動されてる大御所のひとりで「仮面ライダー」では怪人を数多く演じておられる他
 「キン肉マン 王位争奪編」ではスーパーフェニックス役でも知られています。
 まあ同作ではロビンマスクも演ってるんですけど。
 
 
 
・タネモン

 ミミの王国では一般市民の役を果たしていた方々。
 しかしタスクモンの接近を早期警戒したり、そのチームワークは非常に高いものがあります。
 オーガモンやドリモゲモン相手には逃げ回るだけでしたが、こればかりは仕方ないところ。

 セリフは無いですが、表情やその行動の数々から知能というか知性の高さを感じさせてくれます。
 デジモンの強さ、乃至ある種の恐ろしさは知能が高いことですね。

 ミミが旅立ちの際に携えていたバッグは、みんなが材料を集めたりして作ってあげたものでしょうか。
 
 
 
・タスクモン

 ミミたちが築いた王国に押しかけ、頻繁に果物を盗んでいたというデジモン。
 彼女らからすれば領地侵害ということになりますが、お構いなしだったようですね。
 まあ、彼らからしたら向こうが勝手に縄張りを主張しているだけに見えてたのかもしれませんが。

 普段はそれほど攻撃的という風ではなく、のんびり草を食んでる場面もあったのですけれど、
 サウンドバードモンの「音」に操られて凶暴化、脇目もふらず王国へ向かってきました。
 しかし6体のうち2体がパルモンたちの仕掛けた罠であっさりとダウンし、残り4体も
 グレイモン相手にあまりいいところのないまま、最後はコアドラモンごとKOされちゃいました。
 おまけに、太一たちには「果物泥棒」以外の認識がなかったように見えます。ちょっと気の毒。

 上記の草を食べるシーンでは直接咀嚼するのではなく、データに分解して吸収していました。
 少なくともデジタルワールドでは、こうやって食事を摂るのでしょう。
 アグモンたちはなんか普通にムシャムシャ食べそうな期がするけど。

 無印36話と37話にも登場しますが、扱いとしてはあちらの方がやや強豪扱いだったかも。
 
 
 
・ドリモゲモン

 太一たちがタスクモンとコアドラモンに気を取られている間に、オーガモンが乗って襲ってきたデジモン。
 地中を移動していたので、行動を把握されずにあそこまで肉薄できたわけです。
 スパロボで言えば「地中」持ちですね。絶滅して久しい仕様ですが。

 目が赤いので、オーガモンが現地調達していたカードのひとつでしょう。
 成熟期ということもあって、パルモンがどれほど奮戦しても有効打は与えられませんでした。
 しかし基本的に動きは鈍いんで、トゲモンが現れてからは完全に翻弄されています。
 ドリルの破壊力は高いはずなんですけど、それも一切通用していません。

 本来はおとなしいデジモンかもしれないと思うと、気の毒ではあります。
 ですが残念ながら、太一たちにも手を抜いている余裕などはないんですよね。
 
 
 
・コアドラモン(青)

 オーガモンが乗っていたデジモン。
 タスクモンの行動に合わせ、空からグレイモンを襲おうとしていました。
 しかし空が素早くバードラモンで迎撃に出たため、その目論見はあえなく崩れ去っています。

 最後には空中から谷に叩き落とされ、タスクモン一体を巻き添えに斃れました。
 アニメには緑ともども初登場なんですが、いかんせん良い役回りを貰えていませんね。
 
 
 
・オーガモン

 タスクモンたちを嗾けてミミの王国を襲わせ、太一と空に対処させている間にミミを狙いました。
 狙いどころは良かったんですがパルモンの予想外の善戦に手間取り、進化を許してしまいます。
 それでも執拗にミミへダイレクトアタックを試みますが、ここでグレイモンが間に合い
 鍔迫り合いの挙句、右の角を叩き折られてしまいました。

 手勢も全て失い、這々の体で逃れた彼は右の角を失ったことを改めて実感し、咆哮しています。
 角に誇りを持っている設定はありませんが、屈辱であろうことは想像するまでもありますまい。
 これで、彼はますます選ばれし子供打倒に執念を燃やすことになるでしょう。

 それにしても操られてるわけじゃなさそうなのに、どうして片言なんでしょうね。
 あるいはデビモンあたりにより強い洗脳を受けていて、それで無口になってるのかな。
 判断材料としては微妙ですが、無印のレオモンがそうだったわけだし……
 
 
 
 
★名(迷)セリフ

「じゃあ、あなたは72番目! あなたは73番目!
 ミミちゃん王国の、家来にしてあげるわ!」(ミミ)


 王国を脅かすデジモンの退治を申し出た太一たちに。
 つまり、ミミちゃん王国にはほかに71名の臣民がいることになります。
 俯瞰だとあの場のタネモンたちの数は32体ほどですが、残りは他のところにいたのでしょう。

 アグモンたちも入れれば、総数は75名になりますね。
 光子郎たち残りメンバーも勝手に登録されそうな気がしますけど。
 
 
「こっちは片付いたよー!」(空)

 お、おう… 君、ほんとスパルタンになったね。
 
 
「パルモンを放って、逃げたりできないよ!
 だってそうでしょ!? こっちに来て、一人ぼっちで寂しかったとき… わたしに声をかけてくれた…
 そしてタネモンたちと、友達にしてくれた…! みんなパルモンのおかげだよ…!
 だから、一人で逃げるなんてできないよ!」(ミミ)


 やり取りなど一部省略。
 静かに、けれど確実に育まれていた絆が、強く大きく花開いた瞬間です。
 これまでの中では、ある意味もっとも盛り上がりを心得た過程かもしれません。
 
 
「わたし、パルモンのこと…大好き!」(ミミ)
「ワタシもミミのこと、大好きよ!」(パルモン)

 お互いに涙を流しながら。
 泣きたい時には思いっきり泣いて、それからまた一歩を踏み出せる。
 この二人の強さはそこにあるんですよね。きっとそれは本作でも変わらないはず。
 
 
「わたしは、今できることをやるの!」(ミミ)

 王国をでて良かったのかと聞かれて。
 この心理へ至った過程には、やはり祖父へのリスペクトもあるんですかね。
 
 
 
★次回予告

 ゲソモン先輩お久し振りっす。
 地上波版だとよくわからないんですが、web版予告を見る限りだとなんか丈先輩、
 妙に頼りになるオーラを出してますね。力んでるだけかもしれないけど。