人狩リ
脚本:藤田伸三 演出:福岡大生
作画監督:北野幸広 総作画監督:二階堂渥志
★あらすじ
姉が「鬼」に連れ去られたとの報せを受け、ある地方都市を訪れた宙たち。
果たして噂のある夜道に「鬼」は現れました。その正体はオボロモン。
まだ良く知られていない、謎の多いデジモンです。
オボロモンたちの急襲により、宙と瑠璃は捕まって異空間へ送られます。
そこでは人々が手足をくっ付けられ、複数列にわたって繋がれていました。
ヤツらは人を狩り集め、その数を競っていたのです。
そして狩った人数が最も多い者は、王として仰がれるルールでした。
その証として「王」は人々を練り上げ紅いスカーフに変えてしまいます。
捕まっていた宙と瑠璃も、その中に練り込まれてしまいました。
宙を取り戻そうと必死に向かってゆくガンマモンですが、相手になりません。
しかし彼の怒りが頂点に達した瞬間、異変が起こりました。
蒼焔とともに現れたのは──あのグルスガンマモン!
圧倒的な強さで「王」を一撃のもとに葬り去ったグルスガンマモン。
他のオボロモンをも次々と襲い、その纏う色を奪って食らってゆきます。
暴挙を制止したのは、解放された宙でした。
恐れることなく歩み寄る彼に、グルスガンマモンは自ら身を引きます。
かくして、三たびグルスガンマモンに救われることとなった宙たち。
ガンマモンの奥に眠るこの第四の姿の正体は、いまだ謎のままです。
★全体印象
42話です。今回のテーマは「鬼」でしょうか。
鬼といっても金棒を持ったアレではなく、もっと霊的なイメージですけれど。
こういう時ピッタリな表現としては「幽鬼」がありますね。
狩りと勝利しか頭にないオボロモンらを相手に知識不足もあり、
宙たちは態勢を整える間もなく半壊に追い込まれてしまっています。
久々に全組そろっての行動だったのに、なんともついてません。
人間キャラで健在だったのはたまたま狩られる対象から外れた清司郎だけで、
あとはご覧の調子。相手が完全体五体ではもう勝ち目がなかったでしょう。
そう、ワイルドカードであるあの存在を除いては。
というわけで、グルスガンマモンがメチャメチャ久々に再々登場しました。
前に登場した21話が3月第1週の放映、しかも不正アクセス事件の影響と
休止が重なって5回ぶんが吹っ飛んでるため、なんと半年ぶりの出番です。
まさかここまで待たされるとは思いませんでした。
しかしその強さは相変わらず圧倒的の一語。
情け容赦のなさも普段の作風を思うとやはり際立ったものがあり、
規格外っぷりも含めてある意味もはや清々しくさえありました。
結局縦軸が進んだというほどもなく、また通常運転に戻るっぽいのですが。
なぜかいつも出てくるブラック系デジモンといい、なんなのでしょうね一体。
そろそろ少しは開示してくれないとさすがにマズいんじゃないでしょうか……
脚本は藤田伸三さん。どうやら32話を契機にローテへ完全に入ったようです。
演出には福岡大生さんが初登板。東映での仕事は17年ぶりだそうです。
キャリア初期はワンピで制作進行やってたっぽいので、その頃以来でしょうか。
あとなんか作監陣がやけにスッキリしていますが、作画は良好です。
グルスガンマモンが出る直前のガンマモンの顔は、今回で一番怖い仕上がり。
★キャラなど個別印象
・宙
最後以外は実は大して目立ってなかったりします。
ただグルスガンマモンへの戸惑いと恐れはもうずいぶん消えているようで、
そこは認められているような感じでした。
それと「一歩前進」という言葉の意味が本当に合致するかは別問題ですが。
・ガンマモン
宙が目の前でかなりヤバい感じに攫われてしまった時点でフラグでした。
カンのいい方はこの時点で気づいてたかもしれません。
襲われたわけではなく、何が起きてるかもわからないまま消えてしまった
陰陽師回とはそこらあたりが根本的に違うと思います。
後半、オボロモンへ向かってゆく際の表情でそれは確信に変わりました。
やっぱり演出とか表情って大事なんだなあ、と実感させられた次第。
・グルスガンマモン
上記の通り、半年ぶりの登場。
出るなり赤オボロモンを惨殺し、他の四体からも次々と力を奪い去っては
自らに取り込むという途轍もない強さをいかんなく見せつけました。
この強さ、完全に究極体の域に到達してるかもしれません。
あり得ない話ですが、ぶつかり合ったらカノーヴァイスモンより強そう。
いや、今後の展開しだいでは案外あり得たりもするのかな…?
ただ宙の言うことだけは割に素直に聞き、認めはじめてる節が見て取れました。
そのうえ去り際のあのセリフです。やはり普段のガンマモンとはこう、
意識を共有してるところがあるのかもしれません。
あちらからは認識できても、ガンマモンからは認識できないようですが。
しかし結局は成熟期とあってさすがに強い完全体には力負けするかなと思いきや、
全然そんなことないですね。むしろ成熟期 → 完全体 → 複数完全体と
出てくるたんびに敵のハードルが上がってんのに軽々と飛び越えてる。
まさしく規格外の化け物です。
まさか、ガンマモンが強くなってゆくたびに彼も強くなるのでしょうか?
では、もしカノーヴァイスモンよりも上に進化すればこちらも……?
・瑠璃組
前回とは逆に、大したこともできないまま瑠璃が無力化されちゃいました。
ジンバーアンゴラモンの方は健在でしたが最終的にはダウンしています。
初手を誤ったというか、ラモールモン出せてたらまた違ったかもしれません。
カノーヴァイスモンと違って時間制限については明言されてませんから。
それでも成熟期よりは消耗するんでしょうけど……
そういえば、ああいうオチだったせいもあってポエムが無かったですね。
方針のほどは分かりませんが、今後はそういう回も増えてくるのかも?
・清司郎組
久々に清司郎が限界突破したものの、遅きに失した感。
テスラジェリーモンがいつの間にか出てましたが、貢献はできてません。
・エスピモン
今回も事件に絡んではいません。というかマトモに姿も見せてない。
・エアドラモン
もはやレギュラーと化してません? ってぐらいの登場頻度。
あくまでも足役であるため、事件には一切関わってませんが。
帰るためにどこかで落ち合う予定なら、それまで近場の空を適当に飛んでるのかも。
・美織
「姉が拐われた」と瑠璃のアカウントに連絡を入れた人物。
あくまで導入役であり、それ以上の役割とかドラマは無いです。
途中から蚊帳の外となりますが、本人にとってはその方が良かったでしょう。
・オボロモン
完全体のアンデッド型デジモン。
「Dimカード-V3- エスピモン&リュウダモン」で初登場した新顔デジモンで、
その風貌からムシャモンとザンバモンを繋ぐポジションであると同時に
ゴースト型デジモンの完全体も兼ねられるという、なかなか優秀なモチーフの持ち主。
設定とは異なりその行動には一定のルールが設けられていて、
赤、青、黒、黄、緑の炎とオーラを身に纏ったそれぞれが人間を狩って回り、
その数が最も多い者を覇者、つまり「王」として仰ぐ儀式を行っていました。
この儀式にしか興味がないため、話が通じる類の相手ではありません。
捕まえた人間は異空間に放り込まれ、そこで手足をくっつけられた状態になります。
どの色のオボロモンが捕まえたかによって、どこに繋がれるのかが決まる仕掛け。
捕まえれば捕まえるほど数珠繋ぎに増えてゆくため、どんどん長く伸びてゆきます。
人間の鎖、と呼ぶのが最も分かりやすい表現かもしれません。
最終的にはこの人間の鎖を吊り下げて長さと人数を競ったあげく、王が決まった暁には
彼らをひとつに撚り合わせてマフラーに変えてしまいます。
結果的には赤を纏った個体が勝ったので、色は赤色。
捕まっていた宙と瑠璃も巻き込まれ、この一部にされてしまいました。
このマフラーは「幽玄」とも呼ばれる剣呑なもので、自由自在に動く武器にもなります。
劇中ではこのマフラーだけでガンマモンを翻弄し、接近すら許しませんでした。
赤を得てからはさらに強大となり、ジンバーアンゴラモンとテスラジェリーモンも
もののついでみたいな勢いで薙ぎ倒してしまっています。
が、グルスガンマモンの前には「王」となったはずの赤オボロモンの力も全く通用せず
たった一撃で葬り去られてしまいました。
他の者もそれぞれの「色」を奪われたあげく食らわれるという憂き目に遭っており、
恐怖のあまりグルスガンマモンを「漆黒の覇王」と呼ぶようになりました。
宙が止めたので、結果的に殺害されたのは赤オボロモンだけということになります。
力を奪われ心を折られた以上、鳴りを潜めることになるとは思うのですが
コイツらもあんまり放置しておいて良いのか不安になる類ですね……
中の人はボルケーノ太田、塩屋浩三、池水通洋、増谷康紀、中根徹(敬称略)。
なんか知らんけどやたら豪華です。
ほとんどはデジモンでもお馴染みの顔ぶれですし。
・ブラックグラウモン
グルスガンマモンが去った場所でじっと見下ろしていたデジモンです。
13話はブラックアグモン、21話はブラックガルゴモンでしたっけ。
目的は不明、なぜそこにいるのかも全く不明という謎だらけの連中ですが
偶然そこに居合わせたにしては話ができすぎてる気がしてきました。
彼ら、グルスガンマモンが出てきたところに居合わせるのではなく
もしかしてグルスガンマモンが出てきた時そこに現れるのでしょうか?
そうでないなら人知れず宙とガンマモンを監視している集団がおり、
彼らはその一員とかそういう類推もできるのですが……
果たして真相はどこにあるのでしょう。
半年も経つのに全く進展がないので、そろそろ私も焦れてきましたぞ。
・宙のデジモン調査ファイル
まさかオボロモンからウィル・オー・ウィスプに繋げてくるとは思いませんでした。
ってか寮長、イギリスの方に呼ばれることもあるのね。
★名(迷)セリフ
「示せ! 掲げよ、赤備え! しかと、両の手で!」(オボロモン赤)
美織の姉・美咲を狩りに現れた際のセリフ。
色の部分を変えると別個体のセリフになります。
今回の彼らを象徴するセリフで、そのルール基準は多分に妖怪的。
「うーん…頭に角があって、赤いのとか青いのとかいて……」(宙)
ガンマモンに「鬼ってなんだ?」と訊かれて。
割とその通りだったというか、このセリフ自体も仕込みですね。
「フォーラム終わって夏アニメ見るし、同人イベントだってあるんだよ……」(清司郎)
やっと多忙から解放されたのにまた怪事件に付き合わされそうになっての嘆き。
時期的にみて、本来はもう少し前に放映する予定だったんでしょうか?
それはともかく気持ちはよくわかる。
「幽玄の源、王の証! 我、いかなる戦いにも勝利せん!」(オボロモン赤)
儀式の覇者となり、王の証として人々を撚り合わせた紅いマフラーを身につけて。
表現はどっちかというとマイルドですが、まさしく狂気の所業です。
「お前…絶対に…絶対に、許さなあぁぁいっ!!」(ガンマモン)
紅いマフラーに翻弄されながらも。この時点でもう顔がやばいです。
もう私のような鈍い手合いでもすでに
「はやく逃げろ! 手遅れになってもしらんぞーっ!」という気分でした。
ガンマモンじゃない、お前に言ってるんだ!
「あぁ? ガキみたいな鬼ごっこで勝っただけで、王様ってかぁ?」(グルスガンマモン)
オボロモンたちの儀式を嘲笑して。ミもフタもない物言いがもはや痛快ですらあります。
この直後「デッドエンドピアー」により勝負はあっけなくつきました。
オボロモン達にとっては「相手が悪かった」としか言いようのない状態。
「…フン。
こんなザコどもに捕まってんじゃねぇよ……
クハハハ…一歩進んだみてぇだし…… じゃあな、兄貴……」(グルスガンマモン)
オボロモン達の「色」を奪って取り込んだところを宙に止められて。
最初は反発的でしたが、恐れず歩み寄りを試みた宙を見て嘆息とともに言っています。
おまけに最後に「兄貴」とまで。彼なりの皮肉なのかもしれませんけど。
この「一歩」という言葉、宙にわざわざ反芻させてるところをみると何かあるんでしょうか。
何もないかもしれないけど。
で、結局お前らはいったいなんなんだブラックグラウモン君。
それにしても「ザコ」呼ばわりされたオボロモンさん達はいい面の皮ですね。
仮にも完全体、それも初登場の桧舞台だったというのに……
★次回予告
今度は割と分かりやすいかも。
アイズモンでしょうか。シェイドモンという予想もありましたね。
やってることが小さそうなんでニーズヘッグモンってことはないと思いますが。