処刑人

脚本:十川誠志 絵コンテ:八島善孝 演出:中村明博
作画監督:仲條久美/仁井宏隆/In_Tae_Sun/Lee_Bung_Suk/Jo_Un_Kyug
総作画監督:二階堂渥志

★あらすじ

 デジモン達が何者かに次々と暗殺されるという、恐ろしい事件が発生。
 バクモンによれば、デジタルワールドで都市伝説に伝わる「処刑人」だといいます。
 いずれ自分たちに危害が及ぶ可能性を鑑み、宙たちはこれを迎え撃つことに。
 そんな中、宙はデジモンにも死が存在することに動揺を隠せずいました。

 作戦は、単独で出歩いているジェリーモンを囮にするような形で急遽はじまります。
 相手の正体が暗殺を特技とするシールズドラモンであることは判明したものの、
 移動しながら急所めがけてナイフを投げてくるこの敵を捉えることができません。
 
 そしてガンマモンにまで必殺の刃が迫ったとき、彼を身を挺して庇った者がいました。
 ボコモンです。一同が愕然と見守る中、その体は粒子となって消え去りました。
 ──死んだのです。

 懐いていたボコモンの死を認識したとき、ガンマモンに異変が起こります。
 宙の意志を離れて勝手に進化を遂げ、黒い姿であるグルスガンマモンに変わったのです。
 その威容も言動も、何もかもがガンマモンとはまるで別の存在のようでした。

 シールズドラモンを容易く葬り、デジタル空間の外に出ようとするグルスガンマモン。
 これを止めようとするテスラジェリーモンとアンゴラモンでしたが、
 桁違いの力を備えたグルスガンマモンにはまったく歯が立ちません。
 その魔手は、ついに仲間であるはずの宙たちにまで伸びようとします。

 しかしその刹那、グルスガンマモンはとつぜん力を失ったように地へ落ちました。
 後には自分が何をしたのかさえわからないまま、ボコモンの死に泣きじゃくる
 ガンマモンの姿が残されていただけ。宙たちはまさしく九死に一生を得たのです。

 グルスガンマモンとは何なのか。なぜ別人格のようなものが顕れたのか──
 謎と犠牲を残したまま、事件は幕を下ろすのでした。
 
 
 
 
★全体印象
 
 13話です。2022年最初のゴーストゲームにして、2クール目最初のエピソードです。

 いきなり複数のデジモンたちが「殺される」という、前半から二味違う展開。
 これまでは悪さをするデジモンがいても、せいぜいぶっ飛ばして詫びを入れさせる程度で
 説得したり懐柔したりなど、穏便に済ませるパターンばかりでした。

 しかし今回はメイン格と事を構えるまでですでに999体ものデジモンを殺しており、
 しかもそれを明らかに自分の意志でやっているというどう考えても説得は無理な手合い。
 どうするんだろう、と思っていたらまさかのボコモン先生退場からの暴走展開でした。
 これにはかなり驚かされましたね……

 今までできるだけ穏便に済ませていたのも、ガンマモンとボコモン先生が仲良しな様子を
 事あるごとに写していたのも、全部この展開のためだったと言えそうです。
 ここまで抑えてきたぶんだけ、命のやり取りの重みが増すというわけだ。
 と同時に、グルスガンマモンのヤバさを際立たせる形にもなっているんですね。

 これで、宙たちは身内に「爆弾」を抱えて活動せざるを得なくなったわけです。
 次回からまた通常運転っぽいですが、グルスガンマモンの恐ろしさを目の当たりとした以上
 宙たちもいろいろ考慮して行動せざるを得ないでしょう。
 2クール目はそのあたりも軸になっていきそうですね。

 脚本は重要回と言うことで、シリーズ構成の十川誠志さんが担当。
 作監には何人か新顔が見て取れます。In Tae Sunさんは主に遊戯王、Jo Un Kyugさんは
 主に妖怪ウォッチに関わっていたようですが、詳細はよくわかりません。
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・宙

 デジモンに「死の概念」があると知って、少なからず動揺が見て取れました。
 なんとなく「デジモンは人間とは違うので死なない」と考えていたのでしょうか。
 それが、こうもあっさり命を落とすのを見せられては驚くのも無理はないでしょうが……

 後半ではグルスガンマモンからの「接続」に拒絶反応を起こし、苦悶する場面があります。
 というより、グルスガンマモンの方から一方的に侵蝕しようとしたと捉えるべきでしょうか。
 どちらにせよデジヴァイスの表示で顕著だった通り、ああなると両者の関係性は
 まるで違ってきてしまうということなのだろうと思います。

 そのぶん、何も知らないガンマモンをやや殊更に庇う姿勢を見せました。
 今のままでは、グルスガンマモンがまた出ても打つ手がないように見えます。
 それとも、近々なんらかの対策を考えるのでしょうか……
 
 
 
・ガンマモン

 9話からこっちずっとボコモン先生に懐いてた(餌付けされてた?)描写があったのですが、
 まさかこのような形で布石に使われるとは見てる方も思いませんでした。
 ボコモンの死によって感情をコントロールできなくなり、あのようになったのかもしれません。

 その激情はグルスガンマモンから戻ってからも収まらず、またはやっと咀嚼し始められたのか
 火がついたように泣き出していました。その様子はなんとも庇護欲をそそるものです。
 驚き戸惑うばかりの面々は詰ることもできず、ただ慰めに回るばかりでした。
 
 
 
・グルスガンマモン

 ボコモンの死に直面し、激情を爆発させたガンマモンが突如として発現させた第四の形態。
 全体のシルエットはベテルガンマモンに近いのですが黒い体躯にやや痩せ型の体型、
 そして身に纏ったボロボロのマントと鋭い眼光が剣呑な雰囲気を醸し出しています。
 成熟期ということですが、他の三形態とは明らかに一線を画する力を備えています。

 性格的にも一変しており、他のどの形態よりも饒舌かつ苛烈で酷薄な性格。
 シールズドラモンを一切躊躇することなく葬り、アンゴラモン達を「馴染み」と言いながら
 まったく容赦なしに叩きのめす冷酷ぶりを見せつけています。
 理性をしっかり備えていながらこの有様なので、文字通り手がつけられません。

 また、その物言いは何やら思わせぶりでどこか謎めいたものです。
 「隠された人格」的な扱いといい、なんらかの秘密を握っている可能性は高いでしょう。
 ひょっとすると元々こうで、ガンマモンとしてのあり方の方が後付けなのでしょうか?
 北斗パパなら何か知ってると思うんですが、あのオヤジ今どこにいるかわからないんですよね。

 ただガンマモンとしての意識も残っているのか、止めようと立ちはだかる宙の姿に
 ボコモンとのオーバーラップを感じ取った形で急激に進化解除へ至っています。
 この姿の謎を解いたとき、宙たちはまた新たなステージへ昇るのかもしれません。

 このグルスガンマモンの登場により、沢城みゆきさんが起用された理由を改めて実感しました。
 本来とは何もかも違う、悪の強さとでも言うべきものに溢れた強烈な演技です。
 この豹変、沢城さんの実力でより浮き彫りになったと言っていいでしょう。倍率ドン、さらに倍。
 
 
 
・瑠璃組

 果敢にシールズドラモンやグルスガンマモンへ挑んでいましたが、いかんせん進化前とあって
 活躍らしい活躍はできていません。それでもポエムは意地でも挟んでくるスタイルのようです。
 
 
 
・清司郎組

 ジェリーモンの単独行動を契機としてシールズドラモンと事を構えるに至ったので、
 今回の功労者と言える取り合わせ。ただし清司郎は腰が引けている。

 テスラジェリーモンとしての戦闘はグルスガンマモンに対して展開されているのですが、
 同格にもかかわらず力が違いすぎてまるで歯が立っていませんでした。
 あのままだったら詰んでいたと思います。

 そういえばシスタモンシエルの時といい、ジェリーモンは活動界隈において
 一種の便利屋みたいなことをやってるみたいですね。
 サブ要素という感じであまり全面的には扱われない設定ですが。
 
 
 
・ボコモン

 ここでまさかの退場。彼の死はぶっちゃけ誰も予想できなかったと思います。
 その死がガンマモンを庇ってのものだったというのも含めて。
 このままレギュラーになるのかな、と思われた矢先の大事件でした。

 とはいえ、彼もさすがに自分の死がグルスガンマモンなどという存在を引っ張り出すとは
 夢にも思わないままだったに違いありません。結果としてシールズドラモンは排除され
 宙たちもかろうじて助かったので、無駄死にではなかったのですが。あくまでも結果的には。

 消滅を遂げたあと、そのデータはデジタマとして結実しています。
 そこからまた新しく生まれ変わるのですが、事実上の別個体となるのだそう。
 「セイバーズ」あたりが設定としては近いでしょうか。
 
 
 
・バクモン

 一連の犯人が「処刑人」だと真っ先に勘付きました。10話といい、なかなかの鋭さ。
 ボコモンも知らない(忘れてただけ?)ので、あの時点では彼だけが気付けた模様。
 そして彼だけが残されたわけですが、これからどうするんでしょうね……
 今後もあるのかな、出番。
 
 
 
・クロックモン

 デジモンたちが「処刑人」に怯えていることを伝えてきました。
 登場は前半にちょっとだけですが「処刑人」の動向を調べてくれているなど、
 基本的には完全に味方キャラとしての待遇に収まっています。

 そういえば彼、グルスガンマモンらしき兆候を見た最初のキャラでしたね。
 そのへんで今後また関わってきたりするのかも?
 
 
 
・モニタモン

 クロックモンと共に行動していたデジモン。登場は「クロスウォーズ」以来です。
 宙たちに暗殺現場の動画を見せ、バクモンが下手人の正体に気付く契機を作りました。
 登場はそれだけですが、役どころとしてはかなり重要です。

 中の人は龍田直樹さんでした。なにげに超ベテランです。
 
 
 
・シールズドラモン

 暗殺を得意とする成熟期のサイボーグ型デジモン。
 登場時点で990体以上ものデジモンを殺害しているという、これまでの敵性デジモンとは
 文字通り桁違いの業を重ねています。存在そのものが今回の展開の布石でした。

 コマンドラモン100体が対象の選抜試験「セレクション-D」を合格した1体のみが
 進化することができる存在だそうですが、暗殺を行うのは指令を受けた場合のみのはず。
 人間界でまでなぜ暗殺を繰り返しているのかは、前半までまったくの不明でした。

 その実はただただ殺害数の更新を続けるため、そこに居合わせただけのデジモンを
 見境なく殺し続けていたという、暗殺のプロどころか単なる殺人マシーンでした。
 何らかの理由で本分を見失い、無差別凶行に及んだのでしょうか。

 どう考えても野放しにしていいヤツではないのですが、後手に回っている状態では
 とうてい捕捉できる手合いではなく、ガンマモンを庇ったボコモンを殺害せしめています。
 が、これをキッカケに出現したグルスガンマモンにあっけなく捕まってしまい
 締め上げられたあげく「デッドエンドスキュアー」で一撃のもとに急所を抉られるという
 自身のお株を奪うようなやり方で頭部をブチ抜かれ、消滅しています。

 形はどうあれ、メイン格が殺害したデジモンとしては最初の個体となりました。
 消滅の間際、グルスガンマモンを称えるような発言を残しています。
 彼にとっては殺しの技だけが価値の全てであり、グルスガンマモンにそれを見出したのでしょう。

 中の人は神奈延年さん。エフェクトが効いていてわかりづらいですがベテラン人気声優です。
 「機甲警察メタルジャック」の神崎ケン、「マクロス7」の熱気バサラ、
 「スーパーロボット大戦」シリーズのアクセル・アルマーあたりの、熱いものを持っているけれど
 一筋縄でいかない癖のある人物を得意としています。「Fate」のランサーもこの系譜でしょうか。
 デジモンシリーズでは過去に「クロスウォーズ」にてエグザモン役としても出演しています。
 
 
・犠牲者及びモブのみなさん

 シールズドラモンに殺されたデジモンたちは、劇中だけでも数体にのぼります。

 ・ゴリモン   :ゴミ捨て場で食い物を漁っていたところを背後から一撃
 ・サラマンダモン:どこかの壁に佇んでいたところを斜め上方から一撃(記録映像より)
 ・フライモン  :看板に引き寄せられていたところを側面から一撃
 ・モノドラモン :大根を食べていたところを二体まとめて

 彼らの屍の上へさらにボコモンの犠牲を加えて、その殺害数は1000に到達しました。

 この他サンフラウモンも登場しますが、ジェリーモンとやり取りをしていただけなので
 幸いなことにと言うべきでしょう、事件には巻き込まれていません。
 ちなみにチョイ役ながら何故か今野宏美さんがアテていたりします。
 
 
・ウーバーテイルモン

 なんかこういう名前みたいです。ボコモンのデジタマを回収していきました。
 サラッと流されてたけど、割に重要な要素だったりする場面なんでしょうか。
 
 
・ブラックアグモン

 一連を見届けていた謎の成長期デジモンです。今後要チェックですね。
 
 
・ED

 今回から「だって今日まで恋煩い」に変わりました。
 1クール目とは打って変わって、今度は成熟期がメインのビジュアルです。
 ガンマモンに関しては、一種のスタンダードであるベテルガンマモンが採用されてました。

 結局1クール目ではジンバーアンゴラモンが出なかったわけですが、EDではなく
 OPに出ており今も出続けているので、PV詐欺ってことにはならないと思います。一応。 
 
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「お〜、礼を言えるようになったじゃい。エラいじゃい」(ボコモン)
 
 「ありがと〜!」とチョコの礼を言われて。
 ガンマモンの成長がわかる場面ですが、このセリフも心に残ります。
 退場回だけあって、今話はボコモン先生のセリフにも印象的なものが多め。
 
 
「死んだ…!? デジモンが!?」
「処刑人……デジモンも、死ぬ…?」(宙)

 
 意外そうな口ぶりです。
 デジモンには死の概念が存在しない、と思い込んでいたのでしょうか。
 それとも、無意識のうちに考えないようにしていた……?
 
 
「年はとりたくないもんじゃ… 今ごろ思い出した!
 あれはシールズドラモンじゃぁーっ!」(ボコモン)

 
 月光?に浮かび上がったシールズドラモンの姿を見定めて。
 「歳をとって物忘れが激しくなった」のと「長生きをしてしまったせいで
 あんなヤバいやつに出くわしてしまった」という二重の意味があるように感じます。
 成長期ながら、相当長いこと生きてきたことがわかるセリフでもあります。
 
 
「………」(ボコモン)
 
 ガンマモンの無事を見届け、安堵したように微かに微笑んで。
 直後、彼は静かに消滅を遂げます。
 明確なセリフはありませんが、ちゃんとニュアンスは伝わってくる場面。
 
 
「ガンマモンッ! 進化あぁぁぁあぁぁあぁぁっ!」(ガンマモン)
 
 満タンになりかけた宙とのいわゆる絆ゲージが、突如としてゼロになっての進化で。
 泣き叫ぶような声と、一瞬だけ途切れるエフェクト演出がたいへん印象的です。
 
 
「違うってか…? ハハハハハハッ!
 クハハハ……違わねぇよっ!」(グルスガンマモン)

 
 揃って今までのガンマモンとの違和感を訴える「仲間」たちへ。
 沢城さんの演技といい、その饒舌っぷりといいどっからどう見ても別物なんですが
 このセリフの通りなら、これもまたガンマモンの一面ということなのでしょうか。
 それとも、本来はこれこそが……?
 
 
「流れ込んでくる…! でも…!」(宙)
「そうかよ。じゃあ好きにしな」(グルスガンマモン)

 
 宙の頭に接続されたもの、それは混じりっけなしの殺意、かもしれません。
 それを忌避するのは、まっとうな人間なら当たり前のことではあるのでしょう。
 もっとも現状グルスガンマモンにとっては誤差レベルでしょうが、不満そうではありました。
 
 
「見事、ダ…!」(シールズドラモン)
 
 消滅する直前のセリフ。
 上にも書きましたが、彼にとっては殺しの数と殺しの技術のみが価値基準なのでしょう。
 自分を容易く捕縛し、急所を正確無比に貫いてトドメを刺したグルスガンマモンの強さは
 彼にとって目指すべきもののひとつだったのかもしれません。
 理解しがたい話ですが。
 
 
「……まあいいや。ハハハハハ!」(グルスガンマモン)
 
 自分の言葉の意味を理解できないらしい宙に。これまた不満げです。
 なんかこのへんにも布石がありそうですね。
 
 
「教えてやるよ。オレたちには二択しかねぇ…
 食うか食われるかだ!」(グルスガンマモン)

 
 戦いは勝利か敗北かの二進法。そうだろ?

 腕に湛えた「ダークパレス」を叩きつけんとする直前のセリフです。
 直前の「ちょっとばかり馴染みだからって馴れ馴れしいんだよ」も良いです。
 悪の強さに溢れています。
 
 
「うわあぁぁぁぁぁあ! ボコモォォオオォン!」(ガンマモン)
 
 間一髪、ガンマモンの姿に戻っての第一声。
 ボコモンが死んだことをやっと自分の中で噛み砕きはじめたような、そんな号泣です。
 それにしても沢城さんの演技が本当に素晴らしい。
 
 
「宙たちやガンマモンたちは、特別な存在なのかもしれんじゃい。
 デジモンと人間の、橋渡し役なのかもしれんじゃい……」(ボコモン)

 
 回想シーンより。
 先生、危険な現場に赴いたのは相手の正体を見極めるためもあるでしょうが、
 いざという時には体を張ってでもガンマモン達を守るつもりだったのでしょう。
 幸か不幸か、その判断が功を奏したことになるのですが……
 
 
「悲しき別れ、乗り越えしとき……
 これすなわち、デジモンの真の歩みの始まりとなす……」(アンゴラモン)

 
 今回のアンゴラポエムです。これを受け、宙も少し相好を崩していました。
 アンゴラモンなりの気持ちの整理であると同時に、未来へ思いを馳せたセリフです。
 
 
 
 
★次回予告

 とりあえず次回からまた通常運転のようです。
 なにやら全員で温泉旅行に来ているようですね。そこで事件に巻き込まれると。
 メンバー全員がいるっぽいので学校行事ではないのでしょうね。
 そしていったい何モンが出てくるのか、これだけではまたまた良くわかりません。