踏み出す一歩
脚本:赤星政尚 絵コンテ:貝澤幸男 演出:石田 暢
作画監督:宇代祐規/大竹守/小松こずえ/佐藤敏明/細川修平/李 少雷
総作画監督:諸葛子敬
★あらすじ
ヒトミと行動していたトモロウとゲッコーモンは、チヒロという少女に出逢います。
チヒロはなんと、デジモンを連れていました。その名はアルゴモン。
しかし何か騒ぎを起こしているわけでもなく、引きこもりだったチヒロが
外に出る勇気を得たのもアルゴモンのおかげでした。
口外しないようヒトミに釘を刺され、トモロウも一時は受け入れかけるのですが
秘密は悪い形で露見することになります。アルゴモンは特殊なデジモンであり、
周囲の電子機器を無作為に狂わせる危険な存在でもあったのでした。
トモロウはともかくキョウ達と共に、チヒロの捜索へ出ます。
ところが同時に、ローズ配下のブリリアントソーンも動いていました。
二人が言い及んだ「デリート」という言葉にチヒロが恐怖をおぼえたことで、
アルゴモンは急速進化。完全体となり、ミラーワールドを展開してしまいます。
そこでチヒロを中心に、アルゴモンはさらなる異形を得て根を張りました。
このまま放置しておけば、チヒロはコールドハートに陥ってしまいます。
彼女を助け、アルゴモンもデリートさせないため、トモロウ達は奮起。
土壇場で完全体進化を遂げ、中心部に突入した彼らは真相を知ります。
二人でどこか知らないところに行きたい。それがチヒロの願いで、
アルゴモンはそれを叶える形で暴走していたのでした。
精神世界でアルゴモンとしばしの別れを迎え、再び引きこもったチヒロ。
しかし幼年期に戻ったアルゴモンがニリンソウにいると知る彼女は、
再びパートナーと会うため一歩を踏み出し、部屋を出るのでした。
★全体印象
31話です。
今回はゲストキャラを中心としたお話。トモロウがメイン代表で関わってます。
キョウの夢であり、今はトモロウの夢にもなった「人間とデジモンの共存」
について改めて言及されると同時に、その難しさを示す内容にもなっています。
今回のこのアルゴモンというデジモンは、特に危険な存在として知られてます。
ニリンソウでも浮いているし、カモフラージュマシンも彼の存在のせいか
調子が悪くなっているようでした。置いておくだけでも危険かもしれません。
ヘタをすると、この存在を端緒にニリンソウの存在が露見しかねない。
それに、アルゴモンによって起きた被害は極めて甚大です。
こんなのと共生なんてとんでもない、という考えもあって当然でしょう。
どちらかが我慢する形になるなら、果たしてそれは共生といえるのか。
これは「ウルトラマン」のシリーズでも幾度となく投げかけられた命題です。
なので今回は多分に「ウルトラ」っぽいお話といえるかもしれません。
そこらへんはウルトラ作品の研究本を何冊も出し、シリーズ作品においても
一時期大きな支えをなしていた赤星脚本の面目躍如といったところでしょうか。
ところで今回からブリリアントソーンの二人も本格参戦したのですけど、
活躍らしい活躍をしないという別の意味で意表をつかれるデビューでした。
それに名乗る際ポーズを決めたりローズへの過剰な忠誠をアピールしたりなど、
どちらかというとギャグキャラな面が目立っております。
スタッフはこの二人をいったいどうしたいのでしょう。少し不安です。
脚本は上述の通り赤星政尚さん。
貝澤幸男さんのコンテ登板は21話以来となります。10話ぶりですね。
★キャラなど個別印象
・トモロウ組
今回はゲストキャラの成長に一枚噛む役回りでした。
自分たちだけで精一杯だった頃のことを思うと、彼ら自身も成長してますね。
これが初期のお話なら、誰かもうひとり解決役が必要だったかもしれません。
トモロウのチヒロへの接し方は、終始にわたって器用じゃありませんでした。
でもだからこそ嘘や誤魔化しがなく、まっすぐに説得できていたと思います。
チヒロはもちろん完全に納得はしてませんでしたが、希望は残せています。
バトルでは状況が状況なんで、トモロウがずっと騎乗状態でした。
おかげでビーム喰らっても、乗ってるトモロウも平気という謎も生まれましたが。
というか必殺技の余波もめっちゃ後ろに出てたんですけど。
:では日常茶飯事だった現象なんで、うっかりスルーしかけてしまいましたが。
・レーナ組
アルゴモンの影響で街がパニックに陥る中、陰ながら人々を助けて回ってました。
主に墜落するドローンを破壊し、影響を抑える役。
・マコト組
残留組では一番苦労してたかもしれない方々。
アルゴモンの影響を抑えるのが精一杯で、根源の特定まではできなかったようですが。
それだけアルゴモンの干渉が凄まじかったということでもあるでしょう。
・キョウ組
こちらは地上において人々を守る役に回っていました。
ハイライトはムラサメモンが一瞬だけ道路に降り、バスを切り裂く場面でしょう。
なんなら一番印象に残るシーンだったかも。
・マキ
アルゴモンの危険性について教えてくれる役でした。
アメリカで起きた事例も把握しているとは、さすが情報屋です。
この世界、ちょくちょく非常にヤバいのが出現してるんですねぇ……
当時はどうやって退治したんだろう。成長期ぐらいまでのうちになんとかしたとか?
・ヒトミ
27話以来の意外と早い再登場。
デジモンのことをすでに把握しているため、一般人代表として頼りになります。
以前よく構っていたチヒロのことをなにかと気にかけるなど、心根の優しさも強調。
トモロウへの接し方も徐々に気安いというか、遠慮がなくなっているような……
幼馴染じゃないのに幼馴染っぽいムーブをしてる。
・ブリリアントソーン
今回から本格登場するローズ配下の二人組。
二人とも目のさめるような美形ですが、振る舞いはどちらかというと奇矯。
トモロウを前に名乗る場面では、わざわざ高いところでポーズを決めています。
ローズを呼び捨てにしたトモロウを咎めるなど、上司への忠誠も無駄に高いです。
バトルでは活躍するかと思いきや、途中でアルゴモン完全体の触手に捕まってしまい
そのまんま特になんもできずギャラリーに徹するという扱いになっています。
まさかの展開にちと唖然となりましたが、実力をアピールするには相手が悪すぎるし
チヒロの手前筋も悪すぎるので、ある程度やむを得ない部分はあるかもしれません。
じゃあなんでコレを初陣にしたんだという疑問は残りますが。
結果としてアルゴモンは幼年期Iに退化、トモロウ達に手柄を取られた形ですが
あんまり気にしておらず、なんか内輪でイチャイチャして終わっていました。
まあ自分たちで言っていた通り、本来の任務はGIFTの追跡なのかもですが。
他にもアルゴモン急速進化の引き金を引いてたり、今回だけ見ると良いとこなしで
総じて変なところばかりが目立っています。
そのビジュアルを逆手に取ったコメディリリーフもできることを示したいのか、
はたまた本領発揮はこれからなのか……今後の挽回に期待するしかないですね。
・オウリアモン/トロピアモン
カノンとメトのパートナー。EDで先行登場した際は成長期でしたが、今回は大半において
進化した状態で登場しています。しかも、なんといきなり完全体。
ランクだけ見ればチームセブンより格上です。
またオウリアモン、トロピアモンともに過去作においては敵役だったり
事件を起こす役だったりで、パートナー役のイメージからは遠い存在でした。
今回の抜擢、特にオウリアモンは意外でしたが、快挙でもあると言えます。
しかし相手が悪すぎたせいで、途中からパートナーともども拘束状態。
実力を発揮することができないまま、トモロウ達任せになってしまっています。
成熟期状態で拘束から脱出したアルマリザモンが凄いとも言えますが。
中の人はそれぞれ富沢美智恵さんと渡辺美佐さん。
富沢さんは「美少女戦士セーラームーン」の火野レイことセーラーマーズや、
「サクラ大戦」の神崎すみれ役で知られている方ですし、
渡辺さんは「ONE PIECE」のネフェルタリ・ビビで特に有名であるほか
「フレッシュプリキュア!」でのノーザ役で悪の大幹部経験も持つ方です。
渡辺さんの方は「ゴーストゲーム」にもサラマンダモンとして出演済。
両方とも大御所に近いベテランですが、出番の少なさも示してそうな配役。
二体の今後の活躍に影響しないと良いのですが。
・チヒロ
ヒトミと同じマンションに住んでいる引きこもりの少女。
以前は普通に笑う子だったそうですが、学校で何かがあって部屋を出なくなっていました。
本作は学校での圧も強そうだし、なにかと苦労したのでしょう。
親は未来の想像にしか出てこないので詳細不明。
経緯は不明ですが、アルゴモンはそんな彼女の孤独から生まれたのでしょう。
その存在が前向きをくれた面もありますが、依存気味にも見えました。
なぜアルゴモンだったのかも気になります。ただの偶然とも思えません。
彼女が心の奥底に抱えていた破壊衝動が、危険な存在を生んでしまったのでしょうか。
全部なかったことにしてやり直したい、そう思ったことだってあったかもですし。
ですがただそう願ったからといって、それだけでは彼女を責められないでしょう。
問題は、サポタマがそれに応えてしまったことにあるのですから。
とはいっても、彼女とアルゴモンの心が通じ合っていたのも事実。
彼女とて本当に世の中をメチャメチャにしてしまいたいわけではなかったし、
叶うことならば誰もいないところに行ってしまいたいと思っただけ。
アルゴモンも、本当は彼女が悲しむことはしたくなかったと描写されています。
でもトモロウの説得とアルゴモンとの別離を受け、彼女は悟ったのでしょう。
混乱は終わらせなければならなかったし、アルゴモンとの別れも受け入れねばならない。
そしていつか一緒に暮らすためには世の中だけでなく、自分も変わらねばならないと。
でなければ、また同じことの繰り返しになってしまうと。
だからアルゴモンと離れ離れになったあと、自分の足でニリンソウに赴き
私は大丈夫、いつか今度こそ一緒に暮らそうと伝えるために部屋を出たのでしょう。
それはアルゴモンの望みでもあるはずですから。
中の人は木野日菜さん。シリーズ初登板です。
ちょっとクセのある幼なげな声が特徴の方で、マスコット的役柄が目立つ印象。
「スター☆トゥインクルプリキュア」のフワはその代表でしょう。
守備範囲では「RPG不動産」のファーもマスコット的人物でした。
・アルゴモン
突然変異型の特殊なデジモン。
マコトによると、進化しても名前が変わらないタイプなのだそうです。
姿や特性、データ構成など「同一の拡張」としか分析しようがないからでしょうか。
もともとは「セイバーズ」の劇場版用ボスキャラとして用意された存在でした。
成熟期以下の存在が明かされたのは「デジモンアドベンチャー:」からです。
あちらではラスボスにも通じる、話し合いの全く通じない連中として描かれていました。
「セイバーズ」でも饒舌ではあったものの、やはり話が通じない相手です。
しかして今回ではチヒロの心が強く反映されているためか、その異形にかかわらず
確かに心がある存在として初めて描かれた形になっています。
コミュニケーション手段はツノ?の点滅しかできず、言葉も一切喋りませんが
その無機質さがかえってチヒロへの想いを強調しているようにも感じました。
もっとも、デジモン相手には言葉として意思を伝えられるようですが。
いや、厳密には違うのかな? デジモンにはキャッチできる「意志」を伝達して、
それをゲッコーモンが言語化していたという方が近いのかも。知らんけど。
後半では完全体に急速進化してチヒロを取り込んでしまいますが、アレも暴走であり
自分ではどうにもならなかったそうです。チヒロの願いを叶えたいと思っていても、
その気持ちと裏腹に周囲を巻き込む大パニックを起こしてしまうのかもしれません。
無力化してニリンソウに来たあとも、そのイレギュラーぶりは健在でした。
他の幼年期と違って単独で佇んでいたり、カモフラージュマシンに異常が起きていたり。
それを見た際のトモロウの表情には、いろいろ汲み取れるものがありそう。
大丈夫ですかね……? この存在を迎えたこと、今後の爆弾になったりしません?
★名(迷)セリフ
「トモロウは連れて行かないんだってナ! 国民ユズコショウじゃないから!」(ゲッコーモン)
「国民保護省な!」(トモロウ)
今回のボケツッコミ。本当に食い物がらみばっかりだな。
「アルゴモンが外に行きたがってたの。だからわたしも部屋から出られたの。
アルゴモンのおかげなの……」(チヒロ)
国民保護省が来たらアルゴモンを連れて行かれてしまう、と知って。
一見前向きさを得られているようですが、アルゴモン無しではいられないようにも見えます。
どちらかがどちらかに依存しているというのは、やはり健全とはいえないのでしょう。
「ボクも……ですけど……」(マコト)
チヒロはまだ小学生で、クリーナーになるには幼なすぎると主張するトモロウに。
これにはトモロウも思わず素で「あ……」と言うしかありませんでした。
でも英才教育受けてて優秀な上にド聖人なマコっちゃんと比べるのは無理があると思う。
「力づくというのは美しくない。できれば避けたいんだが……」(メト)
アルゴモンを隠したまま逃げようとするチヒロの前に立ちはだかって。
彼女らしいセリフ、と言えばいいのでしょうか。
この際無駄に宙返りを披露していますが、そのオーバーアクションを含め
知らぬこととはいえ初手からコミュニケーションを間違えています。
「アルゴモン……二人で、誰もいないところに行けたらいいのに……」(チヒロ)
土管の中に隠れながら。
彼女自身の恐怖と拒絶をトリガーに、この言葉が大変な事態を巻き起こすことに。
「ぼくはメト」
「わたくしはカノン」
「我ら、ローズ様にお仕えする華やかなる棘! ブリリアントソーン!」(メト&カノン)
なぜか高い場所で、三日月をバックにポーズを決めながらの名乗り。
何かロケット団を思い出してしまいました。いやロケット団のことはよく知らないけど。
しかし、この後のセリフがチヒロを不用意に刺激してしまいます。
「アルゴモンは……大切なお友達なの!」(チヒロ)
アルゴモンは存在してはならないデジモンと言い放つカノン達への、激しい拒絶。
それは「友」を守るためでもあったのですが、その「友」は激しい祈りに対して
過剰な反応をしてしまうという意味で確かに危険でした。
「早くデリートしないと、あの娘が……!」(メト)
トロピアモンに騎乗しながら。
こうしたセリフから、決して悪人とまではいえないことがわかると思います。
危険なデジモンはデリートするのが当たり前と考えているので、
そこがトモロウ達と噛み合わないところなのですが。
「ナイスー!」(レーナ)
墜落しかけたドローンを破壊し、地上の人々への影響を最小限に抑えて。
なんかイントネーションが面白かったので掲載しました。
「いいざまだな……!」(トロピアモン)
「まったくだわ……」(オウリアモン)
互いに技を封じられて。前半はトロピアモンからオウリアモンへの煽りなのですが、
直後にそのトロピアモンも口を縛られて技を出せなくなってしまったので
オウリアモンが皮肉と自虐を返すという流れになっています。
減らず口、とも言えますか。
「チヒロの願い……そう言ってるってナ!」(アルマリザモン)
アルゴモンいが伝えてきた意志の翻訳。
願いそのものは純粋ですが、同時に「叶いっこない」という絶望も孕んでた気がします。
こうなってしまったのはその絶望と、激しい拒絶が原因だったのかもしれません。
アルゴモン自身にも止められないほどの、喪失への激しい抗いが。
「デリートなんか……させるかよ!」
「助けるんだってナ! どっちも!」
「ああ! どっちもだ!」(トモロウ&アルマリザモン)
さっさとデリートしておけばこんなことには、と溢したメトへ反駁するように。
誰かを守るため心が、意志がひとつになった瞬間です。
こうなった彼らは誰よりも強い。
「……そんなことはしない。
今起きている大変なことを終わらせるために、元のアルゴモンに戻ってもらうだけだ」
「……一緒にはいられなくなる……今は……」
「だけど……いつか、必ず……
アルゴモンと一緒に暮らせる世界を、作るから……(トモロウ)
アルゴモンの中心、精神世界ともいえる場所に踏み込んでのチヒロへの説得。
言葉を選びながらも誤魔化しはなく、けれど冷厳な事実だけを語りはせず
希望はある、と伝えています。
これを受けたチヒロの想像には、ここにしか出てこない人物がいます。
右にいるのは両親でしょうが、左の三人は誰でしょう? 姉弟?
「夢なんだ。きっと叶える」(トモロウ)
そんなことできるの、とチヒロに聞かれて。優しい口調です。
キョウの夢が彼の夢にもなったという、大きなキッカケのひとつになりそう。
「頑張ったね、キロプモン……」(マコト)
アルゴモンが引き起こしたパニックを収めてみせたキロプモンに。
彼らこそは隠れたMVPというやつでしょう。
前回が前回とあって地味ですが、貢献度は絶大といえます。
「今日のところは僕らの負けだね」
「飛び込みの仕事だもの。悔しくもなーんともないわ」
「キミのそういうところさ、僕が好きなのは……カノン」
「メトったら……」(メト&カノン)
無事にミラーワールドを脱出して。良くも悪くも前向きです。
そして無駄にイチャイチャしている。
もしかして君ら普段からこんな調子なんですか?
「困難なのはわかりきっている。
夢を叶えるってのは……そういうことだ」(キョウ)
アルゴモンを気遣わしげに見ているトモロウに。
この特殊なデジモンをニリンソウに置くことにもでしょうけれど、
チヒロにああ言ったのはいいが本当に夢を叶えられるのだろうか、と
トモロウが不安を抱えていることを見抜いてのことでしょう。
不安はきっと、キョウ本人もきっとトモロウと同じくらいあるでしょうけれど。
「チヒロちゃん……! どこ行くの?」(ヒトミ)
「……ニリンソウっ!」(チヒロ)
ラストシーンのやり取り。
今までの自分からの脱却という命題を「部屋を出て友達に会いに行く」という
わかりやすいイメージで示したシーンですね。
髪を上げて瞳を出すという大幅なイメチェンが、それをさらに助長しています。
トモロウもキョウも、そして彼女も、諦めてはいないのです。
いつの日か、アルゴモンたちデジモンと本当に手を取り合って生きられる日を。
まあメカクレが好きな人は
「それを みせるなんて とんでもない!」って言いそうですけれど(台無し)
★次回予告
よく見るとあの情報屋の火野が再登場してますね。なんか死にそうだけど。
もしかして今度の敵は情報屋狙い? ってことはGIFT絡みかも。
ということは、マキにスポットが当たる話になるやもしれませんな。