占イノ館
脚本:山口宏 絵コンテ:えんとうてつや 演出:野呂彩芳
作画監督:北野幸広/仁井宏隆/冨田恵里沙/浅沼昭弘/
W.H.Cho/E.K.Cho/S.H.Park
総作画監督:石橋大輔/金久保典江
★あらすじ
百発百中の的中率を誇るという流しの占い館、Mephisto(メフィスト)。
しかし、どこに現れるのかは謎とされていました。
ミカに頼まれた瑠璃は、この「メフィスト」を一緒に探しはじめます。
その頃、ジェリーモンがリサイクルショップで異様な石像を発見していました。
恐怖に歪む表情の奥に隠れたその実体は、生身の人間だったのです。
何が起こっているのか。デジモンとの関連を疑う宙と清司郎は、調査を開始します。
やがて、ついに「メフィスト」を発見する瑠璃たち。
が、アンゴラモンによればどうも中の様子がおかしいとのこと。
不審に感じて裏から入り込んだ瑠璃は、そこで無数の石像を目撃します。
いずれも恐怖の表情を浮かべたそれらは、ジェリーモンが見つけたものと同質。
すべては、人間世界への侵蝕を狙うフェレスモンの企みでした。
「メフィスト」の辿った範囲の内側が、そのための足場になるというのです。
占いの館を開いて人々を誘き寄せたのは、幻覚などを見せて客を恐怖させ
喜びの感情を部下に与え、その実体化を早めるためでした。
一時は逃れる瑠璃たちでしたが、ブギーモン達の執拗な追撃が。
瑠璃は意を決し、デジヴァイスVの機能をアオイとミカの目の前で使用。
デジモン達を擬似デジタルフィールドに隔離します。
彼女の行動は、アンゴラモンが瑠璃を信じて期待したそのものでした。
その信頼が、アンゴラモンを成熟期・ジンバーアンゴラモンへと導きます。
ジンバーアンゴラモンのスピード技により、ブギーモンは難なく撃退。
しかし、完全体であるフェレスモンはさすがに強敵でした。
事態を悟った宙たちも加勢しますが、それでも及びません。
しかし無用な消耗を嫌ったフェレスモンは人々の石化を解き、姿を眩まします。
事態の沈静化を受け、瑠璃の無事を喜ぶアオイとミカ。
二人は瑠璃の事情を察し、話してくれるまで待つことを選ぶのでした。
★全体印象
15話です。今回のモチーフは「占い」。
…なのですが、占いそのものは話のメインではありません。
というか占いは今回の敵、フェレスモンの企みのための偽装みたいなものです。
占いがお話に絡んでくる類のエピソード、というわけではないんですね。
これはちょっと勿体無いかも。
とはいえ、フェレスモン一派は悪意あるデジモンたちの中でもガチ度が違います。
加えてブギーモンはともかく、頭目はメイン三体でも倒せないほどの強さ。
引き際というものも弁えすぎており、厄介な連中が野放しになったと言えます。
こうして、少しずつヤバい連中が表舞台に顔を晒してゆくのでしょうか。
そんなヤバい連中を相手に、アンゴラモンがとうとう進化を遂げました。
鍵となったのは互いの信頼です。11話がちゃんと布石として働いてますね。
今回は雑魚散らしのみで本命は決め手を取れませんでしたが、まだこれからでしょう。
アオイとミカができた友人だったので、後味も良好でした。
脚本は山口宏さん。前の担当は百鬼夜行回ですが、印象はアレよりだいぶ良いです。
絵コンテには新顔として、えんどうてつやさんの名前が。
デジモンファンならご存知、「クロスウォーズ」のSDを務めてらした方です。
ただし二期までであり、三期にあたる「時をかける少年ハンターたち」には不参加。
三期にはフェレスモンが出てるんですが、そこには関わってなかったりします。
なんだかんだ、歴代に関わってたスタッフがちょくちょく顔を出しますね。
そのうち貝澤監督も登板してきたりして……
★キャラなど個別印象
・宙組
今回はほぼ全面的に瑠璃組がメインなので脇に回ってます。
バトルに参加したのも清司郎組と並んでほ滑り込みセーフ状態。
印象的なセリフも少ないです。
ベテルガンマモンは最多登場をマークしてますが、戦績は言わずもがな。
でも、それはグルスガンマモンとの対比のためでもあったのかもしれません。
・瑠璃
実は、今回はアンゴラモンとの間柄はそれほど強調されていません。
それより親友であるアオイとミカとの仲の方が印象的なほどです。
これは上に書いた通り、11話で今回へ至るための下準備をしているからなんですね。
今回の状況が状況だけに、クッションを置いておく必要もあったことでしょう。
アンゴラモンの信頼に応え、覚悟をもって擬似デジタルフィールドを展開し
ブギーモンたちを引きつける場面はハイライトのひとつ。
あっさり叶ったように見えますが、信頼を積み重ねてきた結果ということですから
彼女たちならではの進化になっているように思います。
アオイとミカには頼りにされていることや、頼りにされるのが好きなこと、
一度決めたら簡単には引き下がらない側面も改めて描かれています。
顔の広さを活かした自身のアンテナ範囲に自信と自負があったとも言えましょう。
・アンゴラモン
今回でようやく進化を遂げました。
登場が2話ラストと順当な割に、15話まで成熟期進化がズレ込むというのは
デジモンアニメ史において類例のないことです。
:で進化を序盤に詰め込みすぎた反省…ではないんだろうな。
これは、もともとアンゴラモンが格上ともある程度戦えるぐらいには強く
知性も高い機転のきくタイプだったことと無関係ではないと思います。
本作において実際、本気になった彼に勝てる成長期はほとんどいないでしょう。
(ルーチェモンみたいな規格外は別としても)
また彼の場合、瑠璃のそばにいる動機や戦いを好まない性格が進化を遅らせていた、
と考えることもできます。逆に言えば、11話の時点で一定の条件は整っていた。
あとは、今回のような状況と互いの心理的トリガーが必要だったわけです。
もっともグルスガンマモンとの戦いを経て、いざという時瑠璃を守るために
より強い力を求めていた面もありそうではあるんですが。
・ジンバーアンゴラモン
アンゴラモンが進化を遂げた成熟期。
進化前とは打って変わってスリムな形態となり、スピード殺法が得意。
瞳が露出したのも特筆点で、印象がガラッと異なります。セリフも強気。
瑠璃としては普段のモフモフもお気に入りっぽく見えますが。
バトルでは、得意技「レントライザー」でブギーモンらの武器を微塵切りした上
一方的にぶっ飛ばすという、圧倒的強さを発揮しています。
ブギーモンは成熟期ですから、それを瞬殺できるということは
段違いにパワーアップしたというひとつの証左になるでしょう。
ザコ散らしといっても、そのザコのレベルが違うわけです。
フェレスモンには必殺技「ブレイキンストリーム」で対応していましたが
相手が完全体とあっては押されるのもやむを得ないところでしょう。
少なくとも、今までのアンゴラモンでは持ち堪えることさえ難しかったはず。
空気を操る技なので敵の技との相性が良かった、とも取れますが。
結果的にはベテルガンマモンらとの同時攻撃で互角へと持ち込み、
フェレスモンに撤退の判断をさせるという成果を挙げています。
向こうが面倒がったというのもあるんでしょうけど。
・清司郎組
こちらも基本的には脇ですが、ジェリーモンが事件の発端を掴み
調査のキッカケを作るという重要な役割を担っています。
また今回をもって、初めてメイン格の成熟期が勢揃いしました。
ここから上があるとしたら登場はいつになるでしょう。
一年なら2クール目が終わるまでには出ないと間に合わない気がしますが。
・アオイ、ミカ
瑠璃がいつもつるんでいる二人の親友。
宙たちと行動しているとき以外では毎回のように一緒にいるので、
よほど気が合うと考えるのが自然でしょう。
そのぶん瑠璃のことは信頼しているし、デジモン事件絡みでの果敢な行動も
たびたび目撃しているため、何かしら薄々と察してはいたのかもしれません。
だからこそなのか「自分たちを守ってくれた」という事実を最上位に置いていました。
二人のこの行動が、瑠璃にとってどれほど励みになったことか。
いずれ、彼女たちもより踏み込んだ形でデジモンたちのことを知るのでしょうか。
そのときどんな反応を見せるかに関しては、ある程度以上の安心感を得られましたね。
・ブギーモン
フェレスモンの部下。
占い館に複数が潜み、客として訪れた被害者に幻覚を見せて恐怖を与え、
恐慌するさまを見て得た愉悦の感情で実体化を早めるというド外道どもです。
もっとも、このやり方を発案したのはフェレスモンなのでしょうけど。
彼らが実体化してゆくことが、そのフェレスモンの計画であった人間界への
デジタルワールド侵蝕のために必要らしいということなのですが、
この二つの要素のハッキリした関連性は不明です。
人間の世界に軸足を移したデジモンが多ければ多いほど良い、とか?
デジモンとしての設定は不意打ちが得意、携えたフォーク型の槍が主武器、と
幻覚を見せる能力はないのですが、これは名前の由来であろうと思われる
「ブギーマン」からの発想でしょうか。
ブギーマンは特定の姿を持たないとも聞くので、幻覚の中にピコデビモンなど
全く違うデジモンが現れたのもその一端かもしれません。
・フェレスモン
占い館「メフィスト」の主人にして、ブギーモンたちを取りまとめるボス。
「メフィスト」だから「フェレス」というわけですね。
:でメフィスモンが登場しているのでこちらを採用したところもありそうですが、
雰囲気的には確かにこっちの方が合ってました。
すでに実体化を終えており、そのため占い師として人間の前に姿を表しています。
人間に近い姿ですが、その人外そのものな顔だけは誤魔化すことができないのか
いつも帽子を目深にかぶり、正体を晒すときにしか視線は見せません。
ブギーモンたちを使って「客」に恐怖を与え、その際の歪んだ表情のまま
石に変えてコレクションするという、極めてタチの悪い趣味を持ち合わせています。
「クロスウォーズ」に出演した際も同様に石化能力を発揮していましたが、
こちらの石化はさまざまな意味でより印象に残るように仕上げられています。
気に入らないとリサイクルショップに捨ててしまうという身勝手さも含めて。
余裕綽々の態度に違わず、その実力はかなりのもの。
ベテルガンマモン、テスラジェリーモン、そしてジンバーアンゴラモンと
三体が揃って必殺技を繰り出してもダメージらしいダメージは受けていませんでした。
目的を優先しリスクは避ける姿勢も、かえって手強さに繋がっています。
中の人は置鮎龍太郎さん。
勇者ロボから豪傑、果てはウサミミ仮面まで、かつても今もイケメンの代名詞ですが
「One Piece」では亡くなった石塚運昇さんの後を継いで黄猿を担当しており、
しかも違和感がなくてファンを驚かせた経緯があります。私も驚きました。
デジモンシリーズではロードナイトモンに始まり、デビモンやグレイドモンなど
やはりイケメンオーラのある個体を演じてますが、今回はこれらと少し違い
紳士的な中にも狂気を孕んだ演技となってます。もちろん聞き応えは満点。
集団であることも鑑みれば、彼らはドラクモンが可愛く見えるほど危険な手合いです。
デジタルワールドの侵蝕という概念が後に活かされるものかどうかは不透明ですが、
いずれ決着をつけなければならないでしょう。
・モブの皆さん
モブと言えるのかはわかりませんが上記の通り、幻覚としてファングモンと
ピコデビモンが登場しています。見せてたのがブギーモンかどうかはハッキリしませんが
彼ら自身が幻覚の中でああいう姿を取ってるのでしょうか。
その他、宙たちが情報収集をする場面でドクネモンが登場しています。
このデジモン、やや物騒な名前の割に敵としてはあまり出てきませんね。
★名(迷)セリフ
「これでェ…すべての悩みが消え去りました。
願いが、叶いましたねェ……」(フェレスモン)
ゆったりとした、というよりは絡み付くような節回し。
同じ悪魔系のデビモンと、あとは黄猿の中間ぐらいの声ですな。
「え? ……そりゃ、いろいろと……」(ミカ)
「メフィスト」を見つけて何を占ってほしいのか、と聞かれて。
だいたい察しはつきますが言わぬが華、というやつでしょう。
瑠璃も突っ込んでは訊いていません。
……さすがにこの件、伏線じゃないですよね?
「これ、もとは人間さぁぁぁ!?」(ジェリーモン)
リサイクルショップで見つけた「石像」に「触れて」みて。
この際、実体化を切ってる状態だったんで手が内側にすり抜けたわけですが、
もしかして生暖かくて肉っぽい感触でもしたんでしょーか……
「惜しいな…もう少し歪むかと思ったが。
捨てておけ」(フェレスモン)
劇中ふたり目の犠牲者であるメガネ子さんの、石化の瞬間の表情を覗き見て。
どうやら表情が気に入らないと、コレクションに加える価値なしとみなすようです。
すててこい 俺の求める北斗神拳はまだ遠い! ですね(全然違う)。
悪趣味な上に身勝手ですが、壊してしまわないだけこれでもマシという……
「やーれやれだな、キヨ」(ガンマモン)
リサイクルショップへの道中でまでビビり倒していた清司郎に。
ジェリーモンの後に続いてのセリフですが、徐々に語彙が増えているような……
「瑠璃…! キミならきっと、こうすると思っていたよ!」(アンゴラモン)
擬似デジタルフィールドを展開し、周囲のデジモンをまとめて隔離した瑠璃に。
彼女なら、いざとなればこの手でアオイとミカを守ることができること、
そしてたとえ後でどんな結果を招こうと恐れずに実行すると信じていたのです。
それができる子だということを、ずっと見てきて確信していたから。
瑠璃も同じく、アンゴラモンなら同じ判断をしたと考えていました。
互いの信頼が正しく重なったのだと悟った瞬間、進化が導き出されました。
「ククク…石像は人間に戻った。
占ってあげられなかった詫びだよ」(フェレスモン)
一戦を交えたあと撤退を選び、瑠璃に呼び止められての去りしなに。
主役級成熟期三体が相手でも余裕を崩さない感全体の名に恥じぬ強さ、目先の勝利よりも
自分たちの目的を優先する側面など、本作の作風に沿った行動ではありますが
今回については割と大物感を出すことに成功しているように見えます。
占いができなかった代価を払う形になっているあたりもなんか悪魔っぽい。
結局、コレクションとやらも彼にとっては一時の戯れにすぎず
故あればあっさり手放してしまえる程度のものだったのかもしれません。
「あいつらを、瑠璃が引きつけてくれたんだよね? …心配したんだよ」(アオイ)
「無事でよかった〜」(ミカ)
どこに行っていたか言い淀みつつ、ワケを話そうとした瑠璃に。やり取りなど一部略。
何か秘密があると確信しながらも何も聞かず、ただ無事を喜んでいました。
ラスト手前の二人での会話からみて、示し合わす前に自然にそう決めていたように見えます。
ブギーモンたち悪意の者も、アンゴラモンも人間にとっては同じモンスターであり
彼だけでなく、それらと関わりを持っている自分がどんな目で見られるかわからない。
そう危惧していた瑠璃にとって、二人の反応は大きな救いになってくれたはずです。
「案ずるより生むは安く、人間万事めでたしが馬… ふふ」(アンゴラモン)
今回のアンゴラポエムです。
アオイとミカが受け入れてくれたことを、彼なりに総括したセリフでもありますね。
★次回予告
次回は森が舞台。
太古の昔から恵みと共に謎と神秘、そして恐怖と怪異の塊だった場所です。
デジタル機器とは無関係に見えますが、さてどんな経緯で展開してゆくのか。
ラストカットの手前にいるのはモリシェルモンでしょうか?
もしやアニメ初登場…?