千里眼

脚本:藤田伸三 絵コンテ:畑野森生 演出:羽多野浩平
作画監督:川口弘明/佐藤敏明/内藤伊之介/河野純市
総作画監督:金久保典江

★あらすじ

 釣り掘で釣りを楽しむ宙とガンマモン。
 ところが、一緒に来ていたエスピモンの様子が急におかしくなります。

 不審に思っていると、今度は宙自身に異変が発生しました。
 周囲の人間に迫る危険が、まるで予知のように見えるようになったのです。
 この「予知」が起こるたび、彼は刺すような頭痛に襲われるのでした。
 しまいには頭からツノが生えてくる有様。他でも同じ症例が多発していました。

 クロックモンも加わっての調査で、一連はフジツモンの影響と発覚。
 本来はオクタモンと常に共生し、単独では動かないはずのデジモンです。
 瑠璃たちがオクタモンを捕まえて話を聞くと、些細な喧嘩から
 フジツモンが彼のもとを離れ、別のデジモンや人間に取り付いたと判明しました。
 そのうえ、予知を繰り返し続ければ命に関わるといいます。

 リーダーを見つけない限り、フジツモンが離れることはありません。
 そこで宙は無茶を承知で自分に取り付いたフジツモンに先を読ませ、
 彼らのリーダーの居場所を探り当てました。
 リーダーフジツモンはエスピモンの口の中に取り付いていたのです。

 ガンマモンの奮闘とオクタモンの懇願でフジツモンたちは元の場所に戻り、
 宙のツノも消えました。変形した体も後程マミーモンに治してもらい、
 釣り堀には再び釣りに興じる宙たちの姿が現れるようになります。
 終わってみれば、なんともハタ迷惑な幕切れでした。
 
 
 
 
★全体印象
 
 54話です。今回のモチーフはタイトル通りの「千里眼」。
 千里眼を持つ、またはそれに近しい能力を持っているデジモンは存在するので
 その中のどいつが関わってくるのかと詳しい人たちの間で話題になってましたが、
 蓋を開けてみるとまさかのフジツモンというお話でした。

 いや、まさかフジツモンに出番があるとは……
 彼ら、デジモン単体としてカウントすらされていないオクタモンの付随物ですよ。
 それがよもや、こんな形で一本お話をもらえるなんて……
 本作のような作風でなければまず作られなかったお話といって過言ではないでしょう。
 やったぜ! すごいね! って言っていいことなのかよくわかりませんが。

 ただ裏を返すとそれがメインで、派手なバトルは少なく事件の元々の原因も
 実にしょーもないものです。ガンマモンに至っては(まあこれはしょうがないんだけど)
 進化すらしてないし、キャラの深掘りがあるわけでもないので全体としては薄め。
 コタロウにアオイ、ミカと準レギュラーに一通り出番があったぐらいでしょうか。
 着眼点は面白いんだけどあとが続いてないというか……千里眼自体は趣旨じゃないし。

 脚本は藤田伸三さん。作監にはふたりほど新顔があります。
 内藤伊之介さんは20年ほど前から活動してるようですが、河野純市さんは
 まとまった資料がすぐには見つかりませんでした。
 「進撃の巨人」や「呪術廻戦」に参加してるらしいのですが……
 
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・宙

 今回かなり酷い目に遭ってますが、それでも他の人たちの身の安全のために
 危険を承知で自分のフジツモンにリーダーフジツモンの行動を先読みさせるという
 相当の無茶をしていました。苦痛が増すとわかっているにもかかわらずです。

 結果としてツノだけでなく左腕がタコみたいになってしまいましたが、
 単純に予知の副作用なのか体が無理やり適応しようとしたのかは定かじゃありません。
 もっとも、ラストシーンを見る限り治すのは難しくなかったようですが。

 今回のことで、彼の備える友人とか周囲の人々への接し方がまた浮き彫りになってます。
 元気だったらいちいち干渉せずに放っておくけど、いざ命が懸かるとなると
 見ず知らずかどうかに関わらず助けるために手段を選ばないというか……
 いずれ最大のピンチを迎えるとして、どういう状況に陥ることか今から心配です。 
 
 
・ガンマモン

 宙とエスピモンの間でオロオロしてましたが、道筋が見えたことで
 エスピモンへの呼びかけに全力を集中させ、正気へ戻すことに成功しました。
 進化までは無理でしたが、代わりに成長期での技を久しぶりに見せてくれています。

 宙(のフジツモン)の予知によれば、角を曲がったところでトラックに撥ねられ
 大怪我を負うはずだったらしいです。ビジョンでは派手にぶっ飛んでいました。
 これぐらいで大怪我するかなあ? とミもフタもないことを考えてしまったのは秘密。
 
 
 
・瑠璃組 / 清司郎組

 途中から合流して事件解決に奔走していましたが、見せ場というほどのものは無し。
 進化はしてるものの、リーダーフジツモンの先読みで有効打も稼げていません。
 有耶無耶になったけど、寮長は結局超レアアイテムを渡さずに済んだのでしょうか……
 
 
 
・エスピモン

 本編中で最初に異変を見せた人物。本当に急におかしくなっています。
 釣り堀を覗き込んだ時点で、リーダー含めた大量のフジツモンに取り付かれたのですね。
 あの唐突さも違和感という名の演出でしょうか。

 デジモンだからか、多数に取り付かれていてもそれが原因の不調には陥りませんでしたが
 代わりに人格が乗っ取られたようになり、無機質・無表情になっていました。
 本来の彼を知っている者からすれば違和感バリバリです。

 戦い方も計算高くなっており、モットボムをひそかに走らせてジンバーアンゴラモン達を
 背後から急襲させたりと厄介な側面を見せつけました。
 飛行可能だし、成長期としては敵に回すと結構めんどうなタイプだと強調されてます。

 最終的にはガンマモンともみくちゃになる中、必死の呼びかけで正気を取り戻し
 口の中にいるフジツモンたちの姿を晒しました。
 それから彼らが戻るまでずっと口を開けっぱなしだったので、さぞ疲れたことと思います。

 命が関わってないだけで、彼も宙に負けず劣らずの被害者だったといえましょう。
 本人のセリフじゃないですが、ツイてなかったのです。
 あんなに取り付かれたのが宙だったらと思うと、むしろ手柄だったのかもしれませんが
 そんな事実は慰めにはならんでしょうね……
 
 
 
・コタロウ / アオイ / ミカ

 珍しく揃っての登場。
 コタロウは階段からの転落、アオイはスケートボード中の事故で大怪我をする、
 との予知が出ていましたが、これを見た宙に止められて事なきを得ています。
 もし本当に起こっていたことなら、宙は彼(女)らの恩人ってことになるのですが……

 それにしても、アオイって意外にスポーツ少女だったのですね。
 言われてみれば、あの中では一番スポーティな恰好が似合うかも。
 
 
 
・クロックモン

 オクタモンの情報を得る流れで登場。顔馴染みになって久しいです。
 戦闘での見せ場はありませんが、ポジションとしてはマミーモンと同じく
 お話をスムーズにするために無くてはならないものになりつつありますね。
 
 
 
・マミーモン

 クロックモンのセリフに名前だけ登場。
 宙の軟体化した腕を治療してくれました。彼にかかれば難しくはなかったようです。
 
 
 
・オクタモン

 成熟期の軟体型デジモン。オタクモンではありません。
 種別としてはかなりの古株で、映像作品の出演も「02」からと古いです。
 ユーモラスな見た目からか、ゲソモンに比べ敵役としての起用は少なめ。

 今回は二体が登場。
 コミカルな側面が強調されており、知能と収集癖の高さからゲーム好き。
 対戦ゲームで負けた一体がフジツモンと喧嘩、逃げられたことが事件の発端でした。
 悪意や誤解ではなく、彼らの間が拗れたせいで起こったことだったのです。
 被害者たちは完全なトバッチリということになりますね。

 瑠璃たちが餌に使ったゲーム内超レアアイテムを取り合って斬り合った挙句
 テスラジェリーモンにまとめて鎮圧されるなど、あんまり強くはありません。
 だからこそフジツモンに依存してる部分が多いのでしょうけど。

 でも考えてみたら、もう一体の方は別に何もしていないような……
 まあアイテム争奪戦で寮を壊しかけたし、その点は喧嘩両成敗ですが。

 中の人は興津和幸さんと山口太郎さん。
 山口さんは前にも端役デジモンで出てますが、興津さんはさりげに初登板です。
 というかデジモンシリーズ初登板ですね。意外なデビューになった。 
 
 
 
・フジツモン

 オクタモンと共生しているデジモン。
 世代・種別などはいっさい不明です。まあ無難に水棲型とでもしときましょうか。
 設定の中でしか語られない存在でしたが、今回まさかのスポット担当となりました。

 本来はオクタモンに危険を知らせることで共生関係を築いているのですが、
 上記の通りの経緯でオクタモンのもとを離れ、他のデジモンや人間に取り付きました。
 予知を見せるのは彼らの本能のようなものかもしれません。

 しかし、どうもこの予知には疑わしいところがあります。
 というのも、宙の周りでだけでもあまりに危険が予想され過ぎているからです。
 宙の知らないことも見えていたので実際にある程度未来は見えるのかもしれませんが、
 確実に起こる内容を見せているというより、危険に近づくことで起こり得る事象を
 その確率とは関わりなくビジョンとして見せているだけなのかもしれません。
 実際にはまず起きないか、ずっと軽く済むケースが大半だったのではないでしょうか。

 いずれにせよこれは人外の力なので、フジツモンが予知を発生させると
 脳に大きな負担がかかるばかりか、頭から角が生えてくるという異常が発生します。
 上記の通り、これはフジツモンが取り付いていることによる副作用と思われます。
 あるいは、無意識のうちに体がフジツモンに最適化させられているのかもしれません。

 しかしながら人間の脳ではオクタモンに最適化したフジツモンの作用に耐えきれず、
 最後は頭が吹っ飛んで死に至ります。オクタモン達の証言なので間違いないでしょう。
 そのうえフジツモン達にはリーダーがおり、その号令無しでは離れられないので
 宙たちは必死でリーダーフジツモンを探すハメになりました。

 最終的にはオクタモンと和解して元の居場所であるそのツボの上へと戻るのですが、
 折れたのは完全にオクタモンの方で自分たちに責任はないと言わんばかりでした。
 内心(なんやこいつら……)とその場の何人かが思ったかどうかは定かではありません。

 なお一般フジツモンの声はかないみかさん、リーダー役は竹本英史さんでした。
 前者はデジモン初登板、後者はバンチョーレオモン役などで知られる方です。
 これまた妙に豪華な顔ぶれ。謎の人選です。
 
 
 
・宙のデジモン調査ファイル

 オクタモンを紹介してましたが、今回のメインはどう見てもそっちじゃないスね……
 フジツモン単体の設定がないからしょうがないんだけど。
 
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「本物のヒロは釣りも得意だって北斗が言ってたけど……
 でもアイツはニセモノだしなぁ……」(エスピモン)

 
 釣りを楽しむ宙とガンマモンを俯瞰しながら。
 この直後のシーンでおかしくなります。
 それにしてもこの案件、いつまで引っ張る予定なんでしょうか。
 
 
「…何やってんの……?」(瑠璃)
 
 ジェリーモンの悪ノリで不幸占いを始めた宙に。
 割とドン引いた感じの口調が印象に残ります。
 
 
「宇宙を冒険し銀河のお宝を探す正統派RPG!
 僕は当然レベル・スキルMAX!
 全ユーザーが欲しがる最後のスーパーウルトラレジェンドレアアイテムも、
 ゲット済みさー!」(清司郎)

 
 オクタモンも遊んでいるお宝探しゲームの紹介、と見せかけた単なる自慢。
 わざわざジェリーモンが電撃で演出してますが完全スルーされた挙句
 そのアイテムを餌として利用されることになります。有耶無耶になったっぽいけど。
 
 
「我々は危険を察知するもの。ゲームは危険にあらず」(フジツモン)
 
 ゲームに負けたことで当たり散らすオクタモンに。
 まったくもって正論ではあります。
 
 
「今オレがやらなきゃ、他のフジツモンに取り付かれた人たちが
 もっと大変に…!」(宙)

 
 リーダーフジツモンの行動先読みを自身のフジツモンに依頼して。
 受けている苦痛を思えば自分の安全を最優先しても不思議じゃないところを、
 他の人のために敢えてより危険に挑んでいます。
 こういうとき、彼って妙に自分を賭けるところがあるんですよね。
 
 
「お前、ともだち! また遊ぶ! キラキラ釣る! いっしょにヒロ助ける!」(ガンマモン)
 
 フジツモンに主導権を奪われているエスピモンへの呼びかけ。
 この間、二人が関わった事件についての回想が流れています。
 付かず離れず気味だけど、なんだかんだで結構長い付き合いになってきましたもんね。
 
 
「買い言葉にささいな一言。未来の友はさもありなん。…かな」(ジンバーアンゴラモン)
 
 今回のアンゴラポエムです。
 オクタモンとエスピモン両方について詠んだものですね。
 後半の意味はよくわからないけど。
 
 
 
 
★次回予告

 あっ次回バステモンですね? これは分かりやすい。
 今度の中の人はたぶん本職なんだろうな。