悪友
脚本:中山智博 絵コンテ:畑野森生 演出:山崎響介
作画監督:酒井夏海/小澤誠/大山康彦/澤木巳登理
総作画監督:仲條久美
★あらすじ
荒巻カヨノ。瑠璃の友人、アオイのクラスメイトです。
しかし進級してからの担任と相性が悪く、登校拒否に陥ってしまっていました。
その挙句、周囲の全てを疎ましく思うようになってしまっていたのです。
そこに現れたワルもんざえモンとエクスティラノモン。
彼らはカヨノの友達を名乗って唆し、父親を皮切りに彼女の気に入らない人間を
次々と人形に変えるという暴挙に出ます。
その中には、心配して訪れたアオイの姿までもがありました。
彼女たちの行動はなおもエスカレートし、ついには家の外に繰り出して
誰彼かまわず人形にしはじめてしまいます。
偶然接触した清司郎とジェリーモンもその手にかかってしまいます。
阻止すべく、駆けつけた宙たち残りメンバーが疑似デジタルフィールドを展開。
突然独りになったカヨノの前に、もんざえモンが現れました。
彼は得意のラブリーアタックを通して二人がカヨノを利用していただけと伝え、
何でも言うことを聞いてくれるだけが友達ではないと諭します。
一方、瑠璃たちまで人形にされて孤軍奮闘の宙とガンマモン。
そこへもんざえモンが加勢に現れ、態勢を立て直しての完全体進化が発動。
時間制限の可能性から一気にカタがつき、二体はもんざえモンが鎮静させました。
自分の愚かさを悟ったカヨノは、案じて訪ねてきてくれたアオイに謝罪。
独りよがりの殻を脱ぎ捨て、もう一度歩き出す決意を固めるのでした。
★全体印象
30話です。
今回から、OPへカノーヴァイスモンに続いてテティスモンが加わりました。
小刻みにアップデートしてってくれるのはとても好みです。気合が窺える。
趣味でOP集作ってる身には痛し痒しなところはありますが所詮は私事。
内容としてはゲストキャラのカヨノ中心で、宙たちは完全に実力行使役。
カヨノを思いとどまらせたのも後半から本格登場したもんざえモンなので、
ある意味徹底しています。カヨノの自己完結に終始した流れとも言える。
まあ完全に巻き込まれただけの宙たちが説得役になるよりは、ゲストでも
ずっとワルもんざえモンたちを追いかけつつカヨノを気にかけていた
もんざえモンの方が適役ではあったでしょう。
あのラブリーアタックを見る限り、能力的にも適役だった感じです。
そんなわけでキャラ的にはだいぶ語る箇所が偏っている回なのですけど、
ホラー演出がいつになく強めでなかなかゾッとさせてくれます。
少女とはいえ「人間が怖い」話なので恐怖が倍増してたと感じですし。
いや実際、悪友二体よりカヨノの方が何倍も怖いんすよ演出的に……
そういう狙いがあってのことでしょうから当然なんですけど。
脚本は中山智博さん。本作では歪んだ思考や認識を描く作風ですね。
絵コンテには畑野森生さんの名前が見て取れます。
「セイバーズ」にも参加されてる方で、SDデビューは2010年代から。
最近では「ワールドトリガー」(2rd以降)のSDもやってますね。
よく見ると「怪談レストラン」にも参加してるのはなるほどという感じ。
しかしホント、誰がスタッフに来るかわからん作品ですね…
それが個人的な醍醐味でもあるけど。
★キャラなど個別印象
・宙組
上記の通り、ほぼ実力行使役としての登板。
カヨノが後半まで家から出ず発覚が遅れたせいもあります。
しかしその初手の出遅れゆえに瑠璃たちがあっさり戦闘不能になってるため、
実のところかなりヤバい状態だったと言わざるを得ません。
この手の形態変化使いに先手を取られるのがいかに危険かということです。
メタ観点ですが即死技と違い、モブ以外にも当たるのが形態変化ですから……
戦闘では、カノーヴァイスモンの時間制限について初めて明言されました。
理由は不明のままで、本人にも良くわかっていないようです。
少なくとも、アシュラモン戦のアレは体力切れではないということですね。
とはいえコレで「時間をかける余裕はない」という結論になったので
範囲攻撃技である「メテオルクス」で相手をまとめて叩く流れになっています。
チンタラ一体ずつ相手にしていたら勝てるものも勝てないですからね。
もんざえモンがフォローに入ってくれたのも大きいでしょう。
・瑠璃組
アオイが絡んでるということで出番があるかと思っていたのですが、
特にこれというほどのものはないまま二人まとめて人形にされちゃいました。
アンゴラポエムはちゃんと?あります。
この二人が試されるのは次回になりそうですね。
互いへの信頼が彼女たちのポイントですから、まさに正念場かも。
・清司郎組
ジェリーモンがビジネスのためにと集めさせた品(ガラクタ?)を運ぶ最中
運悪くカヨノ達に遭遇し、何もできないまま人形にされてしまいました。
寮長は好き勝手に髪型を弄られるし、前回活躍したとはいえ落差のある扱いです。
・アオイ
登校してこないカヨノを心配し、自宅を尋ねるも人形にされてしまう被害者のひとり。
カヨノのクラスメイトであり、以前は仲が良かったといいます。
わざわざ尋ねに行くという時点で、カヨノにとっては得難い友人といえます。
こういう時に動いてくれる人ほど、大事にしなければいけなかったのです。
無論、弱みにつけこんでくる輩もいるわけですが。
ラストでは、瑠璃にアンゴラモンのことを訊こうとしてやめる場面がありました。
彼女とミカがすべてを知る日も、遠くはないのかもしれません。
・荒巻カヨノ
担任と合わなくて登校拒否に陥り、本編時点ではすっかり捻くれてしまった少女。
趣味全開なフリフリの服装に目元の泣きぼくろが醸し出す大人っぽい顔つきが、
子供と成人の間で微妙に揺れる思春期の心を表現しているように感じます。
もともと好き嫌いの激しい子らしく、特に対人関係ではそれが顕著。
一度拗ねてしまうと親にも心を閉ざしてしまう傾向は前からだったのでしょう。
今回はそれが最悪の流れに乗っかってしまった恰好です。
けれど実際はやはりただの中学生であり、孤独を好むわけでもありません。
それなのに人を遠ざけ、気に入らないというだけで誰かを攻撃してしまうのは
何よりも自らの我儘が原因だと、心のどこかではわかっていたのです。
たとえ誰かを嫌いであっても、こんな事をしていいわけではないと。
ラブリーアタックを通して疑似デジタルフィールドの様子を見せられたときに
「これは嘘だ、幻を見せられている」と言わなかったのがひとつの証拠でしょう。
あの二人は自分を利用しているだけだと、本当は疑っていたのです。
あるいは最初からずっと。
これはもんざえモンの「ラブリーアタック」で精神が安定したおかげもありますが、
前向きになろうというのはあくまでも彼女の決断です。
彼女はこれから、嫌なことや嫌いな人との折り合いの付け方を学ぶのでしょう。
中の人は佐藤聡美さん。
「あにゃまる探偵キルミンずぅ」の御子神リムや「ご注文はうさぎですか?」の千夜と
ちょっとフワフワした少女や女性を演じることが多い印象を受ける方なのですが
「けいおん!」の田井中律のように元気なキャラも演じこなします。
デジモンでは「リ・デジタイズ」の鈴童アキホ役でもお馴染みですね。
アキホ自体は後から出てきたリナに人気面で押されるなど、やや不遇ですが……
・ワルもんざえモン / エクスティラノモン
どちらもパペット型の完全体。ぬいぐるみのような姿が共通点です。
よく見るとかなり不気味な風貌なのも共通してますね。
後者はシリーズ初期からいる古株ですが、これがアニメ初登場となりました。
ついに、というやつです。良かった良かった。
でもその見かけ通り、人を人形に変える能力でカヨノを唆し暴走へ至らしめた元凶です。
彼らにとってのメリットはただただ楽しみたいだけという、愉快犯の典型。
カヨノを利用して別のことを企んでいるとか、そんな素振りすらありませんでした。
ある意味では最もタチの悪い類です。
が、どうやら普段はそういう性格ではないらしく、暴走しやすい性質のようです。
やらかすたびにもんざえモンが「ラブリーアタック」で鎮静させている模様。
もともとこうなのか、人間界に来てからこうなったのかは定かではありません。
たぶん元々は三人でつるんで行動していたのでしょうけど……
…ということは、二人を暴走させたのも遠因はカヨノってことなんでしょうか。
デジモンが人の感情の影響を受けやすい、という傾向は本作でも健在なわけだし……
明言されていない以上断言はできないんですが。
中の人は前者が松山鷹志さん、後者が白鳥哲さんです。
どちらもその筋では知名度の高いベテランですね。てゆーかすごい豪華。
両者ともデジモンシリーズには出演経験ありですが、松山さんは特に
「テイマーズ」の頃からの常連です。:でも数々の役をこなしてました。
・もんざえモン
上の二種同様、ぬいぐるみのような姿をしたパペット型の完全体デジモン。
劇中では黄色いことがやたらと強調されてました。
目はちょっと怖いですが、過去のシリーズ同様に穏やかで善良な性格設定。
加えてカヨノに「ラブリーアタック」を通して疑似デジタルフィールドの中を見せたり、
自らも自由に行き来できるなど、なにげに凄まじい能力の持ち主でもあります。
サラッと流されてるけどお前なんなんだ????
その一方で恥ずかしがり屋でもあり、たびたび宙たちに接触を試みるも
肝心なところで逃げてしまうという一見すると怪しすぎる行動を繰り返していました。
まあ「黒幕ではない」ことは鋭い人なら1発で分かったでしょうけど。
しかし事態悪化を受け、終盤近くでようやく参戦。
カヨノに改心のキッカケを与えて宙組を援護、「メテオルクス」の炸裂に合わせ
ワルもんざえモンたちの暴走を止めるなど大活躍を果たしました。
正の感情に働きかける技を持つゆえか、彼だけは暴走しないのかもしれません。
中の人は入野自由さん。「リアライズ」の慧斗ですね。
過去作では「優しいおじさん」という感じのキャラ付けだったので非常に新鮮。
おそらく過去イチ爽やかボイスなもんざえモンでしょう。
★名(迷)セリフ
「みんな、私のことなんて忘れちゃったんだろうな…!」(カヨノ)
冒頭のシーン。
直前で服を破いているシーンは実に意味深です。
担任である折原先生のあの場違いな暑苦しさといい、彼女の領分に踏み込むような
無神経なことを言われたり、それで突如教室で疎外感をおぼえたりしたのかもしれません。
「そんなことで?」と言いますが、思春期の心というものは「そんなこと」で
簡単に傷ついてしまうものです。感受性が豊かである子なら尚更。
「ホント不思議。ホロなのに」(ミカ)
ガンマモンに食べさせてあげながら。
彼女やアオイがガンマモンたちを「実態はわからないけど絶対にただのホロではない」
と認識していることを知らないと全く別の印象を抱く場面ですね。
「みんな… どこ…? また…私を仲間外れにするの?」(カヨノ)
疑似デジタルフィールドが展開されたことで独り取り残されて。
周囲の人を消して回っているも同然な行動と矛盾していますが、矛盾ではなくて
本当は独りなんて嫌なのに、輪の中にいたいのに、その中で嫌なことがあっても
「自分は自分」だと胸を張っていられる強さが彼女にはなかったのです。
そして彼女は、その自分の弱さを攻撃に変えてしまった。
本当に怖いのはそういう者だと、荒木飛呂彦先生も言っています。
彼女は人でありながら、化け物になりかかっていたのかもしれません。
「この世界で楽しくやれりゃあ誰でもいい。
オレたちに好きなようにさせてくれるあいつは、うってつけのご主人様だったってだけさ!」
「言うこと聞いておだててればいいなんてチョロすぎだったよ」(ワルもんざえモン / エクスティラノモン)
つまり、何も知らないカヨノをてめーの利益だけのために利用したわけですね。
よく考えてみたら、なんで「ご主人様」が必要なのかがよくわからんのですが。
上に書いた通り、二人の暴走はカヨノの負の感情が関わってる可能性があるのでその流れ?
「キミは勘違いしているよ。
キミの言うことをなんでも聞くのが、キミを想ってるってことなの?
キミを本当に大切に思っているのが誰か、よく思い出そうよ」(もんざえモン)
ワルもんざえもんたちの本音を知って愕然となるカヨノに。ぐうの音も出ないほどの正論。
そこに反論がなかったことが、カヨノに残った良心を示唆しています。
代わりに彼女が己の所業を振り返るキッカケになったのは、アオイの人形でした。
「また、やられた……」
「オレたち、また間違ったみたいだな……」(ワルもんざえモン / エクスティラノモン)
ラブリーアタックで漂白中に。また、ってことはこれ2回目!?
1回目は大事に至らず、なんだろうコレと思ってたらえらいことになったって話?
もんざえモンもこれからは目を離さないと確約したし、今後は大丈夫なんでしょうけど
いやしかし可逆的変化でよかった。
あと漂白されたエクスティラノモンの技は、ダークマターと逆の効果があるんですね。
なんか洗脳されてるみたいだしアレはアレでちょっと不気味ですが。
「アオイ、ちゃん……
今日は、心配して来てくれて…ありがとう……」(カヨノ)
どうも「悪夢」「集団白昼夢」の類ってことで落着させようってことになったみたいです。
謝罪ではなく感謝になっていたのは、それが理由だと思います。
代わりに口調が何よりも謝罪をあらわしていましたが。
「君子、熊人形に近寄らず。
されど、心開けば肝胆相照らし、生涯の友得るかも」(アンゴラモン)
今回のアンゴラポエム。
カヨノとアオイのことを言っているのでしょうが、直前の漂白ワルもんざえモンらを見てると
なんとも言いようのない気持ちになります。それホントに洗脳じゃないの??
★次回予告
どう見ても瑠璃組のお鉢ですね。
アンゴラモンが魅入られるあの刀が何なのかによって話が違ってきそうです。