蜘蛛ノ誘惑
脚本:山口宏 絵コンテ:宇田鋼之介 演出:野呂彩芳
作画監督:李少雷/佐藤敏明/武内昭/金澤龍/權容祥
総作画監督:二階堂渥志
★あらすじ
宙のもとにある日、母の同僚と名乗るソニア・モリーナという女性が訪ねてきます。
彼女の誘いを受け、皆で「驚異の昆虫ワールド」なるイベントに足を運ぶことに。
ところが会場はもぬけの空。代わりに、蜘蛛の糸のような異様な光景が待っていました。
訝しむ宙たちに、ソニアが突如本性を現します。
彼女はなんと人間ではなく、完全体デジモンのアルケニモンだったのです。
それも生物の脳を喰らい、そのネットワークを己に取り込む極めて凶悪な類の。
逃げる宙たちでしたが、アルケニモンは「助手」のドクグモンを建物中に潜ませ
着実に宙たちを追い詰めてゆきます。先回りされた挙句、宙が気づいたときには
全員がアルケニモンの糸に捕らわれてしまっていたのです。絶体絶命の危機。
が、アルケニモンの魔手がガンマモンに迫ろうとしたとき異変が起こりました。
あのグルスガンマモンが再び現れたのです。まるで危機に応じて目を覚ますように。
その圧倒的な強さは、完全体であるはずのアルケニモンをも一蹴してのけました。
宙はこのガンマモンであってガンマモンでない何者かにコンタクトを試みるのですが、
グルスガンマモンは「まだその時ではない」と、ガンマモンの中へ戻ってしまいました。
九死に一生を得た彼らの傍には、以前とまた別の謎のデジモンが……
謎を孕んだまま、デジモンによる被害は刻一刻と広がりつつあります。
★全体印象
21話です。
前回に続いてバトルが多めですが、20話と決定的に違うのは狙いが宙たち、
というのは同じでもアルケニモンが完全に救いようのない外道であることです。
音でしか描写されていませんが、人間やデジモンを問わずその脳を喰らうのですから
過去にもなかなか例のないぐらいヤバい相手だといえるでしょう。
そんなアルケニモンに追い詰められてゆく過程で相手の恐ろしさを充分に示しつつ、
完全体をも圧倒するグルスガンマモンのそれ以上のヤバさを際立たせる形でした。
もっとも、今回はあくまで宙というかガンマモン、つまり自分を守るための行動で
宙たちへの敵対行動そのものは見せていないのですけど。
前回も下手すっと死人が出てたし、さらに今回では明確に死人が出てるので
徐々にデジモンによる被害がシャレにならなくなってきている流れですね。
フェレスモンみたいな輩も野放しになってるし、状況は悪化の一途かもしれません。
もし今、一般にデジモンの存在が知れ渡ったら非常にまずいと言えます。
北斗パパはなぜ人間の世界にデジモンが溢れているのか、把握してるんでしょうか…?
脚本は山口宏さん。
シスタモンシエルといいフェレスモンといい、イッちゃってる奴ばかり描いてますね。
まあシスタモンシエルについては説明もなくキャラが崩壊してたケースですが……
絵コンテには宇田鋼之介さんが登板。デジモンには初参加。
2006年までは「One Piece」のSDとして知られていた方です。
現在に至るまでも、このシリーズにはちょくちょく監督として参加していたりします。
作監では佐藤敏明さんと武内昭さんが初登板していますが、武内さんについては
ひょっとしたら「竹内昭」の誤記かもしれません。定かじゃないですけど。
★キャラなど個別印象
・宙
「ソニア」の誘いにまんまと乗って過去最大のピンチを招いてしまったわけですが、
相手が人間ではないと誰も見抜くことができなかったので彼の責任とは言えないでしょう。
アルケニモンの擬態がそれだけ巧みだったということです。
基本あまりいいところがなく後半でもガンマモン共々あっさり捕まってしまうのですが、
突然現れたグルスガンマモンによって救われる形となりました。
だからなのか、この第四の姿への警戒は以前にもまして小さなものになっています。
・ガンマモン → ウェズンガンマモン、カウスガンマモン
ベテルガンマモンの登場はなし。
デジモンというものに敏感な彼であっても、ソニアの正体は全くわかりませんでした。
これにより、一同は初手から極めて不利な状況へ追い込まれることになります。
・グルスガンマモン
13話以来の登場。
ガンマモンがアルケニモンの毒牙にかかる直前、なんの前触れもなく進化を遂げました。
この際、開かれたガンマモンの目が真っ黒になるという演出がなされています。
前に現れた時はガンマモンの感情の爆発に合わせて現れたように見えたのですが、
今回はそのガンマモンが完全に意識を失っている状態からの出現。
まるで別の意識どころか「別の存在」が潜んでいるかのようです。
まあ、気絶してたからグルスガンマモンの意識が優位に立てたのかもしれないけど。
戦闘場面は短いですが、その冷酷さと他を圧する凄まじい攻撃力は健在。
仮にも完全体であるはずのアルケニモンを「デスデモーナ」の一撃で下しています。
体内に直接ブチ込んでる点は差し引かないといけないでしょうけど。
そのやけに高いキャラ格から完全体相手にも苦戦する場面が想像できなかったのですが、
いやはやここまでとは。まだナメてたようです。
逆に言えば、この存在が苦戦するような相手は本当にやばいってことですけど。
完全に宙たちを助ける形での登場であり、その後もすぐ引っ込んでしまったので
宙はもちろん他のメンバーからも警戒のコメントは出ていません。
ぶっちゃけ今回については、アルケニモンの方がよっぽど危険だったわけですし。
・瑠璃組
前回に続き、ほぼトバッチリを食らった方々。
ドクグモンたちに粘っていたものの、やはり数が違いすぎました。
これがコドクグモンならともかく、成熟期だもんな……
・清司郎組
こちらもトバッチリ組。
監視カメラを潰しながら移動していましたが、行動経路がかえって割れやすくなり
ドクグモンの包囲を招いてしまうというポカをやらかしてしまい、瑠璃組共々捕まります。
せめてカメラを全部潰せていれば……
・アルケニモン
魔獣型の完全体デジモン。昆虫型ではないところが格の高さを感じさせます。
人間、デジモン問わずその脳を喰らい、中の神経ネットワークから情報を取り込むという
恐ろしい存在であり、捕らわれた標的に待っているのは死あるのみ。
デジモンシリーズ全般を見渡しても、なかなかこれほどの凶悪犯はいますまい。
人間の女性に化けることができ、その擬態精度は正体を表す瞬間まで彼女がデジモンであると
誰もわからなかったほどです。アンゴラモンもその完璧さに驚いていました。
宙たちはまさに、擬態に気を取られてまんまと巣の中に飛び込んだ蝶だったのです。
「助手」として無数のドクグモンを従え、これを思いのままに動かして襲ってくるというのが
基本的なスタイルです。しかもこのドクグモンらは建物のそこらじゅうに身を潜めており、
アルケニモンの指令で先手に次ぐ先手を打つため宙たちは善戦虚しく追い詰められました。
最終的には宙たち全員を捕らえ、ガンマモンの脳を喰らう直前まで至っています。
自身は全く戦わずにこの結果を出したことは、ぶっちゃけ驚嘆に値すると思います。
そんな彼女の唯一にして最大のミスは、ガンマモンを最初に食おうとしたこと。
これによってグルスガンマモンの出現を促し、絶対的有利から瞬殺という最期を迎えました。
その死に様は開いた大口に腕を突っ込まれ、体内に「デスデモーナ」を直接ブチ込まれるという
えげつないにも程があるものです。因果応報ではあるのですけど。
とはいえ宙たちにとって、結果だけ見ればこれはラッキーでさえありました。
もしアルケニモンが最初に選んだのがガンマモン以外だったらと思うと、ゾッとします。
まあ宙を選ぼうとしてもグルスガンマモンが出てきたと思いますけど。
このアルケニモンは、デジモンファンなら知っての通り「デジモンアドベンチャー02」で
マミーモンと共に後半のレギュラーをつとめた人物です。人間態のデザインもここから。
人間態といえば、サングラスを外した状態も当時から設定では存在していたのですが
今回で初映像化ということになりました。美人です。
02でもかなり悪辣な性格でしたが、今回に比べたら可愛いものでしょう。
少なくとも、ベリアルヴァンデモンに食い殺される最期に同情の念をおぼえる程度には。
悲惨な死に方をするのはこのデジモンの宿命なんでしょうかね……?
中の人は山崎和佳奈さん。02版からの続投です。
最も有名かつ担当の長い役は、なんといっても「名探偵コナン」の毛利蘭でしょう。
人間態では蓮っ葉な02版と異なり、知的美人としての演技で擬態の巧さを表現してました。
他にも出番はごく短いですが「クロスウォーズ」でサンゾモンとして出演しています。
・ドクグモン
宙たちが誘い込まれた建物じゅうに潜伏していた昆虫型の成熟期デジモン。
アルケニモンの「助手」として、集団で宙たちに襲いかかってきました。
一体一体は対処できない強さじゃないのですが、なにしろ数が多すぎるのと
状況を俯瞰できるアルケニモンの指示で的確に動いてくるのでたまりません。
宙たちは分断されたあげく、反撃のキッカケも掴めないまま捕らえられることになります。
仮にも成熟期なため、噛み付いてウェズンガンマモンにダメージを与える場面もありました。
すぐ振り払われましたが、ガンマモンはこのダメージで進化が解けてしまっています。
脳の質が落ちるということで、毒を使われなかったのは不幸中の幸いですらあったでしょう。
アルケニモンからは、離れていてもかなり細かい指示を出せるようですね。
そのアルケニモンが死んだあと、どうなったのかは一切不明です。
ボスがやられたのに恐れをなして逃げちゃったのでしょうか。蜘蛛の子を散らすように。
・ブラックガルゴモン
グルスガンマモンが消えたあと、建物の一角から宙たちを見ていた謎のデジモンです。
ブラックアグモンと同じような目的で動いているように見えますが……
・ソニア・モリーナ
アルケニモンが騙った女性の名前ですが、実はちゃんと本物が存在していました。
宙のスマホに「知り合いが行くから観光案内よろしく」とメールが来ていたのです。
アルケニモンが母の同僚である彼女の名を利用したのは間違いないところですが、
実際にそういう予定になっていたのを先回りしての行動だったのかどうかは
実のところ定かではなかったりします。十中八九そうなんじゃないかと思いますけど。
ところで、本物のミス・モリーナはどんな顔をしていたんでしょう。
もしアルケニモンが顔まで似せていたのだとしたら、対面した際の宙とガンマモンの反応が
ちょっと気になるところですね。まあ似ても似つかない人って可能性も高いけど。
★名(迷)セリフ
「ああ、ごめんね。ミス天ノ河から聞いたの」(アルケニモン)
人間態であるソニア・モリーナ(偽名)としての発言。
宙はこれで納得していましたが、お母さんはどこまで知ってるんでしょう?
この時点のアルケニモンはちょっと怪しげだけど知的なお姉さんという雰囲気で、
目つきや視線も鋭さをうまく隠していました。
面と向かって見つめられた清司郎が思わずちょっと赤面してしまったほどです。
「宙くん、知ってる? 生物の知性を探る、最も簡単で本質的な方法。
知りたい相手の頭、知性、思考の源である脳を……
食べること…!」(アルケニモン)
本性を露わとしはじめた際のセリフ。
こういう「くるぞ……」って段階が一番ゾクゾクしますね。
「研究者よ?
ただし、本当の分野は脳科学。そして、研究のテーマは…!
より良き進化の可能性の探求!」(アルケニモン)
宙に「あなたは一体…?」と問われて。後半で正体を表します。
まさか彼女がデジモンだとは夢にも思っておらず、宙たちは驚愕の坩堝へ陥ります。
対象を食い、その脳の情報を手に入れる喜びで実体化を得たのでしょうか。
擬態が巧かったのも人間を食ったからでは、という恐ろしい推測も見かけますが、
そう考えると確かに納得できちゃうんですよね……
「あれは…本当だったのか…!」(宙)
被害者を見つけ、その傍らにある別の被害者に目を向けた際のセリフ。
ひょっとしたら、日曜9時には決して映しちゃいけないものを見てしまったのかも。
少なくともそんな表情をしています。
「頼むっ! やめてくれぇーーーッ!」(宙)
ガンマモンを今まさに捕食しようとしているアルケニモンに。
ここでもちょっと見たこともないような顔をしています。
「なら食えよ。腹ぁいっぱいな…!」(グルスガンマモン)
さらなる姿と力を見せたことで狂喜に囚われたアルケニモンに。
直後、蜘蛛の女王は喜びのあまり開いたままの口に腕を突っ込まれて
中からこんがりと焼き尽くされることになります。
己の欲を満たすためだけに他者を犠牲にしてきた彼女に今、報いが下ったのです。
それも、より巨大な悪の力によって……
「近寄んな。
……まだその時じゃねェんだよ。
じゃあな」(グルスガンマモン)
対話を試みようとした宙に。
なんとも意味深なセリフです。
「朝の雲は福が来る。夜の雲は盗人が来る。
そしてデジモンのクモは……もう来るな」(アンゴラモン)
今回のアンゴラポエムです。
さすがに彼も肝が冷えたのか、もう蜘蛛はコリゴリのようで。
★次回予告
次回のテーマはズバリ「悪夢」のようですね。
そして清司郎組の見せ場っぽいです。最近いいところなしでしたし、
健闘を祈りたいところですな。