ラクガキ
脚本:十川誠志 絵コンテ・演出:池田洋子
作画監督:舘直樹/澤木巳登里/冨田恵里沙/金久保典江
総作画監督:石橋大輔
★あらすじ
デジタル写真のどこかに赤いラクガキが現れて少しずつ少しずつ大きくなり、
しまいにはその部分に恐ろしい影響が出るという噂の怪現象「赤くしゃ」。
48時間後にはもっと恐ろしいことが起こると言います。
その「赤くしゃ」が、今度は月夜野瑠璃の写真にも現れました。
彼女の指の部分に、赤いラクガキが殴られていたのです。
写真はいくら消しても現れ、ラクガキも大きくなるばかり。
それに伴って瑠璃の左手は実体を失ったように薄くなり、左手にも影響が現れます。
これでは、毎夜嗜んでいるピアノを弾くこともできません。
そしてピアノを弾くたび、側に感じる何者かの気配。瑠璃は次第に追い詰められてゆきます。
そんな折、突然届いたダイレクトメール。送り主は宙でした。
宙は瑠璃の背後にいるアンゴラモンを見咎め、瑠璃の様子を探っていたのです。
そのアンゴラモンの証言で、「赤くしゃ」の犯人はドラクモンというデジモンの仕業と判明。
実体化を目論んでいるドラクモンに対し、宙はデジヴァイスVを餌にこれを誘き寄せますが
邪眼で精神を操ってくる「アイオブナイトメア」により思わぬ苦戦を強いられます。
アンゴラモンがなんとか止めようとするのですが、事態は悪化するばかり。
デジヴァイスVを介し、アンゴラモンの必死の想いを知る瑠璃。
アンゴラモンは瑠璃のピアノが大好きで、人知れず彼女を守り続けていたのです。
瑠璃は意を決してデジヴァイスVの機能を活用し、アンゴラモンを実体化させました。
これにより力をも倍増させたアンゴラモンはドラクモンをKOし、事件は解決を迎えます。
平謝りして邪眼を差し出し、逃げ去ったドラクモン。が、まったく反省していませんでした。
しかも邪眼にはいくらでも予備があったのです……
★全体印象
3話です。
序盤の立ち上げ時期に一週開くという手痛いことになりましたが、2話までの感触は良好。
ここでさらに良い感触が重なれば当面は安心しても良さそうな局面だったわけですが──
結論から言って、引き続き良い感触を得られたと思います。
瑠璃とアンゴラモンの出会い、状況を作ってのパートナー化が過不足なく描かれてました。
彼女たちに視点を絞り、宙とガンマモンの見せ場を殊更に作らなかったのもかえって好印象。
なんでこんな急にマトモになったんだろう、と本当に首を捻りたくなるぐらいです。
それでもどこかの時点で失速するのではと身構えてしまうのは、悲しい習性というやつです。
一体いつから、しなくてもいい心配を抱えながら見ないといけなくなったのか……
ここらで全面的に払拭してほしいところではありますよ。
一視聴者としては、面白くて語りがいのあるデジモンアニメが見たいだけなんですから。
作画に関しては引き続き良好。
演出と絵コンテを担当しているのは昨年「ヒーリングっど♥プリキュア」でSDを務めてらした
池田洋子さんです。「クロスウォーズ」「アプモン」でも演出関係を歴任しておられるので、
デジモン系の経験・実績も豊富ということになりますね。
何よりこの方「怪談レストラン」のSDでもあるんですね。
ゴーストゲームの路線を踏まえると、この上なく頼もしいスタッフが来てくれたと言えそう。
★キャラなど個別印象
・宙
後半パート間際になってからの登場。
前回までで一通りのことはやったので、今回は脇に回っています。
これ見よがしにアンゴラモンの実体化を試みてドラクモンを誘き寄せるなど、
相変わらず頭の回るところを見せてくれました。
ただドラクモンには「アイオブナイトメア」で複数回にわたって操られてしまい、
危うくドラクモン実体化の片棒を担がされそうになるなど危うい場面も多々。
しかしこれはドラクモンの技が想定外のものだったうえ、なまじ実体化前でも見えるせいで
その影響をもろに受けてしまったなど、やむを得ない部分はあります。
デジモンの技に人間が対抗するのは無理があるし、まあ仕方ないですよ。
瑠璃へデジヴァイスVを託したのは正しい判断だったわけだし。
・ガンマモン
宙とともに瑠璃のもとを訪れ、ドラクモン退治に加わりました。
実力行使担当でしたが、宙と同じくドラクモンの技で操られがちだったせいで
活躍としてはほとんどできていません。アンゴラモンへ譲った形。
・瑠璃
本筋へ初めて本格的に絡みました。Aパートで実質的主役をつとめます。
上記の通り、デジヴァイスVを介してアンゴラモンを実体化させました。
今後はOPの通り、コンビを組んでホログラムゴースト事件へ挑むのでしょう。
初の見せ場とあって、さまざまな顔を見せています。
消しても消しても現れるラクガキとその写真や徐々に徐々に消えてゆく指に怯える顔や、
そのせいでピアノもろくに弾けなくなってしまったことを実感し思わず涙ぐむなど、
強気に見えても普通の中学生女子であることがよくわかります。
物怖じしない性格かと思い込んでいたら、結果的にはそうでもなかったわけですけど
それはこっちの思い込みに過ぎず、未知のものに出くわしたら怖がって当たり前だし
味方してくれるといっても疑わしく思って当たり前です。
それが普通なんですよね。まして怪奇色が強い作風であるならば。
というわけで、好感度はむしろ上がっていたり。
ただ、正体がハッキリしていて信頼できる相手には割に攻めの姿勢ですね。
そういうところは第一印象通りかも。
・アンゴラモン
瑠璃の後ろで背後霊のようにずっと控えていた成長期デジモン。
初登場は2話ラストですが、宙に目撃されたことが今回に繋がっています。
寡黙であんまり口をきくタイプじゃないですが、言動は極めて理性的。
もっとこう、マイペースでゆるい感じのキャラかと思っていたのですけど
口を開くとキリッとした冷静な印象で、良い意味で予想を裏切られました。
このギャップ、なかなかいいですね。
「気は優しくて力持ち」を地で行き、音楽を愛する穏やかな性格です。
特に瑠璃のピアノが大好きで、夜ごとベランダに佇んでこっそり聴いていました。
瑠璃には一種の霊感があるのか、気配だけはわずかに感づかれてたようですが
彼のこの行動とその告白が二人の信頼を繋ぐ第一歩になっています。
瑠璃を守るのには都合が良いことから実体化を特に望んではいませんでしたが、
ドラクモンの所業でそれでは瑠璃を守りきれないと実感したことから、
自ら瑠璃に懇願して実体化を遂げ、パートナーとなりました。
実体化によってパワーをも得たのか、以後はドラクモンを圧倒。
「ダブルラリアット」と「ピョンダンプ」の連続攻撃で勝利を収めました。
瑠璃との連携で技も大幅パワーアップしているものと思われます。
シリーズでは珍しいタイプの取り合わせだし、今後も期待したいです。
中の人は中井和哉さん。デジモンシリーズのレギュラーとしては2回目の登板です。
クール系だったガオモンの雰囲気のまま素朴さを交えた演技になっており、
中身のイケメンぶりを逆に強調する形になってるのはさすがですね。
・清司郎
寮へ二つ目のデジヴァイスVを取りに戻っていた宙を呼び止めました。
早退した宙を気にかけての行動で寮長らしい行動なんですが、如何せんタイミングが悪い。
いい人なんだけど間が悪い、という立ち位置になってゆくのは間違いなさげです。
どうやら身の周りの事態がエスカレートしているらしく、宙のデジヴァイスVに
魔除けの効果があるのではないかと勘繰っていました。ある意味間違ってないのか??
・ドラクモン
設定ではダークエリア随一のイタズラ好きと言われる成長期デジモン。
「赤くしゃ」と呼ばれる怪現象の正体です。
その手口は標的が映っている写真の一部にラクガキを施し、それを現実に反映させるというもの。
カメラを通して標的が怯え苦しむ様子を見て大いに楽しむという、イタズラの域を超えた
悪意にまみれた所業を好む手合いです。なかなかの外道っぷり。
こいつに狙われると自転車が壊れたりピアスが割れたりは序の口で、足が動かなくなって
事故を起こしたり、髪が際限なく伸びてまともな生活ができなくなってしまったり
被害者はどんどん神経をすり減らしてゆくことになります。
瑠璃の場合は両指が透けてしまい、次第に物へ触れるのも難しくなっていきました。
48時間経つとどうなるのか具体的には語られませんが、命に関わるかもしれません。
素早い身のこなしを誇り、実体化前のアンゴラモンでは何度やっても捕まえられませんでした。
さらにデジヴァイスVの奪取を試み、得意の「アイオブナイトメア」で宙を操って
デジヴァイスVを使わせようとするなど悪知恵にも長けています。
成長期ながら、これらの悪辣な能力によって瑠璃を窮地へと追い込んだ手強いヤツです。
が、瑠璃の決心を受けて実体化を得たアンゴラモンにはまるで歯が立たずKOされ、
邪眼を宙に差し出して命だけは助けてもらい、その場を逃走しました。
…のですが、そのあとすぐに邪眼を再生させて全く懲りていない強かさをも見せつけています。
本作は現状、悪さをしたデジモンを懲らしめるか認識の間違いを理解してもらう方向ですが、
こうした悪性デジモンの悪さをより強調するという点では効果的な路線みたいですね。
中の人は宮田幸季さん。デジアド無印からのファンにはお馴染み、ピコデビモンの人です。
憎々しさとコミカルさと情けなさが同居した声は小悪党にピッタリなんですが、
今回は憎らしさが強めに出ていたかもしれません。
窮地を逃れるためにはどんなことでもする厄介さに、この方の声が拍車をかけてたと思います。
★名(迷)セリフ
「誰! どういうつもり! こんな酷いことしてるのは!
あんたなんでしょ!」(瑠璃)
指の異常のせいで、ピアノもまともに弾けないと悟っての叫び。生来の気の強さが見て取れます。
カメラから何かの気配を感じ取っていたし、見えずとも霊感は鋭いのかもしれません。
ただし気配の区別まではつかず、この時点ではドラクモンとアンゴラモンを混同しています。
「僕はアンゴラモン。時間がないんだ、先に誤解を解いておきたい。
瑠璃に取り憑いているのは僕じゃない。ドラクモンだ」(アンゴラモン)
やりとりなど一部略。第一声です。めっさイケボ。
人間で言うなら偏見入ってますけど、寡黙なネイティブアメリカンという印象ですね。
なお直前にドラクモンと一戦交えているため、ところどころダメージ描写が見て取れます。
「あああ、どうしよう… お守りだけじゃ足りなくなってきてるのに〜っ!」(清司郎)
寮で宙を呼び止めた場面の最後を占めるセリフ。
どうやら事態がエスカレートしてるようですが、まだ誰にも話せていない感じです。
相手がジェリーモンだからそれで済んでるのか、ジェリーモンにむしろ守られているのか……
「僕は…君のピアノが、好きだ…!」
「えっ…… 窓の外にいたのは、あなただったの……」
「僕を実体化してくれ…… 守る…! 絶対に君を守るから!」
「…だったら次からはもう…隠れて聴いてないで、姿を見せてよね!」(瑠璃とアンゴラモン)
アンゴラモンをが実体化を遂げる際のやり取り。
ただその人の奏でる音色のために。ただそれだけですが、アンゴラモンにとっては
それだけで瑠璃を守るには充分すぎる理由なのでしょう。
この殺し文句にも似たセリフが、瑠璃に決心を促す原動力となってゆきます。
これよ、これ。こういうのが見てえのよ…!
「バーカ。予備の邪眼はいくらでもあんだよ…!」(ドラクモン)
ラストシーンのセリフ。1ミリも懲りていません。
悪意をばら撒いて楽しむためなら相手の靴を舐めて地を這うぐらいのことは平気でやるという、
その姿勢は悪役の鏡ではあります。威厳はないけど怖さはある。嫌いじゃないですね。
そういえば「悪意を持ったやつなんかいくらでもいる」とも言ってましたね。
邪魔をされないために、今度は悪意のある人間を利用してくるのかも…?
★次回予告
ハロウィンとくればこのデジモン、ってことでパンプモンの出番です。ですよね!
本来の設定では悪質な存在ではなく、無印でもヤマトたちを庇いだてしてくれましたが
どうも今回はあんまりお話しできる雰囲気じゃなさそうですね?
声は七緒はるひさんなのか、それとも……