極寒地獄

脚本:十川誠志 絵コンテ:角銅博之/髙戸谷一歩 演出:髙戸谷一歩
作画監督:北野幸広/澤木巳登里/鳥山冬美
総作画監督:二階堂渥志

★あらすじ

 清司郎が設計したという地熱発電所のメンテに付き合わされた宙たち。
 作業は順調と思われましたが、そこに突如として大量の雪が降り注ぎます。
 雪原を移動中のフロゾモンが発電所を障害物とみなし、攻撃してきたのです。

 清司郎は中止を勧告するのですが、任務を妨害する者に容赦しないフロゾモンは
 ますますいきり立って攻撃を仕掛けてきました。
 発電所内の気温はみるみる低下し、満足に戦うこともできません。
 宙、ガンマモン、アンゴラモン、清司郎と次々に意識混濁へ陥ってゆきます。

 残るはたまたま離れて行動していた瑠璃と、電撃による発熱で寒さを防いでいた
 テスラジェリーモンのみ。迫るフロゾモンに、緊急タッグが立ち向かいます。
 甲斐あってフロゾモンを押し込むのですが、そこへアイスモン達が現れ
 これ以上の攻撃を止めるよう頼み込んできました。
 フロゾモンは氷雪系の彼らを伴い、より寒い地域へと移動する途中だったのです。

 アイスモンたちのこの介入をキッカケに、ようやく事を収めた一同。
 発電所は一時的に稼働停止され、フロゾモンたちは通り過ぎてゆきました。
 
 
 
 
★全体印象
 
 17話です。今回のテーマは「寒さ」。
 低温による弊害はあらゆるところに及ぶため、人類にとっては原初的な恐怖のひとつです。
 そもそも人類の歴史では「寒さの克服」も大きなファクターですからね。
 私たちが暖かな部屋で仕事や趣味に興じられるのも、この歴史の積み重ねのおかげです。

 内容としては、フロゾモンが救助を主任務とする除雪車モチーフでありながら
 自身が要救助者を作り出してしまうという本末転倒な状況になるお話です。
 それというのもコイツがあまりに頑固だったせいなのですが、それは後に譲りましょう。

 バトルの目玉は瑠璃にテスラジェリーモンという、本来パートナー同士ではない二人が
 仲間の危機に即席コンビを組んで立ち向かうところでしょう。
 進化までは無理かもしれませんが、技のサポートは可能だとハッキリしました。
 この事実は意外に大きいかもしれませんので、よく覚えておくことにします。

 脚本は十川誠志さん。9話以来はほぼ3話ごとに担当しています。
 作画面でのメインスタッフでは、新顔として鳥山冬美さんの名前が。
 主に深夜アニメを担当しているようです。守備範囲では「魔法少女まどか☆マギカ」や
 「マギアレコード」にも作監として参加していた模様。
 
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・宙組

 基本的に清司郎についてきただけの方々。
 寒さというデバフで普段通りの力を出せないどころか技サポートさえできず、
 後半はほぼ何もできていません。

 グルスガンマモンは出ましたが上記の関係でまともに戦うこともできず、
 最終的にはガンマモンの姿に戻ってしまいました。
 氷雪系でない彼やアンゴラモンでは、そこまで低音に強くないようです。

 宙に関しては、発電所の様子に目を輝かせる場面があります。
 瑠璃の言う通り、男子というのはこーゆーのにロマンを感じるものなのです。
 
 
 
・清司郎

 なんと地熱発電所のプログラムを開発し、そのメンテまで任されていると判明。
 これほどまでの実績があるとは、シリーズ始まって以来の天才かもしれません。
 ただ、システムの詳細は不明ですがこの発電所のメンテは彼にしかできない模様。
 彼が不測の事態に見舞われた場合のことは考えてあるんでしょうか……
 まあ考えてはあるんでしょうけど。天才だから。

 卓越した才能を見せつける一方、フロゾモンを刺激して事態を悪化させるなど
 そっち方面はあんまり良いところはありません。まあ仕方ない面はあるんですが……
 今回は宙もポカをやってるし、男子組はどうにも冴えない印象です。

 でも昏睡へ落ちる際の一言が、テスラジェリーモンを奮起させることになります。
 
 
 
・瑠璃

 たまたま単独行動していたため、発電所を脱出することができています。
 そのため寒さによる被害も少なく、事態を収拾するカギの片方を担いました。

 アンゴラモンたちが命に関わる危険に晒されていると悟り、弱気になる場面もありましたが
 テスラジェリーモンの叱咤激励で気魄を取り戻し、同時にフロゾモンへ相対する決意を固めます。
 結果、心が一致したためかテスラジェリーモンのサポートができるようになりました。
 本来のパートナーではない人物がこういったことをするというのは、シリーズ初だと思います。
 「テイマーズ」31話でケンタがギルモンに「お願い」してたあたりが僅かに近いでしょうか。

 
 
・ジェリーモン → テスラジェリーモン

 本来の目的が温泉だったため、序盤は浴衣を着たいなどと呑気なことを言っていました。

 しかし後半になるにつれて悪化する事態を前に遂にシリアスモードを発動、
 瑠璃をビンタという荒療治で激励して共にフロゾモンへ立ち向かいました。
 事前に進化しておいたのが奏功した形。
 さすがに成長期のままでは、攻撃力不足で押し込めなかったでしょうから。

 また、寒さにあっては自ら電気を発し、それによる熱で寒さを凌ぐ裏技を使っていました。
 全身のほとんどが水なので真っ先に参ってしまいそうなものでしたが意外や意外、
 このメンバーの中では一番寒さに強かったようです。
 もっとも電熱という都合上、他の誰かに同じ処置を施すわけにはいかないのですが。

 なんというか、彼女も土壇場でスイッチが入るタイプですね。
 伊達に清司郎のパートナーはやっていないというところでしょうか。
 
 
 
・アンゴラモン

 序盤は瑠璃と一緒に行動していたのですが、たまたま別行動を取った最中に事件が起き
 しかもコントロールルームから離れていたのが災いして清司郎への連絡が大幅に遅れ、
 事態の悪化を阻止できないという痛恨の事態に遭ってしまいます。
 これはもう、あまりにも巡り合わせが悪かったと言うしかないかも。

 瑠璃が合流できなかったため進化も技もまともに使えず戦闘ではほぼ蚊帳の外、
 宙と清司郎をなんとか暖めようとするもしまいには彼自身の毛まで凍りはじめてしまい
 もろともに行動不能へ陥るなど、今回は踏んだり蹴ったりです。
 人間である宙たちやガンマモンよりは寒さに強いですが、-25度程度が限界のようですね。
 
 
 
・フロゾモン

 アニメ初登場。
 豪雪地帯を行動範囲とし、除雪に命を懸けるマシーン型の完全体デジモンです。

 本来は救助を得意とするはずなのですが、任務の邪魔となるものはたとえ誰であろうと
 一切の容赦をしないという、矛盾に満ちた側面を兼ね備えているとされます。

 今回はその頑固一徹な性格の悪い面が強調されてしまっており、発電所を障害物とみなして
 徹底排除してから先に進もうとするその執拗な行動は最たるもの。
 どう考えてもルートを一時変更して避ける方が早いし余計な労力もいらないと思うのですが、
 このデジモンの頭にはそういう柔軟さというものが決定的に欠けているようです。

 結果として発電所内の気温はマイナス20度以下に下がり宙、ガンマモン、アンゴラモン、
 それに清司郎が凍死の危機に晒されてしまいます。
 思い切って停止を勧告した瑠璃も、危うくそのヒートソードの餌食になるところでした。
 寒さに強いテスラジェリーモンがいなかったら全滅の危険さえあったでしょう。

 バトルにおいては持ち前のパワーをいかんなく発揮し、力勝負では厳しい相手です。
 しかし素早いインファイトを得意とするテスラジェリーモンのようなタイプは苦手なのか、
 懐に入られて一方的にダウンを奪われる場面もありました。
 「フィサリスト」は電撃技なので、マシーン型である彼にはよく効くでしょうし。
 まあダウンしただけで、大きなダメージを受けたというわけでもなかったようですが。

 アイスモンたちの介入と瑠璃の懇願でやっと「要救助者」が出ていることを理解し
 その場は収まったのですけれど、またどこかで同じことをしそうでヒジョーに心配ですね。
 コイツら野放しにしといて大丈夫なんでしょうか??? 悪意がないぶん余計やっかいですぞ。

 中の人は小山力也さん。「アプリモンスターズ」のダンテモン以来となる出演です。
 そのダンテモンに比べ「頑固一徹の仕事人」という役柄は声質と割に合っていたかも。
 
 
 
・デジモンたち

 瑠璃とテスラジェリーモンからフロゾモンを庇った氷雪系デジモンたち。
 アイスモンを代表にするような形でペンモン、ユキダルモン、スワンモンが確認できます。
 ユキダルモンに関しては大きさに個体差がありました。親子、ってわけじゃないのかもですが。

 春が近づいて気温が上がってきたため、より寒いところを目指して移動中だったそうです。
 たぶんフロゾモンが先行して、ルートを確保していたのでしょう。
 熱に弱いであろう彼らのため、熱源を徹底的に排除していたと推測できます。
 発電所に至るまでどんだけのトラブルを巻き起こしたのか、ちょっと想像したくない。

 瑠璃とテスラジェリーモンにとっては振り上げた拳の落としどころを失った形ですが、
 これで彼女たちもいったん頭が冷えて宙たちの救助を優先する思考へ至っています。
 結果的には互いにとって最善の結果になんとか収まった、ってところでしょうか。
 
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「元はと言えば…誰のせいでこうなった…!?」(清司郎)
 
 序盤、および後半のセリフ。
 指摘されていた通り、直接的には彼がフロゾモンをよけいに刺激したせいですが
 正直、これについて彼を責めるのはあまりに酷という気がします。

 結果的に発電所を一時とはいえ止めることになってしまったわけだし、
 むしろ一番の被害者ってやつじゃないでしょーか……
 たまたま全員で来てたからこのレベルの被害で済んだ、と言えそうなのがまた。
 
 
「だってヒガッチ言ったのよ?
 発電所に一人で行って行って凍死したらどうするんだ! みんな一緒についてきてくれ! って。
 着いたとたんに演説って……」(瑠璃)

 
 アンゴラモンと二人で廊下を歩きながら。完全に呆れています。
 とはいえ、当の清司郎さえまさか本当にこんな事態になるとは思っていなかったでしょう。
 ある意味、そのビビり癖が幸いしたとさえ言えます。
 
 
「熱源の徹底排除、開始…!」(フロゾモン)
 
 発電所の目前に到達して。最初から「熱源の排除」と明言していることがわかります。
 アイスモンたちの安全確保のため、熱を発するものは片っ端から取り除いていたわけです。
 吸い込んだ雪を放射する際には何やらデジタルエフェクトが掛かっていたところをみると、
 やはりただの雪というわけではなかった感じですね。
 
 
「知らせる方法がなかったんだ……」(アンゴラモン)
 
 清司郎に「どうして早く教えてくれなかったんだ」と言われて。
 ただひとり、フロゾモンの性格を知っていたのがアンゴラモンだったのですが
 その彼がコントロールルームにいなかったのは痛すぎる状況でした。
 下手したら致命打になっていたところです。
 
 
「清司郎はやっぱり清司郎だな……」(ベテルガンマモン)
 
 知らぬこととはいえ、フロゾモンへ頭ごなしに軽く10回は中止勧告をした清司郎を評して。
 なんか彼、もしかして清司郎はディスって構わない対象だと思いはじめてません??
 
 
「オレたちを凍えさせるような攻撃をするヤツが、ヒートソードだと!?」(ベテルガンマモン)
 
 左腕のヒートソードを使ったフロゾモンに。やっぱり進化すると喋りが流暢になりますね。
 除雪機モチーフであるフロゾモンは本来「雪をなくす」ことを得意としているわけで、
 雪を故意に対象へぶつけて熱を下げるというのはあくまで能力の応用です。
 だからヒートソードも自分で言っている通り除雪用なので、矛盾はしていません。
 
 
「みんな、無事なの……?」(瑠璃)
 
 発電所の外でただひとり、アンゴラモンたちの身を案じて。
 このとき連絡も考えていましたが、結局は断念しています。
 少し前、何も知らない宙たちの連絡でフェレスモンにバレたことを思い出したのかも。
 事態のヤバさを少しは把握している以上、迂闊なことはできなかったんでしょうね。
 
 
「そう…そうでしたか、よかった……
 テスラジェリーモン様……月夜野さんだけでも…助け……」(清司郎)

 
 テスラジェリーモンが電気で体を暖め、活動を保っていることを知って。
 自身より、まだ助かる可能性の高い瑠璃を託すようなこの発言が
 テスラジェリーモンの心に火をつけることになります。
 
 
「ウチらしかいないもんは、いないんだってば!」(テスラジェリーモン)
 
 アンゴラモン達が命の危険にあると知って、動揺を激しくした瑠璃に。
 直前に飛んできたビンタを含め、これが瑠璃の心にも火を灯します。
 かくしてデジモンシリーズ初、緊急パートナーが爆誕しました。
 
 
「今日のウチらはマジ止めらんないよ!」(テスラジェリーモン)
「そうっ…マジなんだからっ!」(瑠璃)

 
 格上のはずのフロゾモンからダウンを奪って。確かに気魄が違います。
 もっとも直後にアイスモン達が割って入るので、バトルはここまで。
 フロゾモンも二人も、いったん頭を冷やすことになります。
 
 
「真の職人たるもの、言葉少のうしてよく仕事す。
 無言は時に迷惑なれど、職人の鑑たるもまた真なり」(アンゴラモン)

 
 恒例のアンゴラポエムです。
 今回の場合、迷惑なんてレベルじゃなかった気がしますが……
 こいつはまさに大迷惑。
 
 
 
★次回予告

 ピーターモン登場。
 設定的に扱いづらいためこれまで未登場でしたが、ついに日の目を見ました。
 本作の作風にはこれ以上ないぐらいピッタリですしね。
 和解エンドも全然あり得る手合いだと個人的には思ってます。