螺旋海岸

脚本:山口宏 演出:平池綾子
作画監督:仁井宏隆/村山綾音/川口弘明/鳥山冬美/舘直樹/浅沼昭弘/
篠塚超/山室直儀/金久保典江/北野幸広/Y.S.Kwon/Y.M.Lee
総作画監督:石橋大輔

★あらすじ

 宙のタブレットを噛んで壊してしまったことで、注意されるガンマモン。
 ところが素直に謝ることができず、すっかりヘソを曲げてしまいます。

 そこへ、あのエスピモンが再び訪れました。右腕が異様にねじくれています。
 この怪現象の原因を探るため、彼を伴って宙とガンマモンはとある海岸を訪れました。
 清司郎が忙しくしていて退屈していたジェリーモンもついて来ます。

 ガンマモンはと言えば、相変わらずヘソを曲げたまま。
 そんなとき、飼い犬を伴って「ぐにゃぐにゃ」を探す少女・沢井凛と出逢います。
 この海岸の街はまさしくエスピモンの腕のような螺旋状にねじれた物が多数あり、
 しかもそれは夜ごとに増えているのでした。いったい何者の仕業なのか──

 答えは意外に早く出ました。
 螺旋の描く「美しさ」に取り憑かれたカルマーラモンが物をねじくらせていたのです。
 その行動はどんどんエスカレートし、動物や人までもねじれさせてしまいました。
 凛とその両親にも驚異が及び、彼女と行動していたガンマモンは事の深刻さを悟ります。

 カルマーラモンを止めようと、ジェリーモンの力を借りる宙。
 エスピモンも援護しますが、二人ともが極端にねじくれてしまっている状態。
 この有様ではまともに戦うことすらできません。

 そこへ駆けつけたガンマモン。彼は蟠りを振り払い、宙に謝罪を告げます。
 宙もこれを受け入れ、二人は新たな決意でカルマーラモンに立ち向かいました。
 水竜巻を起こし、自らドリルのように回転して攻撃するカルマーラモンは強敵でしたが
 二人の真っ直ぐな思いが彼女の心をも叩き直したのか、周囲の捻れは収まりました。

 螺旋への妄執が消えたカルマーラモンは、新たな美の追求のために去ってゆきます。
 それを見送りながら、宙はデジタルワールドへのゲートへ想いを馳せていました。
 デジタルワールドにいるという父・北斗は、どうやってかの地へ行ったのでしょう──
 
 
 
 
★全体印象
 
 40話です。もう40話まで来たのか…という印象ですね。
 来月からは9月放送分になります。つまりあと4回で一周年ということ。

 が、次の番組についての話は一切聞こえてきません。
 これは、このまま2年目に突入する可能性が高くなって来ましたね。
 あるいはもう2クールほど、来年春までやるパターンでしょうか?
 それだったら期間的に問題なく究極体まで出せますし。

 問題は、この9月からの展開がどうなるかです。
 路線の近い「鬼太郎」は3回ぐらいで一年間の伏線を一気に回収して
 話を畳みニ年目へ繋げましたが、さて本作はどうする予定なのでしょう。
 案外、それ次第であと一年やるのか半年やるのかが見えそうな気がします。

 さて本題に入りましょう。
 今回は珍しく、ガンマモンが宙に反抗的な態度を取ったお話です。
 宙もこんな塩対応を受けるのは初めてなので、戸惑っていましたね。
 これも自我ってものが成長してきた証でもあるのでしょうけど。

 加えて今回は起きる現象が「螺旋」ということで、ダブルミーニング的に
 ひねくれてしまった心、というものも含まれていると思います。
 ひねくれていたガンマモンが真っ直ぐな気持ちを取り戻したことと、
 ねじれに取り憑かれていたカルマーラモンが真っ直ぐさの美を知ることは
 おそらく同じ目線で語ることができると思います。

 脚本は山口宏さん。
 「蜘蛛の誘惑」「飢餓屋敷」などシャレにならない話を担当してる氏ですが、
 デジモンと和解したり暴走を止めるにとどめる回の方が多いのは本作らしさです。

 演出には新たに平池綾子さんが登板しています。
 以前はアプモンに参加してたようですね。いろんな人が来るなぁ。

 作監にはなんと山室直儀さんの名前が。「ドラゴンボール」で特に著名な方です。
 デジモンへも「02」から参加してますが、登板は久々。
 調べた限りでは「セイバーズ」以来になるようですね。
 ローテに本格参加するかどうかはなんとも言えないところですが。
 
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・宙

 ガンマモンに対しての苦慮が窺える回でした。
 みなさんご周知の通り、彼はガンマモンとの間にいくつもの約束を作って言い聞かせ
 それを破るごとに復唱していたという経緯があります。
 今まではそれでうまくいってました。

 ところが今回はガンマモンが自分の非を認めず、一時とはいえ反抗的な態度を取りました。
 あらすじでも書いた通り、こんなことは初めてと言えます。
 宙としてもどうしたらいいかわからず、とりあえず様子を見るしかなかったわけですね。
 消極的なようですが、「なんで謝らないんだ!」と感情的になるのはもっと悪手なので
 最善とは言えないかもしれないけど次善は取れてたんじゃないでしょうか。

 その上で、彼はガンマモンの謝罪を何も言わずに受け入れました。
 謝ってくれたというその事実だけで、もう充分だったのでしょう。
 自分で気づいてくれたことが嬉しくさえあったんじゃないかと思います。
 彼もまた「兄貴」として成長しているということですね。
 
 
 
・ガンマモン → カウスガンマモン → カノーヴァイスモン

 ジェリーモン曰く「反抗期」を迎えた記念すべき?回です。
 上記の通り、それは翻して見れば彼の成長を示す事実でもあるはずですから。

 なんであんなに反抗的になってしまったのかと言えば、自我の成長もあって
 自分をハメるようなことをして嘘を暴いた宙のやり方への
 単純な「ムカつき」があんな態度へつながったんじゃないかと思っています。
 宙の言ってることが正しいと「分かっていても癪に障る」という。

 一時的に宙のもとを離れて凛と行動していたのは、今は宙といたくない……
 という単純な理由のほかに、無意識に頭を冷やしたがっているのだろうと思えました。
 今は素直になれないなら、一度距離を置くことで違ってくるかもしれない、と。
 ただそれは、宙が折れてくれるのを待つだけの態度だったとも言えます。

 けれど抜き差しならない状況を迎え、それではダメだと思い直したのですね。
 悪いのは自分なのだから、宙が妥協してくれるのを待っていてはいけないのだと。
 自分がこんなザマでは、いざという時に二人とも困ることになるだけではないかと。
 自分のせいで宙がピンチになることだけは、絶対に嫌だと。

 ただ、やっぱりひねくれた気持ちを叩き直すのには相当の勇気とエネルギーが要ります。
 あんなに泣いたのはそういう大変さゆえだろうし、宙にもそれは伝わったと思います。
 デジヴァイスで繋がってる二人の気持ちが、カルマーラモンにも影響を与えたのかも。

 戦いが海上ということで、久々にカウスガンマモンからの完全体進化となりました。
 ただし滑空するだけの形態ではやはり勝負が難しいのか、出番は少なめ。
 でも魅せポイントはあったと思います。
 
 
 
・ジェリーモン

 ほぼ野次馬要員としてついてきました。
 清司郎を伴わずに行動すること自体は珍しくないですが、彼が不在の状態で
 誰か他のメインメンバーと行動するというのはあまり無いケースです。
 17話のような切羽詰まった状況ともまた違う。

 その17話同様、一時的に宙のデジヴァイスを介して連携する場面もありました。
 なるほどデジヴァイス持ちが一人いれば、最低限の戦闘はこなせるわけですね。
 さすがに進化は無理だろうし、今回については途中でデバフを受けてしまったのと
 相手との格の違いとでほとんど貢献できていませんが。
 
 
 
・清司郎

 国際フォーラムへの準備で多忙を極めており、同行していません。
 こうなると、ジェリーモンが何を言おうとテコでも動かないのでしょう。
 ジェリーモンも、こういう時ばかりは空気を読んで無理は言わないわけです。
 
 
 
・瑠璃組

 夏期講習で忙しいためこちらも同行していません。
 アンゴラモンも関連場面にしか出てこないので、珍しくポエムもありませんでした。
 
 
 
・エスピモン

 38話以来の登場。宙に海岸で被った異様な現象を伝え、調査を依頼しました。
 その38話でもチラッと示されましたが、普段は姿を消して行動しているようです。
 彼の習性というか、癖みたいなものでしょう。
 それにどうやら、やたらと人間の前に姿を表す気はないようですし。

 戦闘では自走式爆弾(ボムチュウかな?)を飛ばす必殺技「モットボム」を披露。
 海上でも問題なく使えるというなにげに便利な技ですが、カルマーラモンが使った
 墨のバリアに溶かされてしまい通用しませんでした。
 途中から腕だけでなく全身がねじれちゃってたので、戦闘をこなせただけでも奇跡です。

 彼、どうやら宙のことは「ニセヒロ」と呼ぶことにしたっぽいですね。
 頼りになることは分かっているので接触はしてくるんですが、相変わらずというか
 宙のことは「本物」と認めていません。

 でもその理由は、北斗が「息子はオレと瓜二つ」などと余計なことを言ったせいです。
 つまりこれはどっちかというと北斗パパのせい。
 そして「本物」を探しているということは、「本物」に伝えたいことがあるのかもしれません。
 ……なんか、メチャメチャ重要な情報がコイツのところで握られてる気がしてきました。

 などと言ってるうちに、ラストシーンでちゃっかり宙の寮に戻っています。
 彼の次回の動向次第では、話が動いたり動かなかったりしそう。
 
 
 
・沢井凛

 本作ではちょっと珍しい人間のゲストキャラ。小学3〜4年生ぐらいに見えます。
 明朗快活な性格ですが、登場時点ですでに軽度のねじれに巻き込まれていました。

 大型犬の勘太郎を飼っており、よく懐かれています。
 彼女と愛犬の触れ合いや、異常に巻き込まれたことがガンマモンの発奮を促したので
 ゲスト役ながら極めて重要な役割を担っていたと言えるでしょう。

 中の人は下地紫野さん。
 「アイカツ!」の大空あかりをはじめ、主役経験もあるというなかなか贅沢な配役です。
 デジモンでは他に「デジモンサヴァイブ」でフローラモンとして出演しています。
 
 
 
・カルマーラモン

 ハイブリッド体の水棲型デジモン。軟体型でも水棲獣人型でもないんですね。
 ギガスモンといい、本作のビースト体は完全体相当とみてよいでしょう。
 まあヒューマン体は出てきてないけど。

 デジタルゲートを通って人間界に来た際「螺旋」に美を見出すようになり、
 無生物から動物、人間に至るあらゆるものを螺旋状に変形させてしまうという
 通常ではあり得ない能力を身につけるに至っています。
 これは後天的に得たものと考えるのが妥当でしょう。

 この能力は戦闘にも応用がきき、海に打ち込むことで水竜巻を作ることができます。
 竜巻というだけあって周囲には気流が発生しており、迂闊に近づいたカウスガンマモンが
 一時的に中へ巻き込まれてしまうほどでした。
 周囲にネーロコルソを吹き付けて壁を作り、エスピモンの攻撃を防ぐ小技もこなします。

 ただでさえ、ねじれの影響を受けた生き物はまともに行動することが難しくなるのに
 その上この攻防一体となると、海の上では非常に不利な戦いを強いられてしまいます。
 対抗するためには、カノーヴァイスモンへの進化しか手がありませんでした。
 そういえば、宙とガンマモンはなぜかねじれの影響をいっさい受けませんでしたね。

 そのカノーヴァイスモン相手にも得意の「タイタニックチャージ」で粘るのですが
 土壇場で気魄を叩き込まれたことによって体が真っ直ぐになってしまい、
 そこを衝かれて海中に叩き落とされ、敗北を喫しました。
 あの状況で柔軟さを失ってしまったことが敗因にも見えます。

 敗れてからは螺旋への妄執が失せ、美にもさまざまな形があるのだと悟っています。
 やはり宙とカノーヴァイスモンの想いが伝わったのでしょうか?
 以後は新たな美の追及のために去っていきましたが、何だか危なっかしいな……

 中の人は名塚佳織さん。
 2000年代からヒロイン役を歴任し、奇しくも放送時点で絶賛上映中である
 「ONE PIECE FILM RED」でもヒロイン役・ウタを演じている方です。

 その影響というわけではないと思いますが、今回のカルマーラモンは
 どちらかというと可愛らしい寄りの描写とキャラ付けだったように思いますね。
 ただの人面イカだった:とは180度印象が異なりました。
 
 
 
・宙のデジモン調査ファイル

 今回はジェリーモンのセリフが多め。
 寮長はあと何回オチを担当させられるのでしょうか。
 
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「失くしたと思ってた学生証!?」(宙)
 
 エスピモンに渡されて。やっぱりパクってたのか……

 
「しつこい!
 北斗は言ってた。自分と瓜二つだって。
 お前は瓜二つじゃないからニセモノだ」(エスピモン)

 
 やっぱりこれ北斗パパが余計なことを言ったせいですよね……
 だけどもし彼が重要な情報を持ってるんだとしたら、
 「デジモンにありがちなカン違い」って笑ってる場合じゃないような……

 
「そんなにすごいのに、宙お兄ちゃんとケンカしてるんだね?」
「でも、ごめんなさいしたら…その子も笑って、また仲良しになれたよ!」(凛)

 
 ゲストから一献。幼いのになかなか勘の鋭い子です。
 二行目のセリフは2回出ました。ガンマモンに決意を促したキーワードです。

 
「ぴったりフィットするこの感覚♪ 不思議と落ち着くさ〜…」(ジェリーモン)
 
 タコツボに体を突っ込んで。これも軟体の本能でしょうか。タコじゃないけど。
 ですが、この後あんなことになるとは誰も想像しなかったのです……(変なナレーション)

 
「でも、どうしてニセヒロは平気なんだ!?」(エスピモン)
 
 グニャグニャ状態で宙に抱えられながら。
 それどころじゃないのでスルーされましたけど、覚えといた方がいいですかね?

 ちなみに体がねじれても痛みはないそうですが、限界はありそう。
 現に、強度の限界を超えた物体は中途から千切れてます。
 ほっといたら動物や人間、デジモンも同じ目に遭っていたかも。

 
「…おれ、ヒロにあやまる。ヒロと一緒に、リンを助ける!」(ガンマモン)
 
 体がねじれたことで疑似デジタルフィールドに残ってしまい、不安に駆られ泣きじゃくる凛に。
 ただ謝ろうと決めただけではなく、大切なことを教えてくれた凛を守るために彼は今、
 自ら蟠りを捨てる決意をしたのです。

 
「私は見たわ。ねじれは根源! 私は美しき、世界の、中、心!」(カルマーラモン)
 
 デジタルゲートを通った時の感覚を語って。
 直後に繰り出す「ネーロコルソ!」のドスの利きっぷりと好対照をなしてました。

 この時の彼女は、ある種の万能感をおぼえているようにも見えます。
 ジェリーモンの場合は、あっという間だったので覚えていないということですが……
 これも覚えといたほうがいい要素ですかね??

 
「ヒーーーーローーーー!
 おれ! ヒロの板… ……っ、グスッ…こーーわーーしーーたーー!
 ごーめーんーなーさーーーーい!」(ガンマモン)

 
 宙に合流して。
 本当はわかっていて、でも感情が邪魔をして素直になれなかった。
 けれど本当は宙のことが大好きで、こんなことがしたいわけじゃなかった。
 全部の気持ちがセリフと演出に乗っています。
 ひょっとしたら本作屈指の名場面かもしれません。

 
「…わかった。わかったよ。
 …うん。ちゃんと謝れたな。ガンマモン…!」
 「ヒロォ…!」
 「…みんなを助けるぞ!」
 「…ん!」(宙とガンマモン)

 
 そんなガンマモンに対して宙がしてあげられるのは、ただ受け入れることでした。
 余計な言葉は要りません。ガンマモンのこの言葉と行動を誰よりも待っていたのは彼ですから。
 直後の進化シーンとあいまって、やたら盛り上がるシーンです。

 
「オレは…ねじれを止めて…凛を、助けるんだーっ!」(カウスガンマモン)
 
 水竜巻の中、流れに逆らわず進みながら。
 兄貴でありパートナーである宙のためだけではなく、これは彼にとって凛のための戦いでもある。
 この意識も彼の成長の一環と言うべきでしょうね。

 
「ギュルルル…ねじれは力! 万物の…美しさ!」(カルマーラモン)
 
 「ドラゴニア」を「タイタニックチャージ」で迎撃して。
 螺旋力にでもやられたのでしょうか??? かなりの強さではありましたが。

 
「美しい……まっすぐ……」(カルマーラモン)
 
 「メテオルクス」を喰らい、海に叩き落とされて。
 直前に体が突如として真っ直ぐになったことといい、やはり宙とカノーヴァイスモンの気魄が
 彼女に何か大きな影響を与えたとしか思えません。頭でなく心で理解させるような。
 少なくとも、これで彼女の妄執は中和されたってことでしょうか。
 
 
 
★次回予告

 「道化師」といういかにもなタイトルが興味をそそります。
 主犯は誰なのか、早くもあちこちで推測がなされていますね。
 そのものズバリなら、初の究極体が相手ということになるかも?

 サーカスというだけあり他にも多数のデジモンたちが出てくるようですが、さて……