陰陽師
脚本:十川誠志 絵コンテ:谷東 演出:西健太
作画監督:佐藤敏明/李少雷/Noel_Añonuevo/Eugene_Ayson
総作画監督:仲條久美
★あらすじ
古都・鎌倉にある葉櫻学園の姉妹校。
宙たちはそこで行われる伝統の舞台“若君の舞い”に参加することになったのですが
たまたま体格が似ているという理由から、主演である若君の代役をやることになります。
ところが本番中、宙は突然消えてしまいました。どこかへ拉致されたのです。
行方を追うガンマモンの前に、エスピモンと名乗る謎のデジモンが現れます。
目端のきくエスピモンの協力で、ガンマモンは事件の真相へ迫ってゆくことに。
その頃、宙は陰陽術を使うドウモンにを貼られ、怨霊の依代とされていました。
北条最後の若君と名乗る邪霊に乗り移られ、操られていたのです。
さらにドウモンは人々を攫って霊符に封じ込め、手勢として使おうと目論みます。
すべてはふたたび天下を取り戻し、新たに幕府を打ち立てるため。
まさに進撃というところで、駆けつけるガンマモン達。
怨霊に操られてしまっている宙には、呼びかけの声も届きません。
が、霊符を剥がせば良いとエスピモンが気づき、隙をついてガンマモンが実行。
宙を元に戻すことに成功します。
激怒したドウモンは式神、さらには一同を結界に閉じ込めようと仕掛けてきますが
絆を取り戻して進化したカノーヴァイスモンの前には敵いませんでした。
そして、そのドウモンもまた鎌倉の地に蟠る怨霊に操られていたことが発覚します。
ドウモンによって人々はすみやかに元へ戻され、大事件は回避されました。
エスピモンは不可解な言葉を残し、宙たちの前から姿を消します。
果たして彼の本当の目的とは…?
★全体印象
38話です。
今回のテーマはズバリ「陰陽師」。ゲスト役のドウモンにはまさにピッタリな題材です。
舞台が京都でなく鎌倉なのは、大河ドラマに乗っかってのチョイスでしょうか。
それに宙たちの行動エリアが東京なら、あちらより往来に無理も出ませんしね。
また今回からは公式の予告通り、新レギュラーと思しきエスピモンが登場。
小回りの良さと頭の回転の早さでガンマモンを好フォローしています。
悪いやつじゃなさそうですが、何か事情がありそうですね。
全体としては「陰陽師」から連想できる概ねが盛り込まれたものです。
ドウモンが鎌倉幕府に仕えていたという発言も最初は「?」ってなりますが
「実はコイツも操られているだけなのでは」と気づくフックになってました。
冷静に考えると、正真正銘のオバケが黒幕だったってことですが。
そういう意味では妖怪・怪異モノジャンルがデジモンを食ってる回と言えます。
その場に寮長が居合わせなかったのは不幸中の幸いだったかもしれません。
脚本は25話以来、1クール分ぶりとなるシリーズ構成の十川誠志さん。
エスピモンのこともあるし、やはり重要回と見做すべきでしょう。
演出には新たに西健太さんの名前が見て取れます。:にも参加してた方ですね。
★キャラなど個別印象
・宙
エスピモンが意味深なことを言ってるので何かややこしいことになってますが、
彼が「若君」の憑代にされたのは本当に「たまたま」だと思います。
たまたま怨霊がその念を出力しやすい媒介でもあるドウモンを手に入れたことで、
たまたま若君の恰好をした=憑依しやすい条件が整っていた彼が狙われたのでしょう。
たぶん。
強いて言うなら宙自身がデジモンに何度も関わっていて、相性が良かった……
ってところなんですけど、実のところは定かじゃないんですよね。
「やっと見つけた」というセリフをどう取るかにもよるけど。
ただ、そこにいたのが彼であること自体が不気味なぐらい偶然の連続なので
本当にこれは偶然なのか? と疑ってしまいたくなるのは確か。
まあ、おかげで大事件になりかけたところをギリギリ阻止できたわけですけど。
怨霊もデジモンも関係ない、ただひたすら「天の采配」だったのでしょうか……
・ガンマモン → ウェズンガンマモン → カノーヴァイスモン
最初は宙が消えたことの意味を良くわかっていなかったようです。
エスピモンが早々に合流してアシストしてくれなかったら独りだったわけで、
地味にかなりやばい状態だったと言えるかもしれません。
彼だけでは瑠璃たちにマトモな連絡もできず、距離的にも遠すぎましたから。
成熟期としては、ウェズンガンマモンが32話以来となる登場。
エスピモンとの連携も込みで、式神たちを的確に撃破してのけています。
さらに完全体進化でドウモンの技へ割って入り「メテオルクス」で勝負を決めました。
単純なパワー面では、大半において圧倒的戦いぶりを見せてくれています。
・瑠璃組・清司郎組
ガンマモン達からの連絡を受けてエアドラモンに乗り、鎌倉まで駆けつけました。
ただし到着した頃には大勢が決していたため、特筆するほどのことはできていません。
なおポエムは意地でも捩じ込んでいます。
・エスピモン
宙を追うガンマモンの前に現れたサイボーグ型の成長期デジモン。
モルモットのような顔ですが宇宙飛行士のモチーフも入っているなど特異なデザインで、
かなりインパクトのある外見をしています。この時点で掴みはOK。
トボけた雰囲気ですがその実かなり目端のきく利口なデジモンでもあり、
宙がいなくなって途方に暮れるガンマモンを的確にアシストしてのけていました。
また、成長期としてはかなり高度な飛行能力を兼ね備えています。
彼がいなかったらガンマモンが宙のもとへ辿り着くことは難しかったでしょうし、
辿り着けたとしても事態はとんでもないところまで発展してしまっていたかもしれません。
一方、なぜか宙の身分証明書を持っており、しかも「あいつは天ノ河宙じゃない」と
妙なことを言い残していたりします。姿を消してしまったので、その真意は謎のまま。
いったい何者で、目的は何なのでしょうね? 悪意はなさそうなんですが……
中の人は小林由美子さん。:で光子郎を演じていた方ですね。
役柄的には小林さんがもともと得意としていた元気系少年の系列なのですけど、
そこに一捻りが加わってる仕上がりでした。
・コタロウ
32話以来の登場。
多少セリフはありますが、概ね巻き込まれモブに近い扱いです。
元に戻ってさっそく女子をナンパするなど、神経の太いところも。
どうやら次回にも出番があるみたいですが、またヒドい目に遭いそうですね……
毎度助かってるし、寮長ばりの強運ではあるんですが。
・エアドラモン
瑠璃組と清司郎組が鎌倉への移動のために力を借りた、成熟期の幻獣型デジモン。
クロックモンの紹介で引き合わせされた形です。
尊大な性格で自らを「神も同然」と呼称するプライドの高い性格なのですが、
機嫌を損ねていても頼まれたことはやってくれる程度には親切。
体の大きさゆえ、その場の全員を乗せて難なく鎌倉まで移動しています。
彼にとってはこれぐらい朝飯前なのでしょう。
なぜか瑠璃と意気投合するなど、今後も登場しそうなフラグを立てていますが
本当に再登場するかどうかは断言できないのが現状。
でもこういう時は非常に頼りになるので、今後もちょくちょく出番があるかも。
中の人は置鮎龍太郎さん。なんとフェレスモンの人です。
これはフェレスモンの再登場を示唆する事態か、それとも逆に「もう出ない」
というサインなのか……これも現段階では断言できません。
・ドウモン
今回のゲストにしてメインエネミーです。魔人型完全体。
宙を拉致したうえ「若君」の憑代として操り、さらに多くの人々を式神に拐わせ
赤い霊符に封じ込め、兵士として操ろうとしていました。
自前だけでも緑の霊符から式神を作ることができるのですが、赤との差異は不明確。
それというのも赤式神が動き出す前にコトが片付いてしまったからなのですが、
わざわざ手間をかけるぐらいだから赤式神の方が強いと考えるのが自然でしょう。
人を媒介にすることで、より強力な式神となるのかもしれません。
劇中では鎌倉中の人々を拉致して多数の赤式神を作り、これを軍勢となして
新たな幕府を打ち立てようとするのですがその直前にガンマモンとエスピモンが乱入。
宙が元に戻ったことで旗印たる「若君」を失うも、なお抵抗を試みます。
この際、巨大な筆を取り出して繰り出そうとしたのが「鬼門遁甲」。
これは設定によると空中で結界を描き、永遠の迷路に相手を閉じ込めるというもの。
技が完成してしまったら非常にやばかったと思われるのですが、
カノーヴァイスモンが先手を打つ形で空中の陣を破壊。
そのままドウモン自身も地面に叩きつけられ、いったんは昏倒しました。
実はあらすじにも書いた通り、鎌倉の地に蟠る北条氏の怨霊に操られていました。
カノーヴァイスモンの一撃でこの怨霊が抜け、正気に戻っています。
これは推測ですが、怨霊がここへ来て具体的な行動を起こしたのはおそらく
このドウモンとの相性が極めて良好だったことが主要因だったのではないでしょうか。
ちなみにガンマモンに顔を踏まれて転倒したり、カノーヴァイスモン相手には
ほぼ一方的に敗れたところをみると直接戦闘はそんなに得意じゃないようです。
術は凄そうだけど発動に時間がかかるっぽいのも弱点ですね。
中の人は緑川光さん。言わずと知れたベテラン声優のひとりです。
「フロンティア」ではヒポグリフォモンとエンジェモン、
「クロスウォーズ」ではスプラッシュモンを演じていたことでよく知られます。
昔は熱血漢役も多かったのですが、最近はやはりクールな役が増えてますね。
・北条氏の怨霊
ドウモンに取り憑いていた今回の黒幕。
その状態で宙を憑代に「若君」を降ろしていたので、一種の集合意識かもしれません。
デジモンでも人間でもその他の電脳生物でもない何か得体の知れないものが元凶というのは
極めて珍しいケースであり、本作の怪奇路線が極めて強いことを示す実例と言えそう。
強いて言うなら元は「人間の怨念」なのですが……
実体のない存在なので、ドウモンが昏倒したあとは呪詛を残して消えてゆきました。
つまり完全に倒されてはいないということで、今後が心配ではあります。
なんせデジモンが取り憑かれたという実例までできちゃったわけだし……
でもコイツら、そもそも消し去れるものとも思えないんですよね。
中の人は沢木郁也さん。デジモン初参加のようです。
70年代から活躍しておられる、緑川さん以上のベテラン声優さんですね。
近年では「ONE PIECE」の藤虎(イッショウ)役が有名。
大昔の大怨霊という設定だし、見合った格の人を連れてきたってところでしょうか。
・宙のデジモン調査ファイル
まだエスピモンは紹介されてません。
彼の世代についてはデジモン図鑑で確認できます。
★名(迷)セリフ
「…そなたは?」(宙in若君)
平伏するドウモンに。「若君」に乗り移られての第一声です。
急に昔っぽい声色になるのが可笑しくもわかりやすいです。
でもカンの良い方なら、ドウモンと幕府の関係にこの時点で疑問を抱くかも。
「違うね。あいつは”ヒロ”じゃない」(エスピモン)
ガンマモンに放った意味深すぎる一言。
同じことをなんと宙本人にも言っていますが、どういうことなのでしょう。
…まさか単なるカン違いとかじゃないでしょうね。
「おいら、さすらいのデジモン… エスピモンだ!」(エスピモン)
上の直後。ここで初めて名を名乗ります。
最後の一言だけちょっと鼻息荒そうなのがポイント。
「お前、やけにつぶらな瞳しちゃってんなァ…ずるいぞ」(エスピモン)
宙を探す手伝いをしてくれと頼み込んでくるガンマモンの目を見て。
さすらいのデジモンを自称し、あまり物事に深く関わりたがらない感じですが
心根には困っている誰かを無碍にできない人情深いところがあるとわかるセリフです。
「俺は神も同然!
この姿を見れば、人間どもはありがたがり、拝む! …である」(エアドラモン)
乗って行ったら目立つのではないか、という指摘に答えて。
あんまり気にしてない感じ、というか答えになっていません。
とはいえ、夜間で交通手段がない瑠璃たちに選択肢がなかったのも確かです。
前回からみて、アンゴラモンだけでも瑠璃組と清司郎組の両方を運ぶことはできましょうが
それだと距離的に時間がかかりすぎるでしょうから。
「いざ、鎌倉!」(瑠璃)
エアドラモンに乗って飛び立ちながら。
言ってみたかっただけ感が溢れてますが、これ以上相応しいセリフもありますまい。
「おのれ…いつかまた必ず! 口惜しや…!」(北条の怨霊)
ドウモンから抜け出て消え去る間際に。どうやらコイツが怨霊の大元だった模様。
それにしても見事なほどベッタベタな捨て台詞です。
「ねえ彼女! ここ、どこか知ってる?」(コタロウ)
元に戻って早々、隣にいた女子に。一周回ってもはや尊敬させられますな。
ちなみに相手は割とドン引きしていました。
「”瓜二つ”じゃねぇしな……」(エスピモン)
宙を「アマノカワヒロ」ではないと否定して。どういうことでしょう?
「道中、困難ありしも…終わり良ければすべて良し。…だね」(アンゴラモン)
今回のアンゴラポエムです。ほとんど滑り込みみたいな勢い。
「ちょっと遅かったみたいだけど、無事でよかったよ」とほぼ同義です。
意地でも捩じ込むこの姿勢、こうなれば最後まで貫いて欲しいものです。
なればこそ、26話みたいなエピソードが際立つというもの。
「ガンマモン…あいつ、なかなかすげえヤツじゃねぇか」(エスピモン)
ラストシーンにて。なぜか宙の学生証を持っています。
そういえば彼、ガンマモンの進化と退化にメチャメチャ驚いていましたね。
なのに「アマノカワヒロ」を探していると……はて?
★次回予告
どうやらギュウキモンという新規デジモンが関わってくるようです。
ギュウキ=牛鬼ときてこの予告。何が起こるかはもはや火を見るより明らかかも?