オマエハ誰ダ
脚本:藤田伸三 絵コンテ:角銅博之/野呂彩芳 演出:野呂彩芳
作画監督:北野幸広/李少雷/鳥山冬美
総作画監督:西野文那
★あらすじ
「友達」と遊びに出かけたガンマモン。
ところが「友達」は現れず、その日から彼の周囲が徐々におかしくなり始めます。
いつの間にか、自分そっくりの恰好をした別のデジモンが宙のそばに居座っていたのです。
おまけに宙たちすら、いつの間にか「そいつ」を本物と認識してしまっているばかりか
初対面の相手を見るような顔で見つめてくるではありませんか。
「そいつ」はどこからどう見ても偽物だというのに。
居場所を失って途方に暮れるガンマモンの前に、メイクーモンが現れます。
彼もまた偽物に成り代わられ、居場所を失ってしまった口でした。
居場所どころか、最後には自分が本当に自分なのかわからなくなった彼は
ガンマモンの前から忽然と消えてしまいます。募り続ける孤独と不安。
実はすべて、最近になって問題になりつつあったベツモン達の企みでした。
彼らはガンマモンを皮切りに、寮全体を乗っ取ろうと行動を開始します。
はからずも難を逃れた宙に、必死で自分が本物だと訴え続けるガンマモン。
それは意外な形で功を奏し、ついに偽ガンマモンことベツモンが尻尾を出しました。
事態を察した他のベツモン達も本性を現し、襲いかかってきます。
迎え撃つ宙とガンマモンですが、相手はこう見えて完全体。一時苦戦を強いられます。
が、溢れる気迫で完全体進化が発動。
カノーヴァイスモンの猛攻の前には、ベツモン達もなす術がありませんでした。
事件が解決し、いつもの日常を取り戻したガンマモン。
大切な日々や繋がりが誰かに奪われそうになるとき、貴方ならどうしますか?
★全体印象
32話です。
今回はガンマモンの偽物が現れ、周囲の認識すらもねじ曲げて
彼の居場所を奪ってゆくお話です。孤立してゆく理不尽と恐怖がテーマのひとつでしょう。
この回、事前にキービジュアル?まで作られたり田村睦心さんのコメントがあったりと
やたらアピールへ力を入れていたんで「何が起こるんだ?」と思ってたんですが、
何か本筋が動く兆候などの目に見えた動きはまったくありませんでした。
なぜあんなに「見てね!」と訴えていたのか現段階では全然わからない状態です。
煽った分だけ損をしているようにすら感じてしまう。
それはそれとして、いつになくガンマモンが可愛らしいお話でもありました。
彼の食い意地というか、甘いもの好きな嗜好が意外なところで役に立ってたりもします。
あの必死の行動が、はからずも最適解を導き出したということですね。
人生、何が役に立つかわかりませんな。死神キルバーンもそう言ってた。
脚本は初登板となる藤田伸三さん。
様々なゲーム・カードバトル題材のアニメでシリーズ構成をつとめてきた他、
「真ゲッターロボ」や「マジンカイザー」の構成もやっておられた方です。
経歴的には親和性がありますが、デジモンには初参加。
あとは今回からEDが変わったのもポイントでしょうか。
そこんとこは個人的にそれほど重要ではないですが……歌は良かったけど。
★キャラなど個別印象
・ガンマモン → ウェズンガンマモン → カノーヴァイスモン
事実上の主役。
進化についても、どちらかというと彼の気魄が主導を取ってた感じです。
今回は居場所を奪われかけるという、彼自身の根幹に関わる部分での危機を迎えています。
清司郎をほっといてあちこち出歩いては他のデジモンと関わっているジェリーモンや、
普段からさまざまな知識を仕入れている多趣味なアンゴラモンと異なり、
ガンマモンには宙との関わり以外のアイデンティティが薄いと言わざるを得ません。
キャラ立ちの話ではなく、彼の立脚にはそういう危うさがあるかもしれないという話です。
でも宙と出会いたての頃なら、これほどショックを受けたりしなかったかもしれません。
且つ、必死になって取り戻そうともしなかったかもしれない。
宙との暮らしが彼にとって「当たり前」になっていたからこその反応といえます。
「当たり前」になるというのは「あって当然と思ってしまうほど居心地がいい」
ということですから、失いかけた際の動揺がそうじゃない時とは違ってくるはずなので。
結果的には彼のもうひとつの特色である「甘いもの好き」に助けられました。
特にチョコならいくらでも食べられるぐらい大好きなので、そこで偽物と差がついたのです。
ある意味で文字通り「最強の証」というやつかもしれません。
バトルでは多対一を意識してか最初ウェズンガンマモンに進化しましたが、意外に苦戦。
そこでカノーヴァイスモンに進化したところ、あっさり全員KOと結果に差が出ました。
時間制限付きなだけあり、並の完全体ではやはり相手にもならないようです。
範囲攻撃においてもウェズンと水をあけているようですが、狙撃に関してはどうでしょうね。
・宙
早い段階から徐々に認識をズラされ、ガンマモンをガンマモンだとわからなくなっていました。
正気に戻ったのは、偽ガンマモンがダウンしてボロを出した瞬間です。
人間である彼が、デジモンの術から逃れるのは難しいということでしょう。
ヴァンデモンの時のような単純な痛みとはワケが違います。
そんなわけで受け身に回ってたわけですが、だからといって揺らいでしまうほど
彼とガンマモンの絆はもう脆弱なものではないということでしょう。
ただ目を眩まされていただけとも言えます。
もうちょいなんか欲しかった、というのも本音としてはありますが……
・瑠璃組
リモートを通しての出演で、今回は事件そのものと関わっていません。
あとで顛末を聞いても「そうだったのか…全然気づかなかった…」ってなったでしょう。
あ、アンゴラポエムはちゃんとあります。
よほどのこと(26話のような)が無い限りは意地でも入れる方針みたいですね、やはり。
・清司郎組
寮長は全般にわたってちまちま出てきますが、おおむね被害者枠です。
ジェリーモンは最後の方にやっと出てくる扱い。
この二人、肝心なときにどっちかがいないケースが結構あります。
・コタロウ
28話以来の登場ですが、ほぼ名ありモブの扱い。
よく見ると新島さん(のニセモノ)もワンカット出演していますね。
・ベツモンたち
パペット型の完全体デジモンです。
モデルはかつてデジモン関連の広報として活動していた「テイルもんべつ」。
その出自は意外に古く、フロンティアの頃まで遡ります。
「クロスウォーズ」三期にもメインゲストとして登板しました。
今回は集団での登場。あの不気味おかしい面構えが並ぶと異様な迫力があります。
誰かに成り代わり、その人生を乗っ取ることが大好きというタチの悪い性格をしており
最初にまずガンマモンと成り代わって徐々に範囲を広げてゆきました。
劇中の通り、ぜんぜん似ていないのに本人だと思い込ませることができます。
今回において最も恐ろしいところはそこでしょう。
直接関わってない瑠璃たちも認識を誤ったぐらいなので、相当ヤバいです。
ただし、彼らにできるのはあくまで化けるのと「思い込ませる」ことだけ。
対象の嗜好や能力をコピーできるというわけではないようです。
つまり本人は元のままなので、ガンマモンのようにチョコのドカ食いはできず
途中で音を上げてしまい、それが尻尾を出す決定的要因となりました。
ここからすると、認識を誤魔化している相手に違和感を持たれるか
ベツモンの意識が弱まると正体がバレてしまうのかもしれません。
強力ゆえ、意外にちょっとしたことで解けてしまうのでしょう。
一種の暗示みたいなものですからね。
パッと見は弱そうですが、これでも完全体なのでウェズンガンマモンの攻撃をいなし
逆に反撃を加えてくるという意外な強さを見せました。
ただし大したダメージは与えてないので、攻撃力はあんまり無いようです。
ここらへんは設定通り。
カノーヴァイスモン登場後は、「メテオルクス」で一方的に蹴散らされています。
技が決まった際におかしな吹っ飛び方をしたので何事かと思ったのですが、
ただ単にやられ演出だったんでズコーッとなりました。紛らわしいなオイ。
中の人は多数に及びますが、特に偽ガンマモンの個体をアテてる岸尾だいすけさんは
「クロスウォーズ」でもベツモンを演じていたことで知られる方です。
岸尾さん自体「クロウォ」ではいろんな兼役やモノマネめいた演技を披露してたので
ベツモンには相応しい人材でした。
その他、ジェリーモンに入れ替わってた個体は水田わさびさんが演じております。
:のアタマデカチモンの人ですね。
・クロックモン
本編序盤からちょくちょく登場。ベツモンの噂を耳にし、裏であれこれ探ってたようです。
戦いが終わった後にも現れ、ベツモンたちの身柄を引き受けました。
なにしろ彼の技は時間を止めてしまうので、逆らうのは難しいでしょう。
少なくとも、ベツモンたちに時間停止へ対抗できるほどの能力があるとは思えません。
ガンマモンとはすっかり打ち解けたようで、ちょっと嬉しいですね。
前回のレッパモンと同様の嬉しさがある。
・メイクーモン
途方に暮れるガンマモンの前に突然現れ、突然消えてしまった成熟期デジモン。
「デジモンアドベンチャーtri.」のキーキャラですが、当該作以外のアニメにはこれが初登場。
元々は何処かのコミュニティでそれなりにうまくやっていたものと思われるのですが
ベツモンに居場所を乗っ取られ、しまいには自分が本当に自分なのかも信じられなくなり
まるで存在そのものが掻き消えるようにいなくなってしまいました。
ベツモンのセリフ通りなら、しまいにはガンマモンも同じ目に遭っていたかもしれません。
これは乗っ取られた対象がデジモンであっても人間であっても変わらないのでしょう。
上記の通り、初のTVアニメデビューなんですがあまりに救われない扱いです。
tri.で結局救われずに介錯され、こちらでもこんな扱いとはなんという巡り合わせ。
本人のセリフじゃないですが、いったいメイクーモンが何をしたって言うんだ……
中の人はなんとチョーさん。
「フロンティア」のナノモンや「セイバーズ」の湯島などクセのある老体の役も多い
渋さとユーモアが混じり合った声質が特徴的な方です。
陰鬱な役回りも大得意で、今回はその持ち味が強く出ていました。
どういう狙いでこの方を持ってきたのかわかりませんが、インパクトは凄かったです。
少なくともtri版との強力な差別化は感じました。
・ED
今回からスガ シカオ×ヒャダインの「モンスターディスコ」に変わりました。
作詞・作曲スガシカオ、編曲はヒャダインというなかなかの豪華タッグです。
曲は軽快で覚えやすく、歌詞もモンスター物を意識した内容と、一番EDっぽいかも。
スガ氏はどうやらUFOマニアらしく、そこらへんも妙に共通点があります。
まぁ超常現象とUFOは厳密には違うと思いますので単なるこじつけですが……
★名(迷)セリフ
「よう! ガンマモンじゃねえか」(クロックモン)
本編序盤、ご機嫌でお出かけしたガンマモンに。
見かけたら気軽に声をかける程度にはいい関係ということですな。
23話あたりより良くなってる雰囲気すらありますね。何よりのことです。
「ん? …あれ? 友達は?」(宙)
ベツモンの一体が化けた偽ガンマモンとの初対面時。
一瞬驚いたものの、完全にコイツを「ガンマモン」と認識しています。
彼的にはたぶん「一瞬ベツの何かと見間違えた」あたりの感覚で落ち着いているのでしょう。
「だ、誰だ君は!? 僕に何の用だ!」(清司郎)
訪ねてきたガンマモンに。
宙と瑠璃太刀だけでなく、彼ももうガンマモンを「ガンマモン」として認識できていません。
いったい、どういう風に見えているのでしょう……
「初対面の挨拶で他人の名前を騙るとは、感心しねえな。
…厄介ごと起こすんじゃねえぞ!」(クロックモン)
後半冒頭、遭遇したガンマモンに。
すでに彼もガンマモンのことを認識できていませんが、違和感はおぼえていたわけです。
ベツモンのことを人づてに聞いていたおかげもあるでしょう。
そういった「前提」があると認識改変が弱くなってしまうのかもしれません。
多分に論理系能力っぽい話ですが。
ところでこのセリフも割と「お前誰だ?」気味にマトモですね。
「オレが何したって言うんだよ……
なんでこんな目に遭わなきゃなんねぇんだ……
あいつはいつの間にか、オレにすり替わって…なりすまして…
オレのすべてを盗んで……それで、笑ったんだ…!
…あっという間に、何もかも無くなっちまった……」(メイクーモン)
土砂降りの中、公園で途方に暮れているガンマモンに。
いきなり現れて言いたいことを言ってるだけなんですが、雰囲気作りと
中の人の熱演のおかげで異様なインパクトがあります。
「…本当に、そうか?
そんな証拠あんのか? 誰が証明してくれるんだ?
オレはメイクーモン。ずっとそうだった、そう信じてた。間違いねぇはずだった。
…けど、もう自信がねえ。
オレは本当にメイクーモンなのか……?」(メイクーモン)
誰だと聞かれ、名を答えたガンマモンに。
あまりに誰にも「メイクーモン」と認識してもらえないので自信を喪失してしまったようです。
というか、途中から自分の話になっています。
「オレは居場所が無くなっちまったデジモン。忘れられたデジモンさ。
誰にも思い出してもらえず、わかってもらえず…そして、消える…!」(メイクーモン)
このセリフの後、彼は忽然と姿を消します。
自己認識の喪失というのは、デジモンにとって人間以上に深刻なのでしょうか……
この後、彼がどうなったのか少なくとも本編中では誰にもわかりません。
「チョ…チョコなんて、もう無理……」(偽ガンマモン)
ガンマモンとのチョコ早食い勝負? に敗れて。
ヤケ気味にチョコを爆食いしはじめたガンマモンに遅れて乗っかったものの、
彼ほどの大食いでもチョコ好きでもなかったため途中でギブアップしてしまいました。
ベツモン自体がそうなのかコイツがそうなのか知りませんが、もともと辛党みたいだし。
結果、宙の感覚が元に戻ってガンマモンを正しく認識し直しています。
違和感が生じたのか、ベツモンの意識が弱くなったのか、またはその両方か。
「ごめんな…俺、あいつにだまされてたみたいだ」(宙)
顔面に飛びついてわんわん泣くガンマモンをやんわりと降ろして。
認識改変が効いてる間もちょくちょく違和感のようなものは抱いていたようなので、
やはりチョコが決め手になったということでしょうか。
ベツモンの能力も完璧ではないようですね。
「瞳に映りし姿、偽りか誠か知りたくば…心をもって触れ合うべし。
…かな」(アンゴラモン)
事件解決後。今回のアンゴラポエムです。
心というかチョコで繋いだ感じもしますけど。
「おー! オレ、ガンマモン! 宙の弟!」(ガンマモン)
瑠璃とアンゴラモンから「自分はガンマモンだ」というお墨付きをもらって。
この回は最終的に、このセリフを再強調する狙いがあったのかもしれません。
それもガンマモンの側から、というのもポイントなのでしょう。
★次回予告
清司郎組回みたいですね。
でも何者が現れるのか、この予告だけではなんともわかりかねます。
完全体以上でアンデッド寄り、というところからヒントを探るしかないでしょうか。
いや、なにも完全体以上とは限らないか……
ま、こうした推理も本作の楽しみ方のひとつではあるでしょう。