水ノ幽霊

脚本:藤田伸三 演出:中村明博
作画監督:小澤誠/大山康彦/仁井宏隆/仲條久美/宇代祐規/石橋大輔
総作画監督:香川久

★あらすじ

 海神を祀る海辺の街にやってきた宙たちは、そこで街いっぱいに溢れる水と
 顔面から水を噴水のように流す人々に出食わします。
 地元の人々は海神の祟りと言いますが、明らかに普通ではない事態。

 数日前、件の海神神社へ運び込まれたという謎のミイラに手がかりを求めた彼らは
 偶然出会ったサブマリモンの助けも借りて神社に到着、ミイラを運び出しますが
 突然動き出したミイラが水に飛び込み、デジモンとして復活を遂げます。

 その名はクティーラモン。
 手下のハンギョモンたちが人間からデジタルデータの豊富に含まれた水を絞り、
 それを街中に満たして干からびた主人を救おうとしていたのです。

 なおも満足せず、世界中の人間から水を搾り取ろうとするクティーラモン達。
 止めようにも宙と瑠璃は水を浴びて他の人々と同じ状態になってしまい、
 まともに戦えるのは清司郎とテティスモンだけでした。

 そして残る清司郎にも危機が迫ったとき、人間が好きだという一点において
 テティスモンとの強いシンクロが生まれ、究極体アンフィモンが誕生。
 鉄壁の守備と強烈なパワーでクティーラモンを下し、事態を収集させるのでした。

 こうして事件は解決したわけですが、サブマリもんもクティーラモン達も
 何者によって人間界に送り込まれたのかは知りませんでした。
 謎はまだ深い深い海の中です。
 
 
 
 
★全体印象
 
 60話です。
 今回は海神を祀る海辺の街が舞台ということだったので、それっぽい存在──
 例えばシャンポンモンのような輩にお鉢が回ってくるのではと思ってましたけど、
 蓋を開けてみたらまたまた新デジモンでした。これは読めませんわ。

 今回は清司郎組の究極体デビューが期待されており、実際その通りになったのですが
 どういうふうに持ってくるかと思ったら通常運転で順当にという印象。
 瑠璃組も今までの積み重ねが結実した流れでしたし、これも本作らしさですかね。
 「共にありたい」という願いからの進化、で統一されてるのはポイントと言えます。

 脚本は藤田伸三さん。
 総作監にはなんと香川久さんが参加しております。デジモンシリーズ初参加。
 「セーラームーン」や「プリキュア」への参加で知られている一方、「トリコ」や
 「タイガーマスクW」などで肉体派のキャラデザもこなしておられる方です。
 最近では「ダイの大冒険」に参加していました。
 
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・宙組

 58話同様、何もしないうちに宙が無力化されてしまいました。
 ガンマモンも後半はほとんどサブマリモンの中で、出番自体に恵まれていません。
 
 
 
・瑠璃組

 今回も見せ場には恵まれてません。アンゴラモンも水中では防戦一方でした。
 瑠璃たちがホラーそのものな絵面に成り果ててしまうのはインパクトがありますけど。
 ところで、アンゴラモンは背中のモーターをどこで調達したんでしょう。
 
 
 
・清司郎

 追い詰められるほど本気を出す男。
 状況が状況なんでビビり倒してたし、後半はサブマリモンから出られない関係で
 テティスモンと切り離されたような状態でしたが、放り出された瞬間
 なぜか一瞬のうちにシンクロが高まり、究極進化へと至りました。

 周囲がただの水ではなく、デジタルデータが豊富な特殊な水であるがゆえに
 二人の意識が繋がりやすかったのでしょうか?
 確かなのは、二人の想いと目的があの瞬間ひとつになっていたということでしょう。
 
 
 
・ジェリーモン → テティスモン

 宙と瑠璃が早々に戦線離脱してしまい、孤軍奮闘状態でした。
 「アドゥワールド」を駆使してクティーラモン相手にも健闘していましたが、
 一瞬の隙を衝かれ捕まってしまい、追い込まれる清司郎をカバーできませんでした。

 どうやら、捕まえられていると瞬間移動できないようです。
 暁美ほむらの時間停止と同じですね(あれは触れているものが時間停止解除されるので
 拘束されている状態では使っても意味がないからですが)。

 しかし清司郎が水中に放り出された瞬間、電撃のように意識がつながって進化しています。
 えらい長い回想でしたが、あれが彼女たちのリアルな体感なのかもしれません。
 だとしたら、人々からできた水が二人を繋いでくれたのでしょうか。
 
 
 
・アンフィモン

 究極体のサイボーグ型デジモン。
 「人間が好き、だから人の生きるこの世界を守りたい」という想いが高まった結果、
 テティスモンが究極進化を遂げた姿。なんかオーバーマンみたいなデザインです。

 名の由来はアンフィスバエナか、それともアンフィニか。
 どちらも「無限」を指す言葉ですが、そういえばクラゲの中でもベニクラゲは
 死と再生を繰り返して一個体が連続すると言われていますね。

 これまでも割と肉体派でしたが、ここへ来てさらに拍車がかかりました。
 「アクアザンバー」でクティーラモンの一撃を切り返し、アクアグラインダーも
 ほとんどライダーキックな「ライバーンブレイク」で押しのけ一撃を入れています。
 そのたった一発で、クティーラモンを戦意喪失へ追い込みました。

 また守備においても優れており、クラゲ型ビットを展開しての電磁フィールドで
 清司郎を窮地から救っています。これもパートナーを守るための力でしょう。
 ただ応用性においてはテティスモンに分があるので、こちらは戦闘力特化と言えそう。

 この系列の常として進化すると性格や喋りが変わるわけですが、今回のキャラ付けは
 まさかのエセ外人でした。つまりは宮内レミィ型です。ちょっと例えが古いデスね。
 なるほどそう来ましたか……顔が見えないぶん怪しさ満点ですな。
 
 
 
・エスピモン

 今回は別行動なので登場しません。名前のみ言及があります。
 いても主戦場が水中では何もできなかったでしょうけど。
 
 
 
・サブマリモン

 アーマー体の水棲型デジモン。
 神社を目指す宙たちのもとに現れ、以後行動をともにしました。

 周知の通り、「デジモンアドベンチャー02」における火田伊織のパートナー、
 アルマジモンが「誠実のデジメンタル」で進化した姿としての登場が最初。
 活躍場面は決して多くありませんが、水中においては無類の強さを発揮していました。

 今回もそうした前例に漏れず、大変気のいい性格です。
 初対面の宙たちに快く協力したばかりか清司郎をカバーし、ハンギョモンから守るなど
 もし出会えてなかったら詰んでたかもしれないぐらい貢献してくれました。
 他者を乗せることが前提みたいな身体構造だし、誰かの役に立つことが好きなのかも。

 中の人は菅原正志さん。シリーズ初登板です。
 主に90年代での活躍が著しいベテラン声優さんで、「熱血最強ゴウザウラー」
 の歯車王にエンジン王、「勇者特急マイトガイン」のエグゼブ、「マクロス7」のレイ、
 そして「機動戦士ガンダム0083」のバニングと昔からシブい役を演じておられました。
 今回はバニングさん系のキャラ付けってことになるんでしょうか。
 
 
 
・クティーラモン

 究極体の妖精型デジモン。
 マリンエンジェモンがそのまんま悪に反転したような姿ですが関連は不明だそうです。
 名の由来はそのままズバリ、クトゥルーの娘とされるクティーラからですね。
 …ということは、ああ見えてオレっ娘だったんでしょうか??

 干からびて浜辺に倒れていたところを回収され、とりあえず神社に祀られていたところ
 ハンギョモンたちの暴挙で水がその神社にまで至り、これによって復活を遂げます。
 干からびた状態でも死なないあたりはさすが究極体というべきなのでしょうか。

 ハンギョモンたちの主人でもありますが、彼らの行動を咎めることはなく
 それどころか行動範囲を広げるため、世界中の人間から水を搾り取ろうと企てます。
 究極体としての戦闘力はやや低めですが、周囲の水を被った時点でアウトという
 人間には極めて不利な環境で優位に戦い、あと一歩まで清司郎組を追い詰めました。
 テティスモンを捕まえておいて清司郎を狙わせるなど、ズル賢さは設定通り。

 が、アンフィモンが登場したあとはあっという間に形勢逆転されて戦意喪失。
 微妙に脅迫めいた説得を受け、人々から搾り取った水を元に戻しました。
 自分が楽しければいいと刹那的なことを言ってましたが、何のことはありません。
 その場のノリで行動してただけみたいです。悪としての格が高いとは言えませんね。

 中の人は石上静香さん。こちらもシリーズ初参加です。
 「トライブクルクル」の飛竜ハネルや「魔法陣グルグル」のニケと男子役も得意ですが、
 少女役や大人の女性役、お色気たっぷりな演技もこなすなどマルチな方。
 ゲームでは「マギアレコード」の加賀見まさらが印象的です。
 
 
 
・ハンギョモン

 完全体の水棲獣人型デジモン。
 種としてはかなりの古株で、無印の時点で登場を確認することができます。
 ただし今回含め、単独で1話を占める活躍をしたことはありません。
 クティーラモンに仕えているのは「02」のオマージュですかね。

 陸上での行動も可能で、暗躍しては人々から水を搾り取って街を水浸しにし、
 これを神社まで至らせてクティーラモンを復活させました。
 複数いる中の誰かが思いついた暴挙です。

 そのままクティーラモンに従って世界中の人間から水を搾り取ろうと動き出し、
 サブマリモンを執拗に攻撃して清司郎を放り出すなどの貢献を果たしました。
 しかしアンフィモンによってクティーラモンが制圧されると嘘のように大人しくなり、
 その意向に従って人々から生成した水を元に戻しています。
 彼らにとってクティーラモンの意志は絶対なのですね。洗脳でもされてるのかな。

 完全体らしく、陸上でもガンマモンやアンゴラモンでは到底かなわない強さ。
 しかしサブマリモンに決め手ほどは取れず、アンフィモンには相手にもされてません。
 でも戦闘集団としてはかなりヤバい連中ですから、放置しとくのは少々不安ですね。

 
 
・宙のデジモン調査ファイル

 もちろんクティーラモンの紹介です。
 瑠璃っつーか小林画伯の「水をくれぇ〜(掠れ声)」がスゲエ。
 
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「吐き出せ…絞りきれ…! お前の命!」(ハンギョモン)
 
 人からデジタルデータの含まれた水を吐き出させる際の口上。
 よく見ると、柄杓のようなものを槍の先につけています。
 まさしく船幽霊のモチーフですね。
 
 
「ほどほどにしてくださいね…今日で十二件目ですよ?」(清司郎)
 
 人間のお祭りにハマっているジェリーモンに。
 興味しんしんです。今に始まったことじゃないですが、後半への布石ですね。
 
 
「あれ? どうなってんの? 
 …ま、いいか。キャハハハハハ!」(クティーラモン)

 
 宙と瑠璃に水をぶっかけた結果、二人が水を吐き出すようになってしまったのを見て。
 こういうところからも、極めて浅慮な性格を見て取ることができます。
 アンフィモンの強さに音を上げた際には子供みたいな駄々を捏ねていましたし、
 その場の感情で行動しがちなのでしょう。
 
 
「ぼ、僕が世界の人たちを…守る!
 きょ、今日は…カンストしないぞーっ!」(清司郎)

 
 戦えるのは自分たちだけと悟り、かつても似たことがあったと思い出しながら。
 なんだかんだ少しずつ成長してるってことでしょう。
 
 
「まかせな!」(サブマリモン)
 
 清司郎のために自分の操縦席を開いて。本当にいいヤツです。
 声も渋いし、頼れる海の兄ちゃんって感じ。
 ちなみにそのキャノピーは極めて頑丈で、最後まで破損はしませんでした。
 
 
「怖くて…危なくって……」
「でも、楽しいことも、たくさん……
 ダーリンが…人間がいるからこそ、この世界は楽しい。
 たぶん私は…人間が好き?」
「天ノ河くん……月夜野さん……寮生たち……
 ひょっとすると、僕も人間が好き…?」
「大好きな人間たちを…!」
「「守ってみせる!」」(清司郎とテティスモン)

 
 清司郎が水中に放り出された際、不思議と通じ合った瞬間。
 何かと振り回し、振り回される間柄ですがちゃんと共通点があったのです。
 清司郎も大人から同年代まで、多くの人の間で辣腕を振るっていますからね。
 少なくとも「人々にいなくなってほしくない」という一点において、彼ら二人は
 誰よりも強く信頼し合い同じ方向へ歩めるのでしょう。
 
 
「Hi! クティーラモン! ここでstopネ!」(アンフィモン)
 
 クティーラモンへの第一声。
 貴方そんなキャラなの!? ってなった瞬間でもあります。
 
 
「海辺にて、白と赤との晴れ姿。水もしたたる、よき二人…かな」(アンゴラモン)
 
 ラストシーンにて。今回のアンゴラポエムです。
 割と見たまんまですが、最後にちょっと言葉遊びをしてますね。
 
 
 
 
★次回予告

 死者蘇生がテーマみたいですね。かなり重い話になりそうな……
 そして何者が絡んでくるのかまたしても読めません。
 高確率でアンデッド型だと思うんですが外してくることも多いしなぁ……