歪ンダ愛

脚本:中山智博 絵コンテ:鈴木正男 演出:佐藤道拓 
作画監督:北野幸広/大山康彦/佐藤敏明/酒井夏海/大西陽一/Y.M.Lee
総作画監督:西野文那

★あらすじ

 花屋の一人息子、小鳥遊優人の周囲で突然人の手足が植物の蔓のようになる現象が発生。
 相談を受けて辞退究明に乗り出す宙たちですが、犯人が植物型デジモンということだけは
 判明したものの、なぜ人を襲うのかはさっぱりわからないままでした。

 優人の家に泊まりこんでの見張りが続く中、犯人は再び姿を現しました。
 旧式のお手伝いロボット、GW-1の中に潜んでいたのです。
 そのデジモン──アヤタラモンは優人と清司郎を捕まえ、逃げ去ってしまいました。

 アヤタラモンはGW-1を介して優人と接するうち、特別な執着を抱くようになったのです。
 それを人間の知識から「恋」と結論づけたアヤタラモンは優人を同族にするため、
 周囲の人々を対象に人間をアヤタラモンに変える実験を繰り返していたのでした。
 清司郎もアヤタラモンのエキスを飲まされ、手足を植物状に変えられてしまいます。

 そこに駆けつけた宙たち。
 完全体のアヤタラモンに苦戦しますが、清司郎を起こして進化を果たした
 テスラジェリーモンも加えた三体による攻撃が、なんとかこれを押し返します。

 それでも諦めないアヤタラモンに、優人は「君のようにはなれない」と告げます。
 ならばと自らにエキスを注入し、アヤタラモンは人間になろうと試みました。
 しかし、この試みは完全に失敗。
 歪んだ愛に身を焦がしながら「彼女」は枯れ果ててしまうのでした。

 恐ろしくも悲しい事件はこうして幕を下ろし、人々も元に戻る目処が立ちます。
 店先で働く優人の側には、動かなくなったGW-1が静かに佇んでいました。
 
 
 
★全体印象
 
 24話です。
 本来なら4月最初の放送分ですが、およそ1ヶ月ズレてのお披露目となりました。
 予定通り10月に終了、ないし区切りを迎えるならどこかで調整が入るはずです。

 今回はゲストキャラである優人と、アニメ初登場となるアヤタラモンが中心。
 特にアヤタラモン自身の動機とその破滅までに重点が置かれた流れになっており、
 メインキャラは全員心理的には蚊帳の外にいる感じです。
 当事者である優人にとってもそれは同じ。

 戦闘はこうした作劇から短めですが、質は高いです。
 相手が完全体とあって成熟期三体がかりの流れになっていますが、
 連携の質が上がっているのか効果的にダメージを与えられているように見えます。
 完全体といってもピンキリなのはフェレスモンを見ててもわかることですが。

 脚本は「人形ノ館」「不幸ノ手紙」「子供ノ国」の中山智博さん。
 デジモンと人間との認識のズレが描かれやすいのは本作の特色のひとつですが、
 中山さんの脚本では特にその点が強調されているような気がしますね。

 演出の佐藤道拓さんはよく見ると「デリシャスパーティ☆プリキュア」
 においても名前を見ることができるのですが、本来なら3/13の休止によって
 本作の方が一週遅れで放映されていた──つまり、
 あちらの9話と同じ週(4/3)に放映されるのが当初の予定だったはずなので
 同時に関わってたわけじゃないと思います……たぶん。
 
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・宙組

 優のことを「優人兄ぃ」とやけに親しげに呼んでいます。
 また、北斗パパもよく優の店に顔を出していたようです。
 えっ何突然??? ちょっとその話詳しく聞かせてくれませんか??
 くれませんか……そうですか……

 ガンマモンは今回おおよそ実働要員に徹していた印象。
 戦闘での特筆点は、アヤタラモンに受けたなかなかに痛そうなカウンターが印象的。
 しかし怯むことなく、ソルショットの連続攻撃をジンバーアンゴラモンの攻撃に合わせて
 テスラジェリーモンの一撃へ繋いでいました。やはり連携が良くなってます。
 
 
・瑠璃組

 瑠璃がやけに仕切りまくってますが、今回はあんまり目立ってません。
 アンゴラモンの鋭さや雷電しぐさ、締めのポエムは相変わらず定番。
 
 
 
・清司郎組

 清司郎については今回二度も襲われたあげく、右腕と両足を植物状に変えられてしまうなど
 かなり大変な目に遭っており断トツでトバッチリ枠を更新してるわけなんですが、
 皆から微妙にスルーされがちだったのが一番気の毒だった気がします。
 えっ寮長どうなったの??? からのオチ担当はすでに貫禄の領域。

 ジェリーモンは何故かそんな寮長のピンチに出遅れ気味でした。
 清司郎の身を真っ先に案じて宙を止めるなど、フォローもされてはいますが。
 
 
 
・小鳥遊優人

 今回のゲストキャラ。
 苗字は「たかなし」と読みます。「かたなし」ではありません。

 人間ゲストが名前アリで本筋に食い込む扱いを受けてるのは、ちょっと珍しかったりします。
 18話のカズマも、扱いとしてはその友達のホークモン二体の方が主体だったし。
 というか、メインキャラ以外の人間キャラって大半が被害者枠のモブだし。

 さてこの優人君、長めの髪を綺麗に切り揃えたやや中性的な印象を与えてくる少年です。
 ちょっと一乗寺さん家の賢ちゃんを思い出す風貌ですね。
 その外見と名前通りに優しく穏やかな、草花をこよなく愛する性格。

 そんな性格や振る舞いがGW-1の中に宿っていたアヤタラモンの心に強い影響を与えたらしく、
 かなり強烈な執着を抱かれるに至っています。もちろん本人は知るよしもなかったことなので
 最初は怯えていましたが、アヤタラモンの一途さを感じ取ってからは言動を変えています。
 今までうまくやっていたのに何故、との問いかけは怪物に対するものではありません。

 さらに、人間になろうとして自滅したアヤタラモンを見て思わず歩み寄っていました。
 単に相手を憐れんだだけ、と言えなくもない場面ではあるのですが……

 中の人は川島零士さん。優人の見かけ通りに線の細い声質の方です。
 キャリアを重ねはじめたのは5年前と比較的最近ですが「不死身のあなたへ」で
 主役に抜擢された経験もある模様。これからの活躍にも期待したいですね。
 
 
 
・アヤタラモン

 完全体の植物型デジモン。
 前回のモルフォモンはTVアニメ初登場枠でしたが、こちらは正真正銘アニメ初登場です。

 旧型のお手伝いロボット「GW-1」の中に潜んでおり、その状態では誰にも気付かれていません。
 監視カメラなどを通じて優人に近づく人間を覚えており、これを襲っては自身の頭から引き抜いた
 針からエキスを注入し、手足をイバラ状の蔦に変えてしまっていました。

 その動機は、優への強い執着。本人はこれを「恋」と呼んでいます。
 やがてGW-1として側にいるだけでは満足できなくなり、優人を自分と同じアヤタラモンに変えて
 永遠に彼を手に入れようと考えるようになってしまいました。
 人々を襲っていたのは、人間をデジモン化するための実験を兼ねていたのです。
 親については「育成者」と呼んで手を出さない程度の分別は保っていたのがむしろ厄介なところ。

 しかし清司郎を最後の実験台にして手応えを得、いよいよ優人にもエキスを注入しようというところで
 ベテルガンマモンたちの妨害に遭い、一度は押し返しますがテスラジェリーモンが参戦したことで
 攻撃を捌ききれず直撃をくらい、ダメージを受けましたが斃れるには至らず。

 優人に想いを吐露しながらなおも近づこうとしますが、「君のようにはなれない」と言われ
 それなら人間になろうと今までとは違う赤色の針を自らに突き刺します。
 するとみるみるうちに体色が枯れ、体が変化していくのですがその姿は人間でもデジモンでもなく
 ただ崩れてゆくのみ。そのまま回復することなく、粒子となって消えてしまいます。完全な失敗です。

 あの赤い針はアヤタラモンにとっておそらく最後の手段であり、うまくいくかどうか全く確証の持てぬ
 試したくても試せない代物だったのかもしれません。
 デジモンで実験した形跡がないので、ケースとしては優先していなかった可能性の方が高いですが。

 ともあれ、その動機自体は「人間への好意」という本質的には悪いものじゃありません。
 が、その手段があまりに歪んでいたこと、そして優人への独占欲が明らかに強すぎたことが
 このような悲劇を招いてしまったのでしょう。
 そもそも優人をアヤタラモンに変えたとして、心まで彼のまま手に入れられたとは思えません。

 最初から互いにありのまま、たとえ怖がられても一途に想い続けることができたなら
 あるいは違った道もあったかもしれないのですが……性格的に難しいかな。
 仮に優人が受け入れようものなら結局エスカレートしてゆきそうな気がします。

 さて、本来のアヤタラモンは無口で集団での狩りを本分とする密林のハンターです。
 完全体とあって集団としての戦闘力は相当のものがあると思われますが、本作では単独。
 あるいは、人間の世界に迷い出てしまった逸れ者なのかもしません。
 単独であることを好まない性格と優人に声をかけてもらったことが反応を起こし、
 ある種のイレギュラーな情動を生んでしまったのかもしれません。
 最初から何かが間違っていた、とまでは言い切れませんけれど。

 名の由来である「アヤタラ」はフィンランドの民間伝承において森の悪魔と恐れられる
 「アイアタル」の別名と思われます。精霊ともいわれ、蛇やドラゴンの姿を取るという特徴は
 進化先として有力なヒュドラモンに通じる属性といえましょう。
 またアイアタルは女性の精霊であり、今回のキャラ性はこれを参照している可能性があります。

 中の人は本田貴子さん。
 大人の女性役だけでなく、時には少年役もこなす人です。
 観測範囲だと「天元突破グレンラガン」のギミー・アダイ、「クロスアンジュ」のジルあたりが
 パッと思い出しやすいところでしょうか。また脚本に十川誠志さんが参加している
 「学校の怪談」ではメインキャラを担当していました。偶然ならばひとつの縁ですね。

 ちなみに本田さんはダイソンのCM「吸引力の変わらない掃除機」の人でもあるようです。
 言われてみれば確かにこの人の声ですね。最も有名な役かもしれません。
 
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「あ、あ、天ノ河くん!
 今度はいったいどんな不吉なフラグを立ててくれたんだ!」(清司郎)

 
 アヤタラモンに襲われた(けどガンマモンの介入で事なきを得た)宙に。
 無意識にこーゆー言い回しになるあたりキャラ性が出てますが本人はマジです。
 
 
「先輩…これは、ほっとけないかも…!」(宙)
 
 上の直後。
 この言い回し、確かにほっとけない!(高山みなみ)
 
 
「何度も失敗してくじけそうになるたび、自分に言い聞かせた……
 必ずうまくいく… 必ずうまくいくと…!」(アヤタラモン)

 
 優人を自分の同族にしようと、彼に接触した人間を対象に実験を繰り返してきましたが
 そんなことが可能とは思えません。当然のように何度も失敗したわけですが、
 そのたびに優人が花に水をやりながら口癖にしていた「諦めなければ必ずうまくいく」
 という言葉を励みにして凶行を繰り返すという皮肉にもほどがある図式ができていました。

 最終的には三度刺せばアヤタラモンと同じ姿になる、と結論づけていましたが、
 残念ながら恐らくうまくはいかなかったでしょう。
 もし実行しても、優人でもアヤタラモンでもない塊になっていた可能性の方が高そうです。

 なおアヤタラモンが宿っていた「GW-1」の「GW」とはgo well、日本語にすると
 ズバリ「うまくいく」「いい線いく」という意味です。
 本来の形式番号なのか自称なのかは最後までわからないままでしたが。
  
 
「どこを見ているっ!」(ジンバーアンゴラモン)
 
 優人の映像に気を取られ、ジェリーモンの離脱を許したアヤタラモンへの一撃に乗せて。
 隙を狙ってのセリフとしてはベタですが、気魄のこもった叫びが印象的です。

 文字通りアヤタラモンは「見とれて」いたわけで、少なくとも優人の想いそのものだけは
 嘘偽りのない純粋なものだとわかります。アヤタラモンは本来そういう純粋な性格ですから。
 それが弱点にもなっているのはこれまた皮肉ですけれど。
  
 
「君はGW-1なんだろ!?
 今まで上手くやってたのに…なんでこんなこと…!」(優人)

 
 ゲストキャラから一献。
 怯えはまだ残っていますが、そこに毅然さが加わっています。
 少なくともアヤタラモンを怪物ではなく、一個の人格として認めての発言といえるでしょう。

 こういうところがアヤタラモンに好意を抱かせた側面なのでしょうけど、
 それを「誤解」と断言できるほど私は残酷にはなれません。
  
 
「失敗だわ… うまく、いかなかった……
 どうして…わからない……どうして……!」(アヤタラモン)

 
 人間になろうと赤い針を自らに突き立てるも、崩壊する一方の己の状態を悟って。
 呪文のように唱え続けていた「go well」「うまくいく」が反転してしまっています。
 「彼女」のやってきたこと、してきたことはここで否定されてしまいました。

 想いそのものは否定されていません。やり方が間違っていたのです。
 世の中どんなに願っても、絶対にうまくいかない道はあるもの。
 アヤタラモンは知らず知らず、そこに頭から突き進んでしまったのです。

 それでも限りない悲しみを湛えたその瞳は、優人を思わず駆け寄らせていました。
 彼がそういう、アヤタラモンが想った通りの人物だったことは救いになるのでしょうか?
 きっとそれは、「彼女」自身にしかわからなかったことでしょう。
  
 
「恋は花か、徒花か……
 美しく散るか、無惨に散るか。その道、ままならず……」(アンゴラモン)

 
 今回のアンゴラポエムです。
 どこか厳かな口調なのは、己の身を鑑みてのことだったのかもしれません。
 前回を経た上で考えると、なおさら彼にとっては軽い調子で流していい案件ではないはず。
 
 
 
 
★次回予告

 いきなりゴーストナビゲーターが顔出ししました。次回は総集編のようです。
 ってことは、25話からはOP映像刷新と展開の強化が来るかな?

 いい機会なので、2クール目までの総括でも描きましょうかね。
 同じ感じのことをしたアプモンや:ほど書きたいことが溜まってるわけじゃないので
 比較的サラッとした内容になると思いますが。