妖ノ湖
脚本:十川誠志 絵コンテ:福岡大生 演出:西健太
作画監督:北野幸広/徐易/顾斌
総作画監督:二階堂渥志
★あらすじ
河童が出没するという湖にやってきた宙たち。
興味津々な瑠璃はアンゴラモンとエスピモンを巻き込んで抜け駆けするのですが、
夜の湖で何者かに水の中へ引き摺り込まれてしまいました。
瑠璃を探す宙たちの前に、当の彼女が生還します。
救ったのはガワッパモンでした。彼らはいったん瑠璃を閉じ込めましたが、
どうしたわけか宙たちのもとに送り返してきたのです。
ガワッパモンたちと直前に揉めていた「お頭」なる存在が気になる瑠璃は、
仲間とともにふたたび白昼の湖を訪れます。
すると「お頭」ことシャウジンモンが現れ、襲いかかってきました。
迎撃する一同でしたが、水中戦を得意とするシャウジンモンに大苦戦します。
ついに瑠璃へ危険が及ぼうとしたとき、アンゴラモンがワープ進化を。
水中での戦いに苦慮しましたが、上空に叩き上げて勝負を決めます。
ガワッパモンたちの嘆願もあって、倒れたシャウジンモンは介抱されました。
実はシャウジンモンは普段穏やかな性格で、凶暴性を抑え込むために付けていた
数珠が破損したせいで暴走を起こしてしまっていたのです。
湖畔に最近できた工場から、過失により化学物質が漏れていたのが原因でした。
一連の経緯から、宙はあのダークリザモン達に想いを馳せます。
人間の世界は、デジモン達が暮らせるように作られていない──
その命題はきっと、彼らとガンマモン達の間柄にも影響することなのです。
★全体印象
52話です。今回のモチーフはズバリ「河童」。
これについては該当デジモンが限定されるため、特定には困りませんでしたね。
せいぜいシャウジンモンかサゴモンかで予想が割れるぐらいだったでしょう。
流れとしては妖怪もの色が強く、デジモンらしさとは何だろうと考えさせられます。
今回はとりわけ鬼太郎あたりとも互換が利きそうなんでなおのこと思いました。
路線的には鬼太郎(特に6期)よりよほどマイルドなんですが。
バトルでは、前回のカノーヴァイスモンに続いてラモールモンがワープ進化。
前回に続いてなので、本作としては珍しく石を置くのが早めです。
次が清司郎回なので、おそらくテティスモンのワープ進化が披露されるのでしょう。
ただ前回も今回も一回ダウンさせられてから再進化という流れだったんで、
テンポとしては別に良くなってない気がします。
しかもまだ時間制限が残っているというオチ。緩和もされてないっぽいです。
まあアイテムの更新であっさり解決、よりはマシなのかもしれないけど……
脚本は1クール以上ぶりとなる十川誠志さん。
とはいえ2クール目終盤以降は今回を入れて3話しか書いていません。
あんまり全体の流れをバキッと決めてる作風じゃないのは確かですが。
絵コンテには福岡大生さんの名前があります。オボロモン回の方ですね。
作監は本作にしては少なめですが、作画は特に落ちてません。
★キャラなど個別印象
・宙組
バトル担当に徹してましたが、今回は珍しく前座扱いでした。
カノーヴァイスモンがああも一方的にやられたケースは初めてじゃないかと思います。
そろそろ完全体で引っ張るのも限界が見えてきたってところでしょうか……
相性が最悪だったという点は差し引かないといけないですが。
・瑠璃組
夜の水辺は危険だというのに抜け駆けした瑠璃はいかがなものかと思います。
一人で行ったわけじゃないし、一人で危険を冒そうとしたわけでもないんですが
一人になる状況を作っては本末転倒。かなり危ない状況でしたよ。
ガワッパモン達が良識を持っていたから良かったものの……
その上でもう一回湖に行こうとする神経の太さには一周回って感心しましたが。
ラモールモンを制止したのも彼女だし。
バトルではカノーヴァイスモンの後を受け、ラモールモンが活躍。
44話以来の登場と久々なだけあり、きっちり勝負を決めてくれました。
「豪怨毀永斬」を出したのは確か初めてです。
前回といい、完全体の描写仕上げにかかってるのかもしれません。
・清司郎組
戦闘での見せ場はないですが、テティスモンは出番がありました。
シャウジンモンの壊れた数珠を修復するという地味に最重要ポジションです。
彼らがついてきてなかったらどうしようもなかった局面、多くないですか??
それでも47話のシェイドラモンのように、助けられなかったケースもあるんですが……
でもあれは本来もう死んでたんだからどうしようもなかったんですけどね。
・エスピモン
瑠璃の口車に乗り、夜の湖でライト役をやらされてました。
ブツブツ言いながらも手伝うあたり、根の人の良さが出ております。
後半は特に見せ場なし。
・ガワッパモン
成熟期のサイボーグ型デジモン。
「セイバーズ」での湯川所長とともに大たちのピンチを救った活躍が印象的です。
このデジモン、こう見えてサイボーグ型なんスよね。
カメモン系列の中でそもそもシャウジンモンだけが異質なんですけど。
今回は三体が登場。夜の湖で人を攫っていたのは彼らです。
(追記:攫ってる自体はシャウジンモンがやってるように見えます)
ただし本来は善良な者たちなので、凶暴化したシャウジンモンの言いつけに
仕方なく従いつつ、攫われた人間をひそかに逃がし続けていたようです。
また、湖に近づく人間には警告を発して近づかせないよう努めていた模様。
時には直接脅かして追い払おうとしたこともしばしばだったのでしょう。
夜間に現れた時の姿は、藻か何かを使ってできる限り怖くなるよう仕立てた
言わば仮装というかハッタリというか、そういう虚仮威しだったんですね。
が、河童が出るという噂が広まったせいでかえって人が集まるようになりました。
人間というのは、来るなと言われればよけい好奇心を煽られるものです。
このことを嘆くセリフもありました。
しかし業を煮やしたシャウジンモンが自ら人を狩りに動いてしまったので、
宙たちに「お頭」を救ってくれるよう嘆願するという涙ぐましい行動に出てました。
彼ら自身も酷い目に遭ってるはずなのにそこまで思いやれるのは、
それだけ普段のシャウジンモンが慕われていたという証拠でもありましょう。
なお彼らも化学物質の影響を大なり小なり受けており、咳をしている個体もいました。
体調そのものもあんまり良くはなかったんじゃないでしょうか。
湖を離れさえすれば、いずれは改善すると思いますけれど……
中の人は上村典子さん、中友子さん、齋藤彩夏さん。
かなり豪華でありつつ、個体識別がしやすい感じでした。
上村典子さんのお声は久しぶりに聞いた気がします。観測範囲だとスパロボNEO以来?
・シャウジンモン
完全体の魔人型デジモン。
映像作品に登場するのは「セイバーズ」42話以来となります。
味方サイドとしてナイトモン軍団相手に獅子奮迅の活躍を見せてくれていましたが、
ロードナイトモンにはさすがに敵いませんでした。まあ相手が悪いですが。
今回は、ガワッパモン達のリーダーとして登場。
「お頭」と呼ばれてるので、彼らには団名があったりするのかもしれません。
本来は冷静沈着な頼れるリーダーで、ガワッパモン達の面倒をよく見ていたのでしょう。
虐待に及んでもなお助けたいと思わせるほどに慕われてました。日頃の行いって大事です。
デジモンとしての概要によれば、何かを封印した首飾りのうちひとつでも破損すると
凶暴な存在に変貌してしまうという業にも似た設定があり、これが採用された形。
モチーフである沙悟浄が天界から落とされ水怪に成り果てて人を食っていた事実と、
三蔵法師のもとで改心しその従者となった経緯をなぞったものですね。
実際に「天界」というセリフもあるし、ダルクモンあたりと同郷だったのかもしれません。
水中での戦闘力は完全体でもトップクラスに高いようで、縄張りに引き込んだとはいえ
カノーヴァイスモンにほとんど何もさせず圧勝するという実績を挙げています。
これは本作初の快挙とさえ言えるものです。いや暴挙かな?
また陸上でも「ガリアフィッシャー」を軽々と受け止めて驚かれる場面もあります。
痩躯でありながら超重量の「降妖杖」を振り回す高い膂力を示した場面でしょう。
続くラモールモンとの戦いでも水中に引っ張り込んで優位に進めていましたが、
水竜巻を切り裂かれて怯んだ一瞬の隙をつかれる形で空へ叩き上げられ、
体勢の整わないまま「豪怨毀永斬」を受けてダウン。
瑠璃がラモールモンを制止したことでトドメは刺されず、首飾りの修復を受けました。
凶暴化した原因は上記の通りですが、本来なら件の首飾りは
そう簡単に壊れるようなものじゃないのだろうと思います。
デジモンに合わない人間の世界の環境が、このイレギュラーを起こしたのでしょう。
この事実は、宙に人間界でのデジモンのあり方について考えを深めさせています。
中の人は平田広明さん。言わずと知れたシリーズ常連です。
意外に悪役としての登板も少なくない氏ですが、今回は合わせ技みたいな形。
アンゴラモン役が中井和哉さんなので、はからずも?ゾロVSサンジになりました。
・宙のデジモン調査ファイル
今回の寮長は珍しくツッコミ気味に締めてた気がします。
★名(迷)セリフ
「ダーリンの尻子玉♪ どこさ?♪」(ジェリーモン)
河童伝説の話に「尻子玉」が出たのを受けて。
なかなかに誤解を招きそうなセリフと動きです。
そういえば鬼太郎6期の河童回も大変なことになっていましたっけ。
「うーん…… 調べるのは明日。
夜は危ないから、暗い水辺に近寄らないってのはキャンプの鉄則だよ」(宙)
瑠璃に方針を訊かれて。ソロキャンパーとしての経験が窺えます。
なおこのあと抜け駆けされる模様。
「ちぇっ… オイラ、いつもこんな役だ」(エスピモン)
瑠璃に付き合わされて「河童」を探しながら。
そうは言いつつあれこれ付き合ってるあたり暇を持て余してるというか、
なんの手がかりも無いので気分転換してる面もあるのかもしれません。
手がかりが無いのなんて当たり前なんですけども。
「生のまま噛みちぎったとき、滴る血がうめェんだ!
首を…もぎってなぁ!」
「肝だ…! 生き肝がたまんねェ…!」(シャウジンモン)
攫ってきた人間を食わせようとしないガワッパモン達に怒鳴り散らしながら。
これは凶暴だった際の過去の記憶が言わせてることだとは思うんですが、
実はこの件でも一人二人食ってるんじゃなかろうかと思わないでもありません。
「あれ、シャウジンモンさ!」(ジェリーモン)
姿を現したシャウジンモンを見て。
珍しく今回は彼女が指摘してます。アンゴラモンの補足もなし。
水のデジモンについては彼女もかなり詳しいのでしょう。
「なにっ!?」(カノーヴァイスモン)
「ガリアフィッシャー」を正面から受け切ったシャウジンモンに驚いて。
ナメてかかったわけじゃないんでしょうけど、予想以上のパワーだったようです。
しかもこの後、シャウジンモンは彼の巨体を軽々と水中へ投げ飛ばしてます。
「ラモールモン!!!」(瑠璃)
ダウンしたシャウジンモンへ刀を突き立てようとするラモールモンに。
結果、すんでのところでトドメを刺す流れは回避されました。
やはりラモールモンの備える暴力というものは、瑠璃とアンゴラモンの絆あってこそ
制御できるものなのでしょう。ある意味敵方との対比でした。
「すまなかったな、みんな……」(シャウジンモン)
すっかり理性を取り戻して。本来はレオモン寄りの性格だったようです。
凶暴化していた間のことは忘れていたみたいですが、本人的にはやっぱり
「またやっちまったか……」って感覚なのかも。
「皆すべからく棲み家を欲すも、優良物件に当たるは難儀かな。
世は無情……」(アンゴラモン)
今回のアンゴラポエムですが、なんか語呂が悪いというか唐突です。
とはいえ、彼も自身のあり方について思うところありそうですね。
★次回予告
デジモンに詳しい界隈によれば次はバアルモン、というのが濃厚な線みたいです。
ということは殺し屋兼女神の戦士兼転生先ベルゼブモンだった初登場時と異なり、
今回は図鑑の方の設定を重視した展開になりそうですね。