死霊ノ群レ

脚本:藤田伸三 演出:角銅博之
作画監督:北野幸広/金澤龍/權容祥
総作画監督:二階堂渥志

★あらすじ

 データセンター業務に携わる清司郎へ差し入れするため、湖を臨む小さな町を訪れた宙たち。
 ところが、その町には悪臭を放つヘドロを纏ったゾンビが徘徊していました。
 そいつらに襲われた者は人間、動物を問わず同様にゾンビ化してしまうのです。

 事態を追ってゆくうち、事の元凶がレアレアモンであると発覚。
 こいつが骨を操って生き物をゾンビ化し、引き寄せて食っていたのです。
 宙はこいつを擬似デジタル空間に隔離しますが、ゾンビ化した人々は隔離できません。
 放っておけばレアレアモンにみんな食べられてしまいます。

 危機が迫る中、宙たちはレアレアモンの本質を悟ります。
 ゴミの中で暮らしていたところを潰され、バラバラのまま運ばれて不法投棄されたことで
 レアレアモンの体はすでに死んでいるのでした。
 今はその本能だけが残り、生きようと他の命を貪っていたのです。

 この亡者を救うためには、もはや斃すしかない。
 かくて初の完全体揃い踏みがなされ、レアレアモンは体内に残るガスボンベに引火され
 内側から焼き尽くされました。街の人々も元に戻り、事件は食い止められます。

 しかし、手を下さなければならなかった宙たちの表情は複雑でした。
 できることなら誰の生命も奪いたくない。それが彼らの願いなのですから。
 
 
 
 
★全体印象
 
 37話です。
 今回のテーマは「ゾンビ」。レアレアモンというアンデッド型の能力を応用して
 小さな町にゾンビパニックを巻き起こしました。
 そこへさらに「不法投棄」という社会風刺を絡めた仕上がりです。

 すでに死んでいるということで、ホラーのもうひとつの側面である悲哀も狙ってましたが
 いかんせん最後近くにちょっと強調されただけで、レアレアモン自体のプロフィールも
 「そこにいたら潰されて死にました」としか言いようのないものでしたから
 本命はこいつを斃した後、宙とガンマモンのやり取りにこそあるのでしょう。

 今回も前回同様、メインの誰かにスポットを当てた話ではありません。
 一方で戦闘は完全体が出揃ったということで、初めて三体同時展開を果たしています。
 これは相手が強いというより、その特性の厄介さから導き出された必然でしょう。
 誰か一体でも欠けていたら、こううまくは運ばなかったと思います。

 脚本は32話以来の二度目となる藤田伸三さん。
 よく見るとこの方「爆闘宣言ダイガンダー」のシリーズ構成も担当してたんですね。
 アレみたいな対決路線もいずれ見てみたいものですが。
 
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・宙組

 理性を失い、恐ろしい姿に成り果てているレアレアモンの事情すらも慮った宙。
 凶悪に見えたデジモンたちからも敏感に何かを感じ取り、道筋を投げかけて
 力だけで解決することを良しとせずにやってきた彼の性格だからこそでしょう。
 そのあり方自体がそのまま本作の作風になっていると言ってもいいぐらいです。

 今回のガンマモンはベテルからカノーヴァイスというスタンダードコース。
 というかさすがに、カウスとウェズンの出番は減ってきています。
 ぶっちゃけた話、オールラウンダーであるベテルからが一番戦いやすいですしね……
 飛行における力の温存とか遠距離狙撃など、まだできることはありそうだけど。

 
 
・瑠璃組

 見せ場については概ねバトルに集中しています。
 ラモールモンは二度目の登場。今回は刀を使っての「叩破伐倒」を披露していますが
 それはレアレアモンの口を力任せに開かせるためで、直接斃すのが目的ではありません。
 もっとも物理攻撃だけで斃すのは大変でしょうし、その必要もないのですが。
 
 
 
・清司郎組

 頭脳労働が多いためか、ドーナツが大好きということが発覚した清司郎。
 今はまだ中学生だからいいけど、30年後ぐらいが心配です。余計なお世話? そうですね。

 戦闘では他の二組と並んでテティスモンが登場。
 連続攻撃の先陣を切り、レアレアモンがばら撒いた毒霧「ディケイズン」を無効化しました。
 どうやら中和が難しいタイプの毒ではなかったようです。
 この二人がいなかったら詰むケースが結構あるんですが、今回はある意味最重要枠でした。
 
 
 
・不法投棄トラックの男たち

 村近くの山で不法投棄を続けていた二人組。
 地元住民も迷惑しているはずですが、幾度となく繰り返しているところをみると
 うまく警察の目を盗んでいるか、警察自体の動きが鈍いのかもしれません。
 もともと、この手の犯罪は警察も動きづらいそうですから……

 しかしその行動が巡り巡って、町ごとを危機に追いやったことになります。
 最後には二人ともレアレアモンが潜むと思しき穴の中へ落ち込み、消息不明となりました。
 おそらく、そのまま毒ガスで死んだか食われてしまったものと思われます。
 宙たちが知る由もないこととあって、誰にも顧みられることのない退場でした。

 因果応報、と言えばそうなんですが二人もこんなことになるとは思わなかったろうし
 不法投棄はむろん問題ですが、さすがに気の毒ではあります。
 彼らのような無関心こそが問題を作る、と思えば私たち全員に関わってくる話でもある。

 そういう意味では「過剰に悪者にはされなかった」扱いとも言えますね。
 なんだかんだで助かったこれまでの大半の犠牲者に比べると悲惨ですが。
 
 
 
・レアレアモン

 完全体のアンデッド型デジモン。昨年登場したばかりの新顔です。
 :の42話にも登場しているので、記憶に新しい方もおられるでしょう。

 設定通り、再生と崩壊を繰り返しており全身ヘドロまみれ。
 その強烈な悪臭だけは設定通りだとヤバすぎるのか、比較的にマイルドでしたが
 放たれる毒ガスはちゃんと即死級なので近寄ることすらままなりません。
 攻略上、テティスモンの存在は前提みたいなものです。

 今回では種族名通りすでに死んでいるという設定で、理性や知性はとっくに失われており
 本能だけで骨を操って生物を襲わせ、ヘドロに侵し引き寄せて食らっていました。
 描写はないですが、すでに人間も何人かは食われてしまった可能性があります。
 少なくとも不法投棄の二人は食われた可能性大。

 放置することはできず、さりとて従来のように説得するなどは無理な話。
 「そこにいない」者に、どんな道理を説いたところで意味がありません。
 宙たちの出した結論は「もう楽にしてやること」だけでした。

 撃破の経緯は上記の通り。
 体内に取り込んだガスボンベがまだ残っていたので、ラモールモンが口を開かせ
 そこにカノーヴァイスモンが「メテオルクス」を撃ち込み爆破しました。
 :では熱に強かったですが、こちらの場合はそうでもなかったようです。

 中の人は増谷康紀さん。:ではすぐ後の回にエテモンとして出演してました。
 なんと今回のレアレアモンは喋るんですが、譫言のようなセリフを繰り返すばかりで
 エコーも強かったので中の人の本領発揮とはいかなかった感じですね。
 そういえばヤタガラモンも「えっ増谷さんだったの??」って扱いだったような……
 
 
 
・宙のデジモン調査ファイル

 このコーナー、最後のセリフは毎回寮長なんですが瑠璃もかなり喋る傾向がありますね。
 あと今回は寮長もビビりながら乗ってる雰囲気でした。
 
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「今さらなに遠慮してんだ。
 ここに来ンのだって、一度や二度じゃないだろ」(社長)

 
 ゲストから一献。
 部下の方はなんとなく気が引けてる感じですが、社長は完全に開き直っています。
 上からの命令ってわけじゃなく社長自らなので、そこらへんの言い訳はききませんね。
 しかも、以前から定期的に場所を変えて同じことをしていた節があります。

 社長が自分で関わってるってことは、あんまり大きな会社じゃないんですかね。
 中小だから不法投棄に手を染めやすいってことじゃないでしょうけど……
 まあどうでもいいことですが(無関心が災厄を呼ぶパターン)

 
「アンゴラモン。もう宿まで乗せてって」(瑠璃)
 
 バスが2時間待ちということで飛び出した発言。便利。そしてちょっとズルい。
 律儀に待つ気は毛頭ないという、彼女らしいセリフですが。

 ちなみに宙はガンマモンが楽しそうなので、ゆっくり行くことにしています。
 その後ガンマモンが寝てしまったので休んでいるところを、トラックに乗せてもらう形に。
 この二人らしいといえばらしいマイペースぶりです。

 
「我が愛しのミラージュドーナツ!
 奇っ怪なこの色! 大量の砂糖が放つ輝き! 留学時代を思い出すよ〜!
 これさえあれば乗り切れる!」(清司郎)

 
 宙が持ってきたドーナツをすれ違いざま分奪るように受け取って。
 セリフからすると、国内にはあんまり支店が多くないタイプのお店でしょうか。
 少なくともあの小さな町にはなさそう。

 
「天ノ河く〜ん…… これ、揚げたてじゃないね……」(清司郎)
 
 上の直後。
 宙はこれに対し即答で「いや、そんな無茶な…」と至極真っ当にツッコんでいます。

 
「修学旅行といえば、アニメや漫画の一大イベント!
 葉櫻学園男子寮寮長として、いや人としてっ! 断固参加する!」(清司郎)

 
 寮長、怒涛の三連発。キャラ設定のおさらいみたいな場面です。
 とはいえ気持ちはわかります。

 
「けっこう好きなんだ、ゾンビ映画」(ジンバーアンゴラモン)
 
 ちょっと楽しげにゾンビを解説する瑠璃と、宙の見解を受けて。
 たぶん彼も付き合わされて山ほど見てるんでしょうね。そういう口調をしてる。

 
「またデジモンかぁ〜っ!」(清司郎)
 
 ゾンビに襲われ逃げ出したあげく、ジェリーモンから元凶がデジモンだと聞いて。
 いい加減にしてくれと言わんばかりですが、気持ちはものすごくわかります。

 
「生キル…生キル…!
 暗い…静か…ゴミ… 運ばれた…潰された…!
 バラバラ…運ばれた…!」(レアレアモン)

 
 食っても食っても満たされない嘆き。死んでいるのだから当たり前ですけれど。
 経緯を見るに、この近辺とは別のところに住んでいたところを潰されて
 バラバラのまま運ばれて投棄されたようです。
 潰された時か捨てられた時か、どちらかのタイミングで死んだのでしょうけど
 元がああいうヤツなんで自分が死んだことに気づいてなかったのかもしれません。

 
「みんなの気持ちはわかった…
 宙! あのレアレアモンのためにも…!」(ベテルガンマモン)

 
 レアレアモンにしてやれることはデジタマに還すことだけ、と聞かされて。
 宙が躊躇いを見せたのは自分のことよりガンマモンを案じてのことでしたが、
 それも含めての発言に見えます。
 前後の画面では、回想シーンが効果的に使われていました。

 
「こんな時こそ…みんなの力を合わせるんだ!」(清司郎)
 
 どうやってあのレアレアモンを葬るか、皆の思案を受けて。
 この時点で彼はすでにレアレアモンが体内に抱えるガスボンベの存在に気づいており、
 完全体三体の能力を活かす形で活路を見出しました。
 天才・東御手洗清司郎の面目躍如です。

 
「すべて燃え尽きて…一片のカケラすら残らないでしょう。還りなさい…デジタマに……」(テティスモン)
「二度と…あんな姿で復活するんじゃないぞ……」(カノーヴァイスモン)

 
 燃え尽きてゆくレアレアモンを見守りながら。
 テティスモンのセリフ回しが神々しいですが、カノーヴァイスモンの抑えた感じも良いですね。
 :では凍結されて死ぬこともできずに活動停止したレアレアモンですが、デジタマに還った分だけ
 ひょっとしたらこちらの方がまだ幸せなのかもしれません。

 
「死してなお肉体に宿る強き本能。それすなわち、悲しき業……」(アンゴラモン)
 
 今回のアンゴラポエム。あまり捻っていないストレートな内容です。
 彼としても思うところはあったのでしょう。

 
「ヒロ…あいつ、旅に出たんだな……」(ガンマモン)
 
 ラストシーンのセリフ。絶妙なトーンです。いやホントすごいな沢城さん。
 ガンマモンは今回で「これが”死”なのだ」とハッキリ受け入れたように見えます。
 ただそれだけに人間、とりわけ宙の危険には敏感になるかもしれんのですが。
 
 
 
★次回予告

 かなりの直球モチーフが来ましたね。
 且つ、シルエットだけではタオモンかドウモンかわからない仕掛けになってます。
 案外、両方出てきたりして…?