道化師
脚本:佐藤寿昭 絵コンテ:畑野森生 演出:山崎響介
作画監督:酒井夏海/村山綾音/大山康彦/直井正博
総作画監督:西野文那
★あらすじ
その神出鬼没でいま話題の「ピエール・ドリームサーカス」。
瑠璃はその公演中、QRコード入りの特別招待券を手に入れます。
指定時刻にこれを読み込むと、フレイウィザーモンとトブキャットモンが出現。
「団長」からの指示で、アンゴラモンだけが連れ去られてしまいました。
宙たちと共にサーカスへ乗り込んだ瑠璃が見たものは、子供らをカードに変えてしまう
恐ろしいゲームでした。団長の正体は正体不明の魔人・ピエモン。
その力の前に、アンゴラモンもなす術なくウサギに変えられてしまいます。
団員たちを宙とベテルガンマモンに任せ、瑠璃は子供たちを取り戻すため
ピエモンと決死のカードゲームを行うことに。
互いにトランプをめくり、より数字の大きい方が勝つというシンプルなルールです。
ゲームは一進一退。
3回負ければカードにされるという極限のプレッシャーの中、瑠璃は持ち前の胆力で
最後までコールを続け、見事にハートのエースを引き当てました。
勝負を諦めなかったことで、ツキを自ら引き寄せたのです。
ピエモンは潔く負けを認め、収まりがつかないメフィスモンを制し
子供たちとアンゴラモンを解放しました。
さらに瑠璃の申し出で、人間をカードにして使うことはやめると約束してくれます。
かくしてサーカス団は去り、平穏な朝が戻ってきました。
瑠璃の勇気と胆力が、魔人をも動かしてのけたのです。
★全体印象
41話です。今回のテーマはズバリ「サーカス団」。
楽しげなイメージと同じくらい、どこか不気味なのが特徴的なモチーフです。
「セーラームーンSS」の敵組織・デッドムーンもサーカスがモチーフでした。
今回はなんといってもピエモンです。
回想に出てきたプラチナヌメモンを除けば、本作初の究極体枠。
本編に絡んできたかを基準にすれば、究極体解禁第一号と言っていいでしょう。
個人的に大好きなデジモンなんで、コイツが最初というのは素直に嬉しいです。
さてこうなると、今後は究極体もチラホラ出てくる可能性大。
でも作風的に、力でどうにかしなくても良いケースが定番化して久しいのも事実。
いつかは究極体ともやり合わないといけないかもですが、毎回ではないと。
今回の流れはそういう意味で実に本作らしいものでした。
ラモールモンの登場は3回目。
ピエモンと実力勝負しないため、こちらでバトル分を稼いでいました。
短い上にいささか無理やり捩じ込んだ感はあるし、決着もついていませんが。
脚本は佐藤寿昭さん。ピエモンのキャラ付けに新たなスタンダードを作ってくれました。
演出の畑野森生さんは二度目ですね。ワートリが終わったから手が空いたのかな。
★キャラなど個別印象
・宙組
話に絡んではいますが、ほぼ瑠璃組のサポートに徹していた形。
瑠璃に全てを託し、背中を押す役割でもありました。
主にフレイウィザーモンやランクスモンを相手にしていたのと時間制限もあり、
カノーヴァイスモンは登場していません。
・瑠璃
早々にパートナーを無力化されてしまったため、身ひとつの丸腰だけで
究極体であるピエモンと相対することになってしまいました。
シリーズ数あれど、こんな状況に追い込まれたヒロインは彼女ぐらいかも。
ゲームとかに目を向けるとまた違ってきますが……
負ければ問答無用でカードにされるという極限状態。普通なら恐怖のあまり
諦めて音を上げたり逃げ出そうとしてもおかしくはありません。
もう後がないとあってはなおさらでしょう。
けれど彼女はその勇気と胆力、それに宙たちの後押しで最後まで諦めずに挑み
結果としてハートのエースという最強の札を手にすることができました。
諦めたり逃げ出したりしてしまっては絶対に掴めなかった一枚です。
プレッシャーに押し潰されなかったことが、勝利の運気を引き寄せたのです。
この後、ピエモンの性格を見抜いたのか勝者の権利として
「もう人間をカードにしたりしないこと」と言い聞かせました。
普通にやったら絶対に勝てない相手に、強運と度胸で競り勝った者の収穫です。
でもピエモンにとっては、そういう者こそ敬意に値するのでしょう。
・アンゴラモン → ラモールモン
フレイウィザーモンたちを相手に一戦交えようとするも、ピエモンに拉致されたうえ
その恐るべき魔術とでも呼ぶべき力によってウサギにされてしまいました。
この状態の時の声も中井さんがやってるっぽいですね。
そのまま瑠璃の孤軍奮闘を見ているしかない状態でしたが、彼女が勝ったことで
元の姿へ戻り、襲いかかってきたメフィスモンをニ段階進化で迎撃。
「風牙烈巻迅」で優勢に運びましたが、ピエモンがメフィスモンを制裁し場を収めたため
彼もまた刀を収めることになります。
最終的には矢面に立ちましたが、今回は事実上彼の方が瑠璃に救われた形です。
その気持ちをポエムに乗せて伝えてましたが、いまいち伝わらなかったので
大意を伝え直すという器用なようで不器用なところを見せています。
・清司郎組
国際フォーラム絡みで清司郎が多忙なため、前回に続いて話に絡んでません。
ジェリーモンはサーカスへ行きたがってましたが今回は彼女もお休み。
尺の問題でメインを絞る必要があったという都合もあったかもしれません。
勘のいい方なら、フルメンバーでない時点で本格戦闘は成立し得ない、
と予想できたかもしれませんね。
・エスピモン
宙の家に居着いてしまいましたが、その件についてはちょっと触れられただけで
またすぐ「本物の宙」を探しに行ってしまったのでお話には絡んでません。
この形でいつまで引っ張るのか……
・アオイとミカ
久々の登場。30話以来になるでしょうか。
序盤、瑠璃や宙たちと一緒にピエールドリームサーカスを楽しんでいました。
出番はそこだけなんで、今回は事件に巻き込まれてません。
・エアドラモン
ほぼワンカットのみの登場。瑠璃と宙、ガンマモンを乗せサーカスへ向かってました。
そういえば、彼も瑠璃を気に入ってるデジモンのひとりでしたね。
どうも彼女、アンゴラモン以外にも妙なデジモンに好かれやすい性質みたいです。
・ピエモン
究極体の魔人型デジモン。上記の通り、本作においては事実上初の究極体です。
デジタルワールドでもかなり有名な存在なのか、アンゴラモンが驚愕してました。
普段はピエールという人間の姿を借りて生活しており、その名を取った
「ピエールドリームサーカス」の団長をしています。
その過程で秘かに子供たちを集め、トランプに変えてゲームに使っていました。
この擬態は完璧に近いものがあり、アンゴラモンも彼が正体を現す直前まで
人間であることを疑いもしていませんでした。
もともと体型が近いし、人間への擬態は得意中の得意なのかもしれません。
威厳のあるキャラ性で、血気盛んな団員たちを手拍子ひとつで黙らせ
その言動は常に穏やかですが絶対の命令として働きます。
団員たちはそんな彼を慕って自らその下についた節があり、カリスマ性もかなりのもの。
その実力もまた絶大なものがあるはずですが、本格的に戦うことはなく
瑠璃の要求の高さに応じて「トランプソード」らしき技を現出させただけです。
勝負の結果が出るたびに一本ずつが負けた方の味方に突き刺さる、という恐ろしいものですが
これだけで致命傷になるわけではなく、あくまで余興の一環のようですね。
この「戦わない」という一点が逆に、今回における彼の強さを浮き彫りにしています。
たとえ三組揃っていたとしても、今の瑠璃たちではピエモンに勝つのは難しいでしょう。
彼が力を行使しないことそのものが、その事実を助長していたと考えることもできるのです。
他にもトランプ一枚で通信をこなす、指パッチンで対象を瞬間移動させ舞台をも一変させる、
アンゴラモンを触れもせずに捕らえたり無力なウサギへ変える、などなど朝飯前にこなしており、
これらだけでもケタ違いの能力があることがわかると思います。
恐ろしさの反面、互いの命とプライドを賭けた勝負には強い信念を持っています。
彼にとっての「強い者」とは瑠璃への態度から窺える通り、力の強さだけではなく
恐怖に抗い己の勝利を最後まで諦めぬ心の強さにもあると見て良いでしょう。
この信念があるため、瑠璃に敗北を喫した際には潔くこれを認め
不服を唱えた部下を制裁して非礼を詫びるという、格の高いところを見せてくれました。
いろいろ意見はあると思いますが、こういう格の示し方は個人的に好物です。
上記にある瑠璃の要求にも、特に異論を挟まず従っています。
これを覆させたくば、誰かがピエモンに勝って要求し直すしかないということなのでしょう。
中の人は山路和弘さん。
いぶし銀の声質通りのイケおじや、その渋さを逆手に取ったお茶目なおっさんなど
さまざまな場面で活躍しておられる大御所ベテラン声優です。ボスキャラ経験も多数。
特撮では「仮面ライダー剣」の烏丸所長でよく知られます。
「デジモンサヴァイブ」の教授役でも出演してますが、アニメ出演は初。
・メフィスモン
ピエモンの配下。完全体の堕天使型デジモンです。
ランク的にもサーカス内のポジション的にも、部下たちの中では一番の手練。
ピエモンへの心酔度が際立って高く、憧れにも似た感情を抱いているのですが
それが過ぎるあまりゲームに勝った瑠璃へイカサマの疑いをかけて襲いかかります。
が、ラモールモンに阻止された挙句ピエモンにカードにされるという制裁を受け
以後は大人しくなりました。カード化自体はすぐに解除してもらっています。
中の人は斎藤次郎さん。なにげにシリーズ初出演です。
・フレイウィザーモン、トブキャットモン、ランクスモン
ピエモン配下のデジモンたち。ピエモンを「団長」と呼ぶこともあります。
サーカスでは正体や姿を隠し、人間にバレないよう振る舞っていました。
どいつも血気盛んで、メフィスモン同様ピエモンとのカードゲームを名誉と考えており
ベテルガンマモンに勝った者へゲーム権を与えるという条件に釣られ襲ってきました。
ただ瑠璃とピエモンが行ったゲームのルール自体は公正なものだったため
彼らにも結果ごとにハンデが懸かる形となり、順繰りに向かっていったこともあって
概ねベテルガンマモン優勢でした。ランクスモンとは決着つかず終い。
よく見るとトブキャットモンの中の人が菊池こころさんです。主役級だ。
・オポッサモン
ピエモン配下のひとり。団員の中では下っ端と思われます。
前半は着ぐるみ姿ですが、中盤からは他の団員同様に正体を見せました。
ただし、以後セリフらしいセリフは無かったりします。
ピエモンがゲームに使うトランプを揃えるため、これと見込まれた子供たちに
招待状を渡すという働きをしていました。ちょっと気弱な印象です。
この招待状を瑠璃が持って行ってしまったことが事件発覚のキッカケになったので、
結果的にはある意味での立役者となった形。
中の人は白石涼子さん。クロウォから一貫して同じ配役ですね。
ただ今回は少年寄りの口調で、小憎たらしさはそんなにありません。
・宙のデジモン調査ファイル
初の究極体枠だからか、ピエモンの恐ろしさを強調する内容でした。
寮長がオチ担当なのは相変わらずです。
★名(迷)セリフ
「フフフ…私たちの邪魔をしないなら、放っておきなさい」(ピエモン@ピエール)
観客席の瑠璃たちを見咎めたメフィスモンに。余裕です。
「正体不明、神出鬼没! 魔人・ピエモン!
あんな恐ろしいデジモンまで人間の世界に…!」(アンゴラモン)
正体を現したピエモンに驚いて。今までとはテンションが一段違います。
博識な彼のリアクションの中でも一番の緊張感。
ピエモンのヤバさをよく伝えてくれています。
「なぜです?
どんな世界でも、弱者は強者の決めたルールに従うものです。
私より強いものが…ここにいるのですかぁ?」(ピエモン)
俺がルールだ、と言わんばかりの傲岸さ。トボけた語尾が印象的です。
ただし彼のポイントは、勝負すれば必ず勝つつもりではいるものの
己が敗者となる可能性を考慮から外していないところにありました。
「ふむ…見込み違いですかね…?」(ピエモン)
傷つくガンマモンを前に戸惑い躊躇う瑠璃に。
自らの決断が仲間の運命を決めてしまうかもしれないという重圧と恐怖。
目の前の少女ならばあるいはそれを乗り越えられるのでは、と期待してたわけです。
もちろん見込み違いではありません。その一点において彼は正しい読みをしたのです。
「ああ…この高揚感…久しぶりに思い出しました…!」
「命を賭けたカードゲームです!
またそんなゲームをするために、私はカードを用意しておかなければならない!
命という価値を宿したカードを、ね!」(ピエモン)
連続で良い札を引き、リーチへ至った瑠璃を前に。
負ければ痛い目に遭うからこそ、ゲームというものはやる価値がある。
勝手な言い分ですが、小細工をするタイプじゃないことはここからもわかります。
「「迷わず引けーーーっ!!」」(宙&ガンマモン)
最後の勝負を迎え、緊張と重圧の極みを迎えた瑠璃に。
彼女がプレッシャーをはね返せたのはやはり、彼ら二人の存在が大きい。
「実にいい勝負でした…すがすがしい気分です。私の…負けです」
「下衆な部下の非礼、お許しください。この勝負、私どもの完敗です」
「…! これは失礼しました。
ルールを決めるのは、この場で一番強き者。私に勝った貴女です」(ピエモン)
瑠璃とのゲームに敗れながらも。これだから面白い、と言わんばかりです。
重ねて敗北を宣言したのは、メフィスモンが結果にケチをつけてしまったことで
自分だけでなく「私ども」の負け、と改めたってところでしょうか。
まあアレです、要するに瑠璃のことが気に入っちゃったんでしょうね。
人外に好かれやすいのって、まさか血のせいじゃないよね…??
「勝負は時の運。
されど、天幕(テント)に飛び込まずんばウサギを得ず」
「ありがとう、ってことさ」(アンゴラモン)
アンゴラポエム復活。が、いまいち伝わらなかったので言い直しました。
ギャグを自分で解説するみたいで見ててちょっぴりいたたまれないですが、
改めていきなり言うのはちょっとだけ照れ臭かったのかもしれませんね。
★次回予告
かなり穏やかじゃないサブタイです。
今度は新規枠のオボロモンじゃないか、と早くも推測が聞こえてきてますね。
ある意味、予告から「犯人」を推理するこのリアタイ感が本作の醍醐味かも。