座敷童

脚本:森地夏美 演出:角銅博之
作画監督:北野幸広/Noel_Añonuevo/Eugene_Ayson
総作画監督:浅沼昭弘

★あらすじ

 清司郎の学会に便乗する格好で、とあるリゾート地にやってきた宙たち。
 宙はボコモンのことで元気のないガンマモンを元気づけようとしていましたが、
 本人は「死」というものについて呑み込みきれない様子でした。

 そんな折、最近宿に現れたという「座敷童」が出没を繰り返します。
 清司郎が宙たちに同行を頼んだのは、この座敷童の存在を恐れてのことです。
 しかも、そのイタズラは少しずつエスカレートしていました。

 その正体がデジモンであることを看破した宙たちは誘い出しを仕掛け、
 実力行使に訴えながらもそのデジモン──コエモンに話を聞くことができました。
 コエモンは人間界に迷い込んだ際、ただひとり優しく接してくれた仲居のお婆さんが
 突然いなくなったため、彼女が現れるのではないかとイタズラを繰り返していたのです。

 事情を知った宙はガンマモンに頼み、ベテルガンマモン達の力を応用して
 コエモンがお婆さんと一緒に見たがっていた花火を見せてあげました。
 ガンマモンも、ボコモンがもういないことを受け入れつつあるようです。

 一連のさなか、宙の父である北斗から新たなDimカードが届いています。
 これまでとはまた別種の擬似デジタルフィールドが展開できるようなのですが、
 言いたいことしか言わない北斗(のホログラム記録)からは情報を得られないままでした。
 果たして北斗は、デジタルワールドで何をやっているのでしょう?
 
 
 
 
★全体印象
 
 14話です。

 のっけからシリアスだった前回とは打って変わり、箸休め気味の回です。
 話数が多いとこういう話を入れ込みやすいのが利点でしょうね。
 詰め込みすぎて4クールあっても全然足りないケースもありますが……

 本格的な戦闘も全然ないため、本作としては異色エピソードといえます。
 シリーズ全体で見るとまったく戦闘のない回(02の23話など)もあるので
 それほど異色というわけではないのですけれど。
 ただ、恐怖演出はコエモンの声とあいまってかなり良かったと思います。

 難点があるとすれば完全に「妖怪もの」のセオリーで作られたお話になっていて
 デジモンでやるなりのプラスアルファが特に見当たらないことでしょうか。
 今までもその傾向はありましたが、今回は特に顕著だったと思います。

 こういうのをデジモンでやること自体に意義がある、のかもしれませんが。
 まあ二度は使えないネタですからね……

 脚本は森地夏美さん。「鳥」の人ですね。
 あちらに比べたら試聴後感は良いし、ニュアンスも伝わりやすかったと思います。
 演出は7話以来となる角銅さん。現状は本作と「ダイの大冒険」を担当でしょうか。
 「トロピカル~ジュ!プリキュア」にも参加してましたが、前作にあたる
 「ヒーリングっど♥プリキュア」に比べ軸足が明らかに変わっていきましたね。
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・宙

 落ち込み気味のガンマモンをなにかと気遣っていました。
 その様子はパートナーというより、兄と表現するのが近いかもしれません。
 清司郎の誘いを受けたのもガンマモンの気晴らしができれば、と思ってのことでしょうし。
 コエモンへの態度がいつにも増して柔らかかったのもその影響でしょうか。

 その一方で「グルスガンマモンと話ができれば何かわかるかも」と零したり
 瑠璃や清司郎たちに比べてあの姿をそこまで恐れていないことも強調されています。
 やはり少しズレているというか、ぶっ飛んだところがありますね彼。
 喋れるんなら話し合いぐらいできるだろう、と信じているのかもしれないとはいえ。
 
 
 
・ガンマモン → ベテルガンマモン

 表面上はいつもと同じなのですが、やはり精神的ダメージは残っているようでした。
 そのため、前半まではボコモンが「死んだ」ことを受け入れきれずにいます。
 あまりに突然だったあの事態から心を守ろうという、本能的情動なのでしょう。

 それが宙たちの「ボコモンは長い旅に出た」という婉曲された表現を聞き、
 後半でコエモン絡みの騒動を通して外から自分の境遇や気持ちと照らし合わせ、
 「ボコモンは旅に出た」けれどコエモンのばあばとは違って「もう会うことはない」
 という事実を受け入れたように見えます。名言はされてませんが。

 今後もボコモンのことは、しばしば思い出すことでしょう。
 けれどそのたびに、彼はあんなことを繰り返してはいけないと決意を強めてゆき
 より強いハッキリした動機で事件へ臨むようになっていくのかもしれません。

 アクション担当でもありましたが、瑠璃に危険が及びそうなのを阻止したのみ。
 進化もあくまで花火を見せるためで、戦闘はいっさい行っていません。
 グルスガンマモンがおいそれと出てくる形態じゃないことも改めてハッキリしました。

 まあ、ああいうタイプが気軽にホイホイ現れるとも思えません。
 または、よほどのことがないと出てこられないようになっているのかも……? 
 
 
 
・瑠璃組

 基本的にそれほど特筆すべきことはしていません。
 瑠璃については、コエモンを誘き出す囮役をやってますが経緯の説明はなし。
 適任者が彼女しかいないのでは仕方なしでしょうか。
 
 
 
・清司郎組

 三人の中では清司郎がいちばんグルスガンマモンを恐れていました。
 なるべく腫れ物扱いしないようにしてるだけでも偉いんですけれど。
 ガンマモンの様子を見ては、気遣いが先に立つのも無理はないかもしれませんね。

 今回ばかりは、ジェリーモンも空気を読んで少しおとなしめでした。
 まあパートナーデジモンたち同士は普段それほど絡まないんですが。
 
 
 
・バクモン

 あれから宙の家に移っているようです。
 昼は図書館に出かけ、夜もあまり会ってはいないとのことらしいですが。

 彼としても、宙の生活に影響が出にくいようにしているのでしょう。
 かつ何かをし続けることで気を紛らわせ、ショックが和らぐのを待っているのでしょうね。
 それだけじゃないかもしれないけど。
 
 
 
・コエモン

 「リゾートなごみ」でイタズラを繰り返していた成長期のデジモン。
 もともとはPS(第一世代)のゲーム「デジモンワールド3」で初登場した存在です。

 同作では主役待遇という破格の扱いだったんですが以後は出番に恵まれず、
 「同期」のベアモンやコテモンが早い段階で映像への本格デビューを果たしたのに対し
 長いこと「出ててもモブ」状態に甘んじていました。
 今回このような役をもらえたのは、それだけで僥倖ってものだと思います。

 人間の世界に迷い込んだ際、たまたまこの場所に辿り着いたのですが誰にも認識されず
 寂しがっていたところを、年配の仲居さんが見かねて構うようになったそうです。
 本編終盤まで実体化していないんですが、ばあばには「いる」とわかったようですね。
 デジヴァイスがないわけだし、姿が見えたわけじゃないのかもしれないけど。

 以後、この老婦人を「ばあば」と慕って遊んでもらうようになります。
 が、彼女が突然息子のところへ戻ってしまった(理由は不明)事実を認識しきれず
 誰かお客が来るたびに「ばあばではないか」と接触をはかっていたようです。
 次第にイタズラがエスカレートしたのは、苛立ちからでしょうか。

 現れる際に恐怖を煽っていた鞠は「ばあば」との触れ合いで愛用していたもの。
 最初にこれを投げることが多いのは、反応を見るためなのですかね。
 何も知らない人間にとっては、恐ろしい何かにしか見えないのでしょうけど。

 最終的には鞠の下に置かれていた手紙から事情を悟り、もっと広い見聞を得るために
 「リゾートなごみ」を出て旅へ出る決心を固めます。
 彼の境遇はガンマモンにも影響を与え、ボコモンの死を受け入れる助けとなりました。

 中の人は津村まことさん。なんと「デジモンテイマーズ」の主人公、松田タカトの人です。
 今となっては「サザエさん」のワカメ役という方が通りがいいかもしれませんが。
 この方、鉄腕アトムの役も引き継いでるスゴい声優さんなんですよね。
 純朴ながらもまっすぐさと芯の強さを連想させる声質の賜物でしょうか。

 
 
・ブラックテイルモン Uver.

 なぜか「ウーバーテイルモン」という名前だとばかり認識していたんですが、
 こちらが正式名称のようです。ブラックテイルモンの亜種なのですね。

 なんの前触れもなく宙たちの部屋に訪れ、新たなDimカードを届けてきました。
 どうやって宙たちの居場所を特定したのかは不明です。
 しかも寮の部屋ですらなく、出先の宿の一室ですよ。

 届け先の人物がどこにいようと場所特定できる能力でもあるんでしょうか?
 まあ、曖昧にしといた方がおもしろい要素ではありますが。
 
 
・北斗

 Dimカードを通し、ホログラムとして1クールぶりの再登場。

 デジタルワールドの環境を写真のように切り取り、擬似デジタルフィールドとして
 Dimカードに封入していることが発覚しました。
 環境を構築するプログラム、と表現した方が近いかもしれないけど。

 しかしそれ以外はとりとめのない話ばかりで、ガンマモンについての情報などは
 まるっきり追加情報をくれません。瑠璃の言う通り、ほとんど単なる自慢話です。
 なんだか私までだんだん腹が立ってきました。なんなんだこの親父は。

 …それとも、何か意図があって余計なことを喋らないようにしている…?
 ブラックテイルモンUver.とはどの程度つながってるのでしょう。
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「ガンマモン、海だぞ〜」(宙)
「お〜…」(ガンマモン)

 
 海は初めてでしょうに、はしゃぐどころかこの生返事。
 心が防御態勢から抜け出ていないと、刺激も弱くなってしまうのですよね。
 
 
「おー! これ、ボコモンにも持ってくぞ!」(ガンマモン)
 
 宙に饅頭を食べさせてもらって。
 こんな状態でも美味しいものは喜びをくれるのですが、ボコモンがもういないことを
 理解できていないような口ぶりです。この時点ではまだ咀嚼しきれていないのですね。

 これに対し宙は「ボコモンは長い旅に出た」とひとまず説明しています。
 子供に対して死を遠回しに伝えるやり方そのままですね。
 
 
「あそぼ……」(コエモン)
 
 「リゾートなごみ」に出没していた際の主なセリフ。
 津村さんの純朴な声が逆に恐怖に直結する演出が幾度も重ねられています。
 実際には話してみれば別に怖がる必要はない相手だったのですが。
 電子機器や電灯が異常を起こすのは、無意識のうちに周囲へ影響を与えるせいでしょうか。

 そこから考えると、教授の腕が掴まれてアザになったのも心霊的なアレではなく
 人間より力が強いことで単に加減がうまくいかなかったのかもしれませんね。
 
 
「もう一度グルスガンマモンに会えば、何かわかるのかな……」(宙)
 
 北斗パパからのDimカードでは大した情報を得られなかったことを受けて。
 なにも本気で言ったわけじゃないのでしょうが、一緒にいたアンゴラモンと清司郎は
 敏感に反応していました。特に清司郎の反応は顕著です。

 彼らや瑠璃たちに比べ、宙は警戒してないわけじゃないまでも
 グルスガンマモンのことを「怪物」として恐れてはいないように見えます。
 「ガンマモンの中の一筋縄ではいかない別側面」と看做してる感じ。

 なかなかできることではありません。というよりは、やはり少しズレているのかも。
 ある意味この父にしてこの息子あり、なのかもしれません。
 
 
「風呂上がりに同じパンツを履くなんて、もぉ最悪だよ!」(清司郎)
 
 脱衣所をコエモンに荒らされ、パンツを持っていかれた際の反応。
 潔癖な性格が伝わってくるセリフですが気持ちは分からんでもない。
 
 
「おまえ、ばあばじゃない…!」(コエモン)
 
 囮役になった瑠璃の反応を受けて。
 イタズラの性質が悪くなりはじめた矢先のことで、苛立ちも感じられます。
 この段階ではわかりませんでしたが、ほんとうは泣いていました。

 放っておいたら、抜き差しならない事態へ陥っていたかも…?
 
 
「キシシ。せっかくだし、ミーも手伝ってやるさ」(ジェリーモン)
 
 コエモンの事情を聞き、彼を元気付けるため花火を見せているさなかに。
 投げ上げられたミスチバスフープの中央にベテルガンマモンのソルショットを当て、
 破裂することで擬似的に花火を作っていたわけですが、
 ここにビビサンダーが加わることでよりバリエーションが増えています。
 いまさらですが、彼女もいいところありますね。
 
 
「おいら、旅に出る!」(コエモン)
 
 即席花火を堪能し、宿の外にはたくさんのデジモンたちが来ていると知って。
 このセリフと同時に実体化を遂げています。ある種の心残りが解消され、
 気持ちが満たされたためなのでしょう。
 
 
「巡る縁は味なもの。
 最初の一歩は小さきもの。明るい未来に旅はつきもの……だね」(アンゴラモン)

 
 今回のアンゴラポエム。いつになく韻の踏み方が顕著です。
 瑠璃の「なにそれ」も妙にバリエーションが出てきました。
 
 
「ボコモンも……
 旅に出たんだな!」(ガンマモン)

 
 北斗パパの旅、コエモンの旅、そしていなくなったばあば。
 ばあばは宿から去っただけだし、北斗パパもコエモンもここではないどこかに行っただけ。
 だけど、決して会えないほど遠くにいるわけではない。

 はるかな国から、はるかな国まで。
 ボコモンは違う。もう会えないほどの遠くへ、はるか遠くへ旅に出た──
 そういうふうに受け入れたのだと、わずかな沈黙が語ってくれたように感じました。

 なおこの後、清司郎のパンツが余韻をぶち壊します(笑)
 
 
 
★次回予告

 次回のテーマは「占い」。
 そして、どうやら今度の相手はフェレスモンのようです。10年ぶりですね。
 中の人は誰になるでしょう。最近の傾向からして、前の担当からは外してくるかも。