赤錆
脚本:中山智博 演出:高戸谷一歩
作画監督:金澤龍/權容祥/Noel_Añonuevo/Eugene_Ayson/
岡辰也/川口弘明/鷲北恭太/顾斌
総作画監督:金久保典江
★あらすじ
宙の後輩、深津理久。彼は今、寮で話題の人物でした。
彼に注文すれば、入手至難なものでも翌朝には家に届いているというのです。
その時はあまり気に留めなかった宙ですが、エスピモンから妙な噂を聞きます。
地震かと思って外に出てみれば、揺れていたのは自分の家だけ。
ささやく声に、小人を見たという証言も。
気になって現場に行ってみれば、いきなり現れる赤錆や壁の亀裂。異常です。
不審に思った宙は情報を集め、注文すればどんなものでも届くという
謎のサイトの存在を突き止めます。検証のため適当な注文をし、寝ずに待っていると
果たして現れたのは見知らぬデジモンでした。
彼らが奇妙な踊りをすると、虚空から注文の品が現れたではありませんか。
後をつけてみれば、そこは出張中のはずの清司郎の部屋でした。
件のサイトを運営していたのは、ジェリーモンだったのです。
彼女がアンティラモンに依頼し、注文の品を「作り出させる」ことで
どんな珍しい物でも手に入るという仕掛けだったのです。
が、そのためには周囲の物質から少しずつ「材料」を集めなければなりません。
赤錆が現れるのはその影響。建物が揺れるのは、構造が弱ったためでした。
とりわけ宙の寮には注文が集中したため、いつ崩壊してもおかしくない状態。
宙たちは止めようとしますが、怒ったアンティラモン達は攻撃してきました。
瞬時に再生する彼らが三体も相手では完全体進化でも倒しきれず窮地に陥りますが、
ジェリーモンが深津の落としたパソコンを見つけ、注文をすベてキャンセル。
戦う理由のなくなったアンティラモンたちは手を引きました。
その後、帰ってきた清司郎に怒られてジェリーモンは猛省。
自分たちの能力を活かしたいアンティラモン達はリサイクルショップに居付き、
そこで少しずつ創作活動をしてもらうことで落ち着くのでした。
★全体印象
44話です。今回のテーマは「赤錆」…ではありません。
赤錆はただの結果というか弊害であり、問題の焦点はその過程にこそありました。
都合の良すぎる話には必ずと言っていいほどウラがあるから気をつけろという、
いわゆるネット寓話に通じる内容だったと言えます。
メインの誰かにスポットが当たった内容というわけではないのですが、
その分それぞれに何かしら特筆点があったりします。なので書くことは多め。
進化しなかったジェリーモンと清司郎も、その割には印象度高めでした。
一方でアンティラモン達の描写や処遇を重視したためでしょうか、
もう一人のゲストで結果的には被害者でもある深津の描写は薄いうえに
最後も投げっぱなしでしたが、これは尺の問題で仕方ないところかもしれません。
本作、人間のゲストキャラには一部を除いてそんなにリソース割きませんから。
しかし徐々に登場デジモンの強さ上限が上がってきているというか、
カノーヴァイスモンら完全体レベルが出ても勝ち確とはならなくなってきてますね。
作風上、そういうヤツらばかり出てくるわけじゃないしたとえ格上が相手でも
力でなんとかする勝ち方ばかりじゃないからまだバランスが取れてますけど。
脚本は中山智博さん。
作監には新たに岡辰也さんの名前が見て取れます。
90年代の半ば頃から広範にわたって活躍しておられる方みたいですが、
デジモンにはこれが初参加みたいですね。本当にいろんな人が来るものです。
今週でカレンダーの上では4クール目が終わり、2年目に突入します。
相変わらず次回も通常運転っぽいしこういう形式なんで、あと何話やるのかは
見当もつかないというのが正直なところ。あと半年か、それとも1年なのか……
どっかのタイミングで二度目の総括をしたいですね。
★キャラなど個別印象
・宙組
彼ら個人にスポットは当たっていませんが、事件を追う役のメイン担当です。
エスピモンの話から発端を掴み、周囲で起こっている異常現象の原因を掴んで
仲間たちとのネットワークや得意分野も活かして事件を解決に持ってゆきました。
もう少し気づくのが遅れたら大惨事になっていたでしょう。
戦闘ではベテルガンマモンからの進化になってますが、成熟期のままでは
アンティラモン相手にほとんど歯が立っていませんでした。
同じ近距離パワー型だと世代差はいかんともしがたいようです。
そのうえ、完全体進化しても倒しきれていません。
これは数の上で不利だったうえに相手の回復力が予想以上だったためでしょう。
勝利条件:敵の全滅「ではない」ケースが割に頻出する本作ならではかも。
・瑠璃組
宙が彼女らに繋ぎを取っておいたおかげで、何が起きているのかがハッキリしました。
バトルではそんなに見せ場はないですが、果たした役割は小さくありません。
自分を誘わなかったことでブーたれてる瑠璃が可愛らしい。
後半では41話以来にラモールモンが登場。
長期戦の中、地味に彼女らの完全体進化にも時間制限があることが発覚しています。
ということは、おそらくテティスモンにも時間制限が存在するのでしょう。
今後それがネックになって敗北したり、よくわからない試練をこなした果てに
新しいデジヴァイスをゲットする展開になったりするんでしょうか……
(上記はアプモンの見過ぎと思われる発言です)
・清司郎
ラスト手前に登場。
リスクを頭にも入れてなかったジェリーモンに強く釘を刺していました。
彼にしてはかなり強い調子だったんで、本当に怒ったものと思われます。
ジェリーモンも、それが分かったので素直に反省したのかもしれません。
上記シーンのすぐ後、関わっていたリサイクルショップの資材置き場に
アンティラモン達を案内するというなにげに超重要な役割もこなしています。
・ジェリーモン
久々?にビジネスへ手を出して失敗をやらかしました。
アンティラモン達が品物を生成する際、何を原料にしているのかということを
まったく考慮していなかったがゆえの大失敗です。あわや大惨事でした。
女ねずみ男の面目躍如かもしれませんね。捨てちゃいなさい、そんな面目。
後半では深津が落としたノーパソをゲットし、怒涛の勢いで注文キャンセルして
宙たちのピンチを救うという顛末へのカギを握りました。
まさしく自ら蒔いた種を自ら刈り取った形です。
触手もフル活用してのタイピング速度は本気出さなくても相当速そうですね。
ラスト手前では清司郎に怒られて、珍しく素直に反省の意を示しています。
彼に本気で怒られたのはほぼ初めてなので、事の重大さが骨身に沁みたのでしょう。
まあ骨なんてないんですけど。
・エスピモン
40話からこっち、宙の部屋を拠点に相変わらず「本物」を探し回っています。
勝手にガンマモンのチョコを食べたりと、憎めないヤツだけどだいぶ図々しいですね。
あの反応からみて、時折ひと様の家から食い物を実際にちょろまかしたりもしてそう。
姿を消せる彼にとってはそれほど難しいことじゃないでしょうし。
でも宙たちとは違うルートで事件のキッカケを掴んできたりすることもあるので、
導入役としてはなかなか「使える」ヤツだったりもします。
問題は、今の状況がいつまで続くのかということですね。
何か知ってそうなんですが、だとして彼はどういう役回りになってゆくんでしょうか。
・深津理久
ゲストキャラ人間枠。宙の後輩にあたります。口調からすると関西出身でしょうか?
ジェリーモンが運営しているサイトを偶然見つけ、そこで注文を繰り返すことで
寮生たちに望みの品を提供し続け、人気を得ていました。
普通に考えて、受け取った代金からマージンを得ていたものと思われます。
中盤で彼のところにばかり注文の品が殺到していたのは、つまりそういうことなのかも。
しかし最終的にはそれが原因で起きた状況に巻き込まれることになり、
注文のキャンセルと事情を悟ったアンティラモン達が品物の原料を還元したことで
建物などが元に戻った代わりに品物が全部消えるという顛末になったため、
寮生たちから詰め寄られるという憂き目に遭いました。それで出番が終了しています。
悪意はなく、この「ビジネス」を始めたのも友達を増やすためだったようなので
ひょっとしたら東京に越してきたばかりで知り合いがほとんどおらず、
モノで釣って人脈を作ろうと躍起になっていたのかもしれませんが詳細は不明。
いずれにせよ、怪しげなサイトに手を出した結果として信頼を失った形です。
これから彼は、この信頼を取り戻すために今度は自力で努力せねばならんのでしょう。
冷たいようだが自分で蒔いた種、また一から頑張れと言うしかありません。
命の危険というほどの目に遭わなかっただけマシでしょう。
・コタロウ
深津を介して限定グッズを手に入れていました。相変わらずのお調子者です。
今回は特に怖い目には遭ってませんが、せっかくゲットしたと思ったものが消えたのは
ある意味彼にとってこれ以上ない恐怖だったかもしれませんね。
・新島
寮の階段の手すりに赤錆ができているのを不審に見咎める役まわりで登場。
ほぼ後ろ姿なんで本編だけだと特定しづらいんですが、キャストを見ると確かに出てました。
ちなみに、中の人はいつの間にか川口桜さんに戻っていたりします。
27話で照井春佳さんがアテてたの、アレ結局なんだったんでしょう……
・アンティラモン
完全体の聖獣型デジモン。
「テイマーズ」や「リアライズ」に登場したデータ種にしてデーヴァの一柱でもある
あのアンティラモンではなく、ウィルス種の方のアンティラモンです。
映像作品に登場するのはなんと22年ぶり。
前の出演作でまったく言葉を発さず、ただただ不気味なキャラ付けだった影響なのか
本作でも口数が少なく淡々と喋り、3体いますが個体識別は困難です。
ただ感情がないわけではなく、北斗パパに褒められた時は大変嬉しそうにしてました。
もともと、どんな負傷でも一瞬で治す「メディテーションキュア」が得意技。
今回見せたいわゆる「物質生成能力」は特にこの技を応用している可能性が高いです。
3体で力を合わせる必要があるようですが、この能力を発揮することによって
本物と寸分違わぬ実物を作ることができるようになったみたいです。
彼らは顧客の望むものを提供し、喜んでもらうことを生き甲斐にしていました。
行動は夜中、加えて目立たないよう体を小さくしていたため、目撃者からは
「ごほうびエルフ」と呼ばれることもあったようです。
むしろブラウニーとかレプラコーンっぽいと思うんですが、やっぱり耳が長いから?
動機に悪意はないのですが、仕事を邪魔する者は絶対に許さない頑固な側面があり
止めようとした宙たちを実力で排除しようと襲いかかってきました。
腕を硬質化させる「マントラチャント」が武装色の覇気みたい。
この際、得意の「メディテーションキュア」を駆使しての長期戦で優位に立っています。
3体とはいえ、その戦闘能力は非常に高いものがあると言えるでしょう。
別の条件でテティスモンがいればまた違ってくるのかもしれませんが。
仕事をこなす必要がなくなった後は嘘のようにおとなしくなり、話を聞いてくれました。
オンオフが激しいというか、デジタルな性格です。これがホントのデジタルモンスター。
その後気は進まないようでしたが、作ったものから建物などの劣化を回復してくれました。
以後の顛末は上記通り。でもこれ、ガンマモンのチョコみたいな食い物はどうなるのかな?
まあ、戻せるものだけできるだけ戻したと解釈すればいいのかもですが。
おそらく彼ら自身を治す「メディテーションキュア」には限度こそあるでしょうけど、
周囲を巻き込むようなリスクは無いか少ないんじゃないかと思います。
彼ら自身の回復力を促進するものだし、リソースはぶっちゃけ食料でしょうから。
でも彼ら自身の体ではないものを一から作り出すとなるとそうはいかず、
周囲の物体から少しずつ要素を集めなければならないのでしょう。
要素を取り出された物は確実に劣化してゆき、とりわけ鉄分を奪われた金属部は
赤錆として現れやすくなるものと思われます。
これがアンティラモンの仕業だと、予告だけで見抜くのはたぶん無理でしょう。
中の人は鈴村健一さん。なんと「フロンティア」で木村輝一役をつとめた方です。
ゲームでは「デジモンワールド -next 0rder-」などに出演したりしていましたが、
アニメの方に出るのはまさにその「フロンティア」以来です。
「ガンダムSEED DESTINY」のシン・アスカのような激情家だったりしつつも
どこか屈折してる役柄が多い印象ですが、近年は幅が広がりまくっていますね。
・北斗パパ
デジタルワールドでアンティラモン達に出会い、サンダルを修繕してもらったことから
彼らの物質生成能力をベタ褒めし、人間界来訪のキッカケを作りました。
元を正せば、今回の騒動の最初の原因を作った人物と言えなくもなありません。
さすがにこれを「お前のせいじゃねーか!」って言われても困るでしょうが、
「なんかもうあなた何もしない方がいいのでは」と思ってしまうのは
ひとえに日頃の行いというか今までの積み重ねですな。
・宙のデジモン調査ファイル
瑠璃ちゃん、あんまり寮長を揶揄わないであげてくれないか……(今更)
リアクションがいちいち激しい寮長も寮長ではあるんスけど。
★名(迷)セリフ
「ヒ〜ロ〜。早くおやつ〜」(ガンマモン)
深津に群がる寮生たちを横目に見ていた宙に。
なんてことないセリフですが、口調と表情が気に入りました。
「邪魔せんといてください!
これなかったら、オレ…友達減ってしまうかもしれへん……」(深津)
宙からスマホを取り返して。
なんかいろいろ事情ありそうな雰囲気ですが、そのことについて語るには
あまりにも時間が足りない、というやつです。
「気は気さ。ぷにゃ? 材料いるさ?」(ジェリーモン)
気でものを作ってるって、材料はどこから? と宙に聞かれて。
頭はいいのに時々とんでもなく抜けてる時がありますね。
「仕事の邪魔をするなら、容赦しない……」(アンティラモン)
手続きも何もなく注文キャンセルを要求するジェリーモンに。
表情が変わらないまま目だけ赤く見開く演出がなかなかに強キャラ感あります。
というかこれ、よく考えたら深津にキャンセルやらせれば戦わないで済んだんじゃ……
「ふぉぉぉおおー! これでおしまいさー!」(ジェリーモン)
猛スピードで注文キャンセルからのラスト。
「いっけえぇぇえ!」または「よろしくお願いしまぁぁぁあす!」ですね。
結局、彼女が自分で自分のミスをリカバーする形になりました。
宙たちは肝を冷やしたことでしょうが、因果的にはこれが真っ当なのかもしれません。
「元手がかからないビジネスなんてどこにもないんです!
材料がなんなのか確認、それもビジネスです!」
「もらったデジスマホも全部クーリングオフ! いいですね!」(清司郎)
材料が何なのか知らなかった、と弁明するジェリーモンに。
彼にしては非常に珍しく、終始にわたって強い態度であたっていました。
それだけ怒ったということだし、ジェリーモンにも伝わったと思います。
「ミーが悪かったさ…… ごめんなさいさ……」(ジェリーモン)
で、この素直な謝罪。
直前にゆでダコみたく真っ赤になっていたのは腹が立ったのと恥ずかしさ両方でしょうか。
でもやっぱり今回はどう考えても自分が悪いし、だから清司郎もこんなに怒ったのだと
今度ばかりは身に沁みてわかったのだろうと思います。
「すばらしい! 物質を原子のレベルで組み換えてるんだな!
その力、どこへ行っても喜んでもらえるぞ!」(北斗)
回想シーンにて。この一言がある意味すべての始まりでした。
宙のこめかみがヒクついてたの、描写されてなくても見えた気がします。
瑠璃のセリフじゃないですが、デジモンの影に北斗パパありですね。
「熱しすぎた鉄はよく冷えず。時に頭冷やさねば、肝冷やす」(アンゴラモン)
ラストシーンにて。
「よく考えないで物事を始めると、後でしっぺ返しが来るよ」ってところでしょうか。
「今回は肝を冷やしすぎたよ」という宙のセリフで本編は幕を閉じています。
★次回予告
今度は「新聞」「ニュースサイト」ですか。
ミカの身に何か起こりそうで、ちょっと不安です。大丈夫かな。
ところで、コタロウが持ってた限定グッズが微妙な伏線になってたりします?