知識王
脚本:佐藤寿昭 絵コンテ:角銅博之/野呂彩芳 演出:野呂彩芳
作画監督:金澤龍/權容祥/仁井宏隆/小澤誠/大山康彦
総作画監督:仲條久美
★あらすじ
京都への修学旅行から戻り、充実を語る清司郎。
ところがその日を境に、彼は徐々におかしくなりはじめます。
寮生のことを忘れたり、当番のことを忘れたりするばかりでなく
ついには瑠璃や宙のことまで忘れてしまい、被害妄想もひどくなる一方。
実は彼は夜な夜な「知識の王」と名乗るバアルモンに勝負を挑んでおり、
勝てば容易に知識が手に入るという利得に釣られて負け続けたあげく
とうとう日常生活に支障をきたすまでに追い詰められていたのでした。
清司郎の知識を取り戻さんと、知識勝負を仕掛ける宙たち。
豆知識作戦が意外な効果を挙げるも、バアルモンを怒らせてしまいますが
彼らの奮闘のおかげで清司郎はなんとか自分を取り戻すことに成功しました。
そして彼はテティスモンと共にすべてを賭け、バアルモンに改めて挑戦。
ホームである京都に関わる問題でバアルモンの油断を誘い、みごと勝利します。
清司郎はすべての知識を取り戻し、宙たちに己の迂闊を詫びました。
清司郎たちの相手に辟易したバアルモンは、京都へ帰ってゆきます。
彼が遣わしていた従者はなんと、本物の幽霊。
恐怖のあまり気絶する清司郎は、すっかりいつもの彼に戻っているのでした。
★全体印象
53話です。今回のモチーフは強いていえば「神社」でしょうか。
その中でも特に「学問の神」を祀った神社を取り扱っていると言えます。
有名どころはやはり北野天満宮ですが、今回登場する鷺ノ川神社は
たぶん伏見稲荷神社あたりがモデルと思われます。
ある意味いちばんの見どころは、清司郎本人です。
普段の彼からは考えられないような表情や言動に加えて
石田彰さんの危機迫る演技が上乗せされ、ヘタなホラーより怖いです。
人間、変わればここまで変わるものなのかと恐ろしくなりますね。
最終的には「知識とは常に更新されてゆくもの」というある種の鉄則と
バアルモンの慢心とも言える心理的思い込みを衝いて勝つわけですが、
これってある種の引っ掛け問題ってやつじゃないでしょうか。
バアルモンの方に「引っ掛かった自分が悪い」と思わせたから良いんだけど。
なお「知識」をテーマのひとつに採っている関係でバアルモンの櫻井孝宏さん、
従者の天神有海さん、宙の田村睦心さん、エスピモンの小林由美子さんと
歴代光子郎+テントモンという知識コンビの中の人が勢揃いしています。
むろん、演者がそうだというだけなので「知識」がなくとも問題はありません。
特に、天神有海さんは最近デジアド関連以外で名前を見てなかったので驚きました。
絵コンテを担当してる角銅さんのツテで呼ばれたのでしょうか。
★キャラなど個別印象
・宙組
脇を固める役どころですが、宙とガンマモンそれぞれの得意?分野を活かし
他の皆とともに清司郎の知識をかなり取り戻すことに成功しています。
ベテルガンマモンでも割と対抗できてるのにはちょっと笑ってしまいました。
・瑠璃組
宙組と共に事件を追い、やはり各々の得意分野で知識勝負に貢献しました。
バトルもしてますが、成熟期止まりなので基本は清司郎復帰までの繋ぎ役です。
・清司郎
今回の主役。
バアルモンから得た知識で大きな結果を得たことに味を占めてしまい、
どんどん負け込んで泥沼にハマっていってしまってました。
上記の通り、追い詰められてゆくその様子は必見ものです。
天才と呼ばれ、知識を得ることに喜びを感じるタイプの彼ですから
こういう餌に食いついてしまいがちなのはわからないでもありません。
取られた分を取り返そうとしてさらに無茶な賭け方をしてしまうあたりは
あんまり賭け事に向いてなさそうな性格と感じてしまいましたが。
しまいには宙たちやパートナーたるジェリーモンのことも忘れてしまいますが、
その宙たちのおかげでなんとか自分を取り戻した上、
「まず確実に向こうの知らないことがある」と気づき勝利しました。
宙たちやジェリーモンが思い出させてくれたのだから、全員の勝利とも言えますね。
全てを取り戻したあと、上記の通り宙たちに詫びを入れているわけですけど
あの後寮生たちにはどう説明したんでしょう。
多忙でストレスが溜まりすぎていた、とでも言い訳したのかな。
本来持ってない知識で完成させたあのプログラムについても気になります。
まあ読み解いて勉強すればいいのかな。
・ジェリーモン → テティスモン
普段留守にしてることが多い彼女ですが、今回またまた裏目に出てます。
本作のデジモンがまず人間を狙ってくる傾向にあるとはいえ、
いつ出てくるかわかるわけがないから仕方ないと言えば仕方ないんですが。
清司郎が大半のことを忘れてしまったため、後半も途中まで進化不能だった上
知識対決でも清司郎の得意分野を問題にしてしまったので一人だけ負けてます。
その知識はすでにバアルモンに奪われていたものでした。
ここまでは良いところなしでしたが、清司郎が復帰してからすぐに
ワープ進化を披露、仕切り直しに持ち込んで最後の知識勝負を挑みました。
バトル初手からいきなりの完全体は前回に続いて二例目です。
そこからは阿吽の呼吸でバアルモンに負けを認めさせ、知識を奪還しました。
知識だけでなく、これを活かす知恵も大事だと示した場面と言えます。
・エスピモン
ほとんどその場のノリみたいな勢いで知識バトルに参加してました。
今回はバトルにもちょっと絡んでいます。
あと寮にやたら馴染んできててちょっと笑いました。
・深津理久
50話以来の登場。準レギュラーの位置を確立しつつあります。
しかし赤錆回、メイクラックモン回に加え今回は寮長であるはずの清司郎に
「誰だキミは!?」と詰られるし、ろくな目に遭ってない気がしますね……
彼のメンタルがちょっと心配です。あの場面では清司郎の方が遥かに重症でしたけど。
・バアルモン
完全体の魔人型デジモン。
初登場と同時に映像出演となった「クロスウォーズ」では元女神の戦士の殺し屋で
さらにベルゼブモンへ転生して実質別キャラになるなど忙しい経歴の持ち主でした。
今回はデジモン図鑑に即した設定で、そのため上記とは印象がまるで異なります。
清司郎に目をつけて東京に足を運び、知識勝負を強引に挑んでその知識を奪うなど
知識を得るためなら手段を選ばない貪欲なところがありますね。
一方で知識というものに高尚さを求めるのはいいとして、宙たちが出した豆知識を
「くだらないもの」と断じてキレ散らかすなど偏狭な側面も多々あります。
また、清司郎はおろか本編中の誰よりも膨大な知識を抱えているという自負のためか
いささか自信過剰なところがあり、しばしば足元を掬われていました。
しかしながら知識への向き合い方自体は真摯なもので、
清司郎たちに裏をかかれて敗れた際には知識というものへの姿勢を新たなものにし
潔く負けを認め、奪った知識をすべて清司郎へ返還しています。
プラマイゼロということで、損はしなかったけど得もしなかった結末。
骨折り損と言わんばかりに普段の姿である本へと戻り、京都へ帰ってゆきました。
この際、何らかの方法でビジョンを与えていた従者二人を霊へ戻しています。
もう用事がなくなったので解放してやったのかもしれません。
中の人は櫻井孝宏さん。
デジモンシリーズにテントモン以外で出演するのは久しぶりです。
ドルルモンやアスタモンはじめ複数兼役していた「クロスウォーズ」以来ですね。
クオーツモンの外道っぷりも印象的でした。
・従者たち
バアルモンが清司郎のもとに遣わしていた二人の従者。
テロップでは女性の方が「姫君」、子供の方が「稚児」とされています。
出で立ちからみて京都から連れてきたのかもしれませんが詳細は不明。
劇中でハッキリ「デジモンではない」と言われていた通り、実は本物の幽霊。
バアルモンに霊へ戻されたときの崩れ際、髑髏のような姿になっています。
この光景と本物の幽霊という事実が、清司郎の恐怖を一瞬で限凸させました。
どういう心境でバアルモンに仕えていたのかは語られていません。
単純に霊だから自我と呼べるほどのものは別になくて
バアルモンに言われた通り動いているだけだったのか、それとも……
中の人は姫君が水希凛さん。以前からモブなどで出演されている方です。
そして稚児の中の人は天神有海さん。なんと初代光子郎の人です。
あとから意図は分かりましたが、いきなりだったので名前を見てビックリしました。
デジモンシリーズに新規キャラで出演したの自体20年ぶりですよ…?
・宙のデジモン調査ファイル
オカルト耐性がないと大変そうだなぁ、と寮長を見てるとつくづく思います。
★名(迷)セリフ
「学園アニメの金字塔さ!
僕はその学園生活に憧れて日本に帰ってきたんだ!」(清司郎)
修学旅行で聖地巡礼してきた推しアニメ「おキツネさまっ!」の説明。
なんか彼の出戻りについてのこの設定、超久しぶりに見た気がします。
間接的にはアイズモン回でも語られてたけど。
それにしても留学を取りやめるほどの動機になるとは、罪なアニメですこと。
いったいどんな内容なのでしょう……
お狐様がらみのアニメって実は相当数あるんスけど、それらの折衷かな。
「そうそう、お狐様の聖地で奉納してきたんですよ!」(清司郎)
後半への伏線。
日にちまでハッキリ言ってるので、改めて見るとかなりハッキリした張り方です。
「静まれ!」(バアルモン)
清司郎を前にしての第一声。一発で櫻井さんだとわかりました。
やはり強い個性のある得がたい声です。
「そうだ……僕は知識が欲しい…!」
「もう一問、もう一問、もう一問…!」(清司郎)
バアルモンとの知識勝負に臨んで。
完全にドツボに嵌っています。
バアルモンとしては、最初にエサを与えて良い思いをさせることで
順調にカモへ落とした感じでしょうか。
「「はぁ!?」」(宙&瑠璃)
清司郎に「二人は恋人なのかい?」と訊かれて。
瑠璃のことを忘れていたので素で訊いてきたわけなのですが、
なんか息ぴったりですね。
いやまあ別に恋人っぽい雰囲気は全然ないですけどこの二人。
同胞とか戦友って表現の方がまだハマる。
「誰がふざけているというんだ!
だいいち、初対面の相手に”ヒガッチ”なんて、失礼な人だ…!
帰らせてもらう」(清司郎)
自分を忘れていることがまだ信じられない瑠璃に。
必要以上に強い口調と知らない誰かを見る目線、そしてそれらの絵を
逆光で影にする演出がたいへん印象的。
「ふざけるな!
知識とは、森羅万象の根源に迫ろうとする気高き行為!
それを、豆知識などと愚弄しおって…決して許せぬ!」(バアルモン)
宙たちが仕掛けた豆知識作戦にブチ切れて。
志が高いあまり、知識に対して貴賎を付けてしまっています。
「…まさに刻々と変化し、絶え間なき精進を求める知識の体現…!
我の……負けだ」(バアルモン)
実はつい昨日、鷺ノ川神社に五百四本目の柱が竣工していたことを知って。
奉納をしたのが清司郎本人ゆえの引っ掛け問題だったわけですが、
京都のことなら知らぬ事柄はないという慢心を思い知らされたのですね。
ちなみに伏見稲荷神社の場合、7号鳥居の奉納には最低585000円かかるとのこと。
これに準ずるなら50万円単位が動いたことになります。
超中学生級の活動をしてる清司郎ですから、動かせる額も大きいのでしょう。
「みんな、すまなかった!
簡単に知識が手に入るのに甘えて、迷惑をかけてしまった!
本当に申し訳ないっ!」(清司郎)
宙たちにへの詫び入れ。こういう時真っ直ぐなのが彼のいいところですね。
ちょっと意地悪そうな顔をした瑠璃が印象的ですが、
もちろん彼女が手を下すまでもなく。
「知にこだわれば角が立つ。勝負に水差せば祟られる。
とかくこの世は驚きばかり……」(アンゴラモン)
今回のアンゴラポエムです。
従者たちが本物の幽霊だったことを驚いて詠まれたもので、
この世にはまだまだわからないことがたくさんある、と語っています。
もっとも、陰陽師回ですでに本物の悪霊が出てきてたりするんですが……
★次回予告
何やらエスピモンに異変が起きていますね……
千里眼というキーワードからいろいろな憶測が飛び交っておりますが、
もしバグラモンだとしたら危険すぎる相手かもしれません……