飢餓屋敷

脚本:山口宏 演出:角銅博之
作画監督:武内昭/川口弘明/佐藤敏明/仁井宏
総作画監督:仲條久美

★あらすじ

 ある日、デジタルワールドにいた頃の親友・デジタマモンと再会したアンゴラモン。
 人間である瑠璃と一緒に暮らしていることを話した流れで、宙たちも含めた全員を
 デジタマモンに紹介する運びとなります。

 ところがデジタマモンはアンゴラモンの興味を引いて瑠璃から引き離しておき、
 その間に瑠璃を襲おうとします。突然の豹変に戸惑いながらも、
 瑠璃を連れてその場を脱出するアンゴラモン。

 実はデジタマモンが棲んでいた屋敷は「人喰い屋敷」と呼ばれる事故物件でした。
 理由はズバリ、デジタマモンが越してきた住人をことごとく食っていたからです。
 実体化を得た彼は強い飢餓感と見咎められた恐怖から人間を呑み込んでしまい、
 その精神を吸ってしまったことで人間を食うことを覚えてしまったのでした。

 遅れて到着した宙たちをも食おうと、ジリジリ迫ってくるデジタマモン。
 アンゴラモンたちは進化して食い止めようとしますが、成熟期の攻撃では歯が立ちません。
 それならばとカノーヴァイスモンが二度目の登場を果たし、ようやくダメージを与えました。

 しかし、なおも止まろうとしないデジタマモン。
 もはやこれまでと、ジンバーアンゴラモンは亀裂を狙った必殺の一撃を加え引導を渡します。
 デジタマモンは親友だった者へ答えのない問いかけを残し、消滅しました。

 あまりにも悲しい結末の果て、誰もいなくなった人喰い屋敷だけが残されます。
 まるで何事もなかったかのように──
 
 
 
 
★全体印象
 
 26話です。
 今回から、短いですがOPにカノーヴァイスモンが加わりました。いいっすね。
 これは瑠璃組と清司郎組の完全体が登場した際も期待できそうです。

 今回登場したのはデジタマモン。TVシリーズでメインゲストを張るのは実に02以来です。
 しかも当時とはまた全然違うキャラ性が与えられており、素材の幅の広さを実感しました。
 やろうと思えばどんなキャラ付けもできるのはデジモンの良いところです。

 が、内容的にはとてもシリアス且つ極め付けにビターなラストを迎えています。
 結果、グルスガンマモン以外では初めてレギュラーデジモンが相手を斃す展開を迎えました。
 それがまさかこのような形になるとは、さすがに予想できませんでしたが。
 完全体進化が飛び出てもよい流れではあったんですが、むしろ今回は布石なのかも?

 やはり回にもよりますが、徐々にデジモン事件が凶悪化してる気がしますね。
 もし究極体レベルのデジモンが出てきたら、いったいどうなってしまうのでしょう……

 脚本は山口宏さん。
 シスタモンシエルといいフェレスモンといいアルケニモンといい今回のデジタマモンといい、
 この方の脚本ではイカれた奴ばっかり出てくる感じですね。そういう担当??
 演出・作監方面に目立った新顔はおりませんが、安定はしてますね。
 
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・宙組

 脇に徹してるんですが相手が完全体、それも高い防御力を誇るデジタマモンとあって
 前回に続いてカノーヴァイスモンが登場しています。

 現状の切り札だけあって「ガリアフィッシャー」の一撃でダメージを与えていますが
 それでも一撃では斃せず亀裂を加えることができたのみでした。
 最後の一撃をジンバーアンゴラモンにやらせるためとはいえ、相手の防御力が窺えます。

 あと宙くん、一応デジタマモンに詳しく話を聞く気まんまんだったようですね。
 デジタマモンがマトモな状態だったら、北斗パパの手がかりぐらいは掴めたのかも?
 
 
 
・清司郎組

 宙組以上に脇役。
 まあデジタマモンの技をまともに喰らうとアウトとあっては、迂闊には動けませんか。
 
 
 
・瑠璃

 アンゴラモンの親友に会えるとあって超ウキウキに至り、秒で宙たちを誘っていました。
 まさかこんなことになるとは、アンゴラモン共々夢にも思わなかったことでしょう。
 結果的には、宙たちを呼んだことが最悪の事態を防いだわけですが……
 
 
 
・アンゴラモン → ジンバーアンゴラモン

 今回の主役。
 久々に親友と再会し、前半は彼にしちゃかなりテンションを上げていました。
 それだけ仲が良かったってことでしょうけど、そういえば彼はなぜ人間界に来たんですっけ。
 他の多くのデジモンたちと同じく、単純に迷い込んだ口?

 さて相手が相手だけに何とか説得しようとしていましたが全く聞き入れてもらえず、
 人間を食いその精神を吸うという快楽に取り憑かれたデジタマモンを止めるためには
 もはや斃すしかないとばかりに亀裂を狙っての一撃を与え、葬り去りました。
 上記の通り、グルスガンマモン以外のレギュラーデジモンが手を下すのは初めてです。

 デジモンでありながら人間を守り、同胞を手にかける。
 それが救いようのない悪党相手ならばともかく、よりによって親友だったデジタマモンという
 この重すぎる結末が、彼の心に影を落とさなければ良いのですが……

 怒りと悲しみのあまり、完全体に進化して大暴れしてしまう流れもあり得ると思ってましたが
 特にそういうことにはなりませんでした。でもなんかあの完全体ヤバそうなんですよね……
 もしも今回のことを引きずるようなら、今後に一悶着あるかもしれません。
 
 
 
・デジタマモン

 パーフェクト型という大層な肩書きの完全体デジモン。
 本来は穏やかな性格で知識の探求者であり、アンゴラモンと常にコンビを組むほどの親友でした。
 思えばこの設定の時点でフラグだったと言えます。

 実は半年前の時点で人間界に来ており、実体化を得る前は人間をいささか恐れていたこともあり
 いざこざを起こさず静かに暮らしていたのですが、何かの拍子(理由は不明)で実体化を得た途端
 強烈な飢餓感に襲われ、たまたま見咎められたのをキッカケに人間を飲み込んでしまった結果
 精神を吸ってしまい、その際の充足感に取り憑かれてしまいました。
 人間を前にすると食べることしか考えられなくなってしまうほどの快楽だったようです。

 タチの悪いことに理性も残しており、アンゴラモンを騙す形で瑠璃との接触の機会を手に入れ
 独りになったところを襲おうという狡猾な計画的犯行を取っています。
 そのうえ「人間も生きるために他の生命を奪っている」と己を正当化しようとする有様。
 キッカケは偶然とはいえ、もはや申し開きの余地はありません。
 人間、ないしデジモンをみだりに殺めた手合いは必ず斃されるのが本作のならわしです。

 その殻は岩よりも堅固で絶大な防御力を誇り、成熟期レベルの攻撃ではびくともしません。
 加えて必殺技の「ナイトメアシンドローム」は生命活動を、「エニグマ」は精神を
 それぞれ停止・破壊してしまう即死技なので避けるしかないというエグさ。
 攻防共にスキがない、まさしくパーフェクトな実力を見せつけました。

 カノーヴァイスモンの一撃にはさすがにダメージを受けてますが、決め手には至ってません。
 「ガリアフィッシャー」は低純度のクロンデジゾイト程度なら容易に切断するそうですが、
 にもかかわらず亀裂程度で済んだのはやはりその防御力の賜物でしょう。

 しかしこの亀裂が命取りとなり、ジンバーアンゴラモンにそこをめがけた一撃を加えられ
 同時に本体も致命的ダメージを受けたのか連鎖的にカラ全体へヒビが入り、消滅。
 親友でありながら、ジンバーアンゴラモンが斃した最初のデジモンとなりました。

 今際に、デジモンと人間の間柄にかかわる重い問いかけを投げかけています。
 それでもアンゴラモンに、デジタマモンの行動を看過することだけは選べなかったでしょう。

 中の人はまさかまさかの釘宮理恵さん。
 「ゼロの使い魔」のルイズ、「ドキドキ! プリキュア」の円亜久里、「THE IDOLM@STER」
 の水瀬伊織、「マギアレコード」の里見灯花と、その可愛らしい声を活かした少女役で
 一部に熱狂的なファンを抱える人気声優さんですが、「鋼の錬金術師」のアルフォンスのように
 少年役にも高い定評があります。「デジモンセイバーズ」のイクトはデジモンシリーズの代表例。

 今回はその声質を逆手に取り、淡々とした喋りで「マトモに喋ってるのにマトモじゃない」
 ヤバさを強調しまくることに成功していました。これは恐ろしい。
 
 
 
・プラチナヌメモン

 アンゴラモンとデジタマモンの回想に登場。本作初となる究極体枠です。
 本格登場じゃないとはいえ、コイツが最初だったとはリハクの目をもってしても見抜けますまい。

 回想では生態を探ろうとしたアンゴラモンとデジタマモンに気付き、追いかけ回していました。
 威力はないだろうけど絶対に喰らいたくない「アレ」も健在。
 あの「アレ」、実は高く売れるとかだったらイヤすぎるなあ……
 
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「デジタマモン! デジタマモンじゃないか!」(アンゴラモン)
 
 デジタマモンと再会した際の第一声。
 別にフツーのセリフなんですが、クスリと来る体になってしまってるんですよね私。
 理由は聞かないでください。
 
 
「けど、人間に関する知識はどこにも記録されてなかった……」(デジタマモン)
 
 アンゴラモンと積もる話をしていたときのセリフ。
 サラッと流されてますけど、これ何故何でしょうね? 単に昔は人間界と繋がってなかっただけ?
 
 
「…ありがとう……」(デジタマモン)
 
 瑠璃の持ってきたお土産のお菓子を前に。しかし結局食べることはありませんでした。
 もはや何を食べても、人間の精神を食ったときほどは満たされないと知っているのでしょう。
 どこかぎこちない口調が絶妙です。
 
 
「もう少し、この素晴らしいコレクションを見ているよ……」(アンゴラモン)
 
 デジタマモンが示してくれた「前の住人の置き土産」の内容に興奮しつつ。
 上ずった口調から、その垂涎ぶりを感じ取ることができます。
 その知識欲と嗜好をまんまと利用されたわけですね。
 デジタマモンの本当の意図には、この時点だと微塵も気づいていません。無理もないですが。
 
 
「ただの噂じゃないですか? 遅れてるんですから急ぎましょ」(宙)
 
 清司郎から「人喰い屋敷」の噂を聞かされて。
 デジモンのこともあるしもうちょい疑ってもいいんじゃないの、と思わないでもないセリフです。
 とはいえ、なんでもかんでもデジモンのせいと考える気は毛頭ないのでしょうけど。
 
 
「腹がすいたんでね…ちょっと食べるだけだ。
 食べて…… 砂になる。ただ、それだけさ」
「食べ終わったら…また、昔の話でもしよう」(デジタマモン)

 
 瑠璃を前に豹変、すんでの所で割って入ったアンゴラモンに。やり取りなど一部略。
 まるでちょっとつまみ食いをしようとしているだけのような意図のセリフですが、
 感情を失ったような淡々とした喋りや間とあいまってヤバさが激増しています。
 最後の行はアンゴラモンを絶句させました。

 このセリフ通り、デジタマモンに精神を食われた人間の体は砂になってしまいます。
 屋敷のところどころに残されていた砂は、デジタマモンのいわば食べカスなのです。
 砂になる理由は不明ですが、結局は体の大部分も吸い取られてるのかもしれません。
 
 
「デジモンに危害を加えるつもりはないよ。仲間だからね。
 ぼくは、ただ食事をしたいだけなんだよ」(デジタマモン)

 
 テスラジェリーモン達に強さを見せつけながら。いけしゃあしゃあとまあ。
 ゆらゆら体を揺すりながらゆったり語りかけるさまが、なんとも不気味です。
 
 
「お前も……変わったんだな……
 アンゴラモン…お前はデジモンか……人間、か……」(デジタマモン)

 
 斃れる間際のセリフ。
 人喰いの衝動に溺れ己を失った彼を救う手段は、死しかありませんでした。
 “たかが”人間に肩入れして自分にトドメを刺しに来たかつての親友の行動は、
 人間を餌としか見做さなくなったデジタマモンにとってはさぞ奇妙だったでしょう。

 でも、アンゴラモンは決してデジタマモンへの友情を失くしたわけではありません。
 ただ、守りたいものがデジタマモンと相容れなかったのです。
 止められぬ時はせめて自分の手で、という形になったのもある意味友情です。
 断腸の思いだったのは火を見るよりも明らかですが。

 アンゴラモンからすれば、やはり変わってしまったのはデジタマモンの方なのです。
 けれど、この問いに彼が応えることはありませんでした。
 ついでに言うとこのセリフ以降ずっと無言で、ポエムを詠むこともありませんでした。
 これはまあ無理もないことでしょう……

 考えようによっては「詠まない」ことが今回の締めだったのかもしれませんが。
 
 
「あのお屋敷は、今もひっそりと建っているのです。
 まるで、何事もなかったかのように──」(瑠璃)

 
 ラストシーン。アンゴラモンに代わって瑠璃が締める形になってます。
 なかなかホラーチックなオチですが、もう別に危険はないんですよねここ。
 あんなことがあったなんて信じられないぐらい、ってことなんでしょうけども。
 
 
 
★次回予告

 スプラッシュモン(通常形態)がクロスウォーズぶりに登場。
 設定を再確認する限り、クロスウォーズ版もこれに沿ってキャラ付けされてたのですね。
 とはいえこれまでのケースから、全然違うパーソナルになってる可能性もありますが。

 あとは中の人が緑川さんなのかどうかも気になりますが、まあただのバケモノだった
 :のアレよりはキャラが立っていてくれるんじゃないかと……