君を守る翼

脚本:森地夏美 演出:三木琴絵
作画監督:北村友幸/山下梢/Lee_Seok_Yoon
総作画監督:浅沼昭弘

★あらすじ

久遠寺工業の直接指名案件を受け、シャングリラエッグを訪れたトモロウ達。
何者かがサーバールームに潜入し、データを盗み出そうとしたというのです。
目撃者の久遠寺ツカサは、マコトの双子の弟でした。
しかし久々の再会にもかかわらず、その態度は剣もほろろ。

やがて犯人と思しき人物が判明し、マコトはトモロウと調査に向かいます。
ところが、まるで待っていたかのように襲撃を受けてしまいました。
しかも相手は、キロプモンを執拗に狙ってきます。

その理由を悟ったとき、マコトを衝撃が襲いました。
すべては優秀だったマコトを手許に取り戻そうという久遠寺工業社長、
久遠寺セイジの画策だったのです。そのためにはキロプモンが邪魔なのでした。

苦しむマコトを見て、自分が生まれたせいだと罪悪感に囚われるキロプモン。
諦めてセイジに連れ去られそうになる彼を繋ぎとめたのは、マコトの一喝でした。
何があってもずっと一緒にいる。そしていつか、マコトを乗せて空を飛ぶ──

かつての約束を思い出したキロプモンはマコトの許に戻り、さらなる進化を遂げます。
その名もスカージキロプモン。マコトを乗せて飛ぶことができる姿です。
相手も完全体ヘルガルモンでしたが、今日の二人に敵はありませんでした。

戦いの中、エッグの隔壁を開いて戦いやすくしてくれたのはツカサでした。
昔キロプモンの存在をセイジに密告し、それがマコトの出奔に繋がったことを
彼はずっと後悔していたのです。そんなツカサを、マコトは快く許しました。
家を出てキロプモンと共に生きる覚悟をくれたのもまた、この弟だからです。

ですが、ヘルガルモンのサポ主だった宝生リクという男。
そのサポタマには確かに「GIFT」の文字が浮かんでいました。
彼の背後に存在する闇の実態を、グローイングドーンはまだ知りません。
 
 
 
★全体印象
 
30話です。マコトの過去がかなり詳細に開示されました。
そしてサブタイから予測できる通り、キロプモンの完全体進化回です。
前作に比べると進化回が予測しやすいのは作風の違いですね。

マコトは追い出されたのではなく、自分から家出したのですね。
それも家族に迷惑をかけないためでもなく友と離れたくない気持ちと、
そして自由を手に入れたいという一心での出奔だったわけだ。
なぜキロプモンが生まれたのかも、なんとなくわかった気がします。

つまり親父の方は、マコトを手放したいわけではなかった。
しかしそれが我が子可愛さからではないことは、劇中からも明白です。
これにより、逆にマコトの完全な訣別を招くことになりました。
完全に地雷を踏んでしまった形ですね。

苦さだけが残るところ、救いになったのはツカサの存在でした。
あの家の中にも、マコトに味方してくれるものはいたってことですから。
それだけで、マコトにとってはどれほど有り難かったことでしょう。

脚本は森地夏美さん。マコト組の前の進化回は會川さん担当でしたが、
今回はこの方にお鉢が回ってきた形です。キツい内容なのは同じですけど、
本作らしく最後は光が待っておりました。これがビートブレイクだ。

演出には久々に三木琴絵さんが登板。直近担当でもマコトが目立ってましたっけ。
 
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・トモロウ組

 ほぼノルマのようにボケツッコミを交わしながら、今回も脇ポジションです。
 戦闘参加も序盤だけで、あとは消火に専念していました。
 
 
 
・レーナ組

 前回目立った反動か、ほぼ特筆点がない状態です。進化も戦闘参加もなし。
 
 
 
・キョウ組

 こちらも戦闘には関わっていませんが、ツカサの機微を見抜いて話を聞き
 結果としてマコトへの協力に繋げているので、キョウの果たした役割は
 描かれている以上に大きいものがあると言えます。
 
 
 
・マコト

 今回で過去の相当の部分が判明しました。
 母親がどんな人なのかなど、まだわからないことはありますけれど
 それは重要じゃないか温存してるのかもしれないので、今は傍に置きます。

 以前、キロプモンが現れた理由が「友達が欲しい」という願いからではないか、
 と推測したことがあるのですけど、そうじゃないこともわかりました。
 たぶんマコトは久遠寺家での生活に息苦しさを感じていて、そこから少しでもいい、
 自由になれたら願った結果、デジモンが現れたのかもしれません。

 キロプモンだったのは彼が自己分析している通りの知識欲に溢れた性格で、
 それが鏡合わせのように反映された結果だからなのでしょう。
 ある意味、キロプモンが誕生したのはマコトの境遇のおかげとも言えます。
 すぐ意気投合したのは想像に難くありません。

 これで他作品のパートナーのように周囲と折り合いをつけられれば良かったのですが、
 もともとデジモンの存在自体を許容していない世界観なのでそれも許されず、
 だったらもうシガラミも何もかも捨てて逃げちゃおう、となったわけですね。
 拾ってもらえたのがキョウだったのは本当に幸運でした。

 そんな経緯だから、今までは父に対しても後ろめたさはあったはずです。
 でも今回のことで父がキロプモンのことを心底排除対象としか見ていないことや、
 自分を「久遠寺家の跡取り」という記号でしか見ていないことを思い知らされ、
 とうとう完全な訣別を覚悟することとなりました。完全体進化への引き金です。

 悲しかったでしょうけど、これでますます覚悟は固まったはずです。
 それに悪いことばかりではなく、当時はショックだったかもしれませんが
 ツカサが密告のことをずっと悔やんでおり、今回も手助けしてくれたと悟って
 互いに歩み寄ることができました。これだけでも救いになったと思います。

 それにしても、27話のアレを見せられた後にコレ持ってこられると重いです。
 いや本当に重いな。メガトン怪獣乗せてんのかいってぐらい重いですよ。
 
 
 
・キロプモン→ナイトキロプモン

 あまりにも優しすぎる、マコトのパートナーにしてマブダチ。
 マコトが苦しむのは自分が生まれたせいだと零し、諦めかけていました。
 正確に言えば、自身を排除しようとする動きに抗うことをやめようとしました。

 今までも、楽しく過ごしていても、時折考えることがあったのかもしれません。
 マコトが家を出ることになった最も大きな要因が彼であることは事実ではあるし、
 自分さえいなければ……と思ってしまったとしても不思議ではありません。
 それが今回の事態を受け、言葉として溢れちゃったのですね。

 でもマコトは自分で言っていた通り、キロプモンに感謝していました。
 それどころか、別れるぐらいならと一緒に出奔までしてくれたのです。
 自分を選んでくれたことは、キロプモンにとっても感謝しかない事実のはず。

 だから、マコトの一喝が心に響いたのですね。
 マコトの幸せは、自分がいなくなることではない。自分がそばにいることだと。
 どこまで高く飛んでも、ずっと共にあることなのだと。

 互いの存在の再確認。そして、互いの願いをもう一度噛み締めること。
 真の訣別を乗せ、黒い翼がさらなる進化を導き出しました。
 
 
 
・スカージキロプモン

 キロプモンがさらなる進化を遂げた完全体のマシーン型デジモン。
 「スカージ」には天災とか災害の意味があるのだそうです。なかなか物騒ですね。

 名に恥じず、特に攻撃力が爆発的増大を遂げました。
 とりわけ翼から繰り出す大型誘導弾「デスペアブラスト」の一撃は極めて強力で、
 直撃すれば完全体デジモンであろうと一撃で戦闘不能にできる威力があります。
 ナイトキロプモンまではどうしても火力不足の印象が付き纏っていましたが、
 これで相当の挽回ができたのではないでしょうか。

 機動力も体の大きさを感じさせぬほど高いままで、攻撃を軽々と躱しています。
 またヘルガルモンを捕まえてエッグの外へ連れ出し空中戦に持ち込むなど、
 単純なパワーにおいてもかなりの向上がみられます。
 モナークリザモンやムラサメモンと連携すれば、五行星にだって負けないでしょう。

 本作におけるポイントは、他の生き物を乗せるスペースが存在していること。
 設定によれば成長期デジモンなら乗せられるそうで、マコトにはジャストフィット。
 これは、マコトを乗せて空を飛ぶという二人の願いを叶えた姿でもあるのです。

 連携も今まで以上に取りやすいだろうし、かなりのメリットを享受していますね。
 マコトが成長したら狭くなっちゃいそうだけど……
 
 
 
・マキ

 本編冒頭、依頼内容を説明する役でした。
 社長は彼女がグローイングドーンへの依頼をよく斡旋していると把握しており、
 彼女に直接伝えたのでしょう。グローイングドーンへの依頼──巧妙な罠を。
 
 
 
・久遠寺ツカサ

 おかっぱ頭がチャームポイントなマコトの双子の弟。
 マコトが出奔した後、久遠寺工業の跡取りとしての責任を一身に負う立場です。
 宝生リクがサーバールームに忍び込んだ件の目撃者であり、その際の襲撃で
 右足を負傷。本編中はずっと車椅子状態でした。

 当初は上記の通りの塩対応で、トモロウやレーナをピキらせていましたが
 それは後ろめたさからくる態度で、本質的にはマコトに近い心根の持ち主です。
 後半のバトルでは自らの権限を利用してエッグの隔壁を開き、マコトを助けました。

 跡取りとしての資質はどうやらマコトに譲るらしく、そのコンプレックスから
 キロプモンの存在を父セイジに密告してしまったという過去があります。
 しかしマコトの苦しみを見て、明らかに己の行為を後悔していました。
 おまけにその場は逃げ出してしまい、さらにマコトを追い詰めてしまっています。

 以上の経緯ゆえ、マコトが自分を恨んでいるに違いないと思い込んでいたのでしょう。
 前半の態度は、そのことから来る恐れを迎え撃つ攻撃体制だったと思われます。
 認識的には喧嘩ではなく、許してもらえないから仲直りは無理と思ってたのですね。
 つまるところ、まともに顔向けができない状態だったわけです。
 
 でもキョウには表面に出ている以外の何かがある、と見抜かれていたようです。
 どのような経緯で協力を決意したのかは描かれていませんし、マコトに伝えるまで
 密告の件を黙ってたかどうかもわかりませんが、ずっと償いたがってたのはたぶん事実。
 後半での助力は、彼のせめてもの贖罪だったのでしょう。

 けれどマコトは彼を恨んではおらず、感謝までしてくれました。
 今回のことで、きっと肩の荷が降りたに違いありません。
 久遠寺工業はこれからが大変でしょうが、今後は良き協力者になってくれるかも。

 双子だけあり、中の人はマコトの関根有咲さんが掛け持ちで演じています。
 ちゃんと演技も変えているため、同じ声でも印象がけっこう異なりました。
 さすがはプロというべきでしょうね。
 
 
 
・久遠寺セイジ

 久遠寺工業の現社長。
 名指しの直接依頼でグローイングドーンをシャングリラエッグに招いた人物です。
 国民保護省の頭越しとは、それだけでかなりの影響力が見て取れますね。

 しかし、その依頼が罠だったのは書いた通り。
 マコトを手許に取り戻すべく、キロプモンを排除させるのがその目的でした。
 このために、サーバールームに忍び込んだ宝生リクへデータと引き換えに
 キロプモンを始末するよう密かに依頼しています。

 久遠寺工業、ひいては久遠寺家を守ることしか頭になく、そのためであれば
 ダーティな手も平気で使う冷酷な男として描かれています。
 一社員だったリクにさえ「どういう男かは知っているだろう」と言わせるあたり
 恐れられてはいても尊敬されてはいないタイプのようですね。

 デジモンのことをただの怪物、または道具としか認識していないのは確実。
 キロプモンの存在が発覚した時点でさえ、マコトから無理やり引き離そうとしていました。
 足蹴にして連れ去ろうとした場面から、今もその考えは全く変わっていないと言えます。

 でもそれ以上に問題なのは息子の、マコトの気持ちを全く慮れていないことです。
 息子の望みを知ろうともしないで、ただコントロールしようとするばかりでした。
 能力を見ることしかせず、心を見ていないのです。
 腹を割って話し合えれば、もっと歩み寄りもできたでしょうに。

 総じて、マコトの機微に恐ろしいほど無頓着な人物になっていました。
 あのまま首尾よくキロプモンを排除したとして、それでマコトが戻ってくれる──
 ひいては自分の言いなりになってくれるなどと、なぜ思えるのでしょう。
 そんなことは絶対にあり得ないのに。

 結果、マコトの完全な反逆に遭って訣別宣言される憂き目に陥っています。
 踏まなくていい虎の尾を踏み、藪をつついてしまう極め付けの悪手でした。
 でもこれは、息子を「跡取り」という記号でしか見なかった報いでしょう。
 自身がそういう境遇で育ってきたというなら、多少は同情もしますが。

 中の人は谷昌樹(あつき)さん。
 すでに70近い年齢ですが、アニメ声優としてのキャリアは2000年前後から。
 どちらかというと吹き替えとしてのキャリアが豊富に見えます。
 シリーズには「ゴーストゲーム」にてズィードミレニアモン役で出演済。
 もっとも、あっちはただ唸るだけの役でしたが……
 
 
 
・宝生リク

 久遠寺工業の社員にしてルガルモンのサポ主。
 ツカサの話では情報システム部所属の優秀な社員だったそうですが、
 「新興宗教」への傾倒が噂されて総務部へと異動にされていたようです。
 グローイングドーンの耳に「GIFT」の名が届いたのはこれが最初。

 その後なんらかのデータを狙いサーバールームに潜入したところツカサに見咎められ、
 ルガルモンに攻撃させてその間に逃走しようとしますが途中でセイジと遭遇。
 データ持ち出しを許すのと引き換えに、キロプモンの抹殺を依頼されました。
 何のデータを狙っていたのかは、未遂に終わったのでわかっていません。

 ぱっと見マトモな外見で、相方のことも可愛がっているように見えましたが
 GIFTに属しているため価値観が極端になっているだけみたいです。
 なぜそうなっていったのかは定かじゃないですが。

 しかしなんとルガルモンを完全体ヘルガルモンに進化させることが可能で、
 その力により一度はマコト組を圧倒してのけています。
 これほどの力、真っ当に手に入れた手合いとはどうも思えません。
 サポタマに浮かんでいた「GIFT」のマークが関係しているのかもしれませんね。

 しかしながらスカージキロプモン相手にはなんら有効手を打ち出せず、
 あげく途中でヘルガルモンから引き離される形になってしまっています。
 厳密には、この時点でもう勝負がついていたとさえ言えるでしょう。

 彼の口から、GIFTにとってはクリーナーも憎悪の対象と明かされています。
 つまりタクティクスであろうとグローイングドーンであろうと排除対象で、
 クレイ一派が倒れたのも単なる内輪揉めとしか捉えていないということでしょう。
 まあ大抵は「デジモン様」をデリートして回ってる手合いだから当然なのか。

 中の人は蟹江俊介さん。
 主にモブ役担当ですが、業界はこういう人にこそ支えられているのでしょう。
 「ゴーストゲーム」にはモブのほか、ブギーモン役としても出演しています。
 
 
 
・ルガルモン→ヘルガルモン

 リクがサポ主をつとめるデジモン。
 小説「DIGIMON SEEKERS」の主役系列でもあります。
 GIFTの手の者ですが、リクとの間柄は対等に近いイメージ。
 それが彼らとしてはちょうどいい関係性なのかもしれませんが、定かではありません。

 その最も恐ろしい特性は、「ハウリングバーナー」による炎。
 広範囲に燃え広がる炎は高い威力を誇るだけでなく周辺へ火災を起こし、
 これによる二次被害がシャレになりません。
 明確に描かれてはいませんが、劇中ではトモロウ組が鎮火に専念していました。

 この特性は完全体ヘルガルモンへ進化した際にますます顕著となっていて、
 スカージキロプモン自身には当たらずともエッグへの被害が懸念されました。
 この殺傷力がキロプモンへの刺客として選ばれた所以でしょう。

 しかしながら本来、この系列は自らの制御に成功した存在として
 完全体ソルガルモンの存在が燦然と在るはず。
 ヘルガルモンでは、この系列が備える潜在力を十全に扱えているとはいえません。
 このあたりが「与えられた力」の限界なのかもしれませんね。
 本当にそういう力が与えられていれば、ですが。

 中の人は宮本崇弘さん。
 上の谷昌樹さんと同じく、どちらかというと吹き替えでの活躍が目立つ人です。
 デジモンシリーズにはこれが初出演の模様。

 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「大丈夫だ。すぐ次の手を……」(宝生リク)

 アバンパートにて。
 この時点では相方との関係も良好に見えたのですが、実は異常者でした。
 でもなぜ異常者になってしまったのでしょう。
 
 
「近づいてきたってナ! シャンデリアレッグ!」(ゲッコーモン)
「シャングリラエッグな」(トモロウ)


 恒例の言い間違いとツッコミ。シャンデリア足???
 
 
「特別なクリーナーチームが来るっていうから期待してたのに、兄さんのところかよ。
 フン……犯人、ちゃんと捕まえられるんでしょうね?」(ツカサ)


 マコトに声をかけられての返し。上に書いた通り剣もほろろな態度です。
 レーナとトモロウがピキッていましたが、キョウはうまく受け流してます。
 
 
「初めまして、久遠寺セイジです。息子がご迷惑をおかけしているようで」(セイジ)

 握手を求めて。どうでしょう、このすでに決めつけるような物言い。
 求められたキョウの方は大人の対応をしながらも、鋭い探りを入れています。
 まあ勘繰るなという方が無理があるんですけど。
 
 
「なら出てけよ……
 一度逃げ出したくせに、いまさら戻ってくんな!!」(ツカサ)


 跡取りはツカサに決まっているはず、と言うマコトに。
 一言でいいあらわせない、複雑な思いがこもった叫びです。演じ分けが光る。
 花瓶の割れる演出が、秘めた感情の示唆を補強していました。
 
 
「マコト。
 もしお前が戻ってきてくれるなら、ツカサと二人で久遠寺工業を支えてほしいと、私は考えている」
「会社のためだけではない。家族がバラバラにならないためにも」(セイジ)


 マコトへの提案、と見せた何か。
 他の目があるからか穏当な物言いですが、後の展開を知っていると
 これほど白々しいセリフも無いとわかるでしょう。
 
 
「キロプモン……だったか?
 私は父親として、マコトに傷ついてほしくないと思っている。
 くれぐれも、よろしく頼むよ」(セイジ)


 キロプモン一人が相手になるとこれです。
 息子の心を奪ったに等しいこのデジモンが、彼は憎くてたまらんのでしょう。
 マコトが自由を願ったのは、そもそもこの男のせいかもしれないというのに。
 
 
「なんかやばそうなカンジ……!」(レーナ)

 GIFTの名を聞いて。直感なんでしょうが、たぶんその感覚は正しい。
 
 
「違う、そんなんじゃない! ぼくは……!」(ツカサ)

 仲直りしたいんじゃないのか、とキョウに言われて。
 彼にとっては、そういう気持ちの有無で語れる問題じゃないんでしょう。
 絶対に許されないことをした、と思い込んでいる今の彼にとっては。
 
 
「すべては、デジモン様のために!!」(宝生リク)

 クリーナーに与するキロプモンを裏切り者と称し。
 まともそうな顔をしてコレなんだから困ったものです。
 しかし完全体を出現させるその力は、決して侮れるものじゃありませんでした。
 
 
「ボクのせいだ……」
「ボクがいると、マコトが家族に嫌われる……
 ボクが生まれたから、マコト、たくさん傷ついた……
 ボクのせいで…… ボクのせいで……
 マコト、傷つくの……イヤだ!」
「ボクは……マコトといちゃいけない……!」(キロプモン)


 自責の念に囚われて。最後には無謀にも、マコトから離れてしまいます。
 口には出さなくても、ずーっと気にしていたんですね。
 直後ヘルガルモンの炎に襲われるのですが、アレで済んだのは
 ほとんど奇跡みたいなものかもしれません。
 
 
「いい加減にしなさい。
 お前は久遠寺の人間……遊びはもう、充分だろう!」
「フン……いいかげん大人になりなさい……マコト!」(セイジ)


 必死にパートナーを助けようとするマコトに。
 キロプモンへの憎悪のこもったストンピングがオマケです。
 何がすごいって、息子のことを本当になにひとつ理解していません。
 自分の価値観だけで凝り固まると人間、こうもモノが見えなくなるのでしょうか。
 
 
「マコト……サヨナラ……」(キロプモン)

 セイジに連れ去られる中、諦めたように目を閉じて。
 自分さえいなくなればもう、マコトが家族から嫌われることはなくなる。
 そう思ったら、力が抜けてしまったのかもしれません。
 
 
「ふざけるなぁッ!
 抵抗しろよ! 忘れたの! あの時の、約束!
 忘れちゃったのかよーーーーーッ!」(マコト)


 最愛の友を繋ぎ止めたセリフ。
 珍しく感情を露わにした、彼らしくない荒れた口調です。
 その瞬間、キロプモンの脳裏へ鮮やかに蘇ってきたものは……
 
 
「ボクは、感謝してる。
 お父様の期待に応えないといけない……あの家は、毎日苦しかったから……」
「ね、二人で逃げちゃおっか?」
「キミと一緒なら、どこまでも自由に飛んでゆける……そんな気がするんだ」(マコト)


 回想にて。
 マコトがいつも無意識に願ったもの、それはきっと「自由」。
 彼にとりキロプモンは、その自由を叶えてくれた大切な存在でもあるのです。
 それにしてもこうアレだ、なんだか駆け落ち前夜みたいな会話ですね??
 
 
「ボク、マコトといっしょにいる! いつかマコトを乗せて、大空を飛ぶ!」(キロプモン)

 上に応えて。
 それは幼い、ひょっとしたら他愛のない約束だったのかもしれません。
 けれど、何よりも大切な思い出として二人の胸に収められていたのでしょう。
 
 
「ごめん、マコト……約束、思い出した!
 ボク、マコトといっしょ! 何があっても!」(キロプモン)
「うん……! キロプモン!」(マコト)


 パラライズエコーでセイジを振り払い、マコトのもとに戻って。
 途切れかけたものが、より強くなって再び結び直された瞬間です。
 それにしても至近距離のパラライズエコーはエグい。
 対人なんでちゃんと手加減はしてたはずだけど、溜飲が下がりました。
 
 
「久遠寺なんか知らない!
 ボクたちは……グローイングドーンのファミリーだっ!」(マコト)


 久遠寺家との訣別宣言。
 連れ戻すつもりが、完全に見限られた格好となりました。
 いろいろ方法はあったでしょうに、そりゃあ悪手じゃろ社長。
 
 
「翔け! どこまでも、高く!」(マコト)

 完全体進化のコール。
 まさに今の彼らに相応しいものです。
 
 
「キロプモン進化! スカージキロプモン!!」(スカージキロプモン)

 というわけでグローイングドーン三体目の完全体、ここに爆誕。
 それはまさに、彼らの夢と意志そのものといえる姿でした。
 
 
「……! 行こう! スカージキロプモン!」(マコト)

 ツカサがシャングリラエッグの壁を開いてくれた、と悟って。
 直前、感極まったように目を伏せていたのが印象的でした。
 
 
「……気持ちいい……」(マコト)

 幼年期フサモンに退化したヘルガルモンとそのサポタマを回収、
 開いたハッチから青空を見上げ、風に吹かれて。
 二人の夢が今、ひとつ叶いました。
 
 
「……はい」(マコト)

 レーナに「大丈夫?」と声をかけられて。
 去り際にただ睨んでいった実の父を前に、その胸中はいかばかりか。
 でも、もう彼の覚悟が揺らぐことはないでしょうね。
 
 
「本当にありがとう、ツカサ」(マコト)

 かつてキロプモンの存在を密告したことを詫びようとしたツカサに。
 後悔などないし、ツカサの気持ちもずっと察していたんだと思います。
 それにしてもこの子、いったいどこまで聖人ポイントを溜めてゆくのやら。
 
 
「……マコト。……ずっといっしょ」(キロプモン)
「……うん!」


 ラストシーン、夜空を見ながら。
 今話の幕切れに相応しい、闇と光の景色がそこにありました。
 
 
 
 
★次回予告

 なんだかよくわからないのが出てきましたね。
 マザー・デ・リーパーのようにも、アルゴモンのようにも見えますが……
 そもそも、どういうお話になるのでしょう?