美妖液
脚本:佐藤寿昭 絵コンテ:谷東 演出:佐々木憲世
作画監督:酒井夏海/村山綾音
総作画監督:石橋大輔/金久保典江
★あらすじ
都市伝説を調べていた宙は「水に呼ばれる」という怪奇現象を見つけます。
類するものが何もないところで突然水の音が聞こえ、それを2回以上聞いた者は
行方不明になってしまうという内容でした。
そんな折、宙の寮で受付を勤める女性・新島が襲われるという事態が発生。
彼女はいかなる仕掛けか、生きたまま「水」にされてしまいます。
都市伝説は恐るべき水のデジモン、スプラッシュモンの仕業だったのです。
捕まえようと動き出す宙たちですが、大都市の水道網をフル活用している相手。
破片を利用して居場所を探ろうとしても、近づくと感知されてしまいます。
そうこうしている間に、今度は宙たちにも水音が聞こえはじめました。
スプラッシュモンの次の狙いは彼らになったのです。
やがて、無人の船の上に誘い出された宙たちはスプラッシュモンの目的を知ります。
ヤツは人間が自身にとって最高の素材、すなわち「美妖液」になると気付き
気に入った者を水に変えて捕まえていたのでした。
恐怖に怯えていればいるほど、質の高い液になるというわけです。
何としてもここで止めねばと、戦いを挑む宙たち。
しかし、スプラッシュモンの前にベテルガンマモン、テスラジェリーモンが
次々に水へ変えられてしまい絶体絶命のピンチを迎えてしまいます。
宙は咄嗟のひらめきで瑠璃に頼み、その場を雪原の擬似デジタルフィールドに変換。
水道が凍りついたことで、スプラッシュモンの逃走を封じ込めます。
さらにジンバーアンゴラモンのブレイキンストリームによって急速冷凍を発生、
これを氷結によって無力化。同時に、水にされた者たちも元に戻りました。
凍ったスプラッシュモンを、ブラックテイルモンUverが回収してゆきます。
宙は別れ際、父への手紙を託すのでした。
★全体印象
27話です。
今回の相手はスプラッシュモン。水そのものの特性を備える厄介なデジモンであり、
作風によってはまさしく妖怪のように立ち回れる存在です。
逆に言えば、本作の怪奇路線には合わないデジモンもいるってことですが。
ボルケーモンなんかはモブか協力者以外でどう出したらいいのか見当もつかないし。
捕捉困難、直接襲われたら非常にやばい相手に対する焦燥が中盤から後半のキモ。
最大戦力たりうるガンマモンが真っ先に無力化されたことで拍車がかかります。
結果、今回は宙の機転を受けてジンバーアンゴラモンが決め手を取るという
ちょっと変則的な流れでした。こういうこともあるんですねぇ。
一方でスプラッシュモンに要素が多く集中しており、キャラ的見所は少なめです。
ただ前回を受けてか宙が都市伝説を本格的に調べはじめていたり、
ブラックテイルモンUverに父への手紙を渡して繋ぎを取ろうとするなど
本筋信仰へ向けての種蒔きが徐々に進められてはいます。
芽を出すのは4クール目以降かもしれませんけど。
脚本は佐藤寿昭さん。
絵コンテの谷東さんは新顔。「テルマエ・ロマエ」や「若おかみは小学生!」など
話題作の監督をつとめた経験のある方のようですがこれまた突然来ましたね……
…怪奇モノの経験もあるっぽいので、そこを買われたんでしょうか?
そういえば「若おかみ」も幽霊が出てるといえば出てる。
★キャラなど個別印象
・宙
こういう特にメイン担当がいない回については、彼が代表を張りますね。よくあること。
相方に頼れない中、しかしその相方がくれたヒントで咄嗟の攻略を思いつくなど
相変わらず機転に富んだところを見せていました。
いつ襲われるかわからないとあって、さすがに今回は焦燥が強めだった気がしますけど。
今回、ブラックテイルモンUverに手紙を託すことができたわけですが
これはいつ遭遇してもいいよう常に持ち歩いていたってことですよね。
周到というかなんというか……
手紙だったのは父に訊きたいことがありすぎるのと、そもそもの話
一方的に聞かされるだけだったのでとにかく現状を整理して伝え、その上で
頼むから今教えていいことがあるなら返事をくれ、と伝えたかったから…かも。
その場におらず通話や電子メールも困難なら、誰かに渡りをつけてもらうしかない。
さて北斗パパはどう答えてくるのか……
あのクソ親父が筆無精だったり面倒臭がりだったりすると長引きそうです。
それでいて興味の強いことには前のめりだろうから困る。
・ガンマモン → ベテルガンマモン
進化したものの、早々に水に変えられ無力化されてしまいました。
よって戦闘面では事実上見せ場ゼロなんですが、前半でかなりわかりやすい布石を置き
逆転への一手へ繋げる役目を負っています。
・瑠璃
瑠璃の方にこれという見せ場はありませんが、強いて言うなら宙の要請で
一帯を雪原に変えたあたりでしょうか。
アレ、誰のデジヴァイスにどんなフィールドが入っているか一切説明がないのですが
わざわざああいう流れにしたってことは宙のそれには「無い」ってことだし
つまりそういうシナリオ上で明言されない設定があるってことになるわけですけど、
そのせいで微妙に流れが悪くなってたのは何だかなあという印象を受けます。
とはいえ明言したらしたでそれは布石としての活用を求められるわけで……
難しいところであるかもしれません。
・アンゴラモン → ジンバーアンゴラモン
なにげに2回連続で決め手を取りました。今回は凍らせただけですが。
アンゴラポエムも復活しています。前回のことについて一切の振り返りが無いのは作風か、
それともあの話を今後に活用するつもりは特に無いのか……
まあ何かあるかも、というのは私の憶測にすぎないんですけどね。
・清司郎組
今回いちばん書くことがない方々。
テスラジェリーモンも早々に無力化されたんで見せ場ゼロだし、踏んだり蹴ったりです。
怖くて都市伝説を調べられなかったので、咄嗟の対策も宙に任せきりでした。
・新島
セミレギュラーにして被害者枠。スプラッシュモンに襲われて水にされてしまいました。
まともな出番は2話以来ですが、よく見るとコタロウ共々3クール目EDにも出てます。
2話時点では名前すらなく、中の人も違っていました。
それが今回ではなんと照井春佳さんを新たに起用しての再登場です。
出番が増える予兆かもしれません。別にそういうわけじゃないかもしれません。
そんな中の人の照井春佳さん、2011年デビューと微妙に時期が遅いため
デジモンシリーズには初出演となります。
正統派〜元気系のを得意とし、「結城友奈は勇者である」の結城友奈、
「ガンダムビルドダイバーズ」のサラと主役・ヒロイン経験も複数ある方。
個人的には「スーパーロボット大戦V」「同T」のロッティ(シャルロッテ)と
「アイカツ!」の服部ユウも忘れられないキャラですね。
・スプラッシュモン
水棲獣人型の完全体デジモン。
:ではいわゆる「真の姿」での登場でしたが、今回はそちらは出していません。
通常モードはクロスウォーズ以来かつ、それで最後まで通したのは初めてです。
前シリーズとは真逆に差別化されていますね。
美を好み、自身の美貌を傷つけるものは許しません。
劇中でもガンマモンに髪を傷つけられて激昂し、殴り飛ばしていました。
この性格から常に自らを美しく保とうと考え、そのために人間を素材に利用して
「美妖液」を作っては気分に合わせて抽出していました。
それを当然だと考えている節があり、宙の詰問が理解できないでいるような場面も。
しかし水から水へ自由に移動できる能力は非常に厄介であり、上述の髪から飛び散った
破片を利用して位置を特定しようとしても感知されるので捕捉は至難の業。
また触れただけで対象を水にできるという能力も反則級に剣呑なものがあり、
あっという間にメイン二体を戦闘不能に陥れています。
まともな手段では対抗が難しいでしょう。
しかし活動は「液相」のみに限られ、それが唯一最大の弱点。
この弱みを衝かれて雪原フィールドで逃走を封じられたあげく、急速冷凍されて
ブラックテイルモンUverにお持ち帰りされるという顛末に終わりました。
DWに戻した後どうなるかハッキリしてないので、以後の処遇はひとまず不明です。
クロスウォーズ版が「己しか信じていない」性格が強調されているとすれば
今回は「己の美を高める以外に興味がない」面を強調していたといえるでしょう。
他者への思いやりがない、という意味では根っこが同じですね。
それにしても:ではなぜ物言わぬ化け物として採用されたのか……
中の人は三浦祥朗(ひろあき)さん。
東映系に縁が深く、特に「聖闘士星矢」のキグナス氷河(2代目)は有名。
「ドラゴンボール改」以降のザーボン(二代目)や「冒険王ビィト」のスレッドと
観測範囲ではクール系が多いですが、熱血漢役もそつなく熟します。
デジモンシリーズの過去出演作「デジモンワールド -next 0rder-」における
ガイオウモンなどはその熱血系の一例ではないでしょうか。
まあアレは熱血というよりバーサーカーだった気もするけど……
★名(迷)セリフ
「なかなか良いタイトルさ……」(ジェリーモン)
都市伝説「水に呼ばれる…」を見て。メタ的にはある意味自画自賛です。
シナリオの人が付けたわけじゃないかもしれないけど。
後ろでガンマモンがずーっとドリンクを啜ってるのがなんとも象徴的。
「おぉー! ガリガリー!」(ガンマモン)
ドリンクが無くなったので、残った氷を齧って。かわいい。
歯応えが気に入ったのか、直後の場面ではルンバを齧って宙に諌められていました。
今回の相手が相手とあって、かなりわかりやすい伏線です。
ついでに言うと宙が氷をもらいに行ったことで、スプラッシュモン発見に繋がってます。
「私の髪に、何をするっ!」(スプラッシュモン)
ガンマモンの攻撃で髪?が一部欠けたことに激昂して。
こういうところから、一見クールを気取っていてもその実は激情家とわかります。
ある意味では水そのものかもしれませんね。
三浦祥朗さんが起用されたのもそういったあたりが理由でしょうか。
「なぜ? これは私の素材だ」(スプラッシュモン)
新島さんを元に戻せ、と言われて。
かなり素というか、本気で「なんでそんなことしないといけないの?」といった感じ。
自分のことしか考えていないことがよくわかりますが、ちょっと天然気味。
「1回目の音も、2回目も、ぼくには聞こえなかった……」(アンゴラモン)
どうやら人間にだけ聞こえるように何らかの信号を送っているようですね。
破片から獲物の様子を探ることができるそうですが、こちらについてはどうやってるのか
実は不明だったりするのですけど。破片が無いところにも届いているし。
この「音」、水とともに多数の悲鳴が混じってるのがポイントですね。
しかも回数ごとに増えてゆく。これはなかなか怖い。
「…そうか! 冷気を纏った風で熱を奪う……急速冷凍そのもの!」(清司郎)
せっかくなんで寮長から一献。
スプラッシュモンは低温・高温による相転移に対応できないので、この策は極めて有効でした。
今回は凍っただけで生きてますが、クロスウォーズでは熱による蒸発で完全退場しています。
「美しきもの、風花雪月。されど、肌の潤いは儚きこと水滴のごとし…かな」(ジンバーアンゴラモン)
今回のアンゴラポエムです。
なんかよくわかりませんが、どれだけ美しさを謳っていてもこうなっては意味がない、
とスプラッシュモンのことを皮肉ってるのは間違いなさそうです。
★次回予告
どうやら次回はアシュラモンのようですね。フロンティア以来になるのかな。
なるほど「阿修羅面」に着目したわけか……
個人的にはタイムリーです。阿修羅面・怒り! からの冷血!