GIFT
脚本:佐藤寿昭 絵コンテ:中村明博/倉田俊宏
演出:倉田俊宏 作画監督:市川吉幸/上直紀/洪範錫
総作画監督:諸葛子敬
★あらすじ
兄アスカを見舞いに病院を訪れていたトモロウは、不思議な少女に出会います。
影森ミハルというその少女は、意味深な言葉を残してその場を去りました。
まるで、これから起こることを承知しているかのように。
そんな折、デジモン絡みの連続殺人事件の依頼が舞い込んできます。
未遂で済んだひとりから話を聞こうとしたトモロウは、不審なドローンを発見。
追いかけた先で、なぜか外に出ていた被害者・柏木タモツがドローンの落とした
爆弾に殺されかけていたのを救助。
そこに現れた下手人のデジモン、ジョーカーモンとの戦いになりますが、
相手は完全体たる強敵であるうえトモロウ達はまだ完全体進化に慣れておらず
手痛い返り討ちに遭ってしまいます。
その場はレーナやキョウ達の加勢で助かったものの、事態は深刻なまま。
そして、犯人たちはさらに過激な手段に出ます。
トラックを柏木の病室に突っ込ませて始末しようとしただけでは飽き足らず、
地下に爆弾を満載したそれを大量に用意していました。
爆発すれば病院ごと吹っ飛び、アスカも巻き込まれてしまいます。
しかし、これが逆にトモロウの闘志に火をつけました。
アスカは絶対にやらせない。決意の完全体進化が地下にミラーワールドを開き
爆弾トラックを隔離、さらに爆破します。
ジョーカーモンもムラサメモンに倒され、事件は解決と思われました。
ところが後日、どういうわけか柏木が自殺したとのニュースが。
しかも、彼が運ばせていた「有害物質」とはデジモンのことだったのです。
いったい何が起きて、これから何が起きようとしているのか──
無数の悪意が渦巻く中、ミハルは静かに世界を見つめていて……
★全体印象
28話です。「GIFT編」と名付けられた新展開の幕開けにして、象徴的なサブタイ。
まず注目すべきは、今後のキーキャラの一人と思われる影森ミハルの登場。
デジモンのことを承知しており、トモロウの本質を見抜くような発言をし、
そして今の世界のあり方に疑義を示すという、布石が服を着て歩いてるような存在。
彼女の発言にミステリアスさだけでなく、恐ろしさを感じるのは私だけでしょうか。
デジモン事件も凶悪化・難事件化の一途を辿っている印象。
なにしろ殺人(コロシ)です。それも連続で何件も。さらに完全体の出現も常態化、
となれば生半可なクリーナーでは手に負えないでしょう。
五行星が動いて現場でかち合うケースも増えてくるかもしれませんね。
レーナやマコト達にも、そろそろテコ入れが必要な時期でしょう。
特にレーナ組は連携でこそ貢献しているものの、単独で敵を制したケースがなく
その点ではマコト組にも後塵を拝してます。今後に期待したいですね。
そして、無数の悪意の中心にいると思しき「GIFT」という謎の存在。
コレは果たして人間なのか、デジモンなのか。そのどちらでもないのか。
謎が謎を呼ぶGIFT編、早くも目が離せなくなってまいりました。
脚本は佐藤寿昭さん。これまでも重要エピソードを任されてきた方です。
タクティクス篇では実質グラニット担当でしたが、今回はどうでしょうね。
演出と絵コンテには倉田俊宏さんが登場。過去回では演出助手でした。
「逃走中」や「ゴーストゲーム」には名前がないので初演出でしょうか?
★キャラなど個別印象
・トモロウ
アスカを見舞った病院にて、ゴクウモンのことを思い出していました。
何か24話から直接繋がってるような流れですが、まあワンクッションってことで。
個人的にも、そろそろああいう箸休めが欲しかったところですし。
ミハルとは主役らしく、ゲッコーモン共々初めて出会った人物となっています。
彼女には強い印象を抱き、その言葉を気にかけていました。
30秒予告でのセリフは本編にないものですが、アレも彼の所感を示しています。
果たしてこの出会いは、何を意味するのでしょう。
バトルにおいては、ジョーカーモンにかけられた呪縛を自力で打ち破ってみせ
相手を驚愕させる場面がありました。やはり尋常ならざるものを持っています。
完全体進化も二度目を成功させ、出れば向かうところ敵なしといったところ。
何かを守ろうとしたときこそ大きな底力を発揮しますね。さすが主人公。
あの状況でも焦らず、しっかり力を発揮できるあたりにも成長を感じます。
まだ間に合うという気持ちと、完全体進化という切り札のおかげもありましょうが。
・ゲッコーモン→アルマリザモン→モナークリザモン
成熟期状態でも完全体を仕留めることがある攻撃力の持ち主なんですが、
前半はジョーカーモンの俊敏性と術に翻弄されてしまいました。
まだ自在に完全体進化を出せない状態なのもまずかったでしょう。
後半でも苦戦は変わらずと思われましたが、土壇場で完全体進化。
ジョーカーモンをも圧倒するパワーで地下へなだれこみ、さらに左手の突撃武装で
ミラーワールドへのゲートを開きました。これには膝を打ちましたね。
そうですよ、完全体になれるってことはこの手で盤面をひっくり返せるんです!
さらに、ジョーカーモンが繰り出してきた爆弾トラックも必殺技で撃墜。
トドメこそムラサメモンに譲りましたが、MVPは間違いなく彼らでしょう。
いやはや、どんどん強くなっていますね。
・レーナ組
トモロウ組のピンチへ真っ先に飛び込んできたり、後半も果敢に挑み掛かるなど
奮闘していましたが、戦果は上げられていません。
次回活躍するかもしれないので、そっちに期待をかけましょう。
・マコト組
今回は概ねバックアップに徹しており、その分リアクション担当という感じ。
でも彼らのおかげで事態のヤバさがトモロウ組に伝わったので、役割としては重要です。
・キョウ組
柏木のガードやジョーカーモンへのトドメと、派手な見せ場はトモロウ組に譲りつつ
随所でいぶし銀の活躍をしていました。雷名今だ衰えず、ですね。
でも守った対象がデジモンを食い物にしてたと知って、どんな想いだったでしょう……
・マキ
前半、ジョーカーモンの関わる案件をレーナ達に紹介していました。
今回その手腕がより発揮されているのは、むしろラスト手前でしょう。
柏木が扱っていたのが実はデジモンだったという情報、彼女ぐらいの情報屋でないと
なかなか辿り着けないであろう類と思われますし。
・ジョーカーモン
「死に様」を見せつける予告の人形を送りつけ、その通りの殺し方をするという
凶悪犯罪の下手人として働いていました。というより、彼の方が首謀者に見えます。
サポ主である堀は彼に心酔し、e-パルスを捧げている立場という感じ。
殺しは自らの手で直接、というところには別に拘っていません。
最初からしてトラックで家ごと柏木を殺そうとしていたし、後半においても
数台ものトラックを地下に集めてそこにガイアマジッカーの陣を展開、
爆破することで病院ごと目的を達成しようとするなどむしろ何でもあり。
戦闘力も非常に高く、特に上記の「ガイアマジッカー」は決まれば
アルマリザモンをも一撃で戦闘不能へ追い込む威力があります。
応用性も高く、トラック数台をカバーできるほどの広範囲に陣を敷けるほか
対象に直接陣を描くことで自在に操るという芸当までできます。
この能力で、爆弾トラックを即席のミサイルに仕立てました。
さらにその鎌は斬った対象の動きを呪縛で封じることができるなど、
道化師のような見かけ通りにかなりの多芸を誇っているデジモンです。
初登場作品である「クロスウォーズ」ではセフィロトモンの部下であり、
見せ場もそっちに大半譲っていたので面目躍如といったところでしょうか。
しかし病院ごとを巻き込んでアスカにも被害を及ぼそうとしたのが運の尽き、
トモロウ達が切り札の完全体進化を切ったことで計画は完全に破綻。
切り札の名を冠しながら、相手の切り札に追い詰められる皮肉を味わいます。
ならばとトモロウを直接狙おうとしますが、ムラサメモンのカウンターを喰らい
あえなく退化しました。どうやら防御力は低かったようです。
退化の間際、彼は不吉な言葉を残しています。
その後の演出通りなら、彼は誰かの「依頼」を受けて動いていたのでしょうか。
だとしたら、その依頼は「別の何者か」に引き継がれたということ……?
中の人は岩田光央さん。「ゴーストゲーム」ではクロックモンを演じていました。
TVシリーズではなにげに「アプモン」以来毎度出演されてる常連です。
上記の通り「クロスウォーズ」が初出演作ですが、今回の方が厭らしさというか
粘着質な雰囲気が出てますね。
・堀
ジョーカーモンのサポ主である女性。というかe-パルスを捧げている下僕にしか見えません。
顔にわざわざジョーカーモンに関連したペイントをしているところからも、
その心酔ぶりは明らかでしょう。
顔だけ見ると、DCコミックスのヴィラン「ハーレクイン」を連想させます。
間違いなく狙ったデザインでしょう。
彼女がなぜこんな生き方に至ったのかは、いまのところ誰も知りません。
ひとつ言えるのは、彼女もまた嬉々として殺しに携わっていたことです。
何もかもをなくして、未来に希望を持てなくなった無敵の人なんでしょうか。
そういう手合いにあんまり無敵って言葉は使いたくないけど。
ジョーカーモンがいなくなったことを嘆き悲しみつつ、サングラスに囲まれ
連れてゆかれそうになっている姿が本編最後の出番です。
トモロウはその様子を、どこか切なげに見つめていました。
彼女のような人間に、これから救いなどはないのでしょう。
今回はやったことがやったことだからやむを得ないのですが……
中の人は山本悠有希さん。
活動時期は2022年からという若手ですが、「キン肉マン 完璧超人始祖編」で
アトランティスを応援していた少年・ポールや、「SPY×FAMILY」のあるお話で
重要な役割を果たすビディ・スクワイアという人物を演じるなど
個人的に印象に残る役どころを演じています。今後にも期待ですね。
・柏木タモツ
黒かな? いや実は白なのかな? と思わせて真っ黒だった人。
「有害物質」と見せかけてデジモンを運ばせ、秘密裏に処理させていた人物です。
しかも、国民保護省やワールドユニオンが思いっきり関わっている事例。
表には出せない仕事ですが、たぶんアウトでもなんでもないんでしょう。
デジモンは本来バグである、という河原崎の発言とも一致します。
彼がそのことだけで恨みを買っていた、とまでは思えないのですが、
流れから見て大半デジモン絡みで死を望まれていたとしか思えません。
まあ、あのモブ達が集団催眠的なものにかかっていた可能性もあるんですが。
ジョーカーモンからはトモロウ達が守りましたが、その後自殺と報道されています。
でもたぶん他殺で、デジモン絡みだからそう報道するしかなかったんでしょう。
ただ、ワールドユニオンがやったのはきっとその死の真相を誤魔化しただけ。
やったのは、ジョーカーモンの役目を受け継いだ何者かかもしれません。
どこの何者で、本編に出てくるのかどうかなどはまだわかりませんが。
中の人は松山鷹志さん。以前にボンバーナニモンのサポ主を演じてましたね。
柏木は死んじゃったけど、こちらの方は今後もゲスト役として登板しそう。
・影森ミハル
突然トモロウとゲッコーモンの前に現れ、思わせぶりな行動をしまくった少女。
頭のてっぺんからつま先までミステリアスで出来ているような存在です。
「コード」を読み取る力に長けているらしく、ゲッコーモンのことを「美しい」
と評しトモロウのe-パルスも同様に評するなど、独特のセンスを持ちます。
予言めいた言葉まで残し、病院で何かが起こることも正確に言い当てていました。
予知能力。それとも最初から「知っていた」とか……?
また、現在の社会のあり方に疑問を感じているらしい言動もみられます。
少なくとも、デジモンがバグとして処理される今の状況は間違っている……
というスタンスに立っているのは疑いないみたいですが。
問題はそれ自体ではなく、彼女がそこにどう向き合って何をしようとしているか、
の方だと思います。ヒロインにも、ラスボスにもなり得そうな何かを感じる。
彼女はどこの何者で、誰の関係者で、何を考えているのでしょう。
今の段階では、何も類推することができませんが……
中の人は佐倉綾音さん。シリーズ初出演です。
ここ十数年のアニメファン界隈においてその名を知らぬ者はモグリ、
と言われる(言われてません)ほどの超人気声優さんですね。
私の守備範囲だけでも「ご注文はうさぎですか?」のココア、「シンカリオン」
の速杉ハヤト、「プリティーリズム レインボーライブ」のりんね、
「マギアレコード」のフェリシアとポンポン名前が挙がるほどです。
これだけの人を持ってきたからには、生半可な役回りではないでしょう。
味方なら追加メインキャラ候補ですらあるけど、もしそうでないなら……
果たして真相はいかに。気になりますね。
・GIFT
ミラーワールドと思しき場所で玉座に座っている、フード姿の謎の存在。
モニターのようなものが付いたバイザーで覆われているせいで、顔自体が見えません。
人間なのかデジモンなのか、ただのハリボテなのか、その一切が不明です。
考えられるのは、この存在が「依頼」を受けている可能性があること。
ジョーカーモンのようなエージェントを使い、人間に「裁き」を下している可能性です。
しかもどうやら、依頼者はデジモンを信奉している。もとサポ主でしょうか?
そのうえ、ジョーカーモンのような存在は他にもまだまだいることがほぼ確定です。
どこの誰が、どのように関わってこんなものができたのでしょうか。
それとも、集団的無意識のような何かがあのようなものを生んだのでしょうか。
あのフードとバイザーの下には何があるのでしょうか。早くも謎だらけですよ。
……いや、ひょっとすると……その正体は……
★名(迷)セリフ
「絶望を……お届けでぇす!」(ジョーカーモン)
本編中、何度か繰り返されるセリフ。
最初にあたる場面では普通にトラックを運転しており、割とシュールな絵面です。
「美しいデジモン…… あなたが生んだの?」(ミハル)
第一声。もうこの時点で只者ではありません。
「あなたの目に、この世界のコードは……どう映ってる?
……この子たちがバグ扱いされるなら、バグってるのは世界の方だわ……」(ミハル)
街を俯瞰しながら。この世界は間違っている、と言わんばかりのセリフです。
やはり、彼女の正体は……?
「バナナがないと〜エッジ!」(ゲッコーモン)
「変わりすぎだ……」(トモロウ)
完全体モナークリザモンの技「アナイアレイトエッジ」の言い間違いです。
もはや原型をとどめてませんが、トモロウのツッコミに淀みはありません。
「私のe-パルスは、命は、ジョーカーモン様のために!」(堀)
ジョーカーモンとの緒戦にて。
後でわかることですが、そのサポタマには「GIFT」の文字とマークが残ってました。
彼女もまた、デジモンの力に縋る「信奉者」なのでしょう。
「ステキなキャッチフレーズですねぇ……!
いつでも、どこでも、どこまでもぉ!!」(ジョーカーモン)
トラックを高速から柏木の病室へ突っ込ませる際に。
柏木が専務をつとめる運送会社のフレーズを皮肉って使っています。
堀ともどもネットワークサービスが人を破滅に追いやることを笑ってましたが、
この場合はもはやネットワークも運送もヘッタクレもない気がしてなりません。
「アスカは……!」
「絶対にやらせない!」(アルマリザモン&トモロウ)
ジョーカーモンの呪縛を解き、立ち上がって。
二人の心がひとつになっていることが良くわかります。
呼吸の合致と気魄はハナから充分。あとは決意だけでした。
「美しいデジモン……! そして…… 美しい光……!」(ミハル)
モナークリザモンへの進化を見届けて。浮世離れしてるなあ。
「叩き割れッ!」(トモロウ)
魔法陣が爆発寸前とみて、モナークリザモンへの指示。
記念すべき彼らの初ミラーゲート展開です。その手がありました。
「ふざけるな……!
そんなに死にたいのなら、お前たちからあの世に! 送り届けてやるッ!」(ジョーカーモン)
トラックの上で怒りに燃えながら。
ちょっとホーリーエンジェモンに一撃入れられて皆の人形を奪還された際の
ピエモンの激怒を思い出しますが、そのムーブは格を下げますよ。
「ごっこ遊びは!」
「終わりだってナ!」(トモロウ&ゲッコーモン)
そんなジョーカーモンへの鋭いカウンター。
彼らの行動は、トモロウ達からすれば「遊びで人を殺す最低の行為」でしかありません。
そうしたものへの純粋な怒りこそ、彼らが真っ当に育ってきた証といえます。
「借りは返す! 受取拒否はなしだ……!」(ムラサメモン)
トモロウを襲おうとしたジョーカーモンを叩き斬って。最後にいいところを持ってゆきました。
セリフにも皮肉がきいてます。
「迷える人間を導くのが……我々のつとめ……なのです…… ホホ……」(ジョーカーモン)
トモロウの心に引っ掛かりを残した一言。そう、彼らだけではないということです。
直後、記憶をなくしたかのようにオロオロしているモクモンが妙に可愛い。
「あなたは……本当に、それでいいの? トモロウ……」(ミハル)
事件を解決し、嘆き悲しむ堀を横目で見つめるトモロウを遠くから眺めて。
彼女はやはり真相を「知っていた」ということなんでしょう。
「でじもんニ自由ヲ。人々ニ幸福ヲ」(GIFT)
ラストシーンのセリフ。
夢みたいな目標をもってやるから過激なことしかやらない、
って誰かが言ってましたっけね。まさにそんな匂いがします。
まあ夢を語ってるのはグローイングドーンも一緒ではあるんですが。
★次回予告
あのヴァンデモンが登場。なんか前作と芸風が微妙に被ってるような気がしますが。
今回の中の人はどなたでしょう。変えてくる可能性もありますよね。
そして潜入捜査してるっぽいレーナに果たして、活躍のチャンスは?