穢レ

脚本:山口宏 演出:宍戸望
作画監督:澤木巳登理/酒井夏海/仲條久美
総作画監督:西野文那

★あらすじ

 寮生たちが次々と異変をきたす事態がなんの前触れもなく発生。
 清司郎や寮の外のミカ、アオイまでもがまるで魂の抜けたようになり、ただひたすら
 「穢れ」を消し去ろうと異様な行動を繰り返すようになってしまいます。

 ついには瑠璃に異変が及び、街中で元のままなのは宙だけになってしまいました。
 すべては人間界を穢れていると断じ、浄化しようというクズハモンの画策。
 人々から「穢れ」と称して人格を引き剥がし、操り人形同然にしていたのです。
 そして穢れと見做されたものを集めさせ、もろともに焼き浄めようとしていました。

 そうはさせじと立ち向かう宙とガンマモンですが、クズハモンの力は強大でした。
 カノーヴァイスモンの力をもってしても完封され、ついに宙へ危機が迫ります。
 しかし、彼らは決して屈しませんでした。人間もデジモンも穢れてなどいない、
 手を取り合ってより良い未来を目指せる。その答えをここに!
 ガンマモンの究極進化、シリウスモンがついにその姿を現しました。

 秘技でなおも立ちはだかるクズハモンですが、シリウスモンはその結界を突破。
 邪気を寄せ付けない自らの技を破ったその力を認め、クズハモンは手を引きました。
 しかし、彼女が言っていた「あやつ」とはいったい何者なのでしょうか。
 デジタルゲートから多数のデジモンを人間の世界へ解き放ったという、その目的は…?
 
 
 
 
★全体印象
 
 56話です。
 予告では全然わかりませんでしたが、今回でガンマモンが究極体に進化しました。

 カノーヴァイスモンと同じく単発回での進化で、一応デジヴァイスVVの登場や
 ワープ進化の導入など要素的段階は踏んでいたものの、1話完結色が強い都合上
 ドラマ上の前フリみたいなものは目立ったものがなく割に突然感強めです。
 上に書いた通り仕込みはされてたんで近いだろう、とは思ってましたが。

 対するクズハモンは、41話以来となる究極体枠。
 ピエモンと違って戦ってどうにかする以外なさげな雰囲気が醸成された瞬間、
 シリウスモンの登場を予感した人は多かったんじゃないかと思います。

 また今回は序盤から既に事態が大規模進行しているなど、最初から飛ばしてます。
 この点からも、本話がここしばらくとは一戦を画すノリだとわかるでしょう。
 問題は急に来て急に展開することですけども。
 本作らしいと言えばらしいんですが……

 脚本は山口宏さん。究極進化回だけどシリーズ構成担当じゃないんですね。
 無印が既にそうだったように、別に珍しい話ではないですけど。
 演出の宍戸望さんは23話以来の登板になります。ずいぶん間が空きましたね。
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・宙

 今回だけだと語るべきことはだいたいセリフコーナーの方で補完できると思います。
 これまでのお話を思い出してください、という感じですね。
 だいぶ思い切った構成ですが、これも話数に余裕があるゆえでしょうか。
 :と違ってメインメンバーも少ないですからね。
 
 
 
・ガンマモン → カノーヴァイスモン

 ただ一人マトモに戦える存在として、宙とともにクズハモンへ立ち向かいました。
 究極体とガチバトルするのはこれが初めてですが、完全体進化の力がまるで通用せず
 本気を出させることもできないまま抑えつけられてしまっています。
 完全体の強さを2クール以上見せてきたぶん、かなりインパクトのある場面でした。

 「グランノヴァ」はダークナイトモン戦以来二度目の使用となる大技ですが、
 今回はクズハモンの力の前に完封されてしまっていました。
 上記のダークナイトモン戦でも相殺されてるし、実は撃破率ゼロだったりします。
 最大必殺技のはずなのになんとも微妙な戦績。

 まあ、ダークナイトモンは撃破こそしてないけど負けは認めさせていますし、
 作風上まだ完全体の活躍機会もあるはずなので、今後に望みを繋ぎましょう。
 
 
 
・シリウスモン

 光竜型の究極対デジモン。
 穢れを断ずるクズハモンを否定し、自分たちの絆を見せつけるために現れた
 宙とガンマモン二人の進化とも言える存在です。

 両腕に複合武装「シルヴィア」を装備しているのが大きな特色。
 これは射撃技「フォトンブラスター」とエネルギーの充填されている実体剣
 「コスモブレード」が組み合わされたもので、距離を選ばない戦い方ができます。
 当然のように飛行可能なので、成熟期三形態の長所を併せ持ちつつ
 さらに究極レベルで完成された、極めて強大な戦闘力を秘めていると言えます。

 容姿としてはシャイングレイモンをベースにウォーグレイモンの要素を足し、
 翼状のマントに完全体以前の印象を残した仕上がり。少しガイアモンにも似てます。
 両腕が武器なところはウォーグレイモン寄りですが、顔はオメガモン似。
 全体としてはカノーヴァイスモンの順当な究極体という感じですね。
 意外性というほどのものはないけど、王道を往ってるかもしれません。

 劇中ではそれまで全く歯が立たなかったクズハモンと互角以上の戦いを演じ、
 「ブレイクエーサー」で秘技を破って錫杖を叩き折る活躍を見せました。
 演出的にはクズハモンも斬られてておかしくないんですがそこは作風です。
 勢い余って倒しちゃっても不思議ではないノリでした。

 当初のカノーヴァイスモン同様、まだ切り札があるっぽいですね。
 追い詰められた時しか出せないっぽいので、ちょっと期待が募ります。
 
 
 
・瑠璃組

 中盤まで宙組と事態の把握に駆け回ってましたが、瑠璃が中盤で捕まってしまい
 アンゴラモンだけ孤立してしまったため、ほぼ見守るしかできない状態でした。
 ポエムはちゃんと?あります。
 
 
 
・清司郎組

 メインの中では清司郎が真っ先に捕まってしまったので見せ場なし。
 ジェリーモンは標的じゃないため無事でしたが、できることはほとんどありませんでした。
 操られてる際も寮長は寮長のまんまでしたが別に嬉しくありません。
 描写はないけど、自室のコレクションは無事ないし再確保できたんでしょうか。
 
 
 
・エスピモン

 ガンマモンらと行動してましたが、事態が大きすぎてほとんど何もできてません。
 そういやあ、しばらくリュウダモンの顔も見てませんね。
 ギンリュウモンに進化したままなら、おいそれとは出せないでしょうけど。
 
 
 
・コタロウ、理久、アオイ、ミカ

 揃っての登場ですが、半数の目が既に死んでてあとの二人も同じ目に遭います。
 なんかヒドい目に遭う率が上がってきてるような気がしますね……
 
 
 
・クズハモン

 究極体の神人型デジモン。
 狐系デジモンが進化を重ねると大抵はこの存在に行き着くといわれています。
 なにげにチョイ役のヨウコモン、38話のドウモンとは同系列。
 逆にレナモンは出てないのでなんか惜しい感じになっています。

 穢れたものを浄化しなければならないという使命感に突き動かされており、
 人々を結界に拉致しては「浄化」と称して人格を引っぺがすという暴挙に出ていました。
 「浄化」されると人格が失せ、擬似デジタルフィールドでは木偶の外見になります。
 この姿こそすべての穢れが浄化された理想の姿ということですが、廃人にしか見えません。

 行動は極めて迅速で、宙たちがある朝起きた時には既にかなり事態が悪化してます。
 最終目的が果たされていたら取り返しのつかないことになるところでした。
 被害が少なく済んだのは宙とシリウスモンの活躍のおかげです。

 極めて独善的な動機で動いている存在であり、なんとも始末に負えない手合いなのですが
 初の究極体枠でもあるため、その実力も始末に負えません。
 数々のデジモン達を退けてきたカノーヴァイスモンすら、完全に翻弄されてしまうほどです。
 「ドラゴニア」や「グランノヴァ」を「裏飯綱」一本でほぼ完全に抑えてのけ、
 直接は一切手を出すことなく動きさえも封じ込めてしまいました。
 そのうえ、裏飯綱の爪はカノーヴァイスモンの防御すらも抜く鋭さです。

 カノーヴァイスモンを動けなくした上でゆっくり宙の「穢れ」を引き剥がそうとしますが、
 二人の思わぬ抵抗によりシリウスモンが爆誕、一気に互角以上へ押し返されます。
 それでも秘技「胎蔵界曼荼羅」で粘るという底力を見せましたが、攻勢もここまで。
 シリウスモンの大技「ブレイクエイサー」によって技を破られ、錫杖も折られてしまいます。

 「胎蔵界曼荼羅」は一切の邪気を受け付けないとされる技ということです。
 シリウスモンの技がこれを突破したのを受けて自分たちが人間界に来た意味を再考し、
 一連の裏にいる存在と再会を匂わせる発言を残して姿を消しました。
 本作のデジモンは考え方がシンプルなのか、力を示すと話を聞いてくれるんですよね。
 「やっぱやめとくわ、帰る」で済ますには範囲が大規模すぎた気がしてならないけど。

 中の人は浅野まゆみさん。
 持ち役には少年野凛とした女性が多く、「Zガンダム(劇場版)」のライラ・ミラ・ライラや
 「NARUTO」の白(はく)はその代表例と言えるでしょう。
 …そういやあ、白も狐っぽい面をつけてましたね。狐はナルトの方だけど。
 
 
 
・宙のデジモン調査ファイル

 案の定、九尾の狐というか殺生石の話題が取り沙汰されていますね。
 この妖怪、よほどモチーフにしやすいとみえます。まあ事実だけど。
 
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「汚れている…… 汚れている……」(コタロウほか多数)
 
 クズハモンに「浄化」された人々が譫言のように呟いている言葉。
 虚ろな目と覚束ない足取りは、まるでその人ではないかのようです。
 穢れとされるものを抜いたら、その人自身すら否定しまうということなのでしょう。
 
 
「コタ、違う…!」(ガンマモン)
 
 「浄化」によっておかしくなったコタロウを見て。
 デジモンの方がより何かを感じるのか、ミカにもひと目で強い違和感を訴えてました。
 
 
「みなさーん!
 汚れた者がわたしたちの寮に入ろうとしていまーす!」(新島)

 
 寮に入ろうとした宙に。逃げるしかない状況です。
 それにしてもこのセリフ、新島さんの中ではかなり長い方じゃないでしょうか。
 
 
「お前の穢れは十万七千二百九三十一……
 今からその穢れを取り除く…!」(クズハモン巫女モード)

 
 瑠璃の罪状にも等しい「穢れ」を読み上げて。
 実は宙の方が二倍近く多かったりするんですが、なんか理由があるのでしょうか。
 
 
「穢れた人間は、清浄なるデジタルワールドと交わるべきではなかった……
 だが不幸にして接点ができた以上、すべての穢れは祓わなければならない!」(クズハモン)

 
 カノーヴァイスモンと戦いながら。宙の指摘通り、一方的な言い分です。
 クズハモンにとってはデジタルワールドに比べてずいぶん猥雑に見えるかもですが、
 それでもそこには必死に生きている人々がいるのです。その穢れも善行も含めて。

 余談ですが、宙たちと対面した際の演出はサクヤモンを連想させるものです。
 
 
「それの何がいけない…!?
 オレは宙と出会い、いろいろなことを知った…!
 瑠璃…清司郎…いろいろな場所に遊びに行ったり…キラキラに、最強…!
 そして…多くの人間と友達になった…!」
「これが…」
「オレたちの…!」
「答えだあぁぁぁぁっ!」(カノーヴァイスモンと宙)

 
 あくまで人間の穢れを断じようとするクズハモンに。
 激しいバトルよりも、それを支える今までのすべてを見るべしという流れです。
 今までともに生きたすべてに感謝し、今もこれからも共にあるために、
 彼らは新たな境地を掴み取りました。
 
 
「穢れではないのか…!?
 いや、人間との交わりが…この力を生み出したというのか……
 これも我々をこの世界に飛ばした、あやつの計算ならば……」(クズハモン)

 
 「胎蔵界曼荼羅」を打ち破ったシリウスモンに驚愕して。
 この衝撃によって、クズハモンは冷静さを取り戻すことになります。
 
 
「また、みんなでキャンプ行こうな……」(宙)
 
 戦い終わって眠ってしまったガンマモンに。二人の間柄の本質を示すセリフかも。
 究極進化に時間制限があるかどうかは定かじゃありませんが、この進化によって
 完全体の方の時間制限は無くなった可能性がありますね。

 その代わり、一度究極体になると疲れて「冬眠」状態になるのかもしれませんが。
 邪王炎殺黒龍波状態ですね。まだ断定できないけど。
 
 
「朱に交われば、新たな赤が生まれ出でる。
 毒を喰らえど、皿まで食えばよし」(アンゴラモン)

 
 今回のアンゴラポエムです。
 人間との交流で、新たな力が生まれる。
 みんな時々は過ちをおかすけど、それをも含めて愛すればいい。

 要は「ちょっとぐらいは大目に見て、気楽にやっていこうぜ」ですね。
 今回は解釈しやすいですね。
 
 
 
 
★次回予告

 あっ今度はすっごくわかりやすいのが来ましたね!
 わかりづらいのとわかりやすいのが交互に来てる気がする!
 事件そのものはなんか微妙にショボい印象だけど!