冒険の果て

脚本:冨岡淳広

絵コンテ:宍戸望 / 佐々木憲世 / 大塚隆史 / 志田直俊

演出:宍戸望 作画監督:浅沼昭弘 / 仲條久美

★あらすじ

 アバドモンの中枢に辿り着き、ついにその核と対峙するオメガモン。
 「それ」はオメガモンと対をなす姿となり、両者の激闘の火蓋が切って落とされます。
 一方、外側のメンバーも復帰してきた光子郎達を加えて攻撃を始めました。

 激闘の中、一瞬の隙を衝かれて消滅の危機に陥るオメガモンと太一、ヤマト。
 しかし彼らにもはや恐怖はなく、明日への決意があるだけでした。
 紋章の力が結集し、オメガモンは新たな形態・AlterSを得ます。
 その力は荒れ狂う無をも押し返し、ついにネガーモンコアを葬り去りました。

 平和が戻ったデジタルワールドで、選ばれし子供達のことを語り継ぐデジモン達。
 彼らは今どうしているのでしょう。使命を終え、人間たちの世界に残った今、
 もう二度とデジタルワールドに現れることはないのでしょうか。

 …いや。
 ひょっとすると──
 
 
 
★全体印象
 
最終話です。ようやくこの日が来ました。

オメガモンと最後の敵・ネガーモンコアの壮絶な戦い、AlterSの出現(一応布石はあり)、
余韻の残る感じに纏められたラストと、最終話として見ればそんなに悪くないですね。
残りメンバーの見せ場が実質前回で終わってる形なのは残念でしたが。

けれども重要なのは、ここに至るまでの経緯がどうだったかということです。
なんか良さげな演出に誤魔化されそうになりますけど、この最終話に繋げるには
ちょっとばかり経緯がダメすぎるんじゃないかと思われてなりません。
まあ、そこらへんは後で総括を出すんで多少なりとも詳しく書くつもりです。

あと、最終話だってのに太一たちの家族は全然全く1ミリも出ませんでしたね。
本作はそういう方針だって途中で気づいたから、今さら期待はしてませんでしたけど
家族との関わりがキャラの根幹に繋がってるメンバーもいる中、なんのリカバーもせずに
バックボーンだけ引っこ抜いたのはあまりに乱暴だったと言わずにはいられませぬ。
太一に至ってはほとんどガワしか残ってなかったし。

最終話だけにメインスタッフが総動員されており、バトルに関しては見応えがあります。
絵コンテも4人いるという力の入れっぷりでした。
作画スタッフには心からお疲れ様と言いたいですね。私が言える義理じゃないけど。
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・太一組 & ヤマト組

 覚悟完了状態でしたが、実は3話の描写と大差ないので新鮮味はあんまりなかったりします。
 紋章の力の作用で攻撃・防御力が向上する描写がここへきてより顕在化してたのは良いですね。
 やっぱり「うおおおおお」って叫ぶ必要があるみたいですけど。
 
 
 
・オメガモン

 3回目の登場となりましたが、その強さはこれまでのそれを凌いでいたように見えます。
 ネガーモンコアとはほぼ互角だったし、ピンチは剣を通じて虚無を侵蝕されかけた場面ぐらい。
 アレに関しても、むしろ敵側の回避を褒めるべき場面です。
 紋章の力を得た後は無敵状態となり、あらゆる攻撃を易々と跳ね返すようになりました。

 面白げな小技が増えていましたが、肩はともかくあんなところからミサイルが出るんですね?
 あと左肩からシールド展開したのにはびっくりしました。伊達じゃなかったんですねその盾。
 
 
 
・オメガモンAlterS

 紋章の力を結集させたオメガモンが、新たに獲得した形態。
 最初はただの光の塊として現れ、虚無を跳ね除けたあとは両腕が変化。
 吹っ飛んだネガーモンコアが向き直った時には、すでにこの姿になっていました。

 そこに込められていた意匠は、ブリッツグレイモンとクーレスガルルモン。
 紋章の力が太一たちの冒険そのものだとするなら、旅の途中で得たすべてが
 オメガモンに上乗せされ、その中にこの二体も含まれていたゆえの姿ってことでしょうか。
 想像通りなら、本作のオメガモンは現れるたびに強くなるのかもしれませんね。

 言語化が難しいんですが、AlterSが上位形態というよりは紋章ブースト状態の
 オメガモン自体がすでに最強であり、AlterSはその顕在のひとつというか……
 つまりあの状態なら別に普通の姿でもやっぱり同じくらい強いのでは、ってことです。

 とまあ、ある程度の解釈はできましたが……
 個人的にはここまで無双させるんならやっぱり、最終話限定で良かったと思います。
 せめてミレニアモン戦で出してガイキング・ザ・グレート扱いにするとか。
 ブライトさんに言わせれば「オメガモンの人気をアテにしすぎる」ってやつですよ。

 閑話休題。
 戦いの後、グレイソードには別の文字が浮かび上がってきます。
 有志の方の翻訳によれば「オールデリート」ではなく「オールリカバー」。
 どうやら集結した紋章の力、すなわち存在の力を使って世界を修復したのでしょう。

 はっ! これはフィクサービーム!
 オメガモンはやはりハイパーエージェントだった……?(馬鹿も休み休みおっしゃい)
 
 
 
・他メンバー

 中でオメガモンが暴れてる影響でアバドモンの動作が緩んだと看破し、さらに優位に立つため
 何やら色々叫びながら外側からも総攻撃を加えていました。
 見せ場としてはそれぐらいですが、一連の行動が紋章の力の結集へと繋がってゆきます。
 
 
 
・セミレギュラー及びゲスト及びモブの皆さん

 戦いのあと、平和に暮らしている様子が見て取れます。
 選ばれし子供たちのことは憶えており、彼らのことを語り継ぐそうです。
 余計な犠牲者がいっさい出なかったのは幸いというべきでしょうか。
 レオモンが無事生き残ってくれてホント良かった。

 画面にはこれまでのゲストキャラが総登場しているほか、アルボルモンやラーナモンなど
 初めて見る顔もおりました。多すぎるんで全部は紹介できませんが、
 確認してみるのも一興ではあるかもしれません。

 そういやオポッサモンいましたね。生きてたんかワレ。
 
 
 
・ネガーモンコア

 アバドモンの中枢で不気味な花のように根を張っていたコアが、戦闘形態に変化した姿。

 これを倒さなければアバドモンは倒せないわけですが反面、「彼」にとっては
 この箇所をやられたら終わりなので、本当なら逃げを打つ選択もあったように思えます。
 その間に、あちこちへ侵食を進めるという手も無くはなかったかも。

 しかし実際にはオメガモンを迎え入れ、真正面から迎え撃つような形を取りました。
 その意図は不明です。自信があるのでしょうか。正面から力で叩き潰してこそ、
 相手の恐怖を煽ることができると敢えて堂々と受けて立ってるだけなのか……
 ラスボスらしい行動と言えなくもないですが。

 その姿はオメガモンと近いコンセプトを備えつつ、一目で真逆の存在とわかるもの。
 紋章の力の結集であるオメガモンに対抗したのでしょうか?
 いずれにせよ、両者が決して相容れないことだけはハッキリしています。

 強さとしてはオメガモンと互角。
 いや、描写を見る限り体の一部でも捕まえることができればそこから虚無を送り込み
 存在そのものを消してしまうことができるっぽいので、やや有利でさえあったかも。

 ですが最終話とあって太一とヤマトのメンタルには1ミリも通じず、そこへ持ってきて
 他メンバーの紋章も上乗せされたオメガモンにはまるで敵いませんでした。
 コアが滅びると同時にアバドモンも崩れ去り、選ばれし子供たちは完全勝利を得ています。

 そういえばこんなヤツでも多少喋ってましたが、中の人は松山隆志さんでした。
 アルゴモン(メッセンジャー)と同じです。そういうこと、なんでしょう。
 それ言ったら松山さん、あっちこっちで兼役してるわけですが。
 
 
 
・その後の選ばれし子供たち

 なんと現実世界にパートナーを連れてきてます。
 駆けてゆく空の上には、ピヨモンの翼。丈のカバンの中にはゴマモンが。
 変装したガブモンと共に、タケルと会うヤマト。タケルのリュックの中にはパタモンが。
 ミミと光子郎は何やら組んで動いてますね。彼女の資金協力で大掛かりな研究、でしょうか。
 光子郎の愛用タブレットの画面には「デジタルゲートトライアル」の文字。

 そしてなんと、太一はアグモンと共に平和の戻ったデジタルワールドにいました。
 こっちに残ったのか、それとも光子郎の研究成果なのかは曖昧なままになっています。

 現実世界との関わりが希薄なシリーズだったので、全体にあっさりとした描写です。
 その一方、デジタルワールド自体の事情でお別れ、みたいなものは特に描かれませんでした。
 あまりドラマ重視とはいえなかったし、これぐらいが精一杯なのかもしれませんが。

 それぞれの別れを噛み締めて噛み締めて終わる無印とは異なる、静かなラストでした。
 ここまで来ると、半端に無印要素入れられるよりはよほどいいと思います。
 まあレオモンの最後のセリフには「グ、グムー……」ってなったけど。
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「恐ロシイカ…?」(ネガーモンコア?)
 
 アバドモン中枢から聞こえてきた声。
 アポカリモンの「この私の姿を、醜いと思うか…?」を思い出しますが、
 演説というには程遠く勝手に呟いてるだけでした。
 破滅部の皆さんっていつもそうですね。会話ってものをなんだと思ってるんですか。
 
 
「オレたちはお前を止める…!
 心を通わせた者たち、まだ見ぬものたち…
 生きるもの、存在するものすべての願いを受けて!」(ヤマト)
「だから、恐れたりなんかしない。
 今、オレたちの中には…みんなの力が溢れている…!」(太一)

 
 ネガーモンコアを前に決意表明。
 この後に及んで言い回しが堅い気がします。もうちょっと何とかならんのでしょうか。
 
 
「はっ…!
 ひょっとしたら、内部での戦いでリソースを消費して、
 全身のコントロールが鈍っているのかも…!」(光子郎)

 
 アバドモンの触手の動作がおかしいというミミの指摘を受けて。
 彼はすぐさま残りメンバーでの総攻撃を思いつき、太一とヤマトのアシストを提案します。
 「ウォーゲーム」で大量のメールを送りつけ、ディアボロモンの動きを鈍らせた
 あの行動のオマージュか何かでしょうか。
 
 
「ぼくたちは、お前なんかに負けないっ!」(丈)
「僕には、みんながいる!」(光子郎)
「なにも、無いわけない!」(空)
「むしろ、その逆よ! いーっぱい、あるんだからっ!」(ミミ)
「わたしたちの出会った全て!」(ヒカリ)
「かけがえのない光!」(オファニモン)
「ボクたちの進んできた道は!」(タケル)
「希望へ繋がってゆく!」(セラフィモン)
「恐れだって…! 痛みだって…!」(ヤマト)
「オレたちは、いつだって乗り越えてきたっ!」(太一)
「オレたちの可能性はっ!」(ヤマト)
「誰にも、邪魔させないっ!!」(太一)

 
 消滅への恐怖を煽るネガーモンコアへの啖呵。
 紋章の力が結集し、オメガモンへさらなる力を与えてゆきます。
 それはもはや、絶対と思われた無をも飲み込む莫大なる存在の力でした。
 
 
「いや…お前もデジモンなら、きっと……
 その行く先、辿り着くのは…また悪しき存在か…あるいは良き存在か……
 いや、それだけに縛られはしない。
 我々には、無限の可能性があるのだから……
 さらばだ。また会おう……」(オメガモン)

 
 突然難しいことを言い出しはじめましたが、これはオメガモンというより
 ネガーモン系の司る「無」への対立概念から導かれた言葉のように見えます。
 要は「またお前が間違ったら止めてやるよ。いつかきっと、オレの国で会おうな…」
 ってやつですかね。
 
 
「これで終わりじゃないよな、アグモン?」
「もちろんだよ、太一!」
「ヤーマト!」
「ガブモン。ずっと友達だ…!」
「光子郎はん、大仕事が終わったんや。これからは、のんびりやりまひょ」
「そうだね、テントモン」
「丈、これで思いっきり勉強できるね」
「お、そうだねゴマモン! ぼくの戦いはこれからだ!」
「パルモーン、明日は何しよっか?」
「明日考える〜」
「ピヨモン、お疲れ様。これからもよろしくね!」
「うん、空、だーい好き!」
「タケル、ボクたちいっぱい頑張ったよね?」
「パタモン! ボク、まだまだ元気だよ!」
「テイルモン……」
「ヒカリ、あなたに会えて本当によかった……」
(選ばれし子供たちとパートナー)

 
 世界の危機を救い、暖かな光に包まれながら。一部略。
 これが子供たちの最後のセリフ、かと思いきやまだ少しありました。
 
 
「ねぇねぇ、それから選ばれし子供たちはどうなったの?」(ユキミボタモン)
「そうだな……
 あの戦いの果てに、彼らはどうなったのか……
 使命を終え、人の世界へと帰り……もうここへは……
 …いや。
 ひょっとすると……」(レオモン)

 
 その後の選ばれし子供たちを映しながら。
 このセリフをレオモンというか平田さんに言わせるのって絶対狙ってるんですけど、
 別にわからなくても問題はないという意味でオマージュの基本は抑えてます。
 抑えてたんですが、ここまでの内容を見た上でコレ出されちゃうと……グムー。

 ところで、質問してるユキミボタモンをアテていたのは野沢雅子さんです。
 ナレーターが無いと思ったら、こんなところにいたのか……
 
 
「…よぉし。行くか!」(太一)
「うん!」(アグモン)

 
 デジタルワールドにて。
 どこへ行き、何をするのも自由。邪魔をしてくるものは誰もいない。
 本当の冒険はこれから始まる、のかもしれません。
 
 
 
★最後に

 というわけで、最終話でした。

 上記した通り最終話としては無難なんですが…やっぱり過程が、という気持ちです。
 終わりよければすべて良し、なんて誰が最初に言い出したのか知りませんけど、
 少なくともこの言葉にあまり真実が含まれていないことは実感できた気がします。

 細かいことは総括に回すとして、今はキーボードを離れることにしましょう。
 次週からもデジモンが見られることに感謝しながら。
 願わくば、ゴーストゲームが予想を裏切る面白さと楽しさに満ちていますように。