真紅ノ収穫祭

脚本:佐藤寿昭 演出:角銅博之
作画監督:Noel_Añonuevo/Eugene_Ayson
総作画監督:仲條久美

★あらすじ

 瑠璃が以前に通っていたピアノ教室の友人、カオルが行方不明になります。
 現場と思しきに残されていたのは異様な長方形の凹みと、彼女の靴だけ。
 瑠璃たちが調べてみると、他にも多数の行方不明者が出ていると判明。

 全ては超古代文明の遣い、エンシェントスフィンクモンの仕業でした。
 人々を石に変えてこれを積み上げ、ピラミッドを造ることによって
 ゲートを開き、超古代文明の王・ファラオモンを復活させようというのです。

 阻止しようにも、宙と清司郎は早々に石にされてしまいガンマモン達は進化不能。
 そのうえエンシェントスフィンクモンは圧倒的強さで、歯が立ちません。
 瑠璃を最後の石、キャップストーンにしようと迫るエンシェントスフィンクモン。

 人の文化を一顧だにもしないこの難敵に、瑠璃とラモールモンは心を一つとします。
 人の文化を愛す二人の絆が結実し、究極体ディルビットモンとして昇華されました。
 これにより、形勢を一気に互角以上へ押し戻すことに成功。
 エンシェントスフィンクモンは秘技「ネクロエクリプス」を放ってきますが、
 それは彼の自滅を招くものでした。

 かくてファラオモンの復活は阻止され、石にされた宙たちも元に戻ります。
 世界を救った瑠璃たちは、何事もなかったかのように元の生活へ戻りました。
 二人にとっては、どうやら今回の大活躍も通過点のひとつでしかないようです。
 
 
 
 
★全体印象
 
 58話です。2023年最初の放送回。

 予告から容易にファラオモンの登場は予想できた回ですが、そちらではなく
 同じエジプト神話モチーフであるエンシェントスフィンクモンがメインでした。
 このデジモンが映像作品にちゃんと出るのは初めて。

 そして大方の予想通り、瑠璃組の究極体・ディルビットモンが登場しています。
 一緒にいろんなことを楽しんだり、時には喧嘩して仲直りしたりと
 マイペースながらメインの中では一番ハッキリ絆を育んできた組み合わせなので、
 進化の際の盛り上がりはともすると宙組以上だったかもしれません。
 まあ顛末が相手の自滅なのはアレでしたが。これも作風か……

 これで残る究極体枠は清司郎組のみ。
 今回からの新ED「TakeMeMaybe」も別れを予感させる歌詞になってるので、
 3月までという予感が現実のものになりそうな感じです。
 休止などを考慮するならあと10話ぐらいってことになるでしょうか。
 こりゃ3月ぐらいから一気に畳む気かな。

 脚本は佐藤寿昭さん。
 総作監は仲條久美さんですが、作監陣に珍しく日本語名がありません。
 :にもそういう回はありますが稀だったはずです。
 
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・宙組

 今回はあっさり戦力外になってしまいました。
 瑠璃組メインなのでグルスガンマモンの登場やその兆候もありません。
 清司郎組ともども、状況を作るためにだいぶワリを食ってます。
 
 
 
・清司郎組

 宙組とほぼ同時に戦力外となります。
 清司郎については石になる場面すら省略されてるので、一番扱いが悪い形。
 
 
 
・瑠璃

 割と久々に「ピッタリ探し」が出ましたが、今回はこれが活きた形。
 彼女の「ピッタリ」とは心から「自分のやりたいことはこれだ」と思えることで、
 つまりは人生を賭けるに値するものを意味しているのかもしれません。
 そして、それはまだ見つかっていないのです。

 ただ、やってみたいと思うものなら今までの経緯の通りたくさんありました。
 それは、世界に面白いことが溢れているという証拠でもあります。
 且つそれを思うがまま、時には我儘に選んで生きる自由が今の彼女にはある。
 選ばない自由も、手放さず嗜んで楽しむ自由だってあるのです。
 あるいは、探し続けながら自由に生きることこそが彼女の本質なのかもしれません。

 でもその生き方は、人と人の文化があってこそのもの。
 それを全否定したあげく、一方的な支配を押し付け自由を奪うような手合いは
 彼女にとって不倶戴天の敵と表現しても過言ではないでしょう。
 エンシェントスフィンクモンはまさにそれです。
 
 
 
・アンゴラモン → ラモールモン

 彼はそんな瑠璃のそばで人の世界を知り、文化を知り、そして愛していました。
 もっと言えば、瑠璃に出会う前からすでにそうだったのです。
 瑠璃に出会ったことで、その気持ちはより大きく強くなったはず。

 その彼にとって瑠璃は護るべき大切な人であるというだけではなく、
 気ままにやりたいことや学びたいことを見つけて共に嗜む同志でもあります。
 あるいは日がな一日一緒に違うことをして、ゆっくり過ごす日があってもいい。
 時には一緒になって、気になるものを見つけに行く日だってあるかもしれない。

 瑠璃のそんな平穏を奪うことは、彼にとってもはや半身を奪われるに等しいことです。
 だから彼は、彼女は立ち上がったのでしょう。
 護り護られるだけの関係ではなく、自身の生き方と尊厳を守るために。
 それを育んでくれた、この世界と文化を守るために。
 
 
 
・ディルビットモン

 ラモールモンが究極進化を遂げた姿です。
 タイプとしては極めて稀少な獣騎士型デジモンであり、同カテゴリでは久々の追加。
 あのミラージュガオガモンと同じカテゴリであるうえ、中の人が同じだったりします。

 その姿は再びスマートとなり、且つより人間に近いものとなりました。
 武器を携えていることも含め、ジンバーアンゴラモンとラモールモンの特徴を入れつつ
 より研ぎ澄ましたイメージに仕上がっています。
 優雅な装飾は公式画像よりもさらに騎士とか剣士を連想させてくれます。

 戦闘においてもこのイメージ通り、エンシェントスフィンクモンと互角以上の実力。
 「トラスゲイン」を皮切りに、残像を残すほどの超高速斬撃「バックストラッシュ」で
 「ダークブラスト」を一方的に打ち破り、優位に立っています。
 剣はシリウスモンも使いますが、剣技においてはこちらに軍配が上がるでしょう。

 その後「ネクロエクリプス」に押し込まれそうになりますが、隙を衝いて脱出。
 この際の切り返しが、事実上の決まり手となりました。
 飲み込まれるエンシェントグレイモンに思わず手を差し伸べるあたりにも、
 アンゴラモンと変わらぬ優しさを垣間見ることができます。

 中井さんの演技はアンゴラモンやジンバーアンゴラモンよりは重く、
 ラモールモンほどはドスを効かせていない感じ。氏本来の得意レンジですね。
 つまりはますます海賊狩りっぽくなったってことですが。
 
 
 
・エスピモン

 なんだかんだ大変な事態が増えたためか、彼の参戦も増えています。
 しかし果敢に「モットボム」を放ったものの、屁の突っ張りにもなりませんでした。
 「オイラも進化してぇ〜」というセリフは何かの布石でしょうか。
 
 
 
・マミーモン

 事がファラオモン絡みということで、直接の進化元でもある彼も絡んできてます。
 といっても本来の仕事である医者としてではなく、戦闘員としての参加。
 とはいえさすがに相手が悪く、得意の射撃も人間から作られたピラミッドの近場では
 思うように使うことができず戦力としてはあまり貢献できていません。

 ファラオモンについてはいろいろ詳しく、ゲートの向こうにその棺を垣間見た際には
 戦慄とも感動とも取れる反応を示していました。
 また、ファラオモンが完全に復活したら打つ手がないとも証言しています。
 何らかの理由でその恐ろしさを承知していたのでしょう。

 モチーフがモチーフだしファラオモンとは間違いなく深い関係にあると思うのですが、
 結局その詳細が明かされることは最後までありませんでした。
 ハッキリしているのは、彼自身もファラオモンの支配を望んではいないということ。
 実際に現れてしまったら、真っ先に諦めてしまいそうではありましたが。
 
 
 
・エアドラモン

 なにげにこっちも最近出番が増えてます。
 しかし相手が強すぎるため、足役以上のことはできていません。
 シナリオ的にいてくれると非常に助かる存在なのは確かでしょうけど。
 
 
 
・エンシェントスフィンクモン

 究極体の古代幻獣型デジモン。
 「フロンティア」における追加戦士枠、木村輝一が使う闇のスピリットの原型であり、
 伝説の十闘士として当該作内のDWでは守り神のような位置付けだった存在です。

 設定では「破壊と消滅を司る死を招く闇の獣」とされており、今回はそれを拾った形。
 人間の世界と文化を一顧だにもせず、人を材料にピラミッドを構成する巨石を作り
 それをもって巨大なピラミッドを完成させ、超古代文明の王とされている
 ファラオモンを復活・降臨させ、人間の世界を支配させようとしていました。

 人を石に変える過程はまず謎かけをし、答えられない者をこれに変えてしまうというもの。
 最初は一人ずつやっていましたが、途中から映画館などに現れ観客をまとめて石化してます。
 人間のことを「愚か」と言っていたし、一人一人相手にするのがバカらしくなったのかも。

 宙が早々に石にされたことにより、登場時点で唯一対抗し得るであろう存在だった
 シリウスモンへの進化が封じられてしまい、結果として人間界を大ピンチに陥れます。
 宙たちのことを「邪魔者」と表現していたところをみると、宙を最初に襲ったのは
 狙ってのことではないかと疑われるところ。

 その後も順調に石を積み上げてゆき、瑠璃が擬似デジタルフィールドを展開した頃には
 すでに完成の目処が立っているところまでピラミッド建造を進めていました。
 そのうえ彼女を頂上の石、キャップストーンにしようと襲いかかリます。
 ガンマモン達やエアドラモンはもちろん、ラモールモンさえをも物ともせず、
 ファラオモン召喚まであと一歩というところまで漕ぎ着けました。

 ディルビットモンが登場したことで逆に追い込まれそうになると、最大の奥義である
 「ネクロエクリプス」を使い、現れた暗黒空間へ押し込もうとしてきます。
 これは文字通り、相手を死の闇に包み込んで消滅させてしまうというもの。
 いわゆる亜空の瘴気というやつですね。ガオン!

 が、ディルビットモンに脱出されたことで体勢が逆転。
 止める暇もあらばこそ、自分の暗黒空間に呑み込まれて消滅してしまいました。
 ぶっちゃけ自分の毒で死んでしまったようなもので、なんとも締まらない退場。
 倒すしかなかった相手ですが、作風の弊害が出たかもしれない死にっぷりでした。
 これだったら普通に斃させても良かったんじゃねえかなぁ……

 中の人は木下浩之さん。
 舞台に吹替、テレビドラマ、声優と何でも精力的にこなす超ベテランです。
 悪役としては「アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン」のウルトロンが有名。
 「Gのレコンギスタ」のグシオン・スルガンのような真面目なお父さん役もこなしてます。
 存在感のあるお声がキャラを引き立てていました。
 
 
 
・ファラオモン

 究極体の魔人型デジモン。
 エンシェントスフィンクモンが復活させようとしていた存在であり、
 デジタルワールドの超古代文明を創った絶対的支配者でもあります。
 設定によれば、かつては多くのエリアを支配していたのだとか。

 その力は神にも近い位置付けであり、マミーモンのセリフ通りであるなら
 出てきた瞬間に人間界が支配されてしまいかねないレベルのようです。
 たぶん長い眠りについていたところを、先に目覚めていたエンシェントスフィンクモンが
 新たな支配の地として人間界を降臨させようとしていたのでしょう。

 結果的にはエンシェントスフィンクモンが斃れたことでピラミッドも元の人間に戻り、
 ファラオモンもまた復活することなく別次元へ再び消えています。
 その事実こそ、ファラオモンが恐ろしい存在である証拠かもしれません。

 「クロスウォーズ」に出てきた個体とはいろんな意味で真逆ですね。
 そんなところもデジモンのキャラ付けの幅広さなのですが。
 
 
 
・宙のデジモン調査ファイル

 今回はもちろんスフィンクスについての紹介。
 ただこのモチーフ、神聖だったり怪物的だったりで一様じゃないんスよね。
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「リードル。リィードル……」
「答えよ。其は何ぞ」(エンシェントスフィンクモン)

 
 エンシェントスフィンクモンを象徴するセリフ。リドルとは「謎」のことです。
 関係ないけど「バットマン」のリドラーって前はナゾラーって日本語名だったんですよね。
 
 
「発表会とかって、ちょーっとピッタリ来なかったのよね〜。
 でも、楽しいの」(瑠璃)

 
 あまり人に評価されるようなことはやりたくない、ってところでしょうか。
 要するに人の評価なんか気にしなくていいコトが良いんでしょうかね。
 アンゴラモンは「それもいいかもね」と評しています。
 
 
「音楽? 芸術? 文学?
 成熟しておらず、粗雑で不完全。其は何ぞ?
 其は、人間の文明なり」(エンシェントスフィンクモン)

 
 ラモールモンをあしらいながら。
 瑠璃たちが嗜んでいるものを全否定する物言いです。
 加えて、ファラオモンに従うならば人間を生かしてやらないこともないと言ってます。
 しかし、それは生殺与奪の権利を握られるということ。
 瑠璃にとっては最も不本意な状況でしょう。もちろんアンゴラモンにとっても。
 
 
「ピアノ…あるのか……?
 瑠璃のピアノ…心、落ち着く……
 剣豪、小説……うずうず、真似する…!
 甘いお菓子…紅茶…温泉……旅すれば、文化の香り…!」
「遊園地…お花見……結婚式!」
「もっと知りたい!」
「あたし、ピッタリな趣味…まだ見つけてない!」
「オレ…守る! 瑠璃を…」
「「この世界を!!!」」(瑠璃とラモールモン)

 
 自由と文化を愛する二人が謳いあげる、支配への叛逆です。
 回想は静かなシーンが多いですが、それこそが二人を育んできたもの。
 凶暴とされるラモールモンが瑠璃の言うことは忠実に聞いて己を律していたどころか、
 こうしてひとつひとつ語りあげるまでになっているのも瑠璃との絆あってこそでしょう。
 そしてその絆は、華麗にして鮮烈な剣士の姿へと結実してゆきます。
 
 
「瑠璃と人間たちの、名誉のために!」
「去れ、エンシェントスフィンクモン!
 超古代デジタルワールドを復活させ、人間の文明を滅ぼさんとするその野望、
 断じて許さぬ!」(ディルビットモン)

 
 エンシェントスフィンクモンに相対して。
 アンゴラモンの知恵、ジンバーアンゴラモンの速度、ラモールモンの力。
 それら全てを高いレベルで併せ持った、堂々たる獣騎士の言葉です。
 
 
「フフフ…大したものだ。
 王よ。現代を生きる者たちも、捨てたものではなかろう……」(マミーモン)

 
 ピラミッドが崩れ、再び次元の彼方へ去ってゆくファラオモンの棺を見送って。
 ひょっとしたら彼も実際に、超古代文明の末端に仕えていたのかもしれませんね。
 多くを語らない以上、真実は闇の中ですが。
 
 
「世界も守ったことだし、次は何しよっか? アンゴラモン?」
「好きの心音奏でれば、楽しき日々よ…風の吹くまま」(瑠璃とアンゴラモン)

 
 ラストシーン。今回のアンゴラポエムを含みます。
 二人が欲しいものは世界を救った栄誉ではなく、ただ自由と平穏だけなのでしょう。
 
 
 
 
★次回予告

 ジャスティモンか? と思いきやなんかトノサマゲコモンっぽいですね。
 忍者映画でも見てかぶれたんでしょうか?
 なんかそれどころじゃない絵面になってる気もするけど……