死ノ遊戯

脚本:佐藤寿昭 絵コンテ:志田直俊 演出:村上勉
作画監督:会津五月/仁井宏隆/八島善孝/井手武生
総作画監督:浅沼昭弘

★あらすじ

 最近人気のオンライン対戦型格闘ゲーム、「ファイターズキングダム」。
 このゲームで二十連勝すると、謎の美女ファイターが現れるという噂がありました。
 しかもそのファイターと遭遇したプレイヤーは、ことごとく行方不明になっているのです。
 宙と清司郎は実際に、コタロウがモニターへ吸い込まれるところを見てしまいます。

 その際に二人分の見知らぬ声が聞こえたことから、バクモンの推察で
 キンカクモンとギンカクモンという姉弟デジモンの仕業である可能性が高いと判明。
 ギンカクモンの紅葫蘆(べにひさご)に吸い込まれた者は、その体ごと少しずつ
 酒に変えられてしまうのです。一刻の猶予もなりません。

 確実なのは「ファイターズキングダム」で連勝してキンカクモン達を誘き出すこと。
 同作を得意とする清司郎は宙たちの頼みとジェリーモンの激励に応え、
 この危険な誘い出し役を受けて立ちます。

 果たして誘い出されてきたキンカクモンを相手に、清志郎はジェリーモンと組んで
 天才的なコントローラー捌きを見せて渡り合います。
 興に乗ったキンカクモンの介入で戦いは仮想デジタル空間になだれ込みますが、
 ゲームとは勝手が違うために清司郎達の側が不利へ追い込まれてしまいます。

 しかし土壇場で清司郎の「スイッチ」が入り、ジェリーモンと強くシンクロ。
 進化が誘発され、テスラジェリーモンが登場を遂げます。
 その蝶のように舞い蜂のように刺す戦いぶりはキンカクモンを完全に翻弄し、
 カウンターの一撃で勝利を収めるのでした。

 キンカク・ギンカク姉弟は潔く負けを認め「戦利品」たる人々を解放します。
 その後についてもなんとか丸く収まるのですが、キンカクモンは
 清司郎&ジェリーモンとの再戦を誓って去っていくのでした。
 
  
 
 
★全体印象
 
 10話です。
 今回の題材はゲーム。且つ、今となっては珍しくないオンライン対戦形式です。
 デジモンという存在が介入してくるには確かにうってつけのテーマでしょう。

 ここに登場してくるのが、キンカクモンとギンカクモンの姉弟。アニメ初登場です。
 本作らしく「自分ルールを押し付けてくる粗暴さはあれど性根は腐ってない」手合い。
 試合形式で負けを認めさせれば良いというのは、作風にも合致します。
 キンカクモンに比べギンカクモンの出番が少なめなのはちょっと食い足りないですが。

 まだかまだかと思われていた宙&ガンマモン組以外の進化も、ここで実現しました。
 瑠璃組に先んじて、清司郎&ジェリーモン組にお鉢が回った形です。
 合流が遅めだったぶん、こちらは早めってことですね。
 それでも、デジモンアニメとしてはかなりスローペースですけれど
 実力をきっちり示した上で一定のカタをつけてくれたのは良かったんじゃないでしょうか。

 脚本は本作初登板となる佐藤寿昭さん。
 :では攻城戦、ズドモン進化、対メフィスモン、ゲコ温泉あたりが目ぼしいところでしょうか。
 この中では「攻城戦」が比較的良かった部類かな……

 演出の村上勉さんは様々なアニメに関わっている方で、もとは作画畑ですが
 2010年代あたりから演出メインに転向したようですね。
 「コロボックル物語」でイラストを担当しておられるイラストレーターさんとは同姓同名ですが
 特に縁やゆかりはないようですね。あのシリーズ、わりと最近に新作が出てたんだな……

 他に特筆点としては、井手武生さんの参加が挙げられます。
 「ONE PIECE」や「ドラゴンボール」での仕事が大半を占める方で、
 デジモンシリーズには唯一、劇場版である「デジモンテイマーズ 冒険者たちの戦い」に
 作画監督補佐として参加していたぐらいなので、実に20年ぶりの参加となりましょうか。


 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・宙組

 おおむね清司郎組の補佐に回っていました。
 進化もしていますが、見せ場もほぼ譲る形になっています。
 
 
 
・瑠璃組

 離れたところで様子を見てる状況が多く、現場にも遅れて到着しているので
 こちらも見せ場というほどのものはありません。
 アンゴラポエムはちゃんとあります。
 
 
 
・清司郎

 実はかなりのゲーマーでもあったという人物。また設定が盛られた気がしますけど
 違和感はないですね。趣味が高じてわざわざ普通の中学生活を選んだぐらいだし
 授業免除という待遇を利用して、時間のあるときはゲーム三昧だったのでしょう。
 曰く、「ファイターズキングダム」は彼にとって久々のヒットだった模様。

 自分で「腕に覚えがある」と言ってのけるだけあり、その実力も非常に高いものがあります。
 普通の対戦ではあっという間に20連勝を決め、キンカクモンとの戦いにおいても
 ジェリーモンとの連携で渡り合い、相手が本気を出してきてもなお食らい付いてみせました。
 宙や瑠璃も瞠目したほどで、こればかりは彼らにしかできない芸当でしょう。

 しかし途中からゲームを通してではない「実戦」に持ち込まれたことで腰砕けとなり、
 一度はキンカクモンを失望させてしまいました。
 あげく失神に至ってしまいますが、ジェリーモンの電撃ショックで半ば強制的に覚醒。
 そのせいなのかどうなのか「スイッチ」が入り、ジェリーモンとの意識、意志もまた
 かつてないほどシンクロしたことで進化が可能となっています。

 その場は一気に乗り切ったものの、キンカクモンの再戦宣言には気乗りしない様子でした。
 例によって、限界突破していた間のことはあんまり覚えてないのかもしれません。
 自由に進化できるのかどうかはまだちょっと未知数かも。
 
 
 
・ジェリーモン

 清司郎のリアクション大王ぶりと同じくらい、その実力を高く買っている描写が目立ちました。
 渋る清司郎を彼女なりのやり方で激励したり、後半では気絶した彼へ呼びかけ続け
 「ゲームだからではなく二人だから強かったんだ」と熱弁をふるうなど、
 なんだかんだで信頼しているところが強く打ち出されています。

 その甲斐もあって今回、待望の成熟期進化へ到達することができました。
 これはジンバーアンゴラモンの登場も近そうですね。
 
 
 
・テスラジェリーモン

 ジェリーモンが進化を遂げた姿。
 格闘のデータを取り込んでさらなる強さを得たという設定の通り、徒手空拳寄りの姿です。
 喋り方も変わり、いわゆるギャルっぽい口調になりました。
 これは、相手を苛立たせるという心理的効果を狙った戦術の一環でしょうか。知らんけど。

 進化しただけあって実力は飛躍的に上がっており、キンカクモンのラッシュを軽やかに躱して
 カウンターの電撃技「フィサリスト」で一撃のもとにノックアウトしたほど。
 この鮮やかな勝ちっぷりも、キンカクモンに敗北を認めさせた原動力のひとつでしょう。
 同時にライバル心も煽ったようですけど。

 これでジンバーアンゴラモンが出てくれば、チームとしての戦力は大幅にアップしますね。
 そのぶん、2クール目からはさらなる激闘が予想されますが。
 
 
 
・コタロウ

 美女ファイターが出てくるという噂につられて「ファイターズキングダム」にログインし、
 まんまと捕まるという被害者ムーブのお手本のような行動を取っていました。
 ある意味見事です。今後のポジションをより盤石にしたとも言える。

 でも20連勝するあたり、ゲームの腕前は意外?にもかなり高そうですね。
 動機が不純であっても、一度集中したら相当のパフォーマンスを出せるタイプかも。
 
 
 
・ボコモン

 前回に続いての登場。
 宙にはなにかと頼られてる感じだし、今後もけっこう出番がありそうです。
 毎回出るというわけじゃないでしょうけど、セミレギュラー位置はほぼ確定でしょうか。
 
 
 
・バクモン

 キンカクモンとギンカクモンの仕業かも、と最初に言い出した人物。ドンピシャでした。
 意外なところから情報が出てきたものですが、割にあっちこっち行った経験がありそうなので
 聞いてみたら彼が知ってた、なんてケースはこれからも出てきそうな気がします。
 
 
 
・キンカクモン

 黄金の衣装で身を固めた鬼人型デジモン。
 女性型ながら筋骨隆々で、人によっては刺さりまくりそうなデザインをしています。
 その威容から勘違いされがちな気がしますけど、完全体じゃなくて成熟期です。

 もともとの設定では惚れっぽく暴走しがちないわゆる恋愛脳の持ち主なのですが、
 本作においては強者との真剣勝負を望む生粋のバトルマニアです。
 これと見込んだ相手がいればゲームに乱入して喧嘩を売り、勝てば戦利品と称して
 対戦相手本人を拉致してしまうあたり、ハタ迷惑度では大差がありませんけど。
 強ければ誰でもいいぶん、ある意味さらにタチが悪くなったとさえ言えるかも。

 とはいえ互角に渡り合ってくる相手がいないことから欲求不満を溜め込んでいたようで、
 清司郎の怯えぶりを見て怒り心頭に発してしまいます。これまたタチが悪い。
 それだけに、テスラジェリーモンの登場には喜んでいましたが……

 最終的にはKO負けを喫したことで敗北を認め、コタロウ達を変換しています。
 このあたりの潔さからわかる通り、恐ろしい連中ですが邪悪さまではありません。
 清司郎たちへのライバル意識は強く残っているため、今後また再戦を挑んでくる可能性は
 かなり高いものと思われます。

 確かこの二人には、二身一体となってのパワーアップモードがあったはず……
 次に出てくることがあるとしたら、それを使ってくる可能性はあるでしょうね。

 中の人は小松由佳さん。
 「フレッシュプリキュア」のイース、後のキュアパッションこと東せつな役で知られるほか
 「聖闘士星矢」のシャイナ(二代目)や「ドラゴンボール超」のカリフラなど
 パワータイプの女性キャラ役が目立つ方です。キンカクモン役としては妥当でしょうね。
 
 
 
・ギンカクモン

 キンカクモンの弟。こっちもすごく強そうですが、例によって成熟期デジモンです。

 携える紅葫蘆(べにひさご)は名前を呼んだ者を吸い込んでしまうという
 まさに「西遊記」そのものなアイテムで、対戦に敗れた者を無理矢理データ化して
 この中に吸い込み、少しずつ酒に変えてしまおうとしていました。
 邪悪さがない連中と書きましたが、こーゆーところは充分に恐ろしいです。

 また図体の割に手先が非常に器用で、ゲーム内でのキンカクモンは
 彼がコントローラーでサポートをしています。
 本気を出すとボタンを増やし、変態じみた高速入力までこなすなど相当の腕前。
 よく考えてみたらボタンを増やすメリットがよくわからないけど。

 仮想デジタル空間へ舞台が移った後はペテルガンマモンとやり合っていますが、
 すぐにキンカクモンVS清司郎組に視点が移ったので以後は見せ場なし。
 見ようによってはまだこの姉弟、真価は見せていないとも取れます。

 無類の酒好きであり、紅葫蘆から人々を返還する際には惜しんでいましたが
 基本的に姉には従順なのでおとなしく従っています。
 また宙から人間界にも酒はたくさんあることや、父の秘蔵コレクションを譲ると
 持ちかけられてあっさり懐柔されるなど単純なところが多々ありました。

 中の人は稲田徹さん。
 元プロレスラー志望でいかつい風貌の持ち主であり、声もまさにその外見通り。
 昔は線の細いイケメン役も多かったですが、近年はゴツい役が圧倒的多数です。
 デジモンシリーズへの出演は「クロスウォーズ」でのコンゴウモン役以来十一年ぶり。
 あっちに比べれば役柄としてはだいぶマシですね。
 
 
 
・ファイターズキングダム

 最近はやっていたというオンライン型対戦格闘ゲーム。
 形式としてはオーソドックスですがVRゴーグルを使うなど、操作系統には謎が残ります。
 いささか古風とも取れるモチーフですけど「相手をぶっ倒せばいい」という
 あまり説明のいらないジャンルなので、こういう時は都合が良いのでしょうね。

 一応色んなキャラがいるようですけど、名前設定などがあるのか少し気になりますね。
 
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「カウンターストップの略さ。
 怖さのカウンターが振り切れて、ストップしちゃうって意味さ」(ジェリーモン)

 
 清司郎が失神の前に言い残した「カンスト」なる言葉についての説明。
 ちょっとわかりづらいのですが、その後の「ゲントツ」はおそらく限界突破を指し
 清司郎に「スイッチ」を入れようとしていたことになります。

 でもこの時は失敗したので、もっと追い詰めないとダメってことなのでしょう。
 実際、清司郎が「ゲントツ」したのは命がかかってる時だけです。
 
 
 
「ダーリン! ダーリンは寮長さ!
 寮長には、寮生を導く義務があるさ!」(ジェリーモン)

 
 モニターを前に逡巡気味の清司郎に。
 こう見えて清司郎がやる時はやる男だと、一番知っているのはたぶん
 プライベートの彼を誰よりも見てきた存在でもある彼女ではあるのでしょう。
 ノせられやすいけど、それだけ責任感がある男だということも。

 絵面的には「ペッシ、ペッシ、ペッシ、ペッシよぉ〜、オレはお前を信じてるんだ」
 に近いものがあります。
 
 
「間合いは、つかんだ…!」(清司郎)
 
 なにッ!
 いま こいつなんといったんだ!?
『間合いはつかんだ…』 『つかんだ』…
『つかんだ』 といったのか!

 ジェリーモンと連携しての対キンカクモン戦、序盤を経てのセリフです。
 清司郎のゲーマーとしての腕のほどを効果的に演出してくれてますね。
 
 
「ミーたちは、ゲームだから強かったんじゃない!
 二人だから、強かったさ!」(ジェリーモン)

 
 迫るキンカクモンを前に気を失い、絶体絶命の清司郎に。
 ゲームを通して清司郎のサポートを受け、素晴らしい力を発揮できたのも二人だったから。
 清司郎の腕と、それを誰よりも信頼している自分だからできたことだというのです。
 あんたが強いことは自分が一番知ってる、とも言い換えられる。彼女、そーゆーとこありますよね。
 その後の電気ショックはいろいろと無体ですが、いちおう非常手段の範疇。
 
 
「ダーリン…!」
「フッ… ジェリーモン…!」
「「限界突破! 限凸!」」(清司郎とジェリーモン)

 
 進化直前のやり取り。
 5話では清司郎のみのコールでしたが、これを今回は二人でやってるところがミソですね。
 
 
「ゲームオーバー! 乙でした〜!」(テスラジェリーモン)
 
 キンカクモンをカウンターの一撃でノックアウトして。
 ノリは軽いですが、メチャメチャ強いです。
 ある意味対キンカクモン形態なんで、圧倒するのは当然かもですが。
 
 
「一口ぐらい味見しておきゃよかった……」(ギンカクモン)
 
 キンカクモンに促され、瓢箪から人々を解放したときのセリフ。
 呑兵衛らしいちょっと人間臭いセリフですが、割と怖いセリフでもあります。
 
 
「否! 勘違いするな。もとより我が興味は闘いにこそあり!
 いずれまた手合わせを願おう…!」(キンカクモン)

 
 酒であっさり懐柔されたギンカクモンに応えて。
 まあ要は「また戦ってくれるんなら妄りに人間を襲ったりはしないよ」ってことですが。
 つまりは条件の追加、ってことです。

 じっさい互角以上、または自分より強いものがいるとわかっている以上
「弱いものいじめ」になりかねないこれまでの行動を繰り返す意味はないでしょうしね。
 まあ清司郎はまったく乗り気じゃありませんでしたが。
 
 
「拳と拳を合わせてみれば、クラゲ開花の音がする。
 酒呑みは一文の得なし……」(アンゴラモン)

 
 今回のアンゴラポエムです。まさかの文明開化オチ。
 瑠璃の「なによ、それぇ」もすでにお約束と化しつつあります。
 
 
 
 
★次回予告

 ふたたび妖怪ものへグッと寄せたモチーフ。
 次の相手はレッパモンですね。「セイバーズ」では薩摩隊長のパートナーでしたっけ。
 中の人はこれまでの慣例に依らない感じなので、誰になるか楽しみです。