顔取リ
脚本:山崎亮 絵コンテ:鈴木正男 演出:松川朋弘
作画監督:北野幸広/澤木巳登理/李少雷/金澤龍/權容祥
総作画監督:西野文那
★あらすじ
人が顔を取られて無気力になってしまうという事件が発生。
コタロウも襲われて口以外がのっぺらぼうになり、気力を失ってしまいます。
事件を追う宙たちでしたが、コタロウが襲われた現場である墓地を調べていた
清司郎がアシュラモンに襲われ、顔を取られてしまいました。
瑠璃もまた、アンゴラモンの行動も虚しく顔を取られてしまいます。
アシュラモンは人の顔を奪ってそこから取り出した感情を楽しむことを覚え、
三つしか感情を持たない「彼ら」はその楽しさに取り憑かれてしまったのでした。
瑠璃たち顔を得たことで、その行動はエスカレートの一途をたどります。
ついには大勢の人々の感情を一気に奪おうと、サッカースタジアムにまで手を伸ばしました。
が、ギリギリで追いついた宙が擬似デジタルフィールドでこれを隔離。
彼らは案内役をやらされていたマッシュモンから、アシュラモンの動向を聞き出したのです。
しかしアシュラモンは完全体。対抗するためカノーヴァイスモンが登場します。
互角以上に持ってゆきますが、あと一歩というところでなぜか進化が解除。
この隙を衝かれ、宙までもがアシュラモンに顔を取られてしまいました。
打つ手なしと思われたとき、アシュラモンの性格が一時的に宙の影響を受ける、
と気づいたアンゴラモンが機転を発揮。顔を返してくれるように頼むと、
アシュラモンは本当に皆の顔を返してくれました。宙は頼まれたら断らないのです。
顔を取る前の状態に戻ったアシュラモンはアンゴラモンの集会に参加し、
人間についてより良く学ぶことに同意。どうにか事態は収まりました。
意外な形で立役者となった宙ですが、しかしその表情は当惑でいっぱいでした。
彼にはいったいどうやって丸く収まったのか、さっぱりわからなかったのです。
★全体印象
28話です。
今回事件を起こすのはアシュラモン。何かのキッカケで人間の精神を顔ごと奪い、
それを楽しむという一種の娯楽に取り憑かれた手合いでした。
どうも人間の感情や精神というものは、良くも悪くもデジモンに強い影響を与えますね。
宙たちのような例を見れば、作品にかかわらず今さらという話ではありますが。
今回は表立っての無差別行動など、かなり凶悪化が進んだケースです。
暴走が収まっただけで顔を取る愉しみを忘れたわけじゃないし、となれば
また同じことを繰り返すかもしれません。本作の中でもモヤモヤ度の高いオチです。
コミュニティに引き込んで側に置くぶん、野放しよりはマシかもですが……
それにしても、ここしばらくの寮長組はいいところが全然ないですね。
そろそろ何かしら欲しいところではあります。
脚本は22話からローテに参加してる山崎亮さん。
演出には新たに松川朋弘さんが入っています。スポーツ物からカードバトルアニメ、
格闘ものまで様々な作品に参加しているようで幅の広さが窺えますね。
★キャラなど個別印象
・宙
「頼まれたら断らない」という性格が前半で改めて強調し直されていました。
時としてコタロウにうまいこと使われてるのは明白なんですが、あまり気にしてない様子。
そういうところはかなりアバウトです。
一方で顔を取られたコタロウを2日も放置するなど、別の意味でアバウトな面も出してます。
親父を躍起になって探さないのも本当に「とりあえず無事ならひとまずいいか」
って思ってるから、というのが濃厚になってきました。
妙に諦めがいいというか、諦観めいたものを持ってるというか……
けれど「弟」たるガンマモンのことは一番に考えているので、完全体進化が解けてしまった際は
身をもって庇おうとしました。その行動に伴う強い気持ちがアシュラモンにも影響を与え、
顔を手放させるというファインプレーを知らず知らずのうちに果たすこととなります。
本人には何がなんだかわかっていないわけですが……
あとで説明されたでしょうが「俺そこまで断らないヤツなの!?」って驚きそう。
・ガンマモン → カウスガンマモン → カノーヴァイスモン
今回はカウスから超進化しました。これで三形態すべてから進化を遂げたわけですね。
逆に言うと次はグルス関連で何かあったりするのかもですが……
その布石かはわかりませんが、完全体進化が突然解けてしまうという事態が発生。
危うく詰みへ陥るところでした。宙がピンチに陥った際は毎度ハラハラしますね。
グルスが出るのは殺しまでやってる相手限定、というシナリオ縛りがあるっぽいし
カノーヴァイスモンで次のステージに進んだ以上、よほどのことがないと出ないでしょうが。
逆に言えば、その「よほどのこと」が今後控えてるってことかもしれません。
もしグルスガンマモンの上があるなら、究極体にも伍するものを持つのでしょうか?
・瑠璃
これという見せ場のないまま顔を取られてしまいます。今回はお休み気味ですね。
・アンゴラモン
なにげに三連続で事態解決に貢献してます。
今回の場合、直接の要因を作ったのは宙というか、宙の顔と精神なのですが。
戦闘ではアシュラモンを食い止めようとするも圧倒されてしまいますが、相手は完全体。
進化もしていない状態では仕方ありません。
後半でも果敢に現場へ飛び込みますが、瑠璃がいない状態での直接貢献は無理でした。
その代わりに咄嗟の機転で宙の性格を利用し事態を収めたわけなんですが彼、
宙のそういうところをそこまで知ってる感じがしないし宙が目の前でそういうところを
見せて布石を置いたわけでもないので、少々無理やり感はおぼえました。
あの顛末、やったのが寮長なら綺麗に繋がったと思うんですが……
ただその後アシュラモンをすかさず集会に誘い、目の届くところに置いたあたりは
ファインプレーと言えるかもしれません。いろいろ言いたいことはありますけども。
彼だけパートナー不在を押してついてきたのもポエムノルマを満たす気満々な流れですし。
……ノルマなのか、あれ?
・清司郎組
なぜかジェリーモンが不在がちだったのでほぼ何もできず終いです。
力及ばずならともかく肝心なときそこにいないの、あんまり良い流れとは言えませんね。
ジェリーモンが別行動取ってた意味も結局なかったし。
・コタロウ
25話以来の登場。
セミレギュラー枠では直接・間接問わずダントツで被害者になるケースが多い人物です。
今回は推しアイドルのグッズを獲得して浮かれていたところを墓地でアシュラモンに襲われ、
特に良質な感情を備えた顔として歓迎されることになってしまいました。
それだけテンションが上がってた=本当に嬉しかったんでしょうけど……
常に元気な彼が無気力というだけで、すでに異常事態とわかりやすいです。
でもグッズを獲得できたの、たぶん宙に掃除当番を押し付けたおかげなんでしょうね……
宙としては「それで欲しいものをゲットできたんなら別にいいんじゃない?」かもですが。
・アシュラモン
魔人型の完全体デジモン。メインゲストとしての出演はフロンティア以来です。
本来は設定上やアンゴラモンなどのセリフにある通り、正義を重んじ不正を許さぬ存在なのですが
人間から顔を奪ってその時の感情を自分のものにすることを覚え、暴走してしまったようです。
どのようなキッカケで人間の顔を取るようになったのかは定かではありません。
人間に様々な感情があるのを知り、強い興味を抱いてはいたようですが……
最初はマッシュモンに半ば強要の形で人目につかない場所を選び行動していたのですが
だんだん歯止めが効かなくなり、白昼堂々姿を表すようになってゆきます。
さらに瑠璃たちの顔を取った際は極限の「恐れ」と「勇気」を取り込んだためか
気が大きくなり、街に飛んでいって人々の顔を片っ端から取って回っています。
これによる物的被害はかなりのものになったでしょう。
さらに大勢を襲おうとサッカースタジアムへ赴きますが、擬似デジタルフィールドに隔離されて
それが叶わなくなったと知るや、激昂して襲いかかってきました。
完全体、しかも二対の腕を持つパワー自慢とあってカウスガンマモンでは歯が立ちません。
アンゴラモンを相手にした際も軽く捻っていました。
カノーヴァイスモン相手にもかなり持ちこたえていたので、なにげに相当の強者です。
宙たちが時間制限?のことを把握できていなかったのも大きいですが。
把握できていたらもう少し戦いようがあったかもしれません。
しかし宙の顔を奪ったことが仇のようになり、アンゴラモンの要請に素直に応えて
すべての顔を持ち主に返還しました。最後に宙自身へ顔を返したところで我に返りますが、
感情を取り込む前のまっさらな状態に戻ったからか平静を取り戻しており、
アンゴラモンの誘いにも二つ返事で応じています。
どうやら瑠璃といい宙といい、取った者の感情が強いほど影響を受けやすいようです。
暴走してしまったのも、やはり多くの感情を取り込みすぎたせいなのでしょう。
その際の感覚を忘れてはいないはずですから大丈夫なのだろうかとモヤモヤするんですが、
本来の性格が設定通りなら「やり過ぎた」との自覚もあるはずですから大丈夫かもしれません。
断言はできませんが。
中の人は「怒り」が玄田哲章さん、「祝福」が関俊彦さん、「慈悲」が山崎たくみさんと
やたらめったら豪華です。これだけで強キャラ感が出まくってる。
一人一人の経歴を書くのは大変なので省きますが、そういえば誰かが指摘してたけど
これ全員黄金聖闘士の中の人でしたわ……そら強い。
・コンゴウモン
アシュラモンに常に付き従うアーマー体の昆虫型デジモン。従者でしょうか?
そういえば腕といいマワシといい共通項が多いっすね。
常に無言で佇んでおり、行動もアシュラモンの後ろに付き従うのみです。
その暴走を諌めることもなく、ただじっと見守っていました。
またアシュラモンの命令には、それがどんなものであっても即座に従います。
アシュラモンが奪った顔をキープする役目も負っていたようですが、
「返してやれ」という命令にも一切逆らわずに従っていました。
彼にとって、主の命令は絶対ということでしょうか。
・マッシュモン
植物型の成長期デジモン。
悪意というほどのものはないですが臆病であり、アシュラモンたちに強要されて
人間界の情報を教えたり、人を襲いやすい場所を教えてしまってました。
脅迫されていただけなので、特にお咎めというほどのものは無し。
・集会のみなさん
フローラモンやムーチョモンが久々に登場。
集会所では他にもガワッパモンやポテモン達がダンスに興じていました。
皆、それなりに人間界を楽しんでうまくやっている口のようです。
よく見るとレッパモンもいますね。
竹林だけでなく、こういう場所にも顔を出していることが確認できました。
何よりのことですね。
★名(迷)セリフ
「部屋にはいるみたいだし、そのうち出てくるかと思ったんですけど……」(宙)
コタロウが部屋に引きこもってるという事態を2日も報告してなかったことを咎められて。
君わりとそーゆーとこあるよね、って妙に納得してしまったセリフです。
けっこう親父にも似たよーな感覚でいたりするのかも……
「相変わらず、頼まれたら断らないなキミは……」(清司郎)
後半に掛かってくるセリフ。
それだけに回収したのが寮長じゃなくてアンゴラモンなのは惜しいポイントです。
「この顔は我が身を熱くする特別なもの!」(アシュラモン祝福)
コタロウの顔をことのほか気に入って。
喜びの絶頂にあった彼の顔を手に入れたことは、事態の凶悪化を早めたようです。
これがさらに強い気持ちともなると、彼らの人格「面」にまで影響を及ぼすわけですね。
「弟とやらに危険に飛び込む覚悟…これが『守る』という気持ちか……」(アシュラモン怒り)
宙の顔を奪って。感情を吸い取るとその顔が浮かび上がるわけですが、胴体とのギャップがすごい。
しかしこの顔を得たことで、彼は不思議と穏やかになります。
「うまくいった……宙は、頼まれたら断らないからね」(アンゴラモン)
宙の顔を得たアシュラモンをうまく誘導し、顔を返還させて。
咄嗟のファインプレーですが、回収はやっぱり寮長にやってほしかった……
顔をとられてたからしょうがないんだけど。
「なんだぁ? 超ハラ減った〜! 死ぬ〜!」(コタロウ)
セミレギュラーから一献。
顔が戻ってきて精気自体は回復したものの、空腹まではそうもいかないようです。
いつもの彼らしい言い回しでちょっと笑ってしまいました。
「ああーっ! やられたーっ! キサマの顔には負けたぞーっ!」(アシュラモン)
宙の顔を得たことでこれまで狩った顔が全部パーになったことにやっと気づいて。
ちょっと様子が違うのはたぶん本編以前、素の彼らに戻ったからなんでしょう。
と同時に、自分らがやりすぎてしまっていたことも悟ったのかもしれません…たぶん。
「顔は心の窓なり。窓なき家は家にあらず。そは外すべからず、入れ替えるべからず……」(アンゴラモン)
今回のアンゴラポエムです。もはやそのためにここにいるレベル。
顔を奪うのはもちろんですが、顔を奪ったがために盤面ごとひっくり返された
アシュラモンの顛末をも纏めたものになっています。
「ねえ…俺、何がどうなってたの???」(宙)
ラストを締めるセリフ。
事件の始まりも人の顔なら、事件を収める鍵になったのも彼という人の顔だったわけですが
ほとんど昏倒していた彼としては気づいたら勝ってた形なわけで、さぞモヤモヤしたでしょう。
説明されてもあんまり納得できない気もするけど。
★次回予告
コドクグモン、そしてトロピアモンが登場。話が通じる相手ではなさそうです。
そして久々に寮長が活躍しそうな雰囲気。出るか完全体!?