呪ワレタ歌
脚本:十川誠志 絵コンテ:志田直俊 演出:髙戸谷一歩/中村亮太/宍戸望
作画監督:北野幸広/直井正博/金久保典江/舘直樹
総作画監督:浅沼昭弘
★あらすじ
瑠璃&アンゴラモンと組み、ホログラムゴーストの噂を確かめて回る宙とガンマモン。
その中には実際にデジモンがいたスポットもあったのですが、宙の本来の目的である
父親の手がかりは掴めないままでした。
そんな中、とあるカラオケ店にやってくる一同。
ここには、ある特定の歌を歌うとホログラムゴーストが現れるという噂がありました。
そして実際に、何人もの被害者が出ていたのです。
清司郎とジェリーモンも加わり、総出で事態を調べる宙たちですが現象は確かめたものの
相手は逃げ足が早く、捕らえるのは容易ではありません。
そこで宙は清司郎にカラオケ店のネットワークをハッキングしてもらいこれを遮断、
行き場を無くしたゴーストをVIPルームに誘き寄せます。その正体はセイレーンモン。
デジタルワールドでは歌姫と呼ばれるデジモンでした。
カラオケ店を飛び出して大モニターに移り、そこで歌を披露しようとするセイレーンモン。
しかしその歌を聴いた者は被害者がそうだったように、酷い頭痛に襲われてしまうのです。
宙たちはデジヴァイスのエリアシフト機能でなんとかこれを防ぎ、戦いが始まりました。
セイレーンモンは強敵でしたが、何を思ったか宙が突然歌いはじめます。しかもひどい音痴。
が、これを聴いたセイレーンモンは歌の裡にこめられた想いをハッキリと受け取り、
人間の歌を人間に聞かせるためには今の歌い方ではダメなのだと悟って去ってゆきました。
こうして騒ぎは収まったのですが、結局話は聞けないまま。
果たして宙の父・スバルは今どこにいるのでしょうか……
★全体印象
6話です。
前回で清司郎組が加わったわけですが、3組揃い踏みで事件を追うのは実質今回が初めて。
結果としてさっそく、清司郎のスキルがフル活用されたお話運びになっております。
これがなければ、標的をカラオケ店から追い出すことは難しかったでしょう。
相手方の行動動機は2話や4話と同様の「勘違い」だったわけなんですが、
すでに3回目とあってそろそろもっと別のバリエーションが欲しいところではあります。
戦闘も進化できるのがガンマモンだけ、それでも相手が格上だったりで
倒しきれないケースが続いているのは勿体無いかもしれません。
それ以外に特筆するほどの不満があるわけじゃないし、個人的には楽しめてるんで
まあ贅沢な話なんですけど、「贅沢が言いたくなる」ってことでもあるんですよね。
脚本は引き続き十川誠志さん。4話以外はずっと書いてます。
演出に名を連ねている髙戸谷一歩さんは、2年ほど前から演出を任されてる方。若手ですかね。
作画面では、浅沼昭弘さんが「デジモンアドベンチャー:」に続いて総作監を担当。
総作監だけですでに4人です。スタッフ増員がなされてるってことでしょうか。
★キャラなど個別印象
・宙
大抵のことができる彼ですが、実は音痴であることが発覚しました。
前半で歌うことを遠慮していたのは、後半へのフリだったというわけです。
「心を込めて歌ったよ」というセリフから、歌うことは好きなのかもしれません。
ただ自分が音痴であることは自覚がある…というより、他の人の反応などから
「どうやら自分には音の才能だけはまったく無いらしい」と気づいていたのでしょう。
ある歌に感動することはできても、表現できるかというとまったく別問題ですから。
だからこそ、セイレーンモンの状況が理解できたのかもしれません。
自分ではちゃんと歌っているはずなのに、伝わらないというその気持ちが。
だから「人間には人間に合わせた歌い方が必要」だと解ってもらいたかったし、
だからこそ恥をしのんで歌ったのでしょう。
その気持ちが伝わるかどうかは賭けだったことでしょうけど。
その上で「自分とセイレーンモンは違う」と考えたのだと思います。
歌姫として自他ともに認め認められるほどの自負と自信があるというのであれば、
音痴である自分とは違って認識のギャップを埋め、人間にとっても聴き心地のいい
より広いアピールの歌を編み出すことが必ずできるはずだと。
そこに腐心するあまり父のことを聞き忘れるのも、ある意味彼らしいところ。
健在っぽいことはわかっているし、現状とっかかりさえ見つからないので
焦っても仕方がない段階ではありますけれど。
・ガンマモン
いつもより猪突猛進気味でした。
結果としてセイレーンモン相手にピンチへ陥ってしまい、進化を果たすのですが
今回もベテルガンマモンで技もソルショットしか出していません。
逆に言えば、まだ一度も本気で攻撃してないってことになります。これって何かの布石…?
深読みしてもしょうがないかもしれないけど、本作はしたいです。させてくれ。
空を飛ぶセイレーンモン相手に、今回はアンゴラモンの力を借りて空中戦を挑んでいました。
次回はより空中戦が得意そうな相手なんで、カウスガンマモンの登場を期待したいところ。
ラストシーンでは、調子っ外れの歌を延々と口ずさんでいます。
宙の歌い方をマネしたのか、そもそも音痴なのかは定かではありません。
ヘタに歌うというのは高等テクニックに属するので、中の人の技量のほどがわかる場面。
・瑠璃
本物の幽霊を求めて、ホログラムゴーストの噂がある場所を巡っていました。
正体がわかってるものにはあんまり警戒しないのかもしれません。
宙とガンマモンは、そんな彼女の好奇心に付き合わされている形。
まあ宙の目的を聞いているなら、目的にもかなうということで巻き込んだのかもしれませんが。
中盤ではセイレーンモンに出っくわしてしまいますが、救助が早かったおかげで
影響らしい影響は残らず、そのまま燻り出し作戦に参加することとなります。
助けられたことで、ますますセイレーンモンを放置しておけなくなったのでしょう。
・アンゴラモン
その知識と、霊感にも近い感知能力で全編にわたって活躍しています。
ある意味では一番働いてるメンバーかもしれません。
戦闘ではベテルガンマモンをよくサポートし、空中戦に対応してみせました。
・清司郎
ホログラムゴーストの噂を調べるため一足先にカラオケ店に来ていましたが、
何も起こっていないうちからビビって部屋を飛び出す状態でした。
これ、どう考えてもジェリーモンの発案で本人は全く乗り気じゃないやつですね……
後半ではカラオケ店のネットワークをハッキングして部屋への伝達経路を遮断、
VIPルームに現れるように仕向けるという技術的お膳立てをやってのけました。
ビビりながらも仕事はちゃんとするあたりはさすがと言えます。
・ジェリーモン
すでにダーリン呼びがデフォになっている模様。
本人的にはこの呼び方へ別に違和感を抱いてないようですが清司郎の方はどうなんでしょ。
わざと悪い予想を口にして怖がらせようとするあたりは変わっていませんけど、
芸風と看做されたのか宙や瑠璃にはスルーされ気味な印象です。
だから清司郎に入れ込むのでしょうけど。
戦闘では活躍というほどのことはしていませんが、清司郎との連携で
「ボルトナックル」「スパイラルキック」を連続発動、セイレーンモンの攻撃を弾いています。
・セイレーンモン
デジタルワールドでは歌姫と呼ばれる神人型デジモン。
完全体以下の神人型はかなり珍しく、それだけでも格の高さがわかる存在です。
カラオケボックスに居つき、お気に入りの歌を歌う人間を見つけたら接触をはかって
自分の歌を聴かせようとしていたようです。しかし人間に聴かせる歌い方ではなかったのか、
「彼女」の歌を聴いた人々はみな激しい頭痛に襲われ、著しく疲弊してしまいます。
命の危険や後の影響はなさげなあたり、後から考えれば悪意ってほどのものはないのですが
被害者目線では恐ろしい怪物にしか見えません。
そもそもカラオケってものを理解していなかったんでしょうけど。
後半ではネットワークを遮断され、現実世界への直接鑑賞を試みて大スクリーンへ移動、
そこでより大勢に歌を聴かせようとしますがエリアシフトでこれを阻止されます。
とはいえなにしろ完全体、そこからが本領発揮でした。
障害物を逆に利用した音撃の反射や自在に変化する「可視化した音」によって
主役組の攻撃を凌ぎ切る強さを見せつけましたが、宙の行動で自らの誤謬を悟り
人間のための歌を身につけるため、修行へ出ることとなります。
丸く収まったものの、このフリーダムっぷりはなんというか人外みがあります。
中の人は水樹奈々さん。
アニメ界隈に少しでも詳しい人なら知らぬもののない方です。
声優としての実力のみならず、歌手としても紅白歌合戦出場という実績の持ち主。
デジモンシリーズには初出演ですが、起用理由は説明するだけ野暮ってものでしょう。
21年11月現在、「映画 トロピカル〜ジュ!プリキュア 雪のプリンセスと奇跡の指輪!」でも
ちょうどキュアブロッサムとして絶賛再登板中。タイムリーですね。
・ヨウコモン
お稲荷様に居着いていた成熟期デジモン。
本作のデジモンは、どうやら自身にゆかりの深いスポットを塒とすることが多いようです。
なんとも妖怪っぽいですが、妙にしっくり来ますね。
この個体については近くのお婆さんの財布を拾って届けてあげるなど、ぶっきらぼうですが
ただそこにいるだけで悪さをする類の存在ではないようです。ますます妖怪っぽい。
宙は父の情報を欲しがってましたが、自分の都合を優先するので話は聞けずじまいでした。
こうした中の何体かは話を聞くことができたら「ああ、それなら知ってる」ってなりそうな予感。
中の人は千葉進歩さん。デジモンシリーズ的には「テイマーズ」の山木室長が最も有名ですが、
「デジモンセイバーズ アナザーミッション」ではレナモンを演じていたりするので
イメージとしてはそちらの方が近い気がします。
これを意識したキャスティングかどうかまでは定かじゃないですが。
そういや「アナザーミッション」でレナモンのパートナーだった神楽由麻の中の人は
ガンマモンの沢城みゆきさんでしたな……これも偶然なんでしょうか?
・悔しさは種
セイレーンモンが反応していた歌。
なんと「デジモンアドベンチャー:」の第一期EDにあたる歌です。あのヤマト主体のやつ。
なぜかギターとか出して「おっ今度のヤマトはギターか」などと思わせたやつ。
でも、歌詞を見ると意外に本作のお話に合ってる気がしますね。
未来を変えていく、という命題はセイレーンモン、それに宙にもかかってる気がする。
★名(迷)セリフ
「あのやり口は狡猾だね…
口止めされると、かえって喋りたくなるものだよね」(アンゴラモン)
噂を知りながら放置しているカラオケ店のやり方を評して。
噂を聞きつけた野次馬が押し寄せるのを売上に繋げようというわけです。
それにしても狡猾、とはまた堅い言い方をしますな。確かに狡猾だけど。巨烈獣コーカツ。
とはいえホーンアタックでエレベーターの扉を壊されたり、
VIPルームの壁に大穴が開いたりで結果的には被害の方が多そうですけれど。
これ、たぶん店側の負担になっちまうんだろうな……
「放っておけないわよね…!」
「私は、みんなのおかげで助かった……」(瑠璃)
襲われた当事者だからこそ襲われる怖さがわかるし、立ち向かう手段があるなら躊躇わない。
好奇心で首を突っ込んでいるようでも、こういう時の胆力が彼女の持ち味なのでしょう。
「んー… たぶん、できる……」(清司郎)
カラオケ店のネットワークを遮断、VIPルームに誘導できないかと訊かれて。
できるんかい! となった直後「店にお伺いを立てた方が…」と常識的なことを言い出して
女性陣(?)に押し切られててああ、うん…… ってなります。
割にテンプレ化しそうな流れ。
「私の歌は決して終わらない…終わればそれは世界の損失…!
あなたたちにはこんな素晴らしい歌、歌えないでしょ?
絶対に歌えないのよ!」(セイレーンモン)
自分には音の才能がない、と理解している宙自身にとっては別にショックではないものの、
その経験から「それではなぜ人々に伝わらないのか? 音痴だというのならわかるが、
そうではないというのなら足りないものに気づいていない、ただそれだけではないのか?」
と気づかせたセリフかもしれません。
「素敵な歌ってさ… 聴いてる人たちがなんだか楽しくなったり、感動した李、
そういうもんなんじゃないかな。
それってたぶん、歌ってる人の心が伝わるから……
今、心をこめて歌ったよ」(宙)
俺には音がない、でも音の素晴らしさはわかる。
やっぱり彼、歌うことは好きなんじゃないのかなと思わされます。
「この世界に来て…人間の歌に感動して…
でも、私が歌うとなぜかみんな怖がったり、逃げたり……
今わかったわ。きっと歌い方がよくなかったのね。
修行の旅に出るわ。感動させる歌の、修行の旅に……」(セイレーンモン)
歌は心。ならば、その心をどう伝えるか。
セイレーンモンには、音の本質を見抜く力があるのかもしれません。
それにしてもこの切り替えの早さ、人外みがあります。
「真実とは知るべきか知らざるべきか。
それを知るのは知る人ぞ知る……」(アンゴラモン)
今回を締めるアンゴラポエムです。
良さげなこと言ってるようだけど冷静に見ると何言ってんだかわからないセリフ。
なんとなく今後を暗示しているような気もしますが。
ところでガンマモンが同じフレーズを連呼していますが、
「上を向く」ってあたりにカウスガンマモンへの進化が暗示されてる気がします。
気のせいかもしれませんが。
★次回予告
訓練されてるなら早い段階で「おっ、次はヤタガラモンやな?」って気付ける流れ。
空戦が得意な相手となれば、嫌でもカウスガンマモンの出番を期待したくなります。
実際どうなるかは分かりませんので、あまり決め打ちしすぎずに待ちたいですね。