神ノ怒リ

脚本:十川誠志 演出:鎌谷悠
作画監督:二階堂渥志 総作画監督:宇代祐規/大山康彦

★あらすじ

 最近、怪現象に悩まされていた清司郎。その本質はやはりデジモンでした。
 イタズラ好きのジェリーモンが怖がりの彼を面白がり、付き纏っていたのです。
 この事実は、デジヴァイスを介して半ば強引に開示されました。

 が、問題はこれで収まりません。
 悩みのあまり、清司郎は無数のバーチャル魔除けをばら撒いていたのです。
 しかも二つや三つではなく、千単位にのぼる膨大な数が仕掛けられていました。
 これをジェリーモンが勝手に書き換え、電子マネーの管理システムをハッキング。
 結果、ありとあらゆる電子決済が使用不能になるという大事に発展してしまいました。

 これに腹を立てたのが、金の流れを見守る神の使いとされるマジラモン達でした。
 金の流れが止まることを決して許さない彼らは、清司郎に天罰を下そうと迫ってきます。
 清司郎がバーチャルお守りを消去している間、宙たちは時間稼ぎを試みるのですが
 マジラモンの従者たちは予想以上に手練。動きを封じられてしまいます。

 いよいよ天罰が間近に迫ったとき、清司郎は突如として人が変わったようになり
 ジェリーモンに技を発動させて最後のバーチャルお守りを破壊。
 さらに真正面からマジラモンに詫びを入れたことで、場を収めました。

 土壇場での責任感の強さと、追い詰められるほど研ぎ澄まされる底力。
 清司郎の様々な顔を間近で見たジェリーモンに、変化が訪れはじめます……
 
 
 
★全体印象
 
 5話です。
 今回は3話までの段階で置かれていた清司郎関連の回収を行うとともに、
 彼がパートナーとしてジェリーモンを得るエピソードでもあります。

 予想はしてましたが、清司郎とジェリーモンの関係性は極めて斬新というか
 今まで見たことのない類ですね。瑠璃とアンゴラモンも相当ではあるけど。
 この辺りの新しさは、一番最初のキービジュアルを見た時から期待していました。
 今後も独自路線を突っ走っていって欲しいものです。

 ゲスト側も怪奇色、妖怪色が強く、マジラモンについては元々の設定が反映されてます。
 かつ非常に強い扱いで、仮にも神の使いと呼ばれるだけのことはありました。
 必ずしも敵を倒す必要のない作風だと、こういうキャラ付けもできるんですね。

 ジェリーモンがどうやってデジヴァイスを清司郎のもとへ持ってきたのかとか、
 宙はどの段階で清司郎にデジモンが付き纏っていると気づいたのかとか、
 いろいろすっ飛ばされている箇所はありますがそんなには気になりませんでした。
 肝心の清司郎とジェリーモンの二人をちゃんと描いてるのおかげでしょうね。

 脚本は3話から1回置いての十川誠志さん。作画面の顔ぶれは2話と共通です。
 演出の鎌谷悠さんは主にワンピ、プリキュアで演出と演出助手を歴任されてますが
 活動はここ10年ぐらいと見受けられるので比較的若手になるでしょうか。
 
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・宙

 いつの間にか清司郎の周囲にデジモンがいるっぽいとアタリをつけていた模様です。
 このため「もしかして先輩も…」となる過程がすっ飛ばされていることになるんですが、
 清司郎視点が強まっていると考えればそこまで不自然じゃないのかもしれません。
 3話も瑠璃視点から入ってて、彼は途中参加扱いでしたから。

 まあ想像するならデジヴァイスVがいつの間にか無くなっていて、
 その行方を追っていたら清司郎(というかジェリーモン)に行き着いたってところでしょうかね。
 2話みたいに前フリが欲しかった気もしますが、贅沢は言いますまい。

 清司郎相手に「無理だと思います」とジェリーモンの引き取りを断ったりもしています。
 意外なようですが、彼とて自分にどれぐらいのことができるのかは把握していて
 このケースは明らかに手に余るから「無理」って答えただけなのかもしれません。
 そこらへん、お人好しではあっても一定の限度は弁えてるのでしょう。
 まあ、実際ガンマモン相手だけで手一杯でしょうからね……

 そのガンマモンについては、さっそく透明化を活かして活動してます。
 おそらくトラブルは激減したことでしょうね。
 
 
 
・ガンマモン

 相変わらず無邪気に動き回ってますが、今回は宙ともども脇に回り気味です。
 バトルではベテルガンマモンに進化してるんですが、次に出てきたときは
 クアトルモンに拘束されて身動きが取れなくなってました。
 割とすぐに解放されましたが、そのあとは特にこれという出番はありません。
 
 
 
・瑠璃

 いつの間にか清司郎が名前を知ってました。どっかの段階で宙から聞いただけなんでしょうけど。
 異変に気づいて宙組とともにあれこれ動いてましたけど、やはり脇に回り気味です。
 戦闘に至ってはゴートモン相手に相方共々動きを封じられており、見せ場らしいものはないです。
 
 
 
・アンゴラモン

 知っているのかアンゴラモン。
 相変わらずの博識ぶりを発揮し、マジラモンたちのことも教えてくれました。
 最後はまたまた詩で締めており、相方の瑠璃より目立ってたかもしれません。
 彼のデジモン解説と詩での締めは、本作の定番パターンになっていくのかも。
 
 
 
・清司郎

 今回でキャラ性が一気に補填されました。
 普段はビビりだけどスイッチが入ると別人のように腹の据わったところを見せつつ
 真正面から土下座をして詫びを入れるという空中技を発揮しています。
 どこまで行っても責任感と誠実の人なんですね。どっかズレてるのも含めて。

 加えてその天才ぶりもいかんなく発揮しており、誰も気づかないうちに
 バーチャルお守りを仕込みまくるというテクニカルなことをやってました。
 いやまあほぼ犯罪だしやり過ぎなんですけど。手段を持ってるビビリって怖い。

 一方で重度のアニメオタクであることがジェリーモンにバラされており、
 留学を取りやめて日本に戻ってきたのも日本の学生生活に憧れて、というオチに。
 あげくの果てに、右手の包帯はなんとただのファッションだそうです。
 絶対デジモン絡みだと思ってたんですが良くも悪くも裏をかかれましたわ。

 総じて、早くも非常に面白い人物に仕上がってると感じます。
 丈先輩と光子郎を悪魔合体させて石田彰で煮込んだようなキャラ、とでもいうのか。
 その技能は、なんだかんだで今後も一同のブレーンとして役立ってくれそうですね。
 
 
 
・ジェリーモン

 1話からずっと清司郎に付き纏っていたようですが、今回が初登場となります。
 最初は頭の傘に胴体を収納した状態で現れましたが、予告でもこの姿が出てたので
 必要がなければこちらがデフォなのかもしれません。設定通りってことかな。

 見かけ通りに知能は非常に高く、いつの間にかデジヴァイスVの情報を得ていて
 清司郎に身につけさせ、その実体を現しました。
 またプログラムを書き換えるなど、ハッカー顔負けの技術も持ち合わせています。

 なぜ清司郎に付き纏っていたかというと理由は単純で、「怖がる様子が面白いから」でした。
 要するにリアクションがあまりに理想的なんでハマってしまった、ってことでしょうか。
 生来と思われるイタズラ好きが、これに拍車をかけていたわけです。

 ただそのイタズラは古風なポルターガイスト的振る舞いをしたり、天井にケチャップで
 血文字のようなものを描いたりといかにも恐ろしげな演出になっている一方、
 清司郎自身を直接害するようなものではなかったというのがポイントです。
 3話のドラクモンに比べればだいぶ可愛げのある方でしょう。
 宙も放置したところで然程危険はないと判断したのか、排除しようとはしてません。

 とはいえバーチャルお守りを書き換えたことで結果的に清司郎が危険にさらされ、
 それでも逃げずに対処を試みる彼を見て手を貸すなど、メインを張るだけのことはあり
 根は人情家なところもちゃんと見せています。態度はツンツンですけども。
 上記のような書き換えをしたのも、一応人間界のルールを知る目的あってのことだし。

 クライマックスでは、ここ一番でスイッチの入った清司郎との連携で必殺技
 「ビビサンダー」を発動。最後のバーチャルお守りを破壊し、場を収めるための
 言わば仕上げを行うこととなりました。

 他の二組同様に割と成り行きで清志郎のパートナーになった感はあるのですが、
 土壇場でこそ輝く清司郎にホレちゃったように見えます。
 これはそのうち「ダーリン」呼びがデフォになるんでしょうか……?

 中の人は島村侑さん。
 「Gのレコンギスタ」のアイーダや「Go!プリンセスプリキュア」の春野はるか、
 「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」のゼルダ姫など、お姫様および
 それを連想させる人物を演じることが妙に多い方ですが、本作では打って変わって
 蓮っ葉でちょっと荒っぽい口調です。もちろん「アプモン」のオフモンとも違う。
 ただそこにしっかり愛嬌があるところは、島村さんの持ち味ってやつでしょうね。
 
 
 
・マジラモン

 金の流れを司る神の使い、という肩書きの完全体デジモン。
 ジェリーモンがバーチャルお守りを書き換えたことで金融の流れがストップしてしまい、
 これに腹を立てて清司郎へ天罰を下すために現れました。
 清司郎にとっては完全なトバッチリだし、よく考えてみたら神様がどうとか言っても
 勝手に名乗ってるだけなんですが、金の流れが止まってしまったのは事実。
 金融システムと関わりが深いのだとすれば、彼ら自身の営みにも関わるのかもしれません。

 これまでに現れたデジモンの中でも最大級の巨体を誇り、宙を瞠目させたほど。
 その戦闘力に至ってはメイン組と直接まみえてすらおらず、計り知れないものがあります。
 通行の直前には大地がひび割れて大量の白蛇が出現するなど、完全体とされる中にあっては
 現実に強く影響を与えるほどの力があることもわかります。

 宙たちを従者にまかせ、自らはデジタルシフトした寮に到達。
 そのまま百八つの宝矢で標的を射抜く「ヴェーダカ」を発動しようとしますが、
 直前で最後のバーチャルお守りが破壊され、清司郎が土下座して二度としないと誓ったので
 これを許し、従者とともに去っていきました。
 心の底から謝罪すると赦してくれるあたり、神の使いっぽいといえばそれっぽい振る舞い。

 総じて「キング・デヴァイス」の噛ませで意志を示すこともなかった「テイマーズ」版と異なり
 大変な強キャラとして扱われています。従者ともども清司郎以外を害しはしませんでしたが、
 まともに戦ったら現時点の宙たちでは歯が立たなかったでしょう。
 上記した通り、相手を倒す必要がないなら主役より強い相手を出すこともできるわけです。

 中の人は宝亀克寿さん。渋いオヤジ役を一手に引き受けてる感のある方です。
 本作の次の時間帯で放映している「One Piece」では名実ともにメインキャラ担当となりました。
 前番組にあたる「デジモンアドベンチャー:」にもミノタルモン役で出演していますが、
 デジモンシリーズへの出演は意外にもこのミノタルモンが最初みたいですね。
 
 
 
・クアトルモン / ビットモン / ゴートモン

 マジラモンの先導役でもある従者たち。
 従者とはいえその実力はかなり高く、クアトルモンはベテルガンマモンに巻きついて動きを止め
 ゴートモンは「ミスティックベル」で瑠璃たちを抑え、ビットモンは長い耳を武器に転化した
 「イヤーランサー」を突きつけて宙を動けなくするなど、強者ぶりを発揮しています。

 ただしそれ以上のことはせず、清司郎の裁きが下される直前には解放してくれました。
 喋りこそしないものの「邪魔はさせないが標的以外をみだりに傷つけるつもりはない」という姿勢が
 終始一貫されていたので、明確な意志と規範をもって行動していたことがよくわかります。
 まあ彼らルールなんで、行動としてはだいぶハタ迷惑なのですけれど。

 ところでクアトルモンとビットモンは「巳」や「卯」を連想させるモチーフなんですが、
 ゴートモンは山羊モチーフなんでこの解釈には当て嵌まらないことになります。
 羊モチーフにあたるシープモンやピロモンだと怖さが足りないからこっちで代用したのかな?
 なんにせよ「格の下がる干支が従ってる」って感じですね。
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「血文字ィイィィッ!」(清司郎)
 
 天井に描かれた血文字(実はケチャップ)を見て。
 よく見ると「これをつけろ」とメモ書きで済むようなフツーのことしか書いてないというか
 デジヴァイスVのことを知らせてるだけなんですが、わざわざこういう形にするあたりに
 ジェリーモンの性格が現れている気がしてなりません。
 …こーゆーリアクションを期待してのことなんだろーし……
 
 
「…1000個はある」(清司郎)
 
 バーチャルお守りをどのぐらい設置したのか、と聞かれて。
 これには宙も思わず「1000個!!???」とオウム返ししてしまっています。
 やるとなったら極端なまでにやる。こちらは清司郎の性格が現れてる場面かもしれません。

 
「…人の嗜好にケチをつけないでくれたまえ……」(清司郎)
 
 大学院まで行っていながら帰国して普通の中学校に通っている理由をバラされて。
 ついでに右手の包帯が伊達であることもバラされてしまっています。
 完全にイジケモード。心中たいへんお察しいたしますぞ……(ワケ知り顔)

 
「無理だと思いまーす。使い方教えますんで後よろしく」(宙)
 
 ジェリーモン(様)を引き取ってくれ、と清司郎に頼まれて。
 上にも書きましたが「無理なもんは無理」って時は割り切った態度取りますね。

 
「…こんな、でかいデジモンいるんだ…!」(宙)
 
 遠目からでも視認できるマジラモンの巨体を見て。目が輝いています。
 デジモンに関してはしばしば恐怖より、好奇心が勝るタイミングがあるようですね。
 それでよく痛い目に遭ってるし、これからもそうなのでしょうけど。

 
「ミーは興味を持った分野はとことん極めて、かならず一番になりたいさ。
 それには、ゲームのルールを知らなきゃなのさ。
 知ったあとは、誰よりも上手にプレイするだけさ」(ジェリーモン)

 
 バーチャルお守りの金運招来ブロックを弄り、金融システムをハッキングした理由を問われて。
 直後、これに思わず同意した清司郎が宙にツッコミを入れられています。
 こうして見ると、二人は実のところ似たもの同士なのかもしれません。

 
「そうはいくか! 僕はここの寮長だ!」(清司郎)
 
 さんざん恐怖を煽ってきつつ「逃げればいい」と焚き付けるジェリーモンに。
 直後に哀願へ移りますが、このセリフの瞬間はジェリーモンを圧倒していました。
 ちょっとだけ覚醒モードに入ってたのかもしれません。

 
「まだだ…! まだ終わりじゃない…!
 葉櫻学園学生寮寮長、東御手洗清司郎! 限界突破!」(清司郎)

 
 限界突破してスイッチが入りました。霹靂一閃。
 よく考えてみると状況が特に変わったわけではないんですが、この大ピンチを前にしても
 一歩も退かない清司郎の姿は、ジェリーモンの中に何かを芽生えさせることになります。

 
「すべての責任は、バーチャルお守りを作ってしまった僕にあります!
 本当にすみませんでした!
 葉櫻学園学生寮寮長、東御手洗清司郎の名にかけて、二度としないと誓います!」(清司郎)

 
 眼前のマジラモンを前に。促されてのこととはいえ、こんな堂々とした土下座は珍しいです。
 ジェリーモンの行動については一切言及していないのもポイント。
 まあ確かに、彼がやり過ぎなければここまでの大事にはなってなかったのは事実ですが。

 この誠実な謝罪に鷹揚さを示したマジラモンは、従者を伴って去ってゆきました。
 はた迷惑なところを含めて実に神様らしい方々です。

 
「龍神雷同してクラゲが一匹。さすれば世は事もなし」(アンゴラモン)
 
 今回の事件を評しての詩。まさかこれ毎回やるんすか??? チアフルタイム??

 
「…ダーリン……」(ジェリーモン)
 
 ラストシーンの一言。
 わずかながらもこれを聴いたのが瑠璃だけというのは重要ポイント、かも。 
 
 
 
★次回予告

 今度のテーマはカラオケ。
 カラオケといえば歌、歌といえば……ということで、次はセイレーンモンみたいですね。
 設定だと善性の高いデジモンなんですが、こっちでは名前のモチーフである
 人を惑わす魔女としての側面が強いように見えます。果たして。