逢魔ガ刻

脚本:森地夏美 演出:角銅博之
作画監督:北野幸広/鳥山冬美
総作画監督:石橋大輔/金久保典江

★あらすじ

 逢魔が刻。それは、昼と夜のはざま。
 逢魔が刻。それは、魔に出逢いやすい怪異の隙間。
 その逢魔が刻──黄昏において密かに、行方知れずになる人が現れはじめていました。

 ガンマモンのお使いを見守っていた宙、それに瑠璃もこの怪現象に巻き込まれてしまいます。
 犯人はピッコロモンでした。時間と空間を移動できるこのデジモンは人間を攫い、
 別の時間に送り込んでいたのです。本人が楽しいことを人間にも体験させていたわけですが、
 同意もなしにそんなことをされては人間の側はたまったものではありません。

 しかも宙も瑠璃も影のようにして現れたもう一人の自分に襲われ、危機に瀕していました。
 飛ばされた先の時間に呑み込まれれば、彼ら自身の方が影になってしまいます。
 彼らとガンマモンたちを繋いだのは、デジヴァイスVでした。

 パートナーたちのおかげでピンチを脱した宙たちは、改めてピッコロモンと対峙。
 怒ったピッコロモンは過去に移動して宙たちの存在を消そうと試みましたが、
 なぜかボロボロになって戻ってきます。さらに少し先の未来を見てきた彼は
 ガンマモンにすっかり敬服し、宙たちや攫った人々をもとの時間に帰してくれました。

 何が何だかわからないうちに、事件は解決。
 ピッコロモンは過去で何を見、未来で何を掴んできたのでしょうか。
 奇妙な謎が、またひとつ増えたようです。
 
 
 
★全体印象
 
 19話です。今回は「逢魔が刻」、昼と夜の間を指す「黄昏」がテーマ。
 黄昏時は「かわたれ刻」とも呼ばれ、人がそこにいることはわかっているのに
 影が濃くなったせいで誰なのか分かりづらい時刻を指しています。

 まだ明るさは残っているのに、シルエットでしか人を判別することができない。
 幻想的で美しさがある反面、どこかゾッとさせられる時間帯でもありますね。
 照明が少ない昔の時代では尚更でしょう。

 今回はこの概念をテーマに「昔の日本」という違う時代を「異界」に見立てて
 そこに呑み込まれる恐怖を主体に描いています。
 ピッコロモンは、この恐怖のキッカケを作った存在にすぎません。

 しかし、今回の問題はまさにそこにあります。
 「逢魔が刻」という題材を重視するあまり、一番の脅威は宙たちの影に置かれ
 ピッコロモンは完全に副次的な扱いになってしまっているんですね。
 そもそもピッコロモンが黄昏時に行動する理由が示されてません。

 顛末も今後への布石は置いてますが強引で、基本的に敵は倒さない方針である
 本作の悪い面が出てしまっているように見えました。
 倒しちゃったら戻れないんでシメる程度にする、という流れはわかるんですが。

 脚本は森地夏美さん。「鳥」と「座敷童」の人です。
 テーマ優先であとは投げっぱなしか説明不足、という共通点があるからなのか
 途中で脚本担当に気付いてしまいました。変な慣れ方をしてしまったようです。
 今までの中だと「座敷童」が一番マシかなぁ。

 演出は角銅さん。このところ登板頻度が増えている気がします。
 あと戦闘が少ない回だからか、作監の数がここ最近にしては少ないですね。
 
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・宙

 瑠璃の提案でガンマモンをお使いに出すも、様子を伺いながら後をついていくという
 完全に過保護なお兄ちゃんそのものの行動を取っていました。
 裡に何が秘められていようと、やっぱりガンマモンが可愛いってことですが。
 普段の様子を一番近くで見ているんだから尚更でしょう。

 そんな二人の絆を象徴するように、デジヴァイスVが時間と空間を超えるゲートを開いています。
 これ、応用したらデジタルワールドに行けたりしないでしょうか?
 
 
 
・ガンマモン → ベテルガンマモン

 一人で外に出たがっていたということで、チョコを買いにお使いに出されてました。
 奇しくも30分前の作品と被ってますが、ほぼ独断でお使いに出ていたあっちと比べ
 こちらは入念な確認プラス見守り付きなので、「はじめてのおつかい」度はこっちが高め。

 ぶっちゃけ途中まではグルスガンマモンになるんじゃないかとハラハラしてましたが、
 その一方でキッカケとしてはまだ弱いかなとも思ってました。
 案の定というべきか暴走進化はせず、ベテルガンマモンとして戦っています。
 ピッコロモンとの緒戦では、テスラジェリーモンとの連携で有利に戦いを進めていました。

 いろいろあって顛末を見れば、ピッコロモンが何かを垣間見たという布石が置かれてます。
 一番のポイントは「どの時点の過去」かですね。
 やはり、ガンマモンとしてのあり方の方が後付けなんでしょうか…?
 
 
 
・瑠璃

 ピッコロモンの術に巻き込まれて過去の世界に跳ばされた後、現れた己の影から
 ひたすら逃げ回っていました。向き合って会話を試みようとした宙とは対照的です。
 アレに捕まったらやばい、という直感的恐怖を何よりも優先したのでしょう。

 後半でやっとアンゴラモンと合流、進化も果たしますが特に何もしないうちから
 ピッコロモンが勝手に自爆して友好的になってしまい、肩透かしを食らっています。
 彼女にとってみれば怖がり損のくたびれ儲けってヤツでしょう。
 締めのセリフもいつになく疲れた感じでした。
 
 
 
・アンゴラモン

 得意の蘊蓄を垂れ流していたら、瑠璃を目の前で攫われるという痛恨に見舞われています。
 相当焦っていたのか、ピッコロモンとの戦いではやや鬼気迫る雰囲気でした。
 まさかこっちが暴走しないだろうなと妙にヒヤリとさせられたものです。
 
 
 
・清司郎組

 宙と同じくガンマモンの見守りをしていたら事件に巻き込まれました。
 瑠璃か宙に頼まれたのでしょう。なんとなく瑠璃の方に強く頼まれた気がする。
 渋々ながらもちゃんとやる清司郎からは、責任感の強さというものを見て取れます。
 ジェリーモンは割とノリノリでしたが。

 戦闘では、テスラジェリーモンの技をベテルガンマモンのそれと合わせて攻撃しています。
 徐々に連携が取れてきてますね。
 
 
 
・影たち

 宙と瑠璃の前に現れ、二人に成り代わろうとした正体不明の存在。
 最初は影そのものの姿ですが、次第に二人と同じ顔を露わにしてゆきます。
 それと同時に宙たちはだんだん影になってゆき、両者が入れ替わってゆくという寸法。
 しまいには、存在や記憶までも消え去ってしまうのかもしれません。

 ピッコロモンによれば、この現象は「時間に溶け込んでゆく」のだそうです。
 だとすれば怪異というよりは「辻褄を合わせようとするなんらかの力」であって
 ピッコロモンの力とは関係がない……というより「その後で起こること」なのでしょう。

 つまりある意味では「自然現象」なのかもしれないのですが、演出もあって
 ぶっちゃけ本作のどのデジモンより怖かったと思います。本末転倒。
 本来は善悪など関係ないただの現象なのでしょうけど、宙たちに恐怖を感じさせたのは
 存在の根底に関わることだから、としか言いようがないかも。

 ただこの作用は「辻褄を合わせる必要がなくなった」際にはなくなるようで、
 パートナーと合流した段階で宙たちは元に戻っています。
 彼らが元の時間軸に戻る可能性が一気に高まったから、と解釈すべきでしょうか。
 このとき残念そうな顔をしていたのは宙たちの意識がそう見せたのか、それとも……
 
 
 
・ピッコロモン

 小さな槍「フェアリーテイル」を携えた小さな妖精型デジモン。
 過去作では「デジモンアドベンチャー」や「デジモンネクスト」のような、口うるさいけど
 主人公たちを導く役回りが多かったのですが、今回は珍しく騒動を起こす側の役回り。
 ウワサで知ったらしく、宙たちのデジヴァイスを欲しがっていました。

 その実、イタズラ好きであらゆる場所、時間、空間に行けるというその能力については
 デジモン図鑑とぴったり合致しており、これを参考に立てられたことは明白。
 こちらの方が設定には忠実というわけです。イメージの定着がなんだかんだあるので、
 映像作品でこの設定を出されると戸惑いもあるんですが……刷り込みって怖い。

 困ったことに一切の悪気がなく、人間を攫って別時間に送り込んでいたのも
 「楽しい思いをさせてやりたいから」という気持ちからです。
 ただし、あまりにも一方的で独善的とすら言えるやり方。
 自分が楽しいことならみんなも楽しいに違いないと思い込んでしまっていたのです。

 加えてそういう考えで動いているため、説得にも応じようとしません。
 あのままでいたら、とにかく何とかしてシメて言うことを聞かせるしかなかったかも。

 とはいえ完全体なんで、バラバラに攻撃していては歯が立ちません。
 でもベテルガンマモンとテスラジェリーモンの合体攻撃には押されていたほか、
 アンゴラモンの追い討ちで地面にへばり付いてたので戦闘力自体はそこまで無さそうです。
 ジンバーアンゴラモンも加わっての三体なら何とかなった可能性はあるでしょう。

 不利を悟ったのか、過去に戻って宙たちを始末しようと試みます。
 これは完全に悪意ある行動で擁護できませんが、結果的には失敗しました。
 ところが過去でぼろ負けしてガンマモンに興味を抱き、さらに未来を垣間見て完全に敬服、
 一方的に友達宣言をし矛を収めるという何ともモヤモヤする幕引きになっています。
 このところ、野放しにしとくとヤバそうな連中ばかり出てくるなぁ……

 ところで過去においては一方的にやられてる描写がある一方、未来に行った際には
 無傷で(その代わりすっかり友好的になって)戻ってきたのが気になるところですね。
 やはりもともとベテルガンマモンだった時期があるのか、そして未来においては
 そのベテルガンマモンをも超えた何かにガンマモンが到達していることを知ったのか……
 肝心なことは何も教えてくれませんでしたけど。

 中の人は吉田小南美さん。かつては吉田古奈美と名乗っていました。
 特に90年代前半において数々のヒロイン役をこなし、好評をえたことで知られます。
 「絶対無敵ライジンオー」の白鳥マリア、「魔法騎士レイアース」の竜咲海、
 「魔法陣グルグル」のククリ、「勇者王ガオガイガー」の初野華役はとりわけ著名な類。

 男の子役も得意で、デジモンシリーズには「02」時点でマイケル役として出演済。
 「クロスウォーズ」の金田イサム役では、また全く違う役柄を演じていました。

 しかし今回の役、いったいどこから声出してるんだろう……
 
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「本当に困ったら、おっきな声でオレを呼ぶんだぞ」(宙)
 
 お使いに行くガンマモンに念を押しながら。後半への布石。
 もはや完全に年の離れたお兄ちゃん目線です。
 もっとも、実際にはガンマモンが彼を助ける流れに繋がるんですが。
 
 
「今からボクっピが、楽しい時間に送り届けてやるっピ!
 だからお礼に、そのカッチョイイ腕輪をよこすっピ!」(ピッコロモン)

 
 清司郎にいきなりの交換条件。
 さてはこいつデジヴァイスVの機能を把握してないな? と思わせるセリフ。
 それとも、誰かに吹き込まれたのでしょうか?
 
 
「絶対ダメ…! あいつに、捕まっちゃ!」(瑠璃)
 
 影から現れた、己自身の顔をした何者かから逃げながら。
 誰に聞くでもなく、本能的に悟っての行動という感じです。

 捕まって入れ替わったらこの時間の人間として確かに「馴染む」のかもですが、
 それは今の自分でいられなくなるということ。賢明な判断かもしれません。
 誰何しようとした宙の行動を、個人的に愚かとまでは言えませんが。
 
 
「ヒロ、おれ、呼んだ! ちゃんと来たぞ、ヒロ!」(ガンマモン)
 
 影になりかけていた宙へ迷いなく飛びついて。
 見た目ではないところで、彼には影の方が宙だとわかったようですね。
 宙のセリフとは立場があべこべだけど。

 成り代わろうとした方はこの時点で消え去り、宙は元に戻っています。
 本来、誰かが宙を宙と認識してあげない限りは戻れないのかもしれません。
 
 
「瑠璃を…かえせ!」(アンゴラモン)
 
 ベテルガンマモンとテスラジェリーモンの攻撃を受けたピッコロモンに追い討ちして。
 彼にしては感情がすごく表に出ているセリフです。中井さんすげえ。
 まあ、温厚な彼をして怒りと焦りを隠しきれない事態ではありますからね……

 彼が瑠璃をどれだけ大切に想っているか、口調だけで伝わってきます。
 これ、瑠璃が手遅れになってたら何をしてたかわからないかも。
 
 
「おまえ、めっちゃすごかったっピ!
 最高だっピ! ボクっピと友達になってほしいっピよ!」(ピッコロモン)

 
 過去のガンマモンを消そうとしてどうやらボロ負けし、さらに未来へ行って
 戻ってきた際のセリフ。あまりの豹変ぶりに全員がポカーンとなっています。
 この時点ではさっぱりわかりませんが、後から「ああ、なるほどね…」ってなるのかな??
 
 
「美しき夕方は三日で飽きる。忙しない昼には三日で慣れる。
 曰く、どちらもあるから尊きもの」(アンゴラモン)

 
 今回のアンゴラポエム。すっかり普段の彼に戻っています。
 でも忙しない昼はともかく、美しき夕方は…… ああ、そうか。
 忙しいさなかじゃ、美しい夕方なん飽きるほどじっくりは見ませんものね。
 
 
「なんか…わかるかも……」(瑠璃)
 
 上のアンゴラポエムに応えて。本話を締めるセリフです。
 夜、ないし夕方というのは忙しい1日を終えた安らぎの刻でもあります。
 かつてないほど夜に安堵を得ている彼女には共感しやすかったのかも。
 
 
 
 
★次回予告

 闇っぽい炎が印象的です。今度の相手はダークリザモンとセーバードラモンかな?
 後者はアニメ初登場だったような……
 闇の炎というと嫌でもベテルガンマモンを連想しますけど、果たして…?