幻ノ階
脚本:山口宏 絵コンテ:畑野森生 演出:羽多野浩平
作画監督:北野幸広/金澤龍/權容祥/小田不二夫
総作画監督:二階堂渥志
★あらすじ
瑠璃の友人、アオイの住むマンションに異変が起こっていました。
いつの間にか階と階の間にデジモンが棲みつき、それだけに留まらず
通常の階の空き部屋にまで住み着くようになっていたのです。
不気味がって引っ越す世帯が増え、そこにまた住み着くという悪循環。
アオイもデジモン達の階に迷い込みますが、これをエスピモンが助けます。
彼は「本物のヒロ」を探すため寮を出た後、このマンションを塒にしていたのです。
ある特別な鍵がないと、階と階の間からは出られないのでした。
が、勝手に人間へ鍵を貸したことで管理人のクラヴィスエンジェモンが激怒。
本来の住人を追い出し、デジモン達の住まいとして隔離しようとします。
止めようとする宙たちでしたが、シリウスモン以外が封印されてしまい大苦戦。
意を決したエピスモンは宙へ半ば強引に頼み、デジヴァイスの助力を得て
成熟期ホバーエスピモンに進化。クラヴィスエンジェモンを撹乱します。
その隙にシリウスモンの反撃が決まり、ようやく対話の機会が開かれました。
新たな契約を結び、クラヴィスエンジェモンはマンションを返還。
かくして、宙達とエスピモンの縁は新たなステージを迎えることになります。
さらに、一部始終を目撃することになったアオイとも…?
★全体印象
62話です。
今回のモチーフは階と階の間に潜む怪異、というもの。
都市伝説の真骨頂みたいな題材ですね。
「鍵」というヒントからまさかクラヴィスエンジェモンか? と予想したのですが
まさかのドンピシャで結構驚かされた回でもあります。
でも実際、このモチーフを持ってる究極体って彼ぐらいしかいないんですよね。
ただ、なんで人にボコボコ鍵穴が開くのかはよくわからんのですけど。
要は人間を排除するための仕掛けで、ああ見えて非殺傷現象なところをみると
ただただ警告と脅しのためのものだと思えばいいのかもしれませんけど、
うまく言えませんが、怪異を強調しようとして取って付けた感があったような。
エスピモン回でもあり、宙との関係性が深化したことで成熟期も登場。
サポート役としてはより有能になったものと思われます。
これで彼が宙に伝えるべき何を握っているのか判明すればいいのですが……
脚本は山口宏さん。メインスタッフ内に新顔は特におりません。
人数も控えめで、作画的には普通といったところです。
★キャラなど個別印象
・宙組
宙は前半、エスピモンをあっさり行かせてしまってます。
相手がそうしたいなら自分がとやかく言うことではない、ってことでしょうけど
君そういうとこだぞ、と久々に思わされました。
その分、というわけじゃないですがエスピモンの頼みで成熟期進化を促してます。
これで事実上、二体目のパートナーを持つのと同じ状態になりました。
パートナーは一体に限るなんて、そういえば誰も言ってませんもんね。
これは間違いなく、ラストへ向けての大きな布石となるでしょう。
戦闘面では火力でメインを張ってますが、ドラマ上はエスピモンに譲った扱い。
事実上、ホバーエスピモンの撹乱に乗っかった形です。
・瑠璃組
前回と同じくアオイを通じ事件の導入を担ってるのですが、見せ場は少なめ。
ラモールモンが真っ先に封印されちゃったんで仕方ないんですが。
アンゴラポエムはあります。
・清司郎組
扱いとしてはこちらも瑠璃組と大差ないレベル。
ただしアンフィモンは登場しており「クリスタルフリーザー」を披露してます。
そのあと割にすぐ封印されちゃったんで、見せ場はそんだけなんですが。
・エスピモン
「本物のヒロ」を探そうと意を決して宙の寮を出たはいいものの、
拠点はやはり欲しいということで幻の階に入れてもらっていた模様。
が、アオイを助けたことでクラヴィスエンジェモンの怒りを買ってしまいます。
(正確にはデジモンのための鍵を人間に貸し与えたことが違反だったのですが)
宙のことはずっと「ニセヒロ」扱いして一定の距離を置いていましたが、
それなり以上の付き合いから真偽は関係なく情が移っていたのも事実でしょう。
事態打開のためとはいえ、自分から進化を懇願するほどとは少し驚きましたが。
この段階だからできたことで、会って昨日今日じゃ無理だったでしょうけど。
嘘から出た誠……ってのとは違うか。本物を偽物と思い込んでただけなので。
疑り深い印象があるのは、諜報向けの能力ゆえでしょうか?
・ホバーエスピモン
成熟期のサイボーグ型デジモン。エスピモンが宙の協力を得て進化した姿です。
世代としては究極体の2ランク下なので火力はそこまででもないですが、
煙幕で撹乱する「ドロンガー」とアップデートされた「ダイバニッシュ」は
その究極体であるクラヴィスエンジェモンをも眩惑するほど高性能。
勝利の一翼を担ったと言い切れるでしょう。
上記の通り、火力面以外ではかなり頼りになる印象です。
戦闘は厳しくても、圧倒的不利からの脱出などでは活躍してくれそうです。
・アオイ
ミカと並ぶ瑠璃の親友にしてセミレギュラー。
友人が引っ越して行ったのを契機に瑠璃と幻の階を調査していたのですが
自分自身がそこに足を踏み入れてしまい、エスピモンに助けられています。
この際、クラヴィスエンジェモンからの影響を受けたままの状態になっていたので
擬似デジタルフィールドでも隔離されず、事件の顛末を目撃することに。
とはいえ以前から瑠璃が何か大きなことに関わっているのは承知していたため、
言いづらそうな瑠璃をフォローする器のでかいところも見せました。
しかも、何やらエスピモンを気に入った様子。
これはひょっとするとひょっとするかもしれませんな。
・クラヴィスエンジェモン
究極体の力天使型デジモン。まともにアニメに出るのはこれが初めてです。
シルエットとしてなら:にも出てたっぽいのですが。
映像作品以外では「デジモンストーリー」にもメインキャラとして登板してます。
行き場のないデジモン達に居場所を作るためアオイのマンションに目を付け、
階と階の間に異空間を作ってそこに住民を棲まわせていました。
劇中で階数表示が「13.5」などになったのはこれが理由です。
これらは通常の回と瓜二つの構造。言わばコピーのようなものなのでしょう。
一から居住性の高い空間を作るより、遥かに効率が高いものと思われます。
需要へ迅速に応えるという目的にもかなうでしょう。
いずれにせよ、空間を操るという点で比類ない力を持っていることがわかります。
もともとは誰かに「住居が欲しい」と持ちかけられて「契約」を結び、
上記のような処置をしていたと思われるのですが住民が空いた階にも棲みつきはじめ、
しかもそれを黙認していた節があります。
あげく、その例が増えてくると人間を追い出して通常の階も一部隔離しようとしました。
これを止めようとした宙たちと争いになるわけですが、携えている「ザ・キー」が
反則的な強さを備えており、ラモールモンとアンフィモンを早々に戦闘不能へ追い込んで
シリウスモンまでもあわや、というところまで追い詰めるに至っています。
技のエネルギーですらも封印できるとは驚き。
彼に無策で近づいた者は体の一部に鍵穴ができ、そこをロックされると
存在そのものを封印されてしまい、仕掛けた本人にしか解除できなくなるようです。
鍵をかけられたらアウトなので、穴が開くところまで行ってしまったシリウスモンは
鍵穴を両腕で覆いながら一時防戦一方になるしかありませんでした。
が、ホバーエスピモンが撹乱の末にこの「ザ・キー」を奪取。
これによって鍵穴の影響を脱したシリウスモンの一撃を受け、弱ったところで
ようやく宙たちに害意はないと悟り、攻撃をやめています。
以後は新たな契約を追加し、本来の階を変換して去ってゆきました。
これ、もともとの契約がザルだったせいなんじゃないかと思います。
住民たちが幻の階だけでなく本来の階の空き部屋に住み着くようになっても
これを止めようとしなかったのは「契約になかったから」としか思えません。
契約を絶対視する反面、杓子定規すぎる彼の性格が裏目に出たのでしょう。
本作のデジモンはどうも人間とメンタルが大きく異なるところがありますね。
意識してやってるのかもしれないけど。
いずれにせよ、引越しする破目になった元の住民は良い迷惑というやつでしょう。
それを思うと微妙にスッキリしねえ顛末だったりします。
中の人は杉田智和さん。デジモン初出演です。ここに来ての大型新人投入。
「涼宮ハルヒの憂鬱」のキョン、「銀魂」の坂田銀時など落ち着いた低音ながらも
コメディ色に溢れた役を得意とする一方、「翠星のガルガンティア」での
チェインバーのように無機質な役もハマるという、クセの強い声質でありつつ
様々な役柄をこなしてのける方です。今回のような四角四面の堅物もよく似合いますね。
・幻の階の住民たち
階と階のはざまに住んでいるデジモンたち。
成長期のインプモンからゴグマモンのような完全体まで、様々な顔が見て取れます。
このうち何割かの住民が勝手に本来の階の空き部屋を利用していた
(どころか人間を追い出して自分たちが棲みついていた節がある)ために
幻の階へ人間が足を踏み入れやすくなり、今回の事件に繋がったと思われます。
ゴグマモンのような喧嘩っ早い手合いばかりではないようですが、何もしてない連中も
普通なら接触しない状態とはいえ勝手に間借りしてることに変わりはありません。
その一方、人間の契約がデジモンに適用できるかは甚だ疑問ですが。
結局のところ、宙たちの介入で契約をより厳とすることにより手打ちとなってます。
破った者にはクラヴィスエンジェモンの制裁が待っているのでしょう。
・宙のデジモン調査ファイル
クラヴィスエンジェモンの紹介です。
そこでよりによって「青ひげ」出してきますかぁ……怖いもんねアレ……
★名(迷)セリフ
「鍵…… 鍵だ…… 鍵を……」(クラヴィスエンジェモン)
迷い込んだ人間への要求。
アオイたちが指を差し出すのは指紋認証に答えを求めてのことでしょう。
デジモンのための鍵を持ってないとダメなんで全身に鍵穴が開くんですが。
最初の子はどうやって出られたんでしょう。単に追い出されただけ?
「本気なら止めはしないけどさ……」(宙)
出て行こうとするエスピモンに。
本人の意思を尊重するといえば聞こえはいいけど、君そういうとこだぞ。
なおガンマモンは涙ながらに引き留めようとしていました。
「もっと引き留めてくれてもいいじゃねえか…… やっぱニセモノは薄情だぜ。
でも、あいつが本物なら…オイラもバーッと進化して……」(エスピモン)
強く引き留めなかった宙を思い出して。
そう言いつつ、後ろ髪を引かれまくっているのがわかります。
「あー…〜 しょうがねえ、知らない仲じゃなし。
オイラの鍵、貸してやるよ」(エスピモン)
幻の階に迷い込んでしまったアオイに。
これが重大な契約違反となり、クラヴィスエンジェモンに狙われるのですが
この時点ではそこまで深刻には捉えてなかった模様。
「なに? 勝手なことを言っているのは、その方らではないか!
よかろう、ただちに排除する!」(クラヴィスエンジェモン)
勝手に棲みついておいて何を勝手な、と憤る瑠璃に。
というより、彼女たち全員へのセリフです。
契約を絶対視するあまりこういう性格になったとも言えそうです。
融通のきかない石頭ぶりが中の人と親和性高い感じですね。
「おいニセヒロ!
お前が、本物の天ノ河宙っていうのなら! いますぐ、オイラを進化させてみやがれ!
…できねえか!? やっぱりお前は、ニセモノなのかよぉっ!」
「俺は……俺が……
俺が本物の、天ノ河宙だあぁぁあぁっ!」(エスピモンと宙)
大ピンチのシリウスモンを救援しようと「モットボム」を投げつけ続けながら。
「やっぱりこいつは本物なんじゃないか」と、心の片隅でずっと考え続けていたことが
大きく表に出てきた瞬間かもしれません。
そこに宙が応えたことで進化に繋がったわけです。
「階と階の間の空間だけを使う。空き部屋を勝手に使わない。
そして、人間との不要な接触は避ける。以上だな」
「うむ、これにて契約は完了だ。住民のデジモンたちにも、しかと伝えよう」(クラヴィスエンジェモン)
去り際のセリフ。
最初っからそうしとけよ! と言いたくなる場面でもあります。
先に彼と契約を結んだ者は何にも考えてなかったか、そうでなければ
契約の穴をうまく利用するつもりだったのかもしれませんね。誰だか知らないけど。
「ああ、いいからいいから。
それより…エスピモン! 今日はありがとね!
家出してるって聞いたけど、よかったらウチこない?」(アオイ)
言い淀む瑠璃を軽く流して。
ミカ共々15話ぐらいにはいろいろ察していたので、さもありなんという感じです。
しかしまあ、意外なところで縁が深まりましたね。
「郷に入っては郷に従い、マンションに入ってはマンションに従うべし」(アンゴラモン)
今回のアンゴラポエム。ラストシーンのセリフでもあります。
割と見たまんまですが、事件に引っ掛けてオチをつけていますね。
★次回予告
そのものズバリみたいなタイトル。
ベルゼブモンか!? と思わせて本作のことですからベルスターモンかも……?
どっちも全然違う可能性だってありますが。