百鬼夜行

脚本:山口宏 絵コンテ:鈴木正男 演出:野呂彩芳
作画監督:仲條久美/北野幸広/浅沼昭弘/仁井宏隆
総作画監督:西野文那

★あらすじ

 高速で頻発している自動車事故。
 「怪物を見た」という証言からデジモンの関与を疑った宙たちは、
 さっそく調査を開始します。

 果たして、一連の事件はやはりデジモンが関係しているものでした。
 レース好きのデジモンたちが都会の高速をコースに見立ててレースを繰り返し、
 そのせいで高速を走る自動車にまで影響が出てしまっていたのです。

 ここまで事態がエスカレートしてしまったのは、シスタモンシエルが
 勝手にルールを追加してメタルファントモンを呼び出してしまったからでした。
 スピードとスリルを愛する彼女に、レース仲間全員が巻き込まれたのです。

 事件を追っているうちに、このレースに巻き込まれた宙たち。
 メタルファントモンに追いつかれたら、ガンマモンたちがその鎌に食われてしまいます。
 策も駆使して必死に逃げる宙たちですが、肝心なところでエンジントラブルが…

 その時突然あの運び屋のブラックテイルモンが現れ、謎のマシンを起動。
 すると突然ゲートが開かれ、デジモンたちを残らず呑み込んでしまいます。
 宙たちは寸前で難を逃れましたが、謎がいちだんと深まる事件でした。
 
 
 
 
★全体印象
 
 8話です。
 今回のテーマは「百鬼夜行」ということですが、実際はレースというオチでした。
 勝手にやってることなんで実態は暴走族に近いかな。

 ドラマやらキャラ同士のやり取りやらは薄めで、レース自体を見せる傾向が強いお話です。
 ただ状況が状況とあって進化なども一切無いため、ちょっと地味なエピソード。
 シスタモンシエルの造形には強烈な意外性がありましたが、本来の設定やデザインと
 いささかギャップが開きすぎており、戸惑わされることしきりでした。

 それにしても敵を倒さないのは作風だから一度言及を控えるとして、
 何やら謎を撒くだけ撒いて引きましたね。あのブラックテイルモンはどこから来たのでしょう。
 そして、誰の差し金で動いているのでしょうか。気になりますね。

 脚本は山口宏さん。:では主にミミ関連の脚本を書いてた方です。
 その影響が残ってるのか、瑠璃が普段より他の二組を振り回しがちな印象を受けました。
 作画面では:の総作監二人が揃い踏み、さらに仁井さんもいるのでアクションは見応えあり。
 ってか仁井さん、前回でも作監やったばかりなのでは……
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・宙

 ほぼ巻き込まれっぱなしのまんま文字通り走り抜けた印象。
 それでもシスタモンシエルをメタルファントモンにぶつけるなど、その機転は健在。
 中盤では、ちょっと久々にピッキングの腕前を披露しています。
 
 
 
・ガンマモン

 相変わらず愛嬌をふりまいていますが、基本的にはカートに乗ってるだけなんで
 特に見せ場らしいものはありません。
 
 
 
・瑠璃

 今回の人間組ではいちばん目立ってた人物。
 自分にとっての「ピッタリ」を常に探しているという設定に忠実なのはいいのですが、
 気を許した相手にはグイグイ行く性格のため今回は特に宙と清司郎を振り回しています。
 多趣味で行動的、と良い方に解釈もできるのですが……

 カートの操縦については意外な高さを誇っており、シスタモンシエルと渡り合うほど。
 行動派なぶん体力もあるのか、宙を辟易させていました。
 
 
 
・アンゴラモン

 知識・解説担当は相変わらずですが、今回は解説をジェリーモンに取られていたので
 必然的に印象が薄めになってしまっています。
 心なしか、ラストを締めるポエムも切れ味が悪かった気がします。
 
 
 
・清司郎

 たびたび巻き込まれを回避しようとしてましたが無理だった人。
 今回は運転もジェリーモン任せで、得意の頭脳も発揮できておらず
 ビビってばかりだった印象です。
 
 
 
・ジェリーモン

 順調にトラブルメーカーとしての地位を確立しています。
 宙と同じく、そのうち手痛い目に遭いそうな気がしてなりません。
 でもカートの運転もできるとはホント器用ですね。
 
 なおシスタモンシエルの解説を担当していましたが、キャラ付けがおかしいので
 かなり首をひねらされる内容になっていました。
 
 
 
・シスタモンシエル

 何もかもがおかしいパペット型成熟期デジモン。盗んだカートで走り出す。
 本来の設定は「昼はおっとりしたシスター、夜は冷徹な暗殺者」という、ベタですが
 シスターというモチーフを十二分に活かしたものです。
 昼と夜、二つの顔を持つというギャップは十分に需要があるでしょう。

 ところが今回では終始ヒャッハーしているスピード狂、そのうえスリルを好むあまり
 周りを巻き込みまくるという悪い意味で意外すぎるキャラ付けになっています。
 何かに取り憑かれたり操られたりしている様子もありません。

 「デジモンウェブ公式」に「ハンドルを握ると性格が一変してしまう?」とありますが
 仮にそうだとしても「普段の姿」の描写がないのでギャップらしいものは何も見えてこず、
 デフォルトでああいう性格をしているようにしか見えません。
 本作でシスタモンシエルを知った方にとっては特にそう見えるでしょう。
 そもそも、こんなキャラにするんならシスタモンシエルにする意味ないでしょうに。

 とはいえ実力は相当のものがあるようで、メタルファントモンを引き入れるなど
 格上からも一目置かれているところはあるようです。
 実際、メタルファントモンに挑んだ際には互角に渡り合っていました。
 そうなるに至った理由を鑑みるに、あまり頭は良くないようですが……

 最終的には運び屋ブラックテイルモンが開いたゲートに呑み込まれる形で
 デジタルワールドへと強制送還されています。その後の顛末は不明。
 向こうでも走り回っているのでしょうか……

 中の人はゆかな(旧名:野上ゆかな)さん。
 シリーズの代表作は言わずと知れたララモンですが、前番組の:においても
 マリンエンジェモンとして出演しておりました。
 あちらの方がまだ本来の設定からのギャップは少ないと思います。
 
 
 
・メタルファントモン

 夜な夜な高速をコース代わりに繰り広げられるレースに「追撃者」として参加したデジモン。
 :でも31話に登場し、一体はゴクモンへ進化しました。

 追撃者として絶対のルールを敷いており、追いついたものは携えた鎌に吸収、
 逃げたものは問答無用に吸収と、走者たちの恐怖の的になっていました。
 要は朝まで逃げ延びなければ、この死神に斬られて殺されるということです。
 額に髑髏のマーカーが刻まれたら最後、このルールから逃れることは許されません。

 言葉というものを一切発しないため、本話においては異彩を放っている存在。
 しかし一応ルールに沿って行動しているあたり律儀というか、契約は守るタイプに見えます。
 シスタモンシエルとどういう風に折衝しあったのかはわかりませんけど。
 「追いついたり脱落したヤツは好きにしていい」って言われてその気になったんですかね。

 最終的にはシスタモンシエルと斬り合ってる間にゲートに巻き込まれ、他のモブ達とともに
 その場から退場しています。この際、ガンマモンたちに刻まれた髑髏のマーカーも消えました。
 さすがに世界を超えて作用させるのは無理みたいですね。 
 しかし見れば見るほど、仮にもシスターモチーフのデジモンが連れてくる顔じゃねーな。

 ちなみに中の人は江川央生さん、なんですが見てる分にはほとんどわかりませんでした。
 
  
 
・モブの皆さん

 シスタモンシエルやファントモンと一緒に夜の高速を走っていた方々。
 この様子が人々に目撃され、百鬼夜行などと名付けられたのが真相のようです。
 エレファモンをはじめユニモン、サンダーボールモン、キウイモンなど顔ぶれは豊富。

 レース中に半数ぐらいはやられましたが、残り半数ぐらいはゲートに消えました。
 もっとも、宙たちが消えただけで状況は変わってない気もしますが……

 中の人は高塚正也さん、浦和めぐみさん、沼田祐介さんなど妙に粒が揃ってます。
 
 
 
・運び屋ブラックテイルモン

 出し抜けに現れてゲートを開き、シスタモンシエル及びメタルファントモン以下
 多数のデジモンたちを強制送還しました。
 行き過ぎた行動に介入し、人間世界への影響を抑える目的があったようにも見えます。

 問題は誰が何のためにこの個体を遣わしているのか、ですね。
 やっぱり今何やってるかわからないホクトパパが怪しいっすな……
 
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「ちょっと『ピッタリ』探しに付き合って!」
「男子ってこういうの好きでしょ?」(瑠璃)

 
 宙と清司郎を呼び出した時のセリフ。
 常識的な判断ができる子なんですが、どうも友達認定した相手に関しては
 巻き込むことにあまり躊躇がないんですかね。それとも今回だけの傾向?
 
 
「まさか、あんな使い方をするとは思わなかったのさ」(ジェリーモン)
 
 カートを使って暴走を始めたシスタモンシエルを見て。
 どういう顔の利き方なのか、ほぼ脅迫の形で件のカートの斡旋を引き受けたそうです。
 斡旋といっても当然非合法なんですが、どうもそのへんの意識が薄いようですね。
 いろんな意味で見事なトラブルメーカーぶりです。
 
 
「あいつの名前はシスタモンシエル。
 最速で最強のためならなんだってする、スピードに取り憑かれたデジモンさ」(ジェリーモン)

 
 シスタモンシエルに関しての解説。
 公式設定に沿ってないのはよくある話ですが、ここまで原型止めてないのは初めて見ました。
 
 
「…今だ!」(瑠璃)
 
 シスタモンシエルの所業に腹を立て、背後に付けて追い抜くタイミングを見極めた際のセリフ。
 この直前、スリップストリーム現象と思しき演出が確認されています。
 つまり瑠璃はこの現象を利用して加速を上乗せしやすくし、シスタモンシエルを抜き去ったのです。
 スリップストリームだ剣崎!
 
 
「……いわゆる、ガス欠さ」(ジェリーモン)
 
 瀬戸際の瑠璃車のカバーに入ったものの…なセリフ。
 さすがにこれはヤバいかな、って感じの顔がちょっと面白いです。
 
 
「…ああ……最速で…… 最強ーーーーーー!」(シスタモンシエル)
 
 ゲートに呑み込まれる際のセリフ。
 なぜこんな反応になったのかさっぱりわかりませんが、ゴールでも見えたのでしょうか。
 
 
「疾きこと風のごとく。静かなること林のごとく。
 そして…逃げること、最速で最強がごとし……」(アンゴラモン)

 
 今回のアンゴラポエム……なんですが、
 今回はなんか無理があるというか音が悪いような気がします。
 
 
 
 
★次回予告

 クロックモン再登場。
 レギュラーではない敵デジモンが再起してまた挑んでくるというのは新しいパターンです。
 宙、それにガンマモンにとってどのような楔になるのでしょうか。