オカエシ

脚本:森地夏美 演出:上田芳裕
作画監督:Noel_Añonuevo/Eugene_Ayson/村山綾音/
袴田裕二/信実節子/鷲北恭太
総作画監督:石橋大輔

★あらすじ

 アンティラモンの事件にも関わった宙の後輩、深津理久。
 関西から引っ越してきて以来、彼はいまだ東京に馴染めずにいました。

 そんな折、彼のもとにプッチーモンが現れます。
 理久に懐くプッチーモンはトラブルが起きた際、どうすればいいか
 彼に教えてくれるという不思議な能力を持っていましたが、
 自分のした行為について必ず「お返し」を求めるという性格でもありました。

 やがて「彼女」は理久への想いを高め、メイクラックモンに進化を遂げます。
 しかしその行動は過激になり、理久にできないことをお返しとして求めるだけでなく
 その貸しのぶんだけ理久を自分と同じ姿に変えようとします。
 そんなことができるはずもなく、理久は「メイ」のもとから逃走。

 これを看過できない宙たちは、擬似デジタルフィールドでメイを隔離。
 暴れる彼女をどうにか制圧、説得しますが、ふたたび姿を眩ましたメイは
 理久に「大嫌い」と告げて去ってゆきました。
 その涙の真意を、誰にも伝えないままに。

 好意と拒絶を一度に押し付けられた理久。
 この先東京でうまくやっていけるかは結局、彼次第なのかもしれません。
 
 
 
 
★全体印象
 
 50話です。大台を迎えました。
 これであと2クールも放送すれば、単独タイトルとしては前作を凌ぐことになります。
 連続放送というだけならまだクロスウォーズという天井が残ってますが。

 さて今回、44話にも登場した深津理久が再登場。
 あの時といい、どうも少々やっかいなデジモンと関わりを持ってしまいがちですね。
 ただ今回彼に100%非がないとは言い切れないながら、最適解がわからないという
 なんともモヤモヤする流れと引きになっていました。ぶっちゃけ無理筋。

 というか彼、けっこう深く宙たちに関わってる気がしますけど
 今後どういう扱いにしてゆくつもりなんでしょうね。
 セミレギュラー兼被害者として、まだまだ育ててゆくつもりなのでしょうか?
 本人にキャラ的な力がないのは、メインじゃないから仕方ないところですが。

 脚本は森地夏美さん。なんかすごく納得しました。
 この方のホンだとなんか毎度毎度モヤッとするというか、
 やりたいことが先行しすぎてる印象がずーっとある気がしてならんのです。
 タイプ的には坪田文さんを思い出すというかなんというか……

 演出は上田芳裕さん。
 「Dr.スランプ」「ドラゴンボール」「ワンピース」に初期から携わり、
 プリキュアシリーズにも何作か関わっている方です。
 近年では「ダイの大冒険」での仕事が記憶に新しいところ。
 どうやら今回を最後に東映を離れるらしい(半ば以上フリーではあったらしい)
 のですけれど、本作がデジモンに関わる最初で最後になるかどうかは不明です。
 
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・宙組

 理久とプッチーモン(メイ)の間柄を注視していましたが、
 どうやら雲行きが怪しいと見て清司郎組とともにメイの制圧へ回りました。
 キャラ的に新しい描写というほどのものはないです。
 強いて言うなら、事件への対処が手慣れてきてる印象はありますね。
 
 
 
・瑠璃組

 登場はしますが、ほぼ宙の寮とその周辺で完結するお話なので
 事件に深く関わることはありませんでした。
 あのオチの関係もあってか、今回はポエムもありません。
 
 
 
・清司郎組

 今回の寮長は比較的冷静に行動していたと思います。
 あと最近テティスモンの出番が多いですね。
 こうなるとラモールモンの出番の少なさが気になってくる。
 
 
 
・エスピモン

 「本物の天ノ河宙」を探しに行っているらしく、終始不在でした。
 名前だけがガンマモンのセリフに出てくる程度です。
 宙の口ぶりだと、不在時期そのものが割に長いケースもあるみたいですね。

 まあ、出たところでやる事は無かったと思いますが……
 
 
 
・深津理久

 44話以来の登場。
 アンティラモンの事件で周囲からの信頼を失って以来、いまだ孤立気味なようで
 故郷の友人を相手に強がる反面、寂しさに駆られる場面もありました。
 そこがプッチーモンの目に留まったようです。

 しかし後先を考えないで行動する面は相変わらずというか、
 プッチーモン、ひいてはメイからの「お返し」を貸しにして先送りするだけでなく
 「便利なヤツ」と発言するなど、どうも物事を軽く見ていた節があります。
 結果、エスカレートするメイの行動に恐怖して逃走する破目に陥りました。
 宙たちが注視できる環境じゃなかったら危険だったかもしれません。

 ただ、「お返し」の要求には彼ではとうてい実現できないものもあり、
 妥協してもらえるわけでもないのでああなってしまうのは必然だったと言えます。
 たとえ理久でなくても、誰であっても事態の悪化は避けられなかったでしょう。
 どうすれば良かったのかと言えば、どうすることもできなかったのです。

 そういう意味では、とんでもない貧乏籤を引かされたとさえ言えるでしょう。
 最終的には一方的な拒絶で去られたとあっちゃ尚更です。
 彼に落ち度がまるっきり無かったとは言わないけど、たぶん5%ぐらいかと……

 結局、今回も彼にとっては
 「安易に他者へ頼らず、自分の力で環境を切り拓かなければならない」
 っていう教訓になったのでしょうけど……えらいハードモードな試練じゃありません?
 
 
 
・プッチーモン → メイクラックモン(ヴィシャスモード)

 理久のもとに現れたデジモン。
 小細工抜きの正面突破で彼に接近し、友人の間柄になりました。
 このあたりからすでに一方的で、性格が表れているような気がします。

 必殺技としても知られる「ハートナービーム」は本来、相手を和ませて戦いを避ける技。
 本作では相手がどうして欲しがっているか見えるという、一種の読心能力です。
 これによってトラブルが起きた際、理久に最適な行動を教えることができました。
 なおこの技で現れるビジョンは、理久以外だと宙たちしか見えないのだそうです。

 一見すると友好的なのですが、施しをした相手に「お返し」として同じ行動を求める、
 という奇妙な拘りがあります。それも、単に報酬を求めるというものではなく
 「同じ行動」をして欲しがるのです。理由はまったく不明。

 これ、撫でたりハグをするなどの単純な行動ならば良いのですけど
 「トラブルを解決する」「リンゴを砕いてジュースを作る」などの条件付けが加わると
 一気に難易度が増すという罠のような問題点があります。
 しかも代替行為で納得させることができません。「妥協を知らない」のです。

 これらについては「貸し」として一定回数を先送りにすることができるのですが
 あまり我慢の利く方ではなく、最後には相手に無理やり返させようとしてくるばかりか、
 その際も明らかに無理筋なことをやらせようとする節が見えます。
 事実、身の危険を感じた理久は逃げ出してしまいました。

 追うさなか、宙たちに妨害されて理久を見失ったことで怒り、攻撃を仕掛けます。
 完全体になっただけあってウェズンガンマモンとテスラジェリーモンは圧倒しますが、
 カノーヴァイスモンとテティスモン二人がかりにはかなわず鎮圧されました。

 その際に説得をされたことで納得したように見えたのですが、
 擬似デジタルフィールドが解かれた途端に理久の元へ走り、上記のように
 一方的な拒絶と別れを宣言して去ってゆきました。
 理久からすればたまったもんじゃないと思います。

 おそらくは、その性格のせいで爪弾きにされていたのでしょう。
 そんなとき東京での生活に馴染めないでいる理久を見て自分と同じものを感じ、
 結果的には友人以上の感情を抱くようになったように見えます。
 ちょっと24話のアヤタラモンに似たものも感じる。

 でも理久に恐れられ、宙たちとガンマモンたちの間柄を見せつけられたことで
 自分が自分である限り理久と一緒にはいられないと悟ってしまったのかもしれません。
 あの手ひどい拒絶はいちおう理久のことを想ってのことではあるんでしょうが、
 どちらかというと自分の気持ちにケリをつけるためだったんでしょう。

 言われた方の理久がどう思うかは放り投げてるし、最後まで一方的でした。
 そういう自分がわからないほど、頭が悪いとも思えないのですが……

 中の人は本渡楓さん。
 ゲーム作品「デジモンサヴァイブ」にてメインキャラ・渋谷アオイとして出演してますが
 映像作品においては初登板です。
 2015年デビューと比較的若手ながら主役級を相当数こなしておられる実力派で、
 今回もその実力を遺憾なく見せつけていました。

 守備範囲では「キラキラ☆プリキュアアラモード」の剣城みくや
 「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」の近江遥と妹キャラが多めでしたが、
 最近はアオイさんはじめ見かける率が増えております。
 しかし「マギアレコード 」の瀬奈みことといい、このプッチーモン(メイ)といい
 激重感情を抱えたサイコ気味な役柄が観測されがちなのは何故なのでしょう……
 
 
 
・宙のデジモン調査ファイル

 そろそろオチを宙とか瑠璃がやってもいいんじゃないかと思ってます。
 
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「プッチは寂しいよ……」(プッチーモン)
 
 寂しさを滲ませる理久を遠目に見ながら。
 言葉では反対のことを言っていながら、理久の心理を理解しています。
 そういう機微はわかるのに、なぜ基本的なことが分からなかったのでしょう。
 
 
「絶対だよ…… ひとーつ」(プッチーモン)
 
 同じことを「お返し」できず、先送りせざるを得なかった理久に。
 もっとも、一方的に貸しにしたのはプッチーモンの方なのですが。
 演出がやたらめったら不穏です。
 
 
「ちょっと気まぐれだけど、人懐っこいデジモンだからね」(アンゴラモン)
 
 プッチーモンについてのコメント。
 まったく危険視していないところをみると、一般的なプッチーモンには
 ほとんど危険らしいものがないという認識であることがわかります。
 どちらかというと今回の個体が例外なんでしょう。
 
 
「メイクラックモンになったの。メイって呼んで」(メイクラックモン)
 
 理久への好意で進化を遂げて。激しい気持ちを隠そうともしていません。
 もともと近かった距離感が、以降ますますエスカレートします。
 
 
「そんなのお返しじゃない!
 お返しは、同じの返さないとダメなの!」(メイクラックモン)

 
 お返しはした、という理久に。
 なぜこうも妥協ができないのか、理由がさっぱり示されてないので
 ただひたすら自分ルールを押し付けているだけに見えてしまうんですね。
 そういう筋立てなんでしょうけどなんか納得いかん。
 
 
「今…守ったの?
 こいつらがヒロたちを守ったから、ヒロたちがお返しした…?
 なんで…? 理久はお返ししてくれなかった…なのに…
 なんで、お前たちがあぁぁぁっ!」(メイクラックモン)

 
 ウェズンガンマモン達への追撃を止めようとした宙たちに。
 彼女にとって、宙たちの間柄はどんなふうに見えたのでしょう。
 明らかに羨望がこもっているようですが。
 
 
「メイと理久は同じ…じゃない……
 メイ、解ったよ……」(メイクラックモン)

 
 デジモンと人間は違う、とカノーヴァイスモンやテティスモンに諭されて。
 しかしよく見ると、何を理解したのか口にしていません。
 
 
「理久なんて嫌い!
 メイはもう、理久と暮らさない! 人間とは、二度と関わらない!
 お前なんて、同じ人間と仲良くしてればいいんだ…!
 嫌い! 大嫌いだぁっ!」(メイクラックモン)

 
 理久への拒絶と別れの言葉。
 妥協や互いの違いを尊重することができない彼女には宙とガンマモン達の間柄が
 羨ましく見えたのかもしれませんが、自分にはそれを呑み込めないと
 やはり上のセリフの時点で悟ってしまったのかもしれません。
 同時にこの言葉は、理久の現状に深く突き刺さるものでもありました。
 
 
「……仲良くなんて……」
「…しゃあないな。帰りましょ、先輩」(理久)

 
 メイが去った後。
 二行目のセリフは、宙たちが迎えに来た際のセリフになります。
 周囲からの信頼を失い、メイに去られた彼はいったい何を思うのでしょう。
 一行目から受ける印象では、まだまだ自信がなさそうです。
 
 
 
 
★次回予告

 首なし、というとすぐ思い出されるのはアイルランドに伝わる首なし騎士、
 その名もデュラハンですが…もしかしてまた新デジモンでしょうか?
 それともミスリード…?