ヒカリと動く森

脚本:森地夏美 絵コンテ:貝澤幸男 演出:都築悠一

作画監督:二階堂渥志 / 舘直樹 総作画監督:浅沼昭弘

★あらすじ

荒野続きの中、オアシスのように生い茂る森へたどり着いた太一たち。
食糧を探すうちに、奇妙な黒い虫の集団に襲われます。
しかもこの森そのものが、巨大なペタルドラモンの背中の上だと判明しました。
が、上空から見ると森のあちこちが枯れています。あの黒い虫たちのせいです。

そのペタルドラモンと共生していたムーチョモンやプワモンたちの話によれば、
黒い虫を操る何者かが森を枯らして回っているのだそうです。
伝説のデジモンであるペタルドラモンはこの所業を許すことができず、
傷つき消耗した身体にもかかわらず宿敵として追い続けているのでした。

乗り掛かった船と、黒い虫とその主の打倒に協力することとなる子供たち。
特にヒカリは直接守ってもらったことからペタルドラモンに親しみをおぼえ、
真っ先に力添えを申し出ていました。

一夜明け、待ち構えていた黒い虫とその主・エントモンと対峙する一同。
が、エントモンは結界を張ってヒカリ組を乗せたままのペタルドラモンから
他の皆を引き離し、決着をつけようと襲いかかってきます。

エントモンの猛攻の前に、瀕死へ追いやられるペタルドラモン。
ヒカリの願いがエンジェウーモンに届き、「彼」に最後の力を与えました。
ペタルドラモンはエントモンと相打って共に巨大な樹となり、花が咲きます。
もう森を枯らす者はいません。そしてここが、皆の新たな森になるのです。
 
 
 
 
★全体印象
 
44話です。
伝説のデジモンという立ち位置でペタルドラモンが登場。
「フロンティア」以来の登場にして、ゲストとはいえ味方としては初登板です。
まずここが新鮮なポイントとして挙げられるでしょう。

また、敵役としてはエントモンがアニメ初登場。
またまた「ペンデュラムZ」枠からの新デジモンです。新顔が増えましたね。
ペタルドラモンとの超ヘビー級対決は本話のハイライト。
またムーチョモンも喋る役としてはアニメ初登場と、ゲストが多いお話。
ゲストの動向が中心となるシナリオは、前回のそれに近い傾向ですね。

ただ今回のメイン担当でもあるヒカリがこう、フワッとした人物のままなんで
ペタルドラモンへの肩入れもフワッとしてたというか、感性全振りというか
見ててこちらの感情を引き込ませる形にはなり切れてなかった気がします。
言いたいことはわかるんだけど……という。

あと結界で分断されていながら、ヒカリ組以外が完全体にすらなってないのも
個人的にはかなりのマイナスです。特に太一組は究極体になれるんですから、
ウォーグレイモンにでもブリッツグレイモンにでもなってそれこそ力任せに
結界をぶち破ったって良かったでしょうに。まして妹が中にいるんですよ。
そのうえこれはエントモン側で張った結界、遠慮なんていらないはずなのに。

ラストはなんか綺麗に締めようとしてますが、個人的にはもうひとつな回です。
むしろあのラストから逆算して作ってるであろうがために、太一たちが
途中から見てるだけになるという不自然なことになっちゃってる気がしてなりません。
「死」を前提にする方が、なんだかんだ生き残るよりご都合に見える逆転現象ですな。

脚本は森地夏美さん。ここへ来ての新顔です。どうやら新人かアニメ初経験ぐらい?
演出の都築悠一さんも新顔。「ドラゴンボール超」からずっと演出助手でしたが、
調べた限りでは今回が初演出のように見えます。若手スタッフ回ってことでしょうか。
絵コンテはおなじみの貝澤氏ですが、サポートも兼ねてそうですね。
 
 
 
 
★キャラなど個別印象
 
 
・ヒカリ

 なにかというと制止を振り切って走り出す印象が先行した今回。
 とにかく感性で動く子という傾向はあるものの、危険に巻き込まれがちなのは問題です。
 前半などはエントモンの蟲に襲われてしまい、テイルモンのカバーが入りはしたものの
 ペタルドラモンの助けがなかったら危なかった状態でした。

 助けてもらったことからペタルドラモンが言葉は通じないながらも優しい性格だと感じ取り、
 エントモンとの対決を手助けしたいと珍しく積極的な申し出までしています。
 事後承諾でしたが、太一たちも別に吝かではありませんでした。事後承諾多いな。

 ただ個人的にはなぜそこまでペタルドラモンに肩入れしたくなったのか吞み込めきれず、
 あんまりノレませんでした。なんと涙まで見せているというのに。
 やはり尺の問題というか、ペタルドラモンが今回になってから登場したゲストであるため
 ヒカリがどう「彼」に思い入れているかを伝えるにはいささか無理があった気がします。
 かと言って前後編でやるような内容ではないんですけど。

 ただ相手が言葉を持たないため、自分から能動的にコミュニケーションを取らざるを得ず、
 結果として少々自我が希薄だった状態から一歩を踏み出したようには見えます。
 ラストシーンでは、今までで一番なんじゃないかってぐらいの大声を出していました。

 これ以降、自分の意志をよりハッキリ出すようになりはじめるのなら大きな意味があります。
 特に何事もないような気もするけど。
 
 
 
・テイルモン → エンジェウーモン

 ヒカリのフォローに終始していましたが、その願いを聞き届ける形でエンジェウーモンへ進化。
 セイントエアーでペタルドラモンに最後の力を与え、その戦いを支えました。
 完全体進化を遂げたのは彼女だけです。
 
 
 
・他メンバー

 ヒカリ組に引っ張られるような形でペタルドラモンの援護を駆って出たのですが、
 割とすぐに結界の外へ放り出されて戦いの顛末を見守るだけの状態にされてしまいました。
 しかも完全体以上に進化してさえいない。なぜベストを尽くさないのか……

 いや尺の問題だってことはわかってるんですけど、もう少しなんとかならんかったんでしょうか。
 場面転換してたら進化してた、なんて手は飽きるほど使ってるでしょうに。
 そういえば皆で戦いに向かった際、ヒカリ組だけ残ってたのも不自然でした。
 
 
 
・ペタルドラモン

 エルドラディモン同様、伝説のデジモンと呼ばれる存在ですがハイブリッド体なので世代は無し。
 エントモンが完全体と分析されたので、流れ的にそれ相当と察することはできます。

 とてつもない巨体を誇り、太一たちも最初は森と見間違えたほど。
 あまりの巨大さのため、エルドラディモンもそうでしたがキャラなのに背景扱いの時も。
 またこの手の巨体デジモンの常として、言葉を発することはありません。

 森本来の伸びゆく力を象徴的に持っており、本質的には優しい性格。
 エントモンの蟲に襲われたヒカリとテイルモンを救ったり、皆に食料を分け与えたり
 ムーチョモンたちを住まわせていたりと、その優しさは随所に窺えます。
 後半ではヒカリ組ごとコモンドモンをそっと下ろし、戦いから遠ざけもしていました。

 体が大きすぎるため、他者には体から枝を伸ばして接触をはかります。
 大きさの割には繊細な動作ができるあたりは、ある意味植物的かもしれません。

 森を枯らすエントモンを不倶戴天の宿敵として追い続けており、ヤツを斃すためならば
 傷つくことも厭いません。長旅の疲労がたたったのか、後半の戦いにおいては
 ついに致命傷を受けてしまいますが、セイントエアーによって底力を発揮。
 上記の通りエントモンと相打ちになっています。

 その後には巨大な緑の大樹が現れ、一斉に花が咲きました。
 ペタルドラモンの名の通り、その身は草木と花々の礎となったのです。
 綺麗なラストなんですが、いささかコレを前提にしすぎてる感あり。

 このデジモンは「デジモンフロンティア」にも敵幹部として出演経験があります。
 悪の五闘士の一人、木のアルボルモンのビースト体としての出演です。
 しかし立ち位置的にはかなり不遇で大した見せ場もなく、ダスクモンの前座でした。
 アルボルモン共々、敵幹部ではおそらく最もぞんざいな扱いを受けたキャラでしょう。

 これに比べれば、今回の個体は登場期間以外は優遇されていると言えますね。
 
 
 
・ムーチョモン / プワモン

 ペタルドラモン自身でもある森の中に隠れ住んでいた方々。
 ムーチョモンは喋る役としてはアニメ初登場です。中の人は広橋涼さん。
 アプモンのワトソンですね。アレはもっと活躍する人物だと思ってたんですが……

 説明によると、彼ら以外の生き残りは絶無。エントモンに襲われると皆「食われる」のです。
 他に隠れ住んでる者たちがいないのは、単に彼らしか生き残りがいないからなのですね。
 まあペタルドラモン自身が動くので、そもそも定住しづらいのでしょうが。

 ペタルドラモンは行き場のない彼らを哀れに思ったのでしょう、追い出すことはせず
 その隠棲を黙認していたことになります。もしかしたら太一たちにしてあげたように、
 自らの体から食料を分け与えたりもしていたのかもしれません。
 それは己のエネルギーを削ることでもあるでしょうに。

 最終的には脅威であるエントモンは斃れ、ペタルドラモンは自分もまた斃れた代わりに
 彼らへ新しい安住の地を提供する形になっています。
 力の弱いムーチョモン達にはまだまだ苦労も多いでしょうが、エントモンがいない分だけ
 今までよりは遥かにマシでしょうね。
 
 
 
・エントモン

 森を枯らして回っている無数の蟲を操る完全体。蟲どもには名前がないのですが、
 このデジモン自体の筋肉の役目も請け負っているため切っても切れない関係性にあります。
 これもある種の共生関係というのでしょうか。

 植物型でありながら、力は「枯れさせること」という成長とは真反対のものです。
 ペタルドラモンが命を司るのならば、こちらは死を司るといったところでしょうか。
 これは、そもそもエントモン自身が枯れ木や朽木からできていることと無関係ではなく
 対象の植物を枯れさせれば枯れさせるほど力を増してゆくのかもしれません。
 滅びの力、ですかね。「ふたりはプリキュア Splash Star」のカレハーンを思い出します。

 ペタルドラモンとの戦いでは、当初から中盤まで優位に推移。
 「サウザンドスパイク」による拘束も枝を枯らし、翼を自ら排除することで凌いでいます。
 ついには衝角と尻尾からの一撃で致命傷を与えて勝利を目前とするのですが、
 「セイントエアー」のバフを受けて火事場のクソ力を発揮したペタルドラモンに押し返され、
 ともに斃れて新たな森の礎となるという顛末を迎えました。

 本来ならばペタルドラモンとは不倶戴天の敵同士であると同時に、森のサイクルを司る
 いわばシステムの一部としての存在でもあったのかもしれません。
 「彼ら」が寿命を迎えた森を枯らし、その後にペタルドラモンが新たな森を作る、とか。

 もしそのシステムが狂って暴走したのだとすれば、それは黒い稲妻の影響かもしれず
 ひいてはミレニアモンとその欠片の跋扈で引き起こされたことなのかもしれませんね。

 まあ光と闇の戦いに関わることではない、って言及されちゃってるんですけど。
 アレは太一たちの憶測なんですが、わざわざそう言わせてるってことは……
 
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
「わたしは、ヒカリ… あなたは?」(ヒカリ)
 
 自分とテイルモンを守ってくれたペタルドラモンの枝に触れて。
 こういうムーブをさせたら右に出る者はいません。
 
 
「伝説のデジモンなのよ! 会えるなんて感激!」(パルモン)
 
 感覚的にはエルドラディモンと似たようなものでしょうか。
 テイルモンだけでなく彼女も知ってるとなると、知名度はかなり高そうですが。
 
 
「わたし、ヒカリ! あの…わたし、あなたを手伝って… あなたを手伝っていいかな!?」(ヒカリ)
 
 物言わぬ巨大なペタルドラモンに届けというばかりの音声。
 彼女がここまで自ら意志を示し、またこんなに大きな声を出したのは本作じゃほぼ初めてな気がします。
 やや躊躇いがちだったのはやはり、こういうことに慣れていないからでしょうか。
 行動は兄貴の役目だったでしょうし。
 
 
「私たちは、急ぎの旅の途中…… とはいえ、休息も必要。
 一宿一飯の恩、返さないわけにはいかない」(テイルモン)

 
 ペタルドラモンが分け与えてくれた果物を頬張りながら。
 本作の彼女らしい堅めのセリフですが、どのみちヒカリの決めたことなら文句は言いますまい。
 まして、これは珍しくヒカリのほうから言い出したことなのです。
 
 
「ペタルドラモンは、完全に僕たちから… 隔離されてしまったようです!」(光子郎)
 
 エントモンの蟲どもを媒介とした結界を前に。
 彼らはなぜか成熟期のまんま結界突破を試みており、観戦モードに入っちゃってます。
 行動しているように見えても、これでは何もしていないのと同じこと。
 おまけに観戦もなにも、中なんざ見えやしない。 
 
 
「ペタルドラモン、あなたは……
 最後まで戦おうとするその気高き意志に、光を!」(エンジェウーモン)

 
 命と引き換えにしてでも決着をつけようとしているペタルドラモンを見て。
 ここで飛び出したセイントエアーは本作初披露。無印ではヴァンデモンの技を出端で崩し、
 他メンバーの力まで回復させた技です。この技により、ペタルドラモンは最後の力を得ました。
 
 
「ペタルドラモン……
 そうだよね…! ここがみんなの、新しい森になるんだねー!
 …そうだよね…… ペタルドラモン…!」(ヒカリ)

 
 ラストシーン、エントモンを道連れに果て巨大な緑となり、大輪の花を無数に咲かせた
 ペタルドラモンへの呼びかけ。散ってまた咲き、咲いてまた散る(女神転生感)。
 この場面は良いと思うんですが、こっから逆算して作られてるのが見えすぎなのは惜しい。
 
 
 
★次回予告

 タイトルから内容がバレバレなお話。
 ヤマト回かつ、マッハモンがアニメ初登場となるようです。

 シリーズを見慣れてる向きなら、マッハモンの暴走の原因はすぐにわかることでしょう。
 ヤマトとガブモンが彼を救うために進化するのであれば、それは仲間たちだけでなく
 新しい友情を切り開いてゆく可能性に至ったから……って話になるのかな??