感染孤島

脚本:森地夏美 絵コンテ:角銅博之 演出:羽多野浩平
作画監督:直井正博/小澤誠鷲/北恭太/
GU_BING/QIAN_JIN_YI/SUN_QIANG
総作画監督:金久保典江

★あらすじ

 宙とガンマモンのもとに、体長3センチほどの牛と蜘蛛を合わせたようなデジモンが訪れます。
 それはギュウキモンという危険なデジモンでした。敗れた者は同類にされてしまうのです。

 しかしその個体は「自分はギュウキモンではなく、リュウダモンだ」と主張しました。
 ギュウキモンの毒にやられ姿が変わり、サイズも小さくなってしまったというのです。
 彼は北斗に会ったことがあり、息子である宙を頼ってやってきたのでした。

 タイミングが悪いことに、翌日は四泊五日の自然教室。
 ギュウキモンを放っておけない宙は彼を合宿がある島に連れてくるのですが、
 着いた直後に行方を見失ってしまいました。
 ギュウキモンはリュウダモンだった頃の意識を失い、本能のまま行動を始めていたのです。

 結果として島に集まった人々はほとんどがギュウキモンに襲われ、毒を注入されて
 人間ともデジモンともつかぬ異形になり暴れ狂い出してしまいます。
 責任を感じた宙は、ギュウキモンを元の姿に戻してやるべく対峙することに。

 そこへ、異常を聞きつけた瑠璃たちが到着。
 一緒に来たバクモンからの情報で、デジヴァイスを介すればギュウキモンを止め
 元のリュウダモンに戻すことができるかもしれないと判明します。

 可能性に賭け、ギュウキモンの中のリュウダモンに呼びかけるガンマモン。
 甲斐あってデジヴァイスが輝き、リュウダモンは己の姿と意思を取り戻しました。
 人々の毒はバクモンによって取り除かれ、事件は危ういところで幕を閉じます。

 不用意を詫びる宙に、皆はその間違いを生んだものも君の良さだと励ますのでした。

 
 
★全体印象
 
 39話です。話数としては3クール目ラストですが、時期的にはもうすでに4クール目。
 本来なら10月までで48話が放映していたはずで、今週は43話にあたる週です。
 不正アクセス事件の影響の大きさがより実感できてきますね。

 さて今回のテーマはそのまんま「牛鬼」。
 牛鬼といえば、退治したものがまた牛鬼になってしまうという恐ろしい妖怪です。
 「ゲゲゲの鬼太郎」6期にも登場したので、その恐ろしさは記憶に新しいところ。

 そのモチーフを備えたギュウキモンもやはり恐ろしい怪異として描かれてるのですが、
 実は本編で「ギュウキモン」として暴れたのはもともとリュウダモンなので
 彼を攻撃するなりして感染?させたギュウキモン自体は出てきていません。
 つまり斃すべき相手に具体的な実体がないという、少々珍しいケースになってるんですね。
 リュウダモンを襲った個体はどこにいるのでしょう。デジタルワールドかな?

 全体に途中で始まってる感が強く、リュウダモン本来の姿を誰も知らないのに
 元の姿に戻るよう働きかけるという、いささか性急な流れになっていました。
 このせいで「実はリュウダモンの初登場回が本当はどこかに存在していたけど、
 都合によりお蔵入りになったのでは」という説をすでに見かけます。

 実際のところはどうだかわかりませんが、不正アクセス事件で4話ぶっ飛んだ以上
 どこかに皺寄せは来ているはずで、今回はそのひとつかもしれないという話です。
 実際のところはわからないんですけどね、ホント。

 脚本は森地夏美さん。なんかこの方のホン、毒を使うデジモンが多いような……
 作監には新顔として、鷲北恭太さんの名前が見て取れます。
 90年代から広範にわたって活躍しており、アプモンにも参加されていたようですね。
 
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・宙

 なんとかなるだろう、というぐらいの気持ちでギュウキモンを連れてったら
 えっらいことになってしまって流石に堪えた感じでした。
 このため、今回ばかりは仲間たちに頭を下げるという行動に出ています。

 ただタイミングが非常に悪かったのも確かで、自然教室と被っていなければ
 バクモンとの合流を待つことであっさり解決してた可能性も高いのですが。
 あくまで結果だけ見ればの話ですけどね。

 そういえばリュウダモンは北斗パパと会ったことがあるそうですが、
 状況が状況なんで話を聞くどころではない流れになっています。
 
 
 
・ガンマモン → ベテルガンマモン → カノーヴァイスモン

 ギュウキモンを元のリュウダモンへ戻すために奮戦していました。
 リュウダモンだった頃と面識がないせいで、いかんせん動機がユルいというか
 フワッとしてた感覚はあるのですけど。

 そういえばデジヴァイス云々言ってたけど、デジヴァイスを使うんじゃなくて
 カノーヴァイスモン状態でギュウキモンの中のリュウダモンにアクセス?というか
 語りかける流れになっていましたね。
 それもデジヴァイスがあればこそできることなんでしょうけど。
 
 
 
・瑠璃組

 距離が空いてたせいで後手に回ってた人たち。
 しかしエアドラモンを呼んで駆けつけるという判断は早かったので、手遅れになる前に
 バクモン共々事態を収拾させる一助となることができました。
 これも人脈?の賜物ってやつでしょうか。

 バトルではジンバーアンゴラモンが登場。
 ブレイキンストリームでギュウキモンの態勢を崩し、ベテルガンマモンを助けています。
 
 
 
・清司郎組

 二人ともギュウキモンへの危険視を隠そうともしていませんでした。
 まあ、アンゴラモンでも強めの警告をしてたぐらいだから無理もないんですが……
 ジェリーモンに至ってはドサマギで「ヒロのせい」とハッキリ口にしています。
 ただ、それ以上の追求をしなかったのは立派と言っていいかもしれません。

 バトルではテスラジェリーモンが登場。
 半ばヤケッパチで援護していましたが、最終的にはカノーヴァイスモンに任せています。
 
 
 
・コタロウ

 前回から続いての登場。今度はギュウキモンの毒素を注入される災難に遭っています。
 その際の姿はなかなかにトラウマ級の恐ろしさ。
 あそこまで変化していて、よくもまあ元に戻れたものです。
 ある意味デジモンによる作用だから戻れる、ってことなのかもしれませんが。
 
 
 
・新島

 まともに登場するのは27話以来。そして今回も被害者枠です。
 ギュウキモンへの変化が最も著しい人物のひとりで、その異形変化ぶりは必見。
 見た人の性癖をベッキベキに捻じ曲げかねない威力だったかもしれません。
 変化プロセスはすごく痛いらしいので、彼女には申し訳ないのですが。
 
 
 
・バクモン

 久々に登場したボコモン先生の助手。
 有能ぶりへさらに磨きがかかっており、リュウダモンを元に戻す手だての発案から
 人々の治療、ちょっとした記憶改竄までアフターケアも万全にこなしていました。
 タイミングさえ合えば、事態が悪化する前にどうにかできたことでしょう。

 それもあって、宙にはかなり強めに釘を刺す立場でした。
 もうボコモン先生の時のような思いはしたくないでしょうから、気持ちはわかる。
 
 
 
・エアドラモン

 前回に続いての登場。
 瑠璃組とバクモンを連れ、超特急で島まで飛んでいってくれました。
 態度はでかいですが、言うだけあって頼りになります。
 瑠璃と意気投合しているので、彼女の頼みなら多少の無茶は聞いてくれる感じ。

 口ぶりからみて、彼もギュウキモンの危険性はよく知っているようですね。
 全力で飛んでくれたことにはそのあたりも絡んでいそう。
 
 
 
・ギュウキモン

 完全体の魔獣型デジモン。
 Dimカード-V3-のリュウダモンVerに登場する最新デジモンの一体です。
 前回のエスピモンや下記のリュウダモン同様、販促が絡んだ登場といえるでしょう。
 不正アクセス事件のせいで、スケジュール調整には難儀したものと思われます。

 図鑑設定ではどちらかというと執拗なハンターの側面が強く、倒した相手を同種に変える
 モチーフに倣った能力についてはいっさい言及がありません。
 しかしながら「牛鬼」といえばやはり「同種になってしまう」というイメージがあるため
 敢えて設定に拠らないことは承知でこの特性が付与されたのでしょう。

 ただ本来の牛鬼と異なるところは、コイツを倒した者が同種になってしまうのではなく
 コイツに敗れたものが同種にされてしまうという設定になっていることです。
 つまり、本作のギュウキモンは敵を倒せば倒すほど仲間を増やすことができるのです。

 希少種という扱いになっているのは本作の場合、自然発生ケースが極めて少なく
 事実上、他の種を無理やり同種に変えることでしか増えることができないからかもしれません。
 そしてそのことを承知しているデジモンも少なくないため、ギュウキモンがいる場所へ
 迂闊に近寄るような手合いは少ないだろうということまで推測できます。
 リュウダモンは宙やガンマモンと同じく、ギュウキモンについてあまり知らなかったのかも。

 本編ではリュウダモンを介し、人間たちへ次々と毒素を植えて仲間にしようと暗躍しました。
 大元となるギュウキモン自身は出てこないので、その因子のみが敵だったともいえます。
 そこが本作におけるこのデジモンの恐ろしさでもあるのでしょう。

 ただ人間はデジモンと違うので同種にすることが難しいのか、半端に変化を遂げた
 恐ろしい姿となって理性も何もなく暴れ回るだけになってしまうようです。
 またこの場合、バクモンならホーリーリングを介して割とカンタンに治してしまえる模様。
 ある意味、ガンマモンたち以外デジモンがいない島に連れてきたのは怪我の功名でした。
 もしデジモン達の集会が襲われたりしていたら、もっと恐ろしいことになっていたでしょう。

 最終的にはコイツの中に囚われるようにして押し込められていたリュウダモンに
 デジヴァイスの光を介してガンマモンが接触。
 ギュウキモンの影を打ち祓って彼を救助したことで、元の姿へ戻りました。
 進化状態から成長期へ戻る際のプロセスを応用した節があります。

 中の人は下記のリュウダモンと同じく菊池正美さんです。
 ある意味当然ではありますが、なかなかにえげつない。



・リュウダモン

 アニメ初登場。成長期の獣型デジモン。意外なようですが獣型です。
 武者鎧を思わせるスタイルに身を固めた勇ましい姿をしています。

 しかし初登場時はこの姿ではなくギュウキモンの状態で、しかも3センチほどに縮んでました。
 出てきた時点では自分を保っていましたが次第に不安定になり、壁などに頭をぶつけて
 なんとか自意識を保とうとしていたものの、どんどん抑えが効かなくなってます。
 本来は善良だと見て取れるだけに、理性を失ってゆくさまは生々しいものがありました。

 最終的にはついにギュウキモンとしての意識に乗っ取られてしまうのですが、
 デジヴァイスに反応したことでカノーヴァイスモンからの直接的アプローチを受け、
 なんとか元に戻ることができましたがバクモンによると、これはかなりのレアケースだそうで。

 描写からみて彼もまた特殊な因子を持つデジモンの一体であることと、上記の通り
 幾度となくギュウキモンの侵蝕から心を守ろうとした強い意志が幸いしたのかもしれません。
 そんな彼でさえああなってしまうほどギュウキモンの侵蝕というのは恐ろしいもので、
 時間が経ってしまったらおそらく完全に手遅れになっていたんじゃないでしょうか。

 中の人は菊池正美さん。言わずと知れたデジモンシリーズ常連です。
 アプモンや一部の映画を除く大半のデジモン作品に登場しておられる方。
 :のネーモンは長老然としてましたが、今回は溌剌とした演技で魅せてくれます。
 それにしても声が若い。
 
 
 
・宙のデジモン調査ファイル

 妖怪としての牛鬼に言及がありました。
 瑠璃はこーゆーのにとても詳しそうです。たぶん鬼太郎も全話見てる。
 逆に、寮長は怖くて調べられないだろうから詳しくないんでしょうね……
 
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「北斗が言ってたんだ。
 人間界で何か困ったことがあったらオレの息子、天ノ河宙んとこへ行け、って……」
 (リュウダモンinギュウキモン)

 
 序盤、瑠璃たちとのやり取り中に。そばで清司郎がビビっています。
 それにしても親父殿、人間界のトラブルを息子に丸投げする気満々ですね今更ながら。

 
「オレは…リュウダモン…! リュウダモンだ!
 ガンマモンも…宙も…オレは絶対に襲わないっ…!」(リュウダモンinギュウキモン)

 
 頭をガツガツ打ち付けながら。
 彼本来の善性がわかる場面ですが、それでも一瞬我を失ってしまって不安に駆られています。
 この後姿を消したのは人の側から離れようとしてのことでしょうが、悪手でした。
 なんとか目の届くところにとどまって拘束するなりしてもらった方が良かったかもしれません。

 翌日、新島を襲ったことで森に移動したものの、コタロウが来てしまったことでこれを襲い
 被害を広げる結果へ繋がってしまっています。

 
「ガンマモ〜ン! 何かあったら、僕を守っておくれよ〜!」(清司郎)
 
 島に着くなりジェリーモンがどこかへ行ってしまっていたため、不安のあまりに。
 彼、今回しかり割とパートナーに放置されてることが多いもんなぁ……

 
「宙のせいで、もう散々さ!」(ジェリーモン)
 
 ギュウキモンの毒素で阿鼻叫喚へ陥った合宿から脱出して。
 サラッと当て擦ってますが本人はそれどころじゃありません。

 
「俺のせいで…新島さんやコタロウ、みんなが…!
 俺が何とかしなくちゃ…でも、どうすれば…!」(宙)

 
 そして言われずとも彼は原因の一端が自分にあることなどわかっていました。
 しかし事態の深刻さのあまり、軽いパニックへ陥ってます。彼にしては珍しい。
 しかしこの直後、ガンマモンの真っ直ぐな言葉で木を取り直すことになります。

 
「フン、その心意気…ますます気に入った、である!」(エアドラモン)
 
 瑠璃たちを島へ運ぶ最中に。
 ギュウキモンという危険なデジモンが跋扈しているとわかっていても放っておけない、
 と言い切った瑠璃を賞賛しています。彼女のこういうところが気に入ったんでしょうね。

 
「あれは…もともとリュウダモンの額にある、旧型のパーツっす!」(バクモン)
 
 ギュウキモンの額から発せられた光を見て。
 もともとリュウダモンは設定だとかなり古いタイプ、ないし古い種族にあたるデジモンで
 額の赤いパーツはその名残。つまり、彼が彼である要素がまだ残っているというわけです。

 
「今回は、ギュウキモンの中にリュウダモンの心が残ってたから解決できたっす!
 か〜なりのレアケースっすよ!
 これに懲りたら、もう安請け合いはしないことっすね!」(バクモン)

 
 後処理を終えての釘刺し。なかなか辛辣です。
 宙もすっかり神妙にしていました。

 
「仕方ないわよ。ああでもしないと元に戻せなかったんだから」(瑠璃)
 「頼まれたら断らないのはきみの美徳でもある。ま、今回はヤバかったけど」(清司郎)

 
 そんな宙を励ましたのは仲間たちでした。
 二人とも、宙がそういう子だから助けられてきた局面もあるはずだし、それをよくわかっています。

 それに三つ子の魂百まで、宙のこの性格はそう簡単に変わるものでもない。
 二度同じ失敗はしないだろうし、必要とあれば自分たちでフォローしてあげればいい、というわけです。
 彼らは今までそうしてきたし、これからもそうしてゆくのでしょう。
 
 
「失敗と反省は成功の卵。今日(こんにち)の緩み忘れるべからず、かな」(アンゴラモン)
 
 二人のフォローに続いて。今回のアンゴラポエムを兼ねています。
 今日のことを忘れないようにしよう。次はきっと、もっとうまくやれるよ。そんな感じですね。

 
「うまい!」
「おー! 最強は、最強だぞ!」
「うん! 最強だー!」(ガンマモン&リュウダモン)

 
 チョコを食いながら。ラストシーンのやり取りですね。呑気です。
 微笑みながら見つめる宙たちの顔は、やっと平穏を取り戻した安堵に満ちていました。
 
 
 
★次回予告

 生物、無生物問わずあらゆるものが螺旋状に捩れる怪現象が発生するようです。
 いったい何者が関わっているのか、この予告だけではさっぱりわかりません。
 エスピモンも再登場するみたいですが…?