妖花粉
脚本:森地夏美 絵コンテ:谷東 演出:羽多野浩平
作画監督:大西陽一/Eugen_Ayson/Noel_Añonuevo/B.S.Lee
総作画監督:二階堂渥志
★あらすじ
新宿のデパートを訪れていた清司郎とジェリーモンは、迷子になった少女・
結菜と出逢います。彼女に懐かれた二人は母親を探すため、上層階にある
迷子センターへ向かうことになりました。
しかし前後して、妖しげな霧がデパートを覆います。
これに足を踏み入れた者は次々と倒れてしまうため、外に出ることができません。
しかも無数のコドクグモンが建物内に入り込み、人々を毒に浸していました。
清司郎も毒にやられ、徐々に弱ってゆきます。
やがて、霧の発生源が屋上にあると判明。
そこにはトロピアモンが居座っており、花粉をばら撒き続けていました。
疑似デジタルフィールドでこれを隔離したものの、トロピアモンの毒は剣呑の極み。
テスラジェリーモンも防戦一方を強いられてしまいます。
しかし、宙や瑠璃の果敢さを思い出した清司郎が土壇場で気迫を発揮。
彼の強い気持ちが伝わり、完全体テティスモンが爆誕しました。
その力はトロピアモンの毒を無効化し、ダウンに追い込みます。
実はトロピアモンは仲間とはぐれ、目印として自分の花粉を散布していたのですが
それが人間に害を与えるという認識が足りず、事件に発展していたのでした。
コドクグモンたちはこの行動に便乗して人を襲っていたのです。
幸いトロピアモンは仲間と合流を果たして去り、結菜も無事に母親と再会。
毒にやられた人々はテティスモンが救い、その姿は目撃者に称えられました。
勇気を振り絞ってヒーローになった清司郎の想いが、癒しの女神を喚んだのです。
★全体印象
29話です。
今回はほぼ全面的に清司郎組が主体。
ここしばらくあまり良いところが無かったのを取り返すような目立ちっぷりです。
宙たちの合流が遅れに遅れたのも、独壇場に拍車をかける要素でした。
そしてついにテスラジェリーモンも完全体進化。
トロピアモンに対してまさに天敵レベルの実力を発揮、場を収めています。
一方、今回の事件の元凶とも言えるトロピアモンの扱いはいささか粗雑でした。
そろそろ「知りませんでした」では済まないレベルの被害が出はじめてるような……
宙たち以外にホログラムゴーストを追う人たちが出てきてもおかしくないレベルです。
それとも、実はとっくに存在してるんだけど出てきてないだけ?
短期でガッと本筋を進めるスタイルなら、急にそーゆーのが出てくる可能性もあるな……
脚本は森地夏実さん。
進化エピソードとしては悪くなかったですけど、相手方の描写がやっつけ気味なのは
「鳥」の頃から散見される傾向ですね。なんか自己完結する輩が多いというか……
★キャラなど個別印象
・清司郎
しばらくぶりのメイン回にして、過去最大の独壇場をもらいました。
たまたま朝番組のヒーローに風貌が似ていたこともあって結菜に懐かれたわけですが、
彼女を宥めながら懸命に守ろうとする姿勢からは持ち前の責任感がよく出ています。
その責任感を発揮する瞬間こそ、彼が最も強さを発揮する時なのでしょう。
加えて今回は早めに「限突」し、かつ肝心なタイミングで元に戻っているのがポイント。
その状態で極限状態に近いところまで持ってゆかれたことでかえって集中力が増したのか、
宙たちの音声を聞いたことをキッカケに奮起するという流れでした。
死をも意識したことで余計な恐怖が消えた、とも取れます。
いずれにせよ「限突」していない状態で恐怖を乗り越えることが鍵だったのかもしれません。
何かを「乗り越える」というのが完全体進化の鍵なのでしょうか。
ということは、次は瑠璃の番ってことですね。
・ジェリーモン → テスラジェリーモン
結菜に強い言葉を使ってしまったり、外へ出ることに関心を逸らしたりして
清司郎に諌められる場面が目立ちました。ムラっ気の強さは相変わらずです。
でも、注意されると割と素直に聞くんですよね。
限突状態の清司郎にはノリノリで従っているし、根っこのベタ惚れぶりがよくわかります。
とはいえ成熟期のままの単独ではトロピアモンに手も足も出せず防戦一方。
打破のためには、清司郎のこれまでとは違う形での限界突破が必要でした。
・テティスモン
テスラジェリーモンが進化を遂げた水棲獣人型デジモン。
本来はネットの海の深いところに棲む存在なのだそうです。
設定によると助けを求める相手に寛容な、弱きを助け強きを挫く正義感の持ち主だとか。
それゆえか、または清司郎の強い想いに影響を受けての進化であるためなのか
性格は優雅かつ毅然としたものに変わり、戦い方も一味変わったものになります。
得意の「アドゥワールド」で瞬時に間合いを詰め、「ドクテアーゼ」によって
トロピアモンの毒を無効化、逆にダウンさせるという圧倒的強さを見せつけました。
さらにトロピアモンの毒を解析したのか、その場で清司郎を解毒。
事態収拾のため、デパートとその周辺の人々みんなをも解毒して救いました。
建物の中まで効果が及んでましたが、ジェリーモンの時点で壁抜けは得意なので
物理障壁を透過して技を影響させることなど朝飯前なのかもしれません。
その奇跡のような癒しは、目撃者に女神と謳われることになります。
トラブルメーカーな普段からは見違えるような活躍でした。
汎用性の高げな能力なので、今後の活躍にも期待が持てそう。
・宙組・瑠璃組
今回は脇。現場に急いではいましたが、霧を避けての行動なので到着が遅れました。
清司郎がデパートにいるのを知ったのも疑似デジタルフィールド展開時点と
だいぶ後になってからですが、すぐ連絡を取ったことが清司郎にとっては
一種のカンフル剤となったので、影の立役者たちとも言えます。
・結菜
デパートで清司郎たちと出逢った女の子。まだ5、6歳ぐらいでしょうか。
おたふく風邪でも発症したかのようなポヨンポヨンの垂れ頬が印象的。
あとなんか頭がでかいです。
基本的には庇護される役回りですが、彼女の存在もまた清司郎の奮起を促し
完全体進化を導いた遠因でもあるため、彼女もまた立役者と言えましょう。
足手まといになるような行動が皆無だったのもメタ的には好印象です。
中の人は和多田美咲さん。:版ヒカリです。前にも別のゲストで出てましたね。
・エリスモン
デパートを塒にしていた成長期の哺乳類型デジモン。
毒霧とコドクグモンの氾濫に困り果てており、宙たちに抜け道を教えました。
言わずと知れた「デジモンリアライズ」のメイン主役級デジモンでもあります。
本当に唐突に出てきたので、だいぶビックリさせられました。
喋ったら喋ったであっちと全然印象が違ったんで、二度びっくりさせられてます。
なお同行はせず屋上にも来てませんが、賢明な判断だったと思います。
以後は顛末のあと、コドクグモンの逃走を見届けるようにちょっと出たのみでした。
ま、行ったところで出来ることはなかったでしょう。
中の人は宮原弘和さん。
あまり見かけないお名前ですが、実際TVアニメへの出演は久々だそうです。
・トロピアモン
屋上に陣取っていた植物型の完全体デジモン。登場はかなり最近です。
:の40話にも登場していますが、それがアニメ初登場でした。
その:では無慈悲で無感情な侵略者としての扱いでしたが、今回は意志を示しており
行動も悪意あってのものではなく、仲間とはぐれたため存在を感知してもらえるよう
適当な高い場所で自らの花粉をばら撒いていたというオチでした。
しかしこの花粉が人間にとっては害そのものだという感覚が欠落していたうえ、
コドクグモンを誘引してしまいそいつらが人間を襲うという二次被害まで発生と、
危うく大量の犠牲者を出すところだったというのが事件の全貌です。
襲ってきたのも、清司郎たちに妨害されたと誤解してのものでした。
つまり、コイツとコドクグモンはまったく別の意志で動いていたことになります。
悪意はなくともヒジョーに迷惑なデジモンだった、と言えるでしょう。
本人にその気がなくとも何かするだけで害、というあたりはなんとも怪獣的。
その毒で清司郎はダウン、テスラジェリーモンも寄せ付けませんでしたが
テティスモンが登場してからはその毒をあっさり無効化されたばかりか、
逆に何かを叩き込まれたのか力を失って昏倒。
己の毒から解毒剤を生成され一転、皆を救うファクターとして活用されました。
その後は誤解が解けたのと、仲間たちが見つけてくれたことで
喜び勇んで去ってゆきましたがどこに行ったのかはまったく不明です。
あんなのが何体も東京上空をウロウロしてるんだとしたら怖すぎますね……
中の人は山田真一さん。
「勇者王ガオガイガー」の氷竜・炎竜ら竜兄弟の役で知られる方です。
「クロスウォーズ」にシーホモン役として出演していたこともあるのですが、
メイン待遇での登板は初となりました。
・コドクグモン
トロピアモンに便乗していた成長期の昆虫型デジモンたち。
自分では毒を作れないのですが、トロピアモンから毒を吸い取ってそれを人間に注入、
昏倒させて自らの餌とするような形でデータを吸い取っていました。
結果、成熟期と見紛うばかりに巨大化したものまでいます。
トロピアモンの意志とは関係ありませんが、対人に関してはこちらの方が厄介。
基本的にトロピアモンからは文字通り「纏わりつく小虫」そのものの扱いを受けており、
トロピカルヴェノムで内側から溶かされてしまう場面がありました。
毒に強い彼らをも殺してしまうということで、トロピアモンのヤバさが強調されたシーン。
トロピアモンが敗れた後は恐れをなしたのか、またはこの場所はもうダメと捉えたのか
文字通り蜘蛛の子を散らすように逃げ去ってしまい、デパートは平穏を取り戻しています。
今後もトロピアモンに誘引されやすいとしたら、かなり厄介な連中になりそうです。
アルケニモンの配下だったドクグモンたちと直接の関係はないようですけど、
そーいえばあの大量のドクグモンたちもどこへ雲隠れしたんでしょうね……
・モブのおっさん
毒花粉のヤバさを強調する役回りとして、やけに主張の強いおっさんが出てきました。
「こんなところにいられるか! オレは行くぞ!」を地でいってます。
ちなみに、テティスモンを女神と称えたのもこのおっさんでした。
★名(迷)セリフ
「えっと… こんにちは。
お母さんとは…えっと…はぐれちゃった? お名前言えるかな?」(清司郎)
泣きじゃくるばかりで答えない結菜に声を荒げるジェリーモンを諌め、視線を合わせて。
幼い子の扱いに慣れているというわけじゃないでしょうが、基本は抑えた行動です。
少なくとも割に幼児受けは良さそう。
「昔使われた路線の跡。
小学生の頃、こういうの巡るツアーにハマっててさ……」(宙)
よくこんなところ(地下道)を知ってるわねと瑠璃に言われて。
君ホント大抵のことやってますね、と思わされるセリフです。
「あー、コドクグモンたちがウジャウジャ!
もうオレの根城はシッチャカメッチャカ!」(エリスモン)
デパートで何が起きているのか宙に質問されて。
微妙に韻を踏んでいるようで踏んでいないような、なんか印象に残るセリフです。
にしてもシッチャカメッチャカって、今日日言わねーな。
「結菜ちゃん。今からぼくが…
このジーニアスが、世界を救いに行ってくる。
その間キミを独りにしてしまうけど…ママは必ず見つけてあげるから、
ここで待っていてほしいんだ……」(清司郎)
屋上入り口の前、毒にやられた状態で笑顔を作りながら。この時はまだ限突状態です。
そのため落ち着いた感じのセリフでありつつ、自身を朝アニメのヒーローに見立てている
結菜を安心させようと懸命な様子が窺えます。
本来持っている良さが全開になっている状態でもあるのでしょう。
「天ノ河くん…月夜野さん……
…くっ…君たちなら……諦めない、よね…!
先輩であるぼくが…戦うのをやめるわけには…いかないよね!」
ぼくはヒーローじゃないし…今だって逃げ出したいけど…
諦めない…今日は、あきらめないぞ…!
ぼくは、寮長だっ!
皆の笑顔を守り、どんな苦境にも屈しないっ!
それが葉櫻学園学生寮寮長、東御手洗清司郎だっ!!」(清司郎)
毒のダメージで朦朧としながらも、必死に立ち上がって。長めです。
極限状態で宙たちの声を聞いたことで目の前の恐怖をかなぐり捨て、
状況に立ち向かってゆく集中力を「限突」無しに発揮しました。
誰かの想うときにこそ本領を発揮する彼ですが、ここまでの気迫と集中を
素のままで成し遂げたところに大きな意味があったのでしょう。
「ダーリン…あなたの強い意志、確かに受け取りましたわ…!」(テティスモン)
清司郎の強い決意を受け取り、彼女もまた強く優しく美しく進化を遂げました。
この上があるとしたら、やっぱり女王様気質になるんでしょうか?
「毒をもって毒を制す…あなたの毒、無効化しますわ!」(テティスモン)
トロピアモンの眼前へ瞬時に移動して。
事実、このときに使った技「ドクテアーゼ」は味方を癒やしたり強化したりする一方、
敵にはダメージを与えると言われています。
受けたトロピアモンは毒を無効化されて昏倒したばかりか、毒を解析?されたことで
解毒剤を開発されて人々を救うリソースに活用されることとなります。
「不遜クラゲも時には女神。ああ、世はこともなし」(アンゴラモン)
今回のアンゴラポエム。微妙に辛辣ですな。
トラブルメーカーとしての側面も多いジェリーモンですが、ひとたび進化すれば
まるで女神のように称えられることもあるという現実の不思議さを謳っています。
★次回予告
エクスティラノモンがどうやらアニメ初登場。もう一体はワルもんざえモンかな?
瑠璃の友人が危ないとなると、今度は彼女らが完全体進化する番でしょうか。