呼ビ声

脚本:森地夏美 演出:高戸谷一歩
作画監督:舘直樹/佐藤敏明/川口弘明/鷲北恭太/北野幸広
総作画監督:石橋大輔

★あらすじ

 ゲートを通って人間の世界に渡ってきたデジモン達に話を聞く瑠璃たち。
 彼らは「逃げなさい」という謎の声に導かれ、こちらにやって来たのだそうです。
 いったい何が起こっているのか……?

 が、遅れて合流するはずだった宙とガンマモンが現れる気配がありません。
 コタロウや深津と一緒に釣りに出かけた帰り、事件に巻き込まれていたのです。
 船を徘徊する虚ろな目の人々、そして謎の霧。

 霧は一時期街中へと広まりましたが、やがて急激に収束。
 その後に従って海へ向かう人々の姿が、異様な魚のように変化してゆきます。
 霧に巻かれた者は激しい頭痛の末、このような姿になってしまうのです。

 すべては海から現れた邪神デジモン、ダゴモンの仕業でした。
 手当たり次第に眷属を増やしてゆく、大変危険なデジモンです。
 しかも最初に現れた巨大な姿は虚像で、本体は海に隠れていました。

 なんとかシリウスモンが本体に攻撃を当てるも、ダゴモンはなおも異様に膨張。
 これを止めて強制送還したのは、ブラックテイルモンUver.でした。
 さらに宙の父・北斗が突然ゲートを潜って現れたではありませんか。

 驚き醒めやらぬ中、今度はいきなり町中の電気が消えます。停電ではありません。
 アンゴラモン達をはじめ、デジモン達は喪失感と戦慄に囚われていました。
 デジタルワールドが突如、まったくの出し抜けに消滅したのです──
 
 
 
★全体印象
 
 64話です。
 今回のモチーフはタイトル通り、クトゥルフ神話を下敷きに取ったものです。
 登場するのもそのまんまズバリのダゴモンでした。
 クティーラモンも登場しますが、両者にこれという関わりはない模様。

 内容的には怪異ものの色が強い本作らしく、そちらの描写がメイン。
 各メインキャラについて書かないといけないことはさほど多くないです。
 ここらへんは評価が分かれるというか、食い足りなさを感じるところかも。

 一方でDWにいるという以外は行方不明だった宙パパこと北斗が登場、
 さらにデジタルワールドの消滅といきなり話が動いています。
 ここから段階を経て畳んでゆくことになるのでしょう。

 脚本は森地夏美さん。
 ガチな相手とかラスボス級登場回を担当するケースが妙に増えてます。
 シェイドラモン、ズィードミレニアモンとゲストデジモンの死亡率も高め。
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・宙組

 たまたま釣りの予定と急展開がバッティングしてしまった方々。
 コタロウ達とは前から約束していたんで外せなかったんでしょう、たぶん。
 瑠璃たちも「それは仕方ないから後で合流しよう」と言ってくれたんじゃないでしょうか。

 戦闘ではガンマモンのみが究極進化。
 が、相手の異様さにいささか手を焼かされた印象でした。
 デジタルゲートによる強制送還が間に合わなかったら、もう少し苦戦していたかもです。

 ダゴモンの波動で一瞬、カノーヴァイスモンの体表が黒くなってたのも気になります。
 これは何を意味するのか。グルスガンマモンと関係あるのは間違いないのでしょうが…… 
 
 
 
・瑠璃組

 都市伝説を嬉々として調べる瑠璃を微笑ましく見つめるアンゴラモンが印象的でした。
 不謹慎かもしれないけど、彼女はこういうことについ興味津々になってしまうんですよね。
 問題は作中に出てくるこういった類がただの迷信だった試しがないことですが。

 なお戦闘ではダゴモンの虚像と幻覚に手こずり、ジェリーモン共々時間制限を迎えてます。
 究極進化するとタイマーが一度リセットされるんでしょうか?
 
 
 
・清司郎組

 寮長は門限に厳しいので、宙が連絡もよこさないことに怒ってました。
 今回は霧のせいで通信障害がひどく、おまけに帰りの船があの有様だったわけですから
 宙を責めるのはお門違いだし、合流時にはそんなこと言ってる場合じゃなかったのですが。

 戦闘では目立っていませんが、涙を流すジェリーモンは印象的でした。
 故郷について言及したことはほぼ無い彼女ですが、そんなジェリーモンにとってさえ
 デジタルワールドという世界の存在は大きく重いものだったのでしょう。
 
 
 
・エスピモン

 ここへ来て完全にレギュラーへ昇格、サポート役として活躍しています。
 最大の見せ場は、やはり梅干しでカノーヴァイスモンを幻覚から引き戻す役割。
 なんでもなさそうだった前半の場面が布石として活かされた瞬間です。
 
 
 
・コタロウ / 深津

 宙やガンマモンと釣りに出かけた帰り、霧に巻かれてダゴモンの眷属にされてしまいました。
 その後いつの間にか寮に現れていたので、あの霧は距離の概念を曖昧にするのかもしれません。
 眷属に変化してゆくコタロウの描写は本作屈指のホラー描写と言えそう。
 
 
 
・エアドラモン

 今日も今日とて足役として活躍しています。
 清司郎組を拾い上げる役割も果たしており、なんだかんだ頼りになりますね。
 あんまりジェリーモンは乗せたくないようですけど、必要とあれば柔軟さも見せるわけです。
 
 
 
・北斗

 ラスト手前で突然登場した宙の父親。なんと向こうからあっさり合流してきました。
 その唐突さや態度の通常運転っぷり、これまで描かれてきた印象通りの人物です。

 いろんなことを知ってそうな彼が合流したことは、本筋を加速させる要素でしょう。
 加速しすぎるからこそ今まで合流を引っ張ってきたのではないか、とさえ言えそうです。
 さて次回、彼は何を語ってくれるのでしょうか。それとも語ってくれないのでしょうか。
 
 
 
・テリアモン助手

 北斗と一緒に登場。ただしまだ一言も発してません。
 彼は果たして北斗のパートナーなのか、それとも単なる助手なのか……
 はたまた、単に白衣を着てるだけのテリアモンなのか?
 
 
 
・マミーモン

 ラストシーンに登場。
 デジタルワールドの消滅を察知し、愕然としていました。
 人間たちの世界に取り残された形の彼らは、これからどうしてゆくのでしょう。
 人間界に馴染める者は良いですが、そうでない者は…?
 
 
 
・デジモンたち

 直近時期にデジタルワールドから渡ってきたデジモンたちが何体か登場しています。
 その中にガムドラモンがいたのは軽いサプライズ。
 彼らのように友好的な連中ばかりなら、事はそこまで深刻でもないのでしょうが……

 その他キンカクモン達やレッパモン、コエモンなど過去のゲスト達も何体か再登場しています。
 デジタルワールド消滅は彼らに何をもたらし、何を奪ってゆくのでしょうか。
 
 
 
・ダゴモン

 完全体の水棲獣人型デジモン。邪神型とされることもあると聞きます。
 というか、マトモに水棲獣人型として扱われたのは「クロスウォーズ」ぐらいな気が。

 今回は「02」に出てきた得体の知れないイメージをそのまま継承したような描写でした。
 意志はあるのでしょうがうなり声を発するのみだし、とうてい話の通じる手合いではありません。
 しかも霧を発生させ、これに巻かれた人間と次々と眷属へ変えてしまうのです。

 この霧は擬似デジタルフィールドの展開を阻害するほど強力でしたが、
 宙たちへの影響を遮断できたことは不幸中の幸いでした。
 ガンマモン達の反応からみて、デジモンも長く霧の中にとどまるのは危険でしょうから。

 最初に現れアンゴラモン達を慄然とさせた巨大な姿は、実はただの虚像。
 いくら攻撃をしてもすり抜けてしまい、ダメージを与えることができません。
 一方ダゴモンからの攻撃は可能で、傷をつけた相手に幻覚を見せて翻弄することができます。
 このせいで時間を取られたのか、ラモールモンとテティスモンは進化解除を迎えてしまいました。

 「グランノヴァ」の影響で霧が吹き飛び、水中に潜んでいた本体が登場。
 残るシリウスモンの一撃を受けますが、なおも斃れず異様な変化を遂げて襲いかかってきます。
 体の色が変わったことと関係があるみたいですが、詳しいことはわかりません。

 しかし宙たちのもとへ到達する寸前、ブラックテイルモンUver.がゲートを発動。
 封印されるような描写で向こう側へ強制送還され、姿を消しました。
 直後にデジタルワールドが消滅したため、そのまま運命を共にしたと思われます。
 見境なく眷属を増やそうとする危険な特性さえなければ、あるいは生き延びられたのでしょうが。

 完全体という枠に収まらない、実に不気味な存在として描かれていました。
 究極体としてこの系列の上が出てくる展開も予想してたんですが、この方が異様で良いですね。
 既存の枠というものを無意味にするなんて、いかにも邪神っぽいではありませんか。

 中の人は松山鷹志さんですが、上記の通り加工された唸り声しか発しないため判別は困難です。
 
 
 
・クティーラモン / ハンギョモン

 ラスト手前に登場。ブラックテイルモンUver.を連れてきてくれました。
 60話を踏まえ友好的な描写に終始しており、眷属にされた人々を救助したりもしてます。

 実はダゴモンと関わりがあってそれを止めようとしていた、なんて展開も予想してましたが
 後処理役兼モチーフが近い繋がりで出たという方が近い扱いでした。
 というか、ダゴモンのことは何ひとつ言及してなかったりします。
 
 
 
・宙のデジモン調査ファイル

 ダゴモンの紹介。
 寮長は毎度のように被害に遭いますね……しかも今回は直接だ。
 
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「…ああ…… そうか……」(男性)
 
 サブタイ表示中の暗転に流れていたセリフ。
 あとでコタロウ達も似たようなことを言っています。
 眷属とされたことで、自分が何をすべきなのか理解したような口ぶりですね。
 もちろん強制された心理なのですが。
 
 
「おー! おれ、先生! やるー!」(ガンマモン)
 
 釣りについてコタロウ達に教えてやれ、と宙に言われて。かわいい。
 ということはこの二人以外は釣りの素人ってこと?
 
 
「おう! 頭の中に急に”お逃げなさい”って聞こえてさ……」(ガムドラモン)
「声のあとにね、目のまえにね、あながブワーッって!」(ウパモン)
「空間が裂けた感じだったな……」
「中に入って気づいたら、こっちの世界に来ちまってたんだ」(パンダモン)

 
 ゲートを通ってきた直近の者たちによる証言です。
 ガムドラモンがいてビックリです。エリスモンといい急に主役級ゲストが来ますね。
 
 
「真夜中、急にあたりが霧に包まれてね。
 その霧の中に、虚ろな目の人間達がバァーッと……」(フローラモン)

 
 謎の霧について瑠璃たちに教える場面ですが、必要以上に怖い語り方です。
 途中で清司郎に止められましたが確信的にやっとりますね、これは。
 独特の語り口調が耳に残ります。
 
 
「キタキタキターッ! キューッ! 目が覚めるぜ!」(エスピモン)
 
 梅のお菓子を齧って。割とお気に入りのようです。
 なんと後半への布石でした。
 
 
「これでも食らえー!」(ホバーエスピモン)
 
 こちらは布石回収場面。文字通り食わせています。
 直後、唐突にダイスが振られるカットが挟まるのですが、これはTRPG
 「クトゥルフの呼び声」における正気度チェックをイメージしたものなのでしょう。
 そのあたりを知らないと「なんでサイコロ??」ってなりますが。
 
 
「こいつに乗せてけって頼まれてさー。
 海にいたデジモン達は、安全な場所に運んどいたよ」(クティーラモン)

 
 ダゴモンの封印直後に登場して。やたらフレンドリーです。
 宙たちが暴れたりしなければ手を出してこないとわかって気を許してるんでしょうか。
 心を許した相手にはけっこう親身になってくれるタイプなのかも?
 
 
「おお、宙! ってことは帰って来たのか? で、ここどこ?」(北斗)
 
 いきなり現れたことに唖然となる宙を見て。なんとも通常運転です。
 
 
「不意の出会いは寝耳に瓢箪。だが嬉しき──」(アンゴラモン)
 
 今回のアンゴラポエム、と見せかけて途中でぶった切られます。
 いつもの調子が断ち切られたことで、ラストが近いことを予感させてくれる演出。
 
 
「わからない…わからないさ……でも……」(ジェリーモン)
「今まで…ずっと近くにあった温もりが…!」(アンゴラモン)

 
 デジタルワールドの消滅を感じ取って。
 二人の喪失感はどれほどのものでしょう。私には想像がつきません。
 
 
「デジタルワールドが…… 消えた……」(マミーモン)
 
 ラストシーンのセリフ。
 リアルで「は?」と呻いてしまいました。
 何が……いったい何が起こったというんだ……
 
 
 
 
★次回予告

 何か53話を思い出す展開。
 相変わらず何者が関わってるのかわからなすぎですけど、それもまた醍醐味か。