口縫男

脚本:十川誠志/冨岡淳広
絵コンテ:地岡公俊/野呂彩芳/志田直俊 演出:野呂彩芳
作画監督:西野文那 総作画監督:北野幸広/舘直樹

★あらすじ

 ホログラム技術が今よりも発展した、ほんの少し未来の世界。
 世間は「ホログラムゴースト」と呼ばれる都市伝説の噂で持ちきりでした。
 「それ」はただ現れるだけでなく、人を襲うこともあるというのです──

 半年前に父が失踪し、一人で寮暮らしをしている中学生、天ノ河 宙(あまのかわ ひろ)。
 彼の通う葉櫻学園にも、その「ホログラムゴースト」が現れます。
 「口縫男」と呼ばれるそれは奇怪な前兆を伴って現れ、人の「時間」を奪うというのです。

 そして、それは誇張でも都市伝説でもない現実でした。
 面白半分で現場を調べに行ったクラスメイトの野村コタロウが「口縫男」に襲われ、
 老人のような姿にされてしまったのです。まさしく時間を奪われたかのように。
 同行していた宙も危機に晒されましたが、その場は運よく難を逃れます。

 部屋に戻った宙を待っていたのは、謎のDimカード。
 それは、父の失踪現場に残されていたデバイス用のものでした。
 填めてみた宙のもとに、突然ガンマモンと名乗る「デジタルモンスター」が現れます。
 さらに父のホログラムメッセージが現れ、一方的にガンマモンを託して消えてしまいました。

 混乱醒めやらぬうち、口縫男ことクロックモンが再び襲ってきます。迎え撃つガンマモン。
 宙は戸惑いながらも機転とデバイスの力でガンマモンを支援し、一撃を加えました。
 時計盤の針を壊されたクロックモンは、捨て台詞を吐いて逃げ去ってゆきます。

 いったい何が起こっているのか。父が今いるというデジタルワールドとは何なのか。
 謎と怪奇と恐怖をはらみ、宙とガンマモンの奇妙な冒険が始まろうとしていました。
 
 
 
★全体印象
 
というわけで始まりました、デジモンゴーストゲーム。
映像分野における既存作要素のない「完全新作」としてはアプモン以来5年ぶりです。
気付いたらもうこんなに時間が経っていたのか……

今回はデジアド:までとはガラッと傾向を変え、怪奇要素を押し出している作風です。
これはOPの段階から徹底されているため、それだけでも好感が持てますね。
また1話としてはやや珍しくバトルが夜間に行われており、本作の傾向を強調していました。
(セイバーズも夜間でしたが、本作ほど「夜」を強調する演出はされてません)

全体としては特に気になる穴もなく、1話としての掴みはオッケーな仕上がりです。
デジタルと怪奇要素はもともと相性がいいし、やり方次第で話のバリエも増やしやすいはず。
もうすぐハロウィンというのも、方向性を考えると好都合かもしれませんね。
まだどうなるか油断はできませんが、この調子で続くなら感想の筆致もノリそうですぞ。

脚本は当然のように構成の十川誠志さんなんですが、:の冨岡さんと連名になってます。
何やら、楔が外れたみたいに自由に書いてる気が……考えすぎかな、うん。
また絵コンテにはかなり人数をかけていて、:の最終話並。気合入ってます。
作画自体、1話という点を差し引いても良好。短いながら戦闘の密度も濃いめです。

脚本同様、メインスタッフの多くは:からの続投ですが新顔も見えます。
演出の野呂彩芳さんはやはりというか、鬼太郎に(6期)に参加していた方。
演出助手が多めなあたり、演出スタッフとしてはまだ若手なのかもしれません。
作画監督の西野文那さんは、様々な作品に参加されている方。
とりわけ「アクエリオンロゴス」には大きく関わっていたようですね。

そういえばOP作画に芳山優さんがおりました。
「トロピカル~ジュ!プリキュア」でキュアフラミンゴのバンクを描いてた方です。
担当箇所はアンゴラモンと瑠璃だそうな。サビの所かな?
 
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・天ノ河 宙

 キャラ絵の第一印象は「おとなしい子」だったんですが、実際はそうでもありません。
 割に荒っぽい口調も平気で使うし、父には「あのクソ親父」などと悪態をついたりします。
 お父さんは見た限り割とクソ親父なので、仕方ない面はあるのですが。

 中一にしてしっかりした朝食をちゃちゃっと作ったり、生活力があって器用ですね。
 お母さんは難民救済で世界中を飛び回ってるというし、お父さんは失踪前から色々ダメそうなので
 自然と鍛えられたのでしょう。とはいえそのお父さんの影響も大きいと自分で言ってますが。
 まさかピッキングまでできるとは思いませんでしたけど。もしかして大抵のことができたりする?

 咄嗟の機転にも優れており、小枝を投げつけて急激に大木へと成長させクロックモンを妨害、
 反撃の機会を作るなどの見せ場があります。判断力の高い子ですね。
 1話の段階でこれぐらい書けるほど人物が描かれた、というのは大きいと思います。

 戦闘ではデジヴァイスVを通じ、ガンマモンの技と連動できる模様。
 二人の気持ちが高まれば高まるほど高い威力を発揮しそうですね。

 声の担当は田村睦心さん。「デジモンアドベンチャーtri.」「ラストエボリューション」
 において泉光子郎を担当していた方です。晴れての主役抜擢ですね。
 少年役には「バトルスピリッツ 少年突破バシン」の頃から定評があるので安心感が違います。
 
 
 
・ガンマモン

 宙のパートナーにして「弟」。電人ザボーガーか君は。
 無邪気でたいへん好奇心旺盛、表情も豊かでキャラデザの印象を余裕で越えてきました。
 やっぱり実際に動くと違うもんですねー。

 一方で敵意には敏感、鋭い表情で相対します。普段とのギャップがまた良いですね。
 何事もフィーリングで判断する方らしく、「いい感じ」「イヤな感じ」で嗅ぎ分けてます。
 クロックモンのような手合いは当然ながら「イヤな感じ」に該当する模様。

 戦闘中にクロックモンの技を喰らってしまいますが、その際に時間を奪われた影響か
 凄まじい片鱗を垣間見せ、クロックモンを茫然とさせました。
 その秘めたる潜在能力を見せつけたと言えます。

 直後、宙の助力とデジヴァイスVによるフォローで必殺技「ブレイクロー」を繰り出します。
 直撃はしませんでしたが、クロックモンの時計盤を半壊させる威力を発揮しました。
 おそらく、宙がデバイスを介して連動したぶん攻撃力が跳ね上がっているものと思われます。
 爪撃が決め技というのはガッチモンを思い出しますね。

 偶然の一致かわかりませんが、彼の白い体色は夜間にこそ映える気がします。
 怪奇性を重視する以上は今回のように夜間での戦闘が多めになると予想されるので、
 この白色は見栄えの上でなかなか都合がいいんじゃないでしょうか。

 中の人は沢城みゆきさん。今や押しも押されぬ人気声優さんで、鬼太郎でも主役でした。
 デジモンシリーズには「デジモンセイバーズ アナザーミッション」に登場する神楽由麻や
 「デジモンワールド リ:デジタイズ」などに登場する御神楽ミレイなど
 ゲームキャラ役が主体でしたが、ここへ来てついに主役へ抜擢されたことになります。

 しかも普段の良い意味でのアホの子っぽさ、戦闘中のパワフルさなど
 しっかりと演じ分けており、さすがの実力を実感させてくれてます。
 たぶん、万が一ミレイが出てきたりしてもほとんど違和感はないでしょう。
 
 
 
・月夜野 瑠璃

 冒頭数分とコタロウの携帯画面に登場。
 中一にして「りるるん」という人気アカウントを保持しており、その知名度を活用して
 口縫男の情報を募っていました。本格的な活動はまだこれから。

 妙にふてぶてしい態度ですし、もうすでにパートナーを得ているか
 もしくは単に怖いもの知らずなのかもしれません。
 でも確か、宙のところにはデバイスが三つあったような……

 声の出演は小林ゆうさん。「クロスウォーズ」にゲスト役で出たこともあります。
 少年役や姐御肌な女性役が目立つ方とあって、こういった役柄は目新しさがありますね。
 ただ、単に可愛いだけの役で終わるとも思えないのでそこは期待します。
 
 
 
・東御手洗 清司郎

 葉櫻学院男子寮の寮長をつとめる2年生。メインの人間キャラでは最年長です。
 アメリカの大学院を出ている天才だそうですが、なぜか普通の中学校に通っています。
 たぶん何か理由あってのことなのでしょう。

 常に上から目線な喋り方をするのですが、露骨に臆病で腰が引け気味という憎めない人。
 また彼なりの思いやりもあり、口縫男に襲われた宙に声をかけて御守りを手渡すなど
 寮長らしいところは見せてくれています。

 天才といいつつオカルトに傾倒しているように見えますが、これもワケありでしょうね。
 常に包帯をしているあの右手も、伊達や酔狂でやってるわけじゃないんでしょう。
 すでにジェリーモンに付き纏われてて、でも原因がわからず苦慮しているのかも。

 声の出演は石田彰さん。ウィザーモンですね。
 「無人惑星サヴァイヴ」のハワードがそうだったように、こういう神経質でちと情けない
 残念なイケメンをやらせても右に出る者はいない方です。堪能させてもらいましょう。
 
 
 
・野村 コタロウ

 宙の友人。寮は個室なのでルームメイト、というわけではないみたいですが
 しょっちゅう宿題の写しをせびってくる程度には気の置けない間柄のようです。
 立入禁止の区域へ勝手に入ろうとしたり、どちらかと言えば悪友ポジションでしょうか。

 宙のことは割と露骨に「使えるヤツ」扱いをしていますが正直で裏がないとも言え、
 宙も頼られるのには慣れてるっぽいのでまあまあうまくやっているように見えますね。
 変に取り繕ってくるより余程いい、という考え方もあります。

 今回はご覧の通りクロックモンに襲われて一時的に老人の姿にされてしまうのですが、
 時計盤を壊されたクロックモンが奪った時間を吐き出したため、無事もとへ戻ってます。
 これに懲りずに事件へ首を突っ込み続けるなら、トラブルメーカーになりそう。
 あれだけ距離が近い間柄だし、急に出なくなるとも思えませんからね。

 声の出演は阪口大助さん。「アプモン」でハックモンを演じてた方です。
 小憎たらしいともちょっと情けないとも取れる演技が絶妙。
 
 
 
・クロックモン(口縫男)

 人間の時間を奪い取り、それを眺めることが大好きだというマシーン型デジモン。
 前作までと違い、名前のテロップが出たりすることはありません。
 本来は相手の時を止める技を使うのですが、嗜好に合わせて変化させたのでしょうか。

 出現直前には携帯にコールが入り、時計が狂い、いざ出てきた際には
 「今何時?」と尋ねてくるという怪談さながらなシークエンスを踏みます。
 登場までの経緯があまりに怪奇だったため、「口縫男」として噂になっていたようです。
 普通の都市伝説と異なるのはどう答えても襲われるのは同じであることと、現実であること。
 標的を恐れさせるためにわざと演出している可能性はありますが、定かではありません。

 劇中ではモブの女生徒、続いてコタロウを襲い、宙も襲おうとしますが大人が来たので退散。
 あまり大っぴらに姿を表すのは面倒が増えるので好まないってことなんでしょうけど、
 大人は彼にとって旨味が少ないので「ついで」であっても狙いたくはないのかもしれません。

 後半でふたたび宙を襲いますが、ガンマモンに妨害されます。
 ならばとその時間を奪おうとしますが、秘めたる恐るべき片鱗を見たことで茫然となり
 その隙に宙の妨害を許し、さらにブレイクローの一撃で文字盤を壊されてしまいます。
 これによって奪った時間が放出され、犠牲者たちを元に戻す結果につながりました。

 斃されることはありませんでしたが、おそらく当分悪さはできないでしょう。
 1話の敵を逃がすというのは珍しいパターンですが、何体かのデジモンは一回限りでなく
 セミレギュラーのような形で出没を繰り返すのかもしれませんね。

 中の人は岩田光央さん。「アプモン」1話のメッセモンと同じ人です。
 これを偶然とみるか、
 
 
 
・ブラックテイルモン

 テイルモンの亜種。今回はなにやら運送屋みたいな格好をしてます。
 だとすると、帽子のマークはクロネコヤマトのオマージュでしょうか。
 宙の前に1カットだけ登場し、ガンマモンの存在を示唆しました。
 Dimカードを挿したら、ガンマモンを送り届ける手筈になっていたのでしょうか。

 よくみるとOPにもいますね。これはセミレギュラー確定かな。
 
 
 
・天ノ河 北斗

 宙の父。
 半年前にどう見てもただごとでない様子で失踪し、全く足取りが掴めない状態
 …だったのですが、なんとデジタルワールドにいるらしいです。

 失踪時に残っていたデジヴァイスV、そしていきなり届いた複数のDimカードを媒介に
 ガンマモンを宙へ託すなど、現在のところ謎だらけの人物。
 間違いなく本筋の鍵を握る人ですが、だからこそ今は表舞台に出られないってところでしょう。
 ついでに言うとメッセージはただの記録ホログラムであり、本人の所在は不明です。

 プライベートではどうやらだいぶ残念な人らしく、家のことは宙が受け持っていた様子。
 ただ「なんでも発明する」と言う言葉が本当なら、その才能は本物です。
 というか、目の前の目標に入れ込みすぎて周りが見えなくなるタイプなのかも。

 声の出演は高橋広樹さん。「テイマーズ」でインプモン及びベルゼブモンを演じてた方です。
 忘れがちですが「セイバーズ」ではオメガモン役もやってました。
 まさかこういう形で再登板するとは思いませんでしたな。再登場が楽しみです。
 
 
 
・OP / ED

 OPはWiennersによる「FACTION」。
 来歴について個人的には詳しくないですが、テーマにきっちり即した曲調で好感度は高いです。
 EDは藍色アポロの歌う「ペダル」。打って変わって優しげな曲調となり、OPと差別化されてます。
 やぶのてんや先生描き下ろしによるイラストが見どころ。
 どちらも良い感じですが、やはりOPがいいですね。アニメーションもイケてる。
 
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「はぁ……しょうがねぇなあ」(宙)
 
 コタロウに宿題のノートをせがまれて。
 宙を象徴するようなセリフになっていきそうな予感がします。
 この場面は完全ペーパーレスで、かつ「クラスチャット」なる概念が自然に出てきます。
 違和感が特にないあたりは時代を感じますね。80年代からすれば未来ドラマですぞ。
 
 
「断じて違うっ!
 君! 軽々しく人に疑惑の目を向けるのはやめたまえ!
 もし言霊が口縫男とやらを引き寄せたら、君に責任が取れるのかっ!?
 そうなったらどうしてくれるんだっ!」(清司郎)

 
 右手の包帯は「口縫男」に襲われたのを隠すためなのかとコタロウに疑われて。
 コタロウの発言もたいがい不謹慎なんですが、明らかに過剰反応です。
 口縫男がらみではなくとも、心当たりがあるのは明白。

 あとオカルト概念を混ぜてますね。オカルトが趣味なのか、周囲に怪現象が起きすぎて
 オカルトについて調べているうちに詳しくなってしまったのか……
 
 
「やっぱお前便利だわ~」(コタロウ)
 
 講堂の入り口をピッキングしている宙に。
 これもなかなかに人を選びそうな発言ですが、表立ってこういうことを言うのは
 ある意味正直ということだし、悪気はないのでしょう。

 宙もコタロウがそーゆーヤツとわかってて付き合ってるところはありそうです。
 あとそもそも頼まれたからってピッキングする方もする方ですわな。
 
 
「ヒロ。今日からガンマモンは、お前の弟だ。
 よろしくやってくれ!」(北斗パパ)

 
 で…出た~っ!
 言いたいことだけ言いっぱなしな割に肝心なことは何も言わないまんまな
 典型的クソ親父発言! オラなんだか逆にワクワクしてきたぞ!
 
 
「ヒロ! いい感じ!」(ガンマモン)
「まだよくわかんないけど…! 弟なんだろ!」(宙)
「おう! おれ、ヒロの弟!」(ガンマモン)

 
 小枝を投げて急激に成長させ、クロックモンの技を妨害した直後。
 この機転にはクロックモンも感心していましたが、ガンマモンにはもっとキたようです。
 さらにこの直後、脳裏に浮かんだイメージを基に宙が必殺技をコール、
 ガンマモンがこれに合わせて必殺技を繰り出すというシンクロが成されました。
 
 
「父さん…今いったい何が始まってんだ~!?」(宙)
 
 カービー将軍「第三次大戦だ」

 冗談はさておき、これもまた宙のキャラを象徴するぼやき混じりの問いかけです。
 いやホント何が起きてるんでしょうね。デジタルワールドは存在するみたいですが……
 
 
 
 
★次回予告

 ナビゲーターとして、竹中直人さんがなかなか良い感じに期待を煽ってくれてます。
 この方の起用にはどうしても「仮面ライダーゴースト」を連想してしまうのですが、
 果たしてどの程度意識しての配役なのでしょうか。

 さて、次はマミーモンですか。
 どうやらモチーフを優先して世代には縛られない方針みたいですね。
 それならそれでうまく回す手はあると思うので、半端をしなければ大丈夫だと思います。